第33回
因果よりも深い場所?――介入主義と法則論的マシン
清水雄也

第33回 一橋大学哲学・社会思想セミナー

日時

2024年2月22日(木) 

15時15分開始・18時ごろ終了予定

場所

一橋大学国立キャンパス第3研究館共用会議室(3階308室)

★変更の可能性があります.

講師

清水雄也(科学哲学/京都大学)

問い合わせ先

m.igashira[at]hit-u.ac.jp ([at]を@に変える)

開催要旨

近年,科学の内外で因果が従来よりも顕著に重視されるようになっている.因果は,科学的説明にとって重要な要素であるとともに,医療・政策・ビジネスなどにおいて目的を達するためにも欠かせない要素であると考えられ,因果解明のための方法論が様々な抽象度で広く議論されている.科学哲学では,そうした議論の基礎にある(べき)意味論や存在論が論じられているが,大枠としては,介入主義と構造方程式モデルに基づく議論が1つの主流となっている.

Cartwrightは,こうした流れに様々な観点から異を唱えている.Cartwrightの(反)因果論は多岐にわたるが,特に興味深いのは,法則論的マシン(nomological machine)という独自の用語を用いて展開されてきた或る種の因果メカニズム論である.Cartwrightは,事象間に成立する因果や法則は,いずれも法則論的マシンが生じさせるものであり,それを解明することによってこそ深く有益な知見が得られると主張する.因果を解明しても,思われているほど良い知見は得られないというのである.

本講演では,Cartwrightが前世紀末から断続的に展開してきた法則論的マシン論を,主流の因果論の観点から整理し,その魅力と難点について検討する.講演の流れとしては,最初に介入主義と構造方程式モデルについて簡単に解説し,その後,Cartwrightの議論をいくつかの論点に分けながら論じていくことにしたい.

因果より深い場所を目指すべきだというCartwrightの議論は,主流の因果論にとってどのような意義を持つのだろうか.観察データから因果を解明することさえ難しいところ,さらに深くにあるものを解明することなどできるのだろうか.そもそも,法則論的マシンは本当に因果より深い場所にあるのだろうか.本講演は,こうした問題に答えるのではなく,それらが問うに値する興味深い問題であることを共有することを目指す.その途上では,被覆法則説や中範囲の理論といった,いくらか意外な論点にも出会うことになるだろう.