2020年に日本評論社から刊行の「圏論入門」にMonoidal category の章を追加し,その他の章も内容を見直して,さらに世界中の人にお届けしたいので英語版にし,Springer-Nature社から刊行しました.Amazonで検索すると,ハードカバーはお値段が張りますが,フリーのPDFもあります.詳細は以下のURLを参照してください.
https://link.springer.com/book/10.1007/978-3-031-68538-5?sap-outbound-id=DCAF2827819E836669641058FC135A3D15F648C1
本書は数学科以外の理工学系学生のための,それでいて論証に一切の手抜きの無い厳密な代数学の入門書です.数学科の授業でも正規部分群とかイデアルって何で必要なの,というあたりで引っかかり,その感じを引きずっている初年次の学生さんは多いと思います.ひょっとするとそういう数学科の学生の役にも立てるかも知れません.
本書は群・環・体の入門書です.大きな特徴は以下の3点です.
軌道とか団体行動というキーワードが主役を演じます.正規部分群やイデアルの概念が準同型写像の概念と切り離せないものであることを強調しながら,準同型写像の計算体験を重視します.
証明のデザインパターンを読者に意識づけすることを重視しています.デザインパターンはソフトウェア工学や建築学の世界でよく登場することばですが,将棋や囲碁でいう定石に相当します.定石を知らずして,将棋や碁が楽しめないのと同じで,数学の証明も定石を知らないと最初の一手で身動きがとれません.
絵がたくさん出てきます.概念を可視化するということですね.それらを参考にして,読者にはたくさんの絵を描いてもらうことを期待しています.
本書は圏論の入門書で米田の補題が最終章の到達点になっています.米田の補題(the Yoneda lemma)は「数学で最も難しい自明のこと」(the hardest trivial thing in mathematics)とよく言われます.自明なのになぜ正しいと一発で言えないのか,もどかしい,そういう定理です.「補題」というのは大きな定理を証明するための補助定理という意味だったし,今でも基本的にはそうでしょう.しかし,いくつかの特別なケースでは,偉大な定理の尊称でもあります.
圏論では米田の補題がきちんと理解できれば,入門コースは卒業と考えてよいでしょう.いや,それは言い過ぎか.筆者は何十年もかけてやっと感覚に馴染んだ,というのが本当のところです.とにかく本書のゴールはそこです.反転工学(reverse engineering)という装いで米田の補題に親しみをもっていただけたらうれしい.
大幅増補英語版は上記 "Category Theory Using Haskell" です.
ソケットと呼ばれるインターネットの通信の基盤にある技術が一般プログラマーに解放されたのはバークレー版UNIX4.2からです.当時,ネットワークゲームのプログラミングに熱中してソケット三昧の暮らしをしてました.
ネットワークゲームのプロトコル(データのやり取りの約束事)の典型的な設計パターンを具体例で紹介しています.
現在はいろいろな優れたフレームワークでゲーム開発が行われるのが常識ですが,インターネットの原理をゲームを通して振り返るのも悪くないと思います.賞味期限はまだあると確信します.
著者のセルゲイ・ドゥージン(故人)は私の酒飲み仲間でした.私の息子と娘の音楽仲間でもありました.セルゲイのアコーディオンと息子のバイオリンと娘のクラリネットで楽しい演奏会をやりました.
原著はロシア語ですが,原著者セルゲイによる英語訳はフリーで公開されています.Sergei Duzhinで検索したらすぐに引っかかるはずです.日本語版は英語版からの翻訳になりますが,原著にあった演習問題の解答の誤りはすべて監訳者である私が潰してあります.安心してご購入ください.
本書はLie群で有名なSophus Lieのオリジナルのアイデアに忠実に,変換群を微分方程式の解法に適用して見せるところが白眉だと思います.普通の群論入門書と大分趣が異なります.非線形の微分方程式がこんなに美しく解けるなんて感動ですね.
ネットで Shuichi Yukita をキーワードに検索してください.興味のある論文がヒットしてフルテキストをご所望でしたら連絡をお待ちしています.とりあえず大分昔の学位論文だけ貼っておきます.PostScriptのファイルから急いでPDFに直したのですが,表紙の文字化けだけ解消できなかった.そのうち直します.