すばる望遠鏡広域観測で見つかった褐色矮星のタイプ分類 (水本琴美, 愛媛大学)

褐色矮星は低質量の亜恒星天体であり、中心で軽水素の核融合を起こすことができないため、可視光で暗い低音の天体である。質量や温度などの物理パラメータにおいて恒星と惑星の間に位置づけられおり、両種族の形成に重要な手がかりを与える存在と言われている。しかし、可視光ではその暗さが原因で発見されることがほとんどなかったため、可視光で見つかった褐色矮星の性質は謎が多い天体である (Matsuoka et al. 2011)。
一方、すばる望遠鏡HSCで行ったSHELLQsでは極めて赤く、点状の形態を持つ天体の探査をしている。褐色矮星もこれと同様の形態を示すため、この探査の副産物として100個近くの褐色矮星が新たに発見された。これにより統計的に可視光で見つかった褐色矮星の物理性質を調査することが可能となった。そこで本研究ではこれらの褐色矮星について可視光波長のHSC、近赤外線波長のUKIDSS、UHS、VIKINGおよびVHS、中間赤外線のunWISEという複数の測光データを組み合わせて用いることで、スペクトル型の決定やSHELLQsの可視光スペクトルのみによるスペクトル分類の評価、赤外線で発見されてきた褐色矮星との性質の違いの調査を目的として研究を行う。発見された褐色矮星96天体のうち、赤外線測光データを取得できたのは51天体であった。これらの天体について、取得したフラックスからスペクトルエネルギー分布 (SED) を描いた。