神谷 信一 Nanyang Technological University
危険情報
外務省は中国の危険レベルを引き上げていないが、日本人の子供を狙った事件が2件も起こっているにも関わらず危険レベルを上げないようだ。他の国を変えることはできないわけで、政府は少なくとも自国国民の生命と財産を守る最低限の仕事をしてみてはどうか。とはいえ、日本政府は自国民の生命を守る行動などしないことは北朝鮮の拉致被害者からもわかった話だが。自分の身は自分で守るしかない。(2024年9月29日)
Luckin Coffice
スターバックスの不振が伝えられる中、シンガポールでは中国発のLuckin Coffeeが急速に店舗を増やしている。会社のvalue propositionはHigh Quality, Affordability, Convenienceの3つに集約されるようだ。残念ながらコーヒーの質を判断する能力はないのだが、アプリ経由でのオーダーとコーヒーメインの商品で、オペレーションのコストは抑えているようだ。個人的にはLuckin Coffeeの価格でも安いとは思わないが、「スターバックスはインフラ」といわれるほどのスタバ・ブランドに風穴を開けることができるのか。(2024年9月18日)
シャインマスカット
中国産のシャインマスカットが一房でSGD2.95、日本円でも300円弱、という値段で売っている。試しに買ってみたが、糖度もそこそこ高い。明治屋に行くとSGD30くらいになるので、10分の1の値段でそこそこのものが手に入ることになる。シンガポールには資産家が多いとはいえ、日本産を購入する人は多いのだろうか。(2024年8月11日)
紅美人
最近シンガポールでは中国産の「紅美人」というみかんがよく売れているが、春節も近いこともあり、箱買いしている人を見る。その紅美人(くれないびじん)というみかん、確証はないが薄皮とゼリーのような果肉で有名な愛媛のオリジナル品種「紅まどんな」のコピー商品に違いない。そもそもシンガポールでは「紅まどんな」は見かけないので、もはや「紅美人」がコピー商品であることなど消費者には知る由もない。まどんなを美人に変換するところなど手慣れている。(2024年1月17日)
夢と希望
もし日本経済が浮上する日が来るとすれば、国民が将来を楽観視できた時だろう。明日に夢や希望を持てる、そんな日が日本にやってくるのか。学歴不問で選考した宇宙飛行士が東大医学部卒の才女とプリンストンPhDの世銀勤務。こういった誰も文句が言えないような選考はリスクを取れない硬直化した社会をまともに反映しているような気がする。今回選ばれた二人が本当に素晴らしい候補であったことは間違いないのだろうが、一般人にとってはこんな選考は絶望以外なにものでもない。(2023年3月1日)
日本移住
どうも日本に移住するのは簡単なことらしい。同僚にそのように言われた。日本の外国人受け入れ政策について関心を持ってみたことがなかっただが、外国人が移住するのが簡単だというのはアメリカやカナダ、オーストラリアといった諸外国と比べて基準が緩いということなのだろう。緩い基準で優秀な人材が集まっているのであれば、結構なことなのかもしれないが、諸外国に比べて基準を下げてでも外国人に頼らなければいけない社会にいつからなったのだろう。少し残念に思う。(2023年2月26日)
新校舎
コロナのために当初の予定より数年遅くなったが、新しいビジネススクールの建物が完成している。アジア最大級の木造建築ということで、外観は確かに木造になっている。新しい建物の最上階が教員のオフィスになるようで、先週にオフィスの割り当て抽選会があったのだが、授業と重なるため参加できなかった。その後事務方からなんの連絡もないのだが、抽選会に参加した同僚の話では新オフィスは現オフィスよりかなり狭くなりようで、しかも窓からの眺めの良いオフィスは限られ、向かいのオフィスビューの部屋になった同僚もいた。一体自分のオフィスはどんなものなのだろうか。(2023年2月21日)
OpenAI ChatGPT
今OpenAIのChatGPTがその自然言語のレスポンスの素晴らしさで話題だが、大学もそれにともない対応が迫られることになりそうだ。少し前までは、提出されたレポートのコピペはチェックできていたのだが、最近ではライティングツールを使われるとなかなかチェックもできないようになっていた。ChatGPTなどはさらにその上を行って、簡単なレポートならほぼ瞬時に書いてくれる。簡単な内容で能力をチェックしたところ、基本的なポイントを押さえることには長けているようだ。現在のバージョンは2021年までの情報をAIに学ばせているようで、イギリスのトラス前首相の経済政策について聞いたところ、そんな首相はいないという返答が返ってきた。今後は時間のギャップもかなり埋まってくるに違いない。そうなってくると、授業でレポートなどの課題を課すのも難しくなる。(2023年1月29日)
Visit Japan Web
今日現在、海外から日本に入国する際は事前にVISIT JAPAN WEBというデジタル庁のサイトでワクチン接種履歴や税関検疫関係の情報を入力し事前審査を受けていると、入国がスムーズになるらしい。ということで、一通り申請手続きを行ったが、その中に日本で旅行中のけがや病気を補償する保険への加入が推奨されており、リンクがある。試しにリンクで保険のサイトに飛んでみたのだが、海外からのアクセスはできないとのことだ。。。理解に苦しむ。(2023年1月4日)
ネット依存
一週間Wi-Fiのない生活を過ごし、幸か不幸かいかにネット依存であったかを痛感することになった。すべてのファイルはクラウドに保存しているため家でネットなしで仕事はほぼ不可能。一週間の4G接続で契約の容量はもはや残っていない。引越しで必要な買い物もネット検索もままならない。業者とやり取りのWhatsAppの利用すら躊躇する。ネット経由でテレビなどエンタメ系はもちろん使えないので、エンタメはDVDやCDくらいに限られる。仕事も生活も、特にコロナを経て、ネット接続がかなりのボトルネックになる。普段あまり意識しないが大きなリスクである。(2022年12月21日)
Wi-Fiなし生活
キャンパス内での引越しにもかかわらずトラブルが山積みで、一週間たっても日常生活を取り戻せていない。大学内の住宅は通常LAN接続ができるようになっているのだが、引越し先のネットワーク接続に問題があり、いまだにネット接続もできていない。引越し当日:ネット接続が出ないことを確認。Day1:朝、教員住宅オフィスに問題を報告、修理を依頼する。その後1日連絡なし。Day2:教員住宅オフィスの担当者から、ネット接続に関しては大学のITオフィスに"ServiceNow”という大学の報告システム経由で問題報告するよう連絡があり、指示通り"ServiceNow”を通じてITオフィスに修理依頼をする。ITオフィスから連絡があり、LANポートからケーブルを抜いて15分以上待ってから再度LANポートにケーブルを接続するよう、これまで何度もやったことを再度試すように指示を受け、指示どおり試すも当然接続ならず。当日のシフトは終わりなので翌日朝、家に来ると言われ終了。"ServiceNow”ではなく"ServiceTomorrow"だった。Day3:朝9時30分にITオフィスから人が来てテストをした結果、家のLANポートと家の外にあるスイッチャーをつなぐケーブルが物理的に破損しており、ITオフィスでは対応できないので教員住宅オフィスに修理を依頼するよう言われ、振出しに戻る。教員住宅オフィスにその旨を報告する。その後連絡なし。Day4:教員住宅オフィスの担当者から、早く対応するよう業者に連絡したと報告を受けるも、その後連絡なし。Day5:教員住宅オフィスの担当者から、教員住宅オフィスから"ServiceNow”を通じて対応依頼を出す必要があったので、"ServiceNow”で修理依頼を出したというスクショが送られてくるが、その後連絡なし。また"ServiceNow”ならず。Day6:連絡なし。もう一週間になると思うと、海外生活はこういうトラブルが多かったかも、とあきらめ始める。(2022年12月21日)
引越し
これまで6年間住んでいたキャンパス内教員住宅の前にMRTの駅が建設されるため立ち退きになり、多くの教員が他の教員住宅に引越しすることになった。我が家も引越しを終えたが、これから建設工事が本格化するところから、目の前ですでに本格的に工事をしているところに引っ越したため、結果として騒音に悩まされることには変わりないようだ。それにしてもすごいスピードで森林が更地になり、人工物が作られていく。(2022年12月17日)
清掃
キャンパス内で引越しをするため、住宅清掃サービスの利用を検討していたが、多くの業者では清掃サービスの中に“手で床の掃除をしない”と明記している。業務用ポリッシャーで表面の汚れをこそぎ取ってくれるのだろうか。(2022年12月10日)
保険販売とAI
最近はAIやテキスト分析を使った研究が保険の分野でも多くみられるようになったが、最近の論文で中国の医療保険の市場においてAIによる需要予測がどのように代理店販売に影響するか、またリスクプールにどのような差が出るかについての研究がある。具体的には、wechatにポストされた保険代理店の広告へのアクセスの情報をもとに保険会社がAIを用いて需要スコアを算出し、その追加情報を代理店に教えることで保険販売にどのような変化があるかを調べたものである。結果はあまり目新しさはなかったが、保険料収入の増加(単価に変化はなし)と若干の損害率の悪化があるといった内容だった。残念ながら保険の場合、需要とリスクの間には正の関係が強いので、この研究のようにざっくりとした保険需要を予測すると、予測精度が高いほど損害率も悪化する。保険会社がもう少し真面目にAIを活用するのであれば、保険需要予測以外にリスク回避度予測をして、リスク回避度で予測される保険需要スコアをもとに代理店に保険販売をしてもらった方がよい。損害率悪化を多少軽減できるだろう。SNS広告へのアクセス情報だけでリスク回避度を推定するのは難しいかもしれないが面白そうだ。(2022年11月22日)
EEZ
日本人は第二次大戦後自力で国を守ることを放棄し、EEZにミサイルを落とされてももはやなんとも思わないらしい。誰かが被害を受けても仕方ないということなのか。実際に、北朝鮮に拉致された人を取り返しにいかないのだから、わかった話かもしれないが、なんとも寂しい話だ。打たれたら打ち返す韓国の方がまだまともだ。(2022年11月19日)
電動バス
キャンパス内を循環するバスの電動バスへの切り替えが始まっており、先日初めて電動バスに乗車した。シンガポールでは自動車を運転しないこともあり、電動自動車には乗ったことはなかったのだが、電動バスもガソリン車にはない加速力がある。環境さえ整えば、ハイブリットを含めてガソリン車に乗る人は限られてくるだろう。(2022年11月18日)
シャインマスカット戦争
シンガポールのスーパーでは中国産、韓国産、日本産のシャインマスカットが熾烈な三つ巴の価格競争をしている。今日地元のスーパーで中国産が5.95ドル、韓国産が12ドルで売られており、同じモールの中にあるドンキでは日本産シャインマスカットが15.9ドルで販売されていた。最近日本産もかなり割安なものが出てきている。(2022年11月13日)
CPI
米国の10月CPIが市場の予想を下回ったことを受けて、株式市場は大きく上昇した。SP500が今日ここまで4.5%近く上げているので、かなりの上昇率だ。とは言っても、昨年10月の0.9%が抜けて、今年の10月のCPI変化率0.4%が入ったことで、年間のCPI上昇率が0.5%低下しただけのことである。算数的にいうとCPIの一階微分は正(上昇している)だが2階微分が負(上昇率が減少している)になりつつあるといった状況である。今後のFRBがどのように出てくるのか興味深い。(2022年11月11日)
送迎バス
2ヶ月ほど前に送迎バスに取り残されて園児が死亡するという痛ましい事件が起きた際に、送迎バスのチェックなどの現場に高齢者を使わない方がいいと説明したが、昨日園児が送迎バスに取り残された事件も、全ての点検を怠ったのは高齢者の運転手だった。繰り返しになるが、高齢者を運転手や園児の点検に使うのはやめた方が良い。夏でなければ大事に至ることはないかもしれないが、また必ず同様の事件が起きる。(2022年11月10日)
発展途上国
ドル高やEUの利上げで投資資金が発展途上国から引き上げられており、今後の経済運営が心配だ。アジアでは本来的には優等生であるはずのベトナムも、通貨安と株安がひどい。インドネシアやフィリピンも同様で、今後さらなるドル高が続き、世界経済が低迷すれば、東南アジアで通貨危機が起きてもおかしくはない。もちろん中国が影を潜めているということも大きく響いているだろう。リーマンショックにしてもコロナにしても、先進国の経済政策のコストを払わされるのは発展途上国になる。(2022年11月9日)
消費
GDPが過去25年伸びなかったという奇跡的な経験を日本はしてきたわけだが、ではなぜ消費が伸びなかったのか。もちろん投資も重要ではあるが、消費があっての生産や投資である。人口動態の影響も大きい。過去25年間で、65歳以上の高齢者の割合がほぼ倍になり現在人口の3割を占める。一方で18歳までの子供の人口は約3割ほど減少して、人口の15%ほどまで下がっている。労働人口に近いであろう19歳から65歳までの人口の割合が10%ほど減少している。物価が変わらないのであれば、この人口構成では消費が伸びるわけはない。高齢者は長寿リスクにさらされる一方で年金受給額は減り介護保険料は上がる。消費額を増やせる状況ではない。政治が高齢者の意向に偏りすぎているという声もあるが、年金生活に入ってからさらされる長寿リスクと介護リスクによる不確実性がどれほど消費にブレーキをかけるかよく理解する必要がある。(2022年11月5日)
一人当たりのGDP
人口あたりの稼ぐ力を示す、「一人当たりGDP」の上位10カ国が下の順位になった年がある。日本は5位で上位5カ国の人口や制度などを考えると日本は主要国の中で世界一の一人当たりGDPであったと言っても過言でない。これは1995年の順位であり、1991−1995年の5年間は5位を維持していた。ただ、その後25年間で他の主要国が一人当たりGDPを倍増させるなかで、日本だけが成長をせず、なんと2021年の数字が1995年を下回っており、31位に順位を下げている。代わりに、2021年にはシンガポールが6位となっているが、ちなみに一人当たりGDPは日本のほぼ倍である。(2022年11月3日)
Country GDP per capita (USD)
Monaco 101,867
Liechtenstein 78,632
Luxembourg 51,032
Switzerland 50,156
Japan 44,198
Denmark 35,351
Norway 34,876
Bermuda 33,990
Germany 31,658
Austria 30,326
(Retrieved from https://data.worldbank.org/indicator/NY.GDP.MKTP.CD)
円安
日銀の金融政策は間違っていない。円高がいいかのような風潮の中、失われた30年を取り戻し、所得向上の流れを作るのにはいい機会だ。物価高と言っても、他国に比べるとインフレは低く抑えられている。ただ今の日本企業の多くに所得を大幅に引き上げることができるのか。おそらくできないだろう。円安の恩恵を受けて利益を出しているにも関わらず文句を言っている訳のわからない経営者などでは利益の再配分など期待できない。内部留保に回るのがオチだろうが、少なくとも円安還元セールくらいしたらどうだろうか。結果として金融緩和策は所得格差を大きくするだけで、経済的弱者には恩恵はないだろう。金融政策にミクロがついてきていない。そういう印象がある。人々の心に明るい光を灯す政治が必要だし、経営者はコスト削減だけでなく価値を生む経営を目指してほしい。(2022年11月2日)
老後の資金がありません
というタイトルの面白い映画があるが、今の40−50代の世代はあまり笑えない人も多かったのではないか。実際に日本のみならず平均寿命は毎年約0.3年ほど伸びてきていると言われ、現実問題としてなかなか死ねない、生存リスクが重要な社会問題になっている。長生きすることが素晴らしいと言えるためには経済的に不自由がないという前提がある。少子高齢化という歪な社会構造になり、少ない若者で多くの高齢者を支えることのできない社会では、老後という概念を変えて高齢者が経済的に自立するほかはない。政府は所得向上を目指すのもいいが、75歳くらいまでは雇用が維持される仕組みを早々に作った方が良い。月10万でもいい、体の動くうちはできるだけ働いてもらうのだ。国連の高齢者の定義は65歳以上のようだが、今は70代でも十分元気な人が多いので、高齢化先進国の日本は前期高齢者などの呼称を全て廃止して、75歳以上のみを高齢者と再定義するといい。そうすれば多少気分も若返るかもしれない。(2022年10月31日)
アメリカ景気の底堅さ
最近の米国企業の業績や株価の全体的な上昇からアメリカ経済の底堅さが語られているが、本当にそうだろうか。アマゾンやGoogleの業績悪化は景気悪化を示すのに十分だし、住宅受注も低下している。アップルのような価格弾力性の低い商品を売れる企業は、エネルギーなど以外にはそれほど多くない。SP500やダウなどのインデックスの上昇は、むしろ中国や新興国からの激しい資金流出やヨーロッパの景気後退によって行き場のなくなった資金が比較的安全と思われる大型米国銘柄に流れていることが大きな要因になっているのではないか。実際に米国株でもハイテク株は上がってきていないし、米国株式市場が経済の底堅さを示しているとは思えない。所得格差で経済も二極化しているのかもしれない。(2022年10月30日)
日産
昔は良かったとは思わない。ただ、日本がバブルで輝いていた頃の日産はいい車をよく出した。S13シルビアや180SX、R32GTRは今見てもカッコいい、古さを感じさせないデザインだ。スバルのレガシー・ツーリングワゴン、マツダのRX-7などもいいデザインだった。もちろん最近はスポーツカーを作らなくなったということもあるだろうが、そういったデザインセンスをいったいどこに置いてきてしまったのだろうか。(2022年10月29日)
新幹線
新幹線はなんとも魅力的で、特に高速で駅を通過する新幹線はいつまでも見てられる。しかし、残念なことに実際に東海道・山陽新幹線などに乗車するとあまり気持ちが上がらない。在来線特急の方がまだいい。なぜか。新幹線の内装があまりにチープでなんの高揚感も与えないからだ。本当に不思議なのだが、あれだけ美しいフォルムの車両を作るのに、どうしたらあれだけつまらない内装を作り出せるのだろうか。コクヨにデザインを発注しているのではないかと思うような事務所的な内装ではないか。イタリアのイタロを見習えとは言わないがイタリアのフレッチャロッサ、フランスのTGV、ドイツのICEを多少参考にでもしたらどうか。どれをとっても旅行気分を感じさせてくれる内装だ。事務的でチープな新幹線の内装には乗客に上質なひと時を提供しようという気は見当たらない。昔みたいに車内にちょっとしたカフェを復活させて美味しいコーヒー提供したらどうか。おそらく、ひたすら大量高速輸送を目指して速度を上げるために軽量化し、防火性に優れ、耐久性の高い内装を提供しているのだろう。時代遅れだ。その点は日本の自動車メーカーの内装と同じで、なぜ300−400万もする自動車の内装に見るからに安っぽいプラスチックを使うことができるのか。そこにメーカーとしてのプライドや理念はないのか。新幹線にしても自動車にしても顧客は本当にスペックだけを求めているのか。データ重視の今だからこそ、数値化できない心に触れる空間や時間を提供してほしい。(2022年10月28日)
家電も何も
シンガポールで家電量販店の店内を眺めてみると日本の製品がほとんど見当たらない。ソニーが若干テレビやカメラなどで存在感はあるものの、パナソニックその他のメーカーはどこいったのか。まあいらないものばかり作っていれば無くなるのも当然だが残念だ。確かに自分の身の回りだけ見ても、パソコン数台に、タブレット、携帯、イヤホンなどは全て海外メーカー。情報は全てアメリカに握られている。我が家ではついに炊飯器もつまらない日本製をやめた。それでも一昔前なら、パソコンや携帯など身の回りにあるものは全て日本のメーカーだったような気がするのだが。(2022年10月27日)
ラーメン
10年前であればシンガポールで15ドルもするような日本のラーメンを食べるのは若い人か多少お金に余裕のあるような人だったはずだが、今となっては大学の近くにあるモールで庶民が15ドルもするラーメンを平日に普通に食べている。今の為替レートで換算するのは少しフェアでないが、ラーメン一杯1500円のラーメンをモールの食堂街に入っている店舗で食べているのである。日本のモールで1500円のラーメンはなかなか売れないだろうと考えると、シンガポールの個人所得の上昇を実感する。ちなみにシンガポールのQBハウスは少し前に12ドルから14ドルに値上がりした。数年前まで10ドルだったはずだが、値上げ幅がハンパない。(2022年10月21日)
シンガポール第四四半期
第四四半期のシンガポール経済はどうだろうか。定点観測中の工場の鋼材置き場の棚がざっと6割くらい埋まっているようだ。第三四半期よりも少し改善基調にあるようにも思えるがどうだろうか。(2022年10月13日)
経済再生
今ひとつ新しい資本主義とやらの形が見えてこないが、財政出動型の資本主義であることは間違いないらしい。政治家が財政出動で経済を活性化できるとでも思っているらしいが勘違いも甚だしい。しかもインフレだというのに旅行割だの給付金だのお金をばら撒いて、物価高を加速させている。それで所得が上がるとでも思っているのだろうか。個人的にはとにかく地方の活用が先決だと考える。若い世代が地方大学で優良な教育を受けられ、そのまま地方の豊かな環境の中で仕事や生活ができれば、少子化や貧困の問題など多くの社会問題も改善に向かうはずだ。第一歩として地方の国立大学に予算と自由を与え、国際的なレベルの大学に育て、地元に産業を作る。なんとかできないものだろうか。(2022年10月6日)
窓掃除
一般化できるかは定かでないが、シンガポールでは建物の窓掃除をあまりしない。外から窓掃除をすることを前提に建物を設計していないということもある。以前不動産屋に聞いたところ、スコールが汚れを落としてくれるから窓掃除はいらないといっていた。その程度の認識だ。では壁の汚れはどうするか?壁掃除も同様に掃除はせずに、定期的にペンキを塗って済ます。素人的に善意で解釈すると、断熱効果の維持もあるのではないかと。。。もちろん、多額の管理費を支払っている高級物件はその限りではないだろう。極端な例かもしれないが、自分のオフィスの窓はすくなくとも自分が占有するようになって以降、12年間は一切窓掃除をしていない。自分が来た時にすでにかなり汚れていたので、20年くらいは窓掃除をしていないのではないかと推測する。ということで、外が見えずらいくらい窓が汚い。(2022年9月29日)
国葬
安倍元首相の国葬については世論が割れたということだが、個人的には海外に長いこと住んでいるため彼の政治家としての功罪の詳細はあまり多くを知らない。ただ、彼が北朝鮮拉致被害者の救出に尽力したという一点で、個人的には近年の首相の中でも最も評価をしている。もちろん小泉元首相や中山恭子氏もそれに含まれる。日本国民の生命が隣国によって脅かされているその事実に正面から取り組んだ数少ない政治家の一人だ。今日本の子供が拉致されても救出に取り組む政治家がどれだけいるのだろうか。(2022年9月28日)
投資
どうもYouTubeの広告の影響なのか、オプションの話をすると学生が興味を示す。YouTube広告ではこんなに多くの人がオプション投資で儲けました、といった感じで宣伝している。確かにオプションは保険的な役割をするので、今のようなボラティリティの大きい市場ではリスク回避的な個人投資家にとってはとても耳障りがいいし、買いのポジションを取っている限り大損はしない。宣伝主にとっても都合のいい商品だ。ただオプションは安くない。今のS&P500 の価格とほぼ同じ行使価格の12月満了のアメリカン・コールオプションが約200ドル、プットは170ドルくらいで若干安くなっている。コールなら12月までに3900ドル以上、プットなら3500ドルくらいまで下がらなければ元手を回収できない。逆に4100ドル以上に戻れば100%のリターンが得られる。まあ、少額投資で小遣い稼ぎにはいいかもしれないが、決してリスクの小さい投資ではないのでご注意を。(2022年9月24日)
お米
インフレで生活費が大変だとか、低所得者に給付金を配布するとか、色々とあるようだが、日本人なら米を食べたらどうだろうか。米の消費量は長期的に低下し、価格もかなりお手頃になっている。米はインフレの強い味方である。食用米として捌けないので、補助金を使うなどして飼料用米に転換したり、他の農作物に作付転換を推進している状況だ。日本の主食がそんな状況の中、高い値段で輸入した小麦粉で作ったパンや麺をわざわざ食べなければならない理由もないような気がするが。(2022年9月22日)
ノート
今学期改めて認識したが、授業中に紙のノートを使っている学生が一人もいない。ほとんどの学生がタブレットかノートパソコンを使用しており、タブレットでペンを使用してメモを取るのが多数派だ。学生もその親にとっても経済的な負担はかなりだろう。携帯、タブレット、パソコンの全てが必要になる。タブレットがあればパソコンは最悪なくてもなんとかなりそうだが、本格的に作業をするにはタブレットは不便だ。それぞれを5年くらいのサイクルで買い換えるとなると、そこそこの費用になる。(2022年9月15日)
一生懸命であること
幼稚園の園児が送迎バスの中に閉じ込められて亡くなるという痛ましい事件が起きたが、リスク管理という観点からすると、高齢者を細かな仕事を求められる”現場”に従事されることは基本的には避けた方がよい。もちろん高齢者でも真面目に仕事に取り組まれる人は多いのだが、物事に対する実直さやひたむきさ、一生懸命取り組む姿勢といったものは残念ながら経験を積むことで低下していく。あくまでも一般論だが、単純に無駄を省くことを学んでしまうのだ。経験値が大きいため、管理者や経営者としての立場で仕事をするには適していることも多いが、特に一度現場を離れた人は細かい配慮が求められる現場には向かない。今回の事件も以前起きた同様の事件も高齢者が現場にいた時に起きている。個人的な経験だが、仕事柄飛行機を頻繁に利用するため、非常口やギャレーに近い、前に座席の無い席に座ることが多く、CAさんが近くを出入りする。ある時、小さな紙切れがギャレーの外に落ちたのだが、そこを初めに通った指導役のような年齢の高いCAさんはそのゴミに目をやったものの、ゴミを拾わず素通りし、ゴミは次に通った若いCAさんがしゃがんで拾っていった。些細なことではあるが、CAさんのような厳しい訓練を受けた人たちですらそういった一生懸命さを失うのだから、自分も気をつけないといけないと思ったものだ。(2022年9月12日)
利上げ
高インフレを抑え込むためにFRBもECBも利上げを続けているが、日銀は今のところ静観している。そもそもデフレからの脱却が目下の目標だったのだからやむを得ないし、日本のインフレが利上げを必要をとしているのかわからない。ただ、今後も欧米での利上げが予想される中で、日本は利上げをできる経済状況ではないということを暗にメッセージとして発信していることの負の側面も大きい。お金を市場に供給し、財政出動するのもいいが、国民が将来に希望を感じることができなければ消費行動は変わらないし、経済政策の効果は限られる。国民の心にメッセージを伝えられる政治家が必要だ。(2022年9月11日)
ランボルギーニでカンティーン
キャンパスのカンティーン(食堂)の前の駐車場で新しいランボルギーニに何回か遭遇した。たまたま外から食事に来ていたのか学生なのか知らないが、まあおそらく1億円くらいはする車を駆って、5ドルもしないようなキャンパスの食堂で食事とは、そのアンバランスさがたまらない。他にも最近キャンパスでコガネムシ色に塗装(ラッピング)されたランボもよく見る。(2022年9月9日)
シャインマスカット
綺麗に箱詰めされた中国産シャインマスカット一房の値段がついに特売で5ドルを切った。4.6ドルでスーパーで売っていたので、シャインマスカット一房が日本円で400円程度である。日本の本場のそれと比べると味は落ちるが、この値段ならやむをえないし、中国産に抵抗のない人にとっては十分値打ち品である。明治屋で50ドルくらいする日本産には庶民には手が出ない。思い返すとシンガポールのスーパーで最初に出てきたシャインマスカットは韓国産であったが、もはや韓国産さえも中国産には勝ち目がないのか、あまり店頭で見なくなったような気がする。(2022年9月4日)
GDPR
EUでGDPR(General Data Protection Regulation)が2018年に法制化されて以降、EU居住者を対象として事業を行う会社などはデータの取り扱いやITセキュリティーの対応が進められている。すでにGDPR違反の罰則金がかなりの額になっていることも報告されており、またAmazonやGoogleといった米企業のデータの取り扱いについて訴訟を起こされている。その他の国々でもEUのGDPRに相当するような規制が導入されており、企業に対する要求水準がかなり上がってきている。これまでサイバーアタックによる情報漏洩などで大企業が破綻に追い込まれることはほとんどなかった。ただ、今後は高額な罰則金などもあり、情報漏洩で企業の存続が危ぶまれる可能性もでてくる。(2022年9月3日)
マスク
ほぼ3年間になるだろうか、マスク着用での外出が当たり前の生活習慣になってしまったが、今週から公共交通機関と医療機関を除いてはマスク着用義務がなくなった。先日の首相の演説でも子供たちは他人の表情から学ぶ必要があると言っていたが、確かにこの3年間の教育上の影響は大きいかもしれない。ただ習慣というのは怖いもので、今週の授業でも学生はほとんどマスクを着用しているし、モールでもほとんど、おそらくローカルの95%くらいはまだマスクをしている。まだみんな周りの様子見といったところか。(2022年8月31日)
雇用統計
アメリカでは来月2日にリリースされる8月の雇用統計が市場では注目されているようだ。確かに直近3ヶ月は雇用者数は減少傾向にあるが、失業率といった雇用統計や実体経済自体の大きな変化は考えづらい。FRBはインフレ退治のために金利の引き上げをするのだろうが、インフレという名目バブルが弾けると投資家が感じ始めたときに企業による大量解雇と業績悪化が顕著に現れると見ている。膨れ上がった金融市場から実体経済への影響が懸念される。(2022年8月30日)
ナショナルデーラリー
シンガポールでは8月9日がマレーシアからの独立記念日に当たるナショナルデーで、盛大な祝賀イベントが行われる。イベントが終わり少しするとナショナルデーラリーといって首相が国民向けに演説を行う。今年のリー首相の演説ではコロナへの対応や、地政学的な問題、性的マイノリティーに対するローカルな問題や大きな国家プロジェクトなどについての話があった。シンガポールが今後も成長していくにはこうでなければならないという方向性がきちんと示されていることに、国民は納得感があるのではないか。もしかしたら聞き逃したかもしれないが、シンガポールが直面する最大の問題点でありながら、首相が明確にどうしたらよいかわからないと示したのは少子化の問題だ。政府は今後も国民に手頃な公営住宅を提供することはできるが、そこに住む人の作り方がわからないという説明だった。観客が笑うポイントになってしまったが、かなり深刻な問題だ。少子化はシンガポールに限った問題ではないのだが、シンガポール政府が今後も強いリーダーシップを維持していくためには他のどの国よりも重大な問題になる。ただシンガポールだからできることも多い。アイデア次第だ。(2022年8月22日)
ハングリーゴースト
シンガポールにもお盆のようなものがあり、親縁のない霊が戻ってくると言われ、7−8月に道端や会社の前などいろいろなところにお供えがしている。お菓子や果物、ケーキみたいなものから札束に見せたものまで様々なものがお供えしてあり、蝋燭も小さなものから1メートル以上あるようなものまである。ただ、歩行者的に厄介なのは、お供えした燃えるものを道端で大々的に燃やす風習のため、至る所で煙たくなっている。時期的にはようやく終わった感じがするが、季節を感じられるのは悪くない。旺旺来 (2022年8月18日)
安倍叩き
安倍元首相が亡くなって間がないにもかかわらず、朝日新聞の入選川柳に安倍叩きの句が並んでいたということが話題になり、その中で「忖度は どこまで続くあの世まで」という句が特選句に選ばれた。この朝日川柳の選者は朝日新聞の元論説委員らしい。よく解釈すれば、選者は日本社会に蔓延する忖度に警鐘を鳴らそうとしているのではないか。翻って、権力のある者としてこの選者も朝日新聞の社員たちが忖度をしているかもしれない。安倍さんもおそらくそうであったように、自分のことは意外にわからないものだ。ミイラ取りがミイラにならないように。
では一句「安倍叩き 死して今なお 打ち出の小槌」お粗末さまでした。(2022年8月13日)
シンガポール経済
シンガポールの今年のGDP成長率の見通しが若干引き下げられた。インフレを考えると実質成長率はネガティブになるのだろう。インフレも問題だが、足元の経済活動には確かに不安な部分が多い。NTUはシンガポール西、ジュロン・ウエストという地区に位置し、南側には工業地帯が広がっている。いくつか定点観測している場所があるのだが、本来工事現場にレンタルされる発電機が在庫で山積みになっていたり、工場で材料となる鋼材を置く棚が半分以上空になってたり、工業地帯の食堂の客がかなり少ないのをみると、中小企業の景気はまだかなり悪いのではという印象を受ける。(2022年8月12日)
株高
ここ数週間で米国株は買い戻されているようで、価格が上昇傾向にある。もちろん、一時のS&P500が$4600−$4700といったレベルにまでは戻ってきていないが、予想される景気後退とは逆行した値動きになっている。さほどの景気後退にはならないと見ているのか。高インフレに対処するためのFRBの利上げに対して、今のところ失業率は3.5%程度と低水準にとどまっている。雇用者数もコロナ前に戻ったようだ。今後どれだけ失業率が上昇するのか。強いドルもGDPには悪影響を及ぼすし、GDPギャップが多少広がっているのも気になるところではある。景気後退は米国に限った話ではない。中国の不動産不況とゼロコロナ政策がどの程度世界経済に影響を与えるのか。ウクライナの戦況もまだ落ち着いてはいない。原油価格が多少下落傾向にあるのはインフレにはいいが、ストックは景気後退を示すシグナルになっているかもしれない。今のところ今後の市場動向に確信を持てる要素があまりないように思えるが、株式市場では強気な投資家が多いようだ。(2022年8月5日)
ペロシ氏訪台
ペロシ米下院議長が台湾を訪問し台湾問題も新たなフェイズに突入した。今回のペロシ氏の訪台に際して、多くの人がFlightradar24でペロシ氏の登場する米軍機を追跡していたようだが、個人的にもFlightradar24はよく活用している。ただ飛行経路を追跡しているだけだと実際に空でどのようなことが起きているかは分かりづらいので、Flightradar24と航空管制の交信を合わせて使うととても楽しい。航空管制は専門用語で交信をするため最初は意味がわからないが、少し勉強すればわかるようになる。運が良ければ緊急着陸する便などに遭遇することもある。(2022年8月4日)
シンガポールMRT
少し前に日本のメディアでシンガポールのMRTは日本の電車と違い時刻表がないと紹介されていた。その通りで、おそらくシンガポールだけではなく多くの都市交通システムでは利用者には時刻表は公表されていない。駅に時刻表というものは存在せず、駅では次の電車の到着までの時間が表示される。その記事は日本の時刻表に否定的で、定時運行はあまり価値がないといったことが書かれていた。確かに、電車の運行本数が多く、数分おきに電車が到着するのであれば利用者的に時刻表はあまり必要でない。ただ、定時運行の厳しさによるものだろうが、日本の電車、例えば山手線とシンガポールのMRTでは決定的に時間の詰めて行き方が異なる。少し電車でGO!的な話になるが、シンガポールのMRTでは駅に到着する際、車両を停止位置の数メートル前で一旦惰性をほぼ完全に殺し、ゆっくりと停止位置に寄せていく。一方で、山手線など日本の都市近郊の路線では、車両をブレーキで停止位置に一発で止める。そうすることで、おそらく一駅当たり3−5秒くらい時間短縮させている。日本の電車に慣れていると、シンガポールのゆるい運転はそこそこストレスになる。また、シンガポールでは駅間の所要時間が緩めに設定されているせいか、加速、惰行、減速の一連の流れが中途半端になりがちだ。緩みのない定時運行は目に見えずらいプロの高いレベルでの仕事で支えられているのだが、その仕事に価値がないと思われるのは残念だ。おそらく、寿司職人の修行なんて意味がないといったコスパ的な発想と同じだろう。プロの仕事によって快適性や速達性が維持されていることを高く評価したい。(2022年8月1日)
左利き党
LGBTQの性的マイノリティや人種、性別をはじめ様々な分野で、多様性が求められるようになって久しい。しかし左利きの地位向上を求める声は聞こえてこない。NHKを倒すことを目的とした政党がある時代なら、左利きの地位向上を目的とした政党があってもよさそうなものだ。人口の10%程度は左利きであるとも言われ、巨大な支持基盤になりうる。左利きの不便さは右利きの人は全く気づかないだろうし、左利きも日常の中で克服していることも多いのだが、その不便さは数知れず。例えば、鉄道の駅の自動改札のタッチパネルは当然右側にしかない。エレベーターの操作板も右側がほとんどである。習字など左利きでまともに書けるはずもなく、鋏も左利き用は少ない上に、高い。陸上、自転車、自動車競技のトラックが全て反時計回りになっているのは右利き用に作られているからだ。ドアノブも右利きが回しやすいようにできている。カトラリーも左利きにはナイフを右で使うのは難しい。アメリカの教室によくあるデスク付きの椅子にいたっては、左利き用は数少ないためほとんどの場合、肘を浮かせたままノートを取ることになる。その経済損失は如何ばかりか。(2022年7月29日)
SDGs
先日今治市内にある今治タオルの専門店でお土産に買い物をいくつかしたところ、レジで「袋はご利用ですか、有料になります」と言われて少し困惑した。日常のスーパーでの買い物でレジ袋をデフォルトでなくすというのは理解できる。しかし、今治タオル専門店で一枚2000円程するフェイスタオルの購入にその問いは違和感を感じた。実際、デパートで買い物をしたときに買い物袋が必要かどうかを自分が知る限りでは聞かれたことはない。あるいは、そういった高級タオルの利用が日常的なことになってきたということなのか。それとも意識高い系をいく戦略なのか。(2022年7月26日)
陰性証明
日本への入国にはいまだにPCRによる陰性証明が義務付けられている。それでもシンガポール在住の者にとって日本への渡航は出発前のPCRがで陰性であればよく、最悪陽性になったとしても旅行の計画を変更するかキャンセルすればいい。日本からシンガポールに入国する際の陰性証明は必要ないので、シンガポールに帰国できないというリスクはない。逆に日本から海外旅行に出るのは現状ではかなりバーが高いのではないか。万が一、海外で日本への帰国前のPCRで陽性になったらどうするのか。1週間くらいでは陰性にならないことも多いので、そういった可能性を考えると一般の人が海外旅行をできる環境にはなっていない。外国人観光客のコロナ後のリベンジ消費をフル活用するには円安の今がいいタイミングがと思うのだが。日本人は海外からの人の受け入れにあまり積極的ではないので仕方ないが、いつまで制限をつけるのだろうか。(2022年6月9日)
LRT
シンガポールにはライト・レール・トランジットという通常のMRTよりかなり小さい2両編成くらいの輸送システムがバスとともにローカルの輸送手段として導入されている。輸送システムとしては目新しいものではないのだが、道路に沿って路線が引かれており、かなりの急カーブや急勾配がある。車両は全自動運転で前方が窓になっているため、窓を陣取ると前方の眺望が楽しめるのだが、が浅草花やしきのジェットコースターくらいのスリルが味わえるためか、子供たちには人気のようだ。(2022年6月8日)
靴底
如何せんサンプル数が少ないので一般化できるのかは定かではないが、シンガポールで住むようになってから靴のソールが剥がれる経験を何度かしている。剥がれた面を見てみると、ソールは靴本体に接着剤で貼り付けらてれいるだけである。日本でもアメリカでもソールがパカッと取れる経験などしたことなどなかったが、ここで何度か起きているということは熱帯の気候では接着剤やゴム、プラスチックといったものの劣化が激しいのではないかと考えている。靴底は外出時に突然とれるので本当に困る。先日はMRTイーシュン駅からすこし離れたところを歩いていたところ靴底が突然剥がれので、最寄りのバス停からバスに乗って帰宅することになったのだが、バス停が近くにあったので、人目が多少気になる程度のことで済んだ。数年前にスイスに持参したトレッキングシューズのソールがトレッキングの下山中に取れのには本当に困った。もちろん替えの靴など持っていないので、そこから千メートル以上ソールを失ったつるつるの靴で下山することになり、足元に気を使いながらの下山に大変な思いをした。案内が4時間のコースに6時間を要した。それも夏の簡単なコースだったからいいようなもので、残雪でもあれば危険である。逆に頻繁に起きるのであれば、靴を履くときにソールが剥がれそうかどうかチェックするだろうが、事故はいつも忘れたことにやってくる。ちなみに試しに接着剤を購入してソールの貼り付けを試みたが、きれいに貼り付けることは素人には困難だ。(2022年5月26日)
スンゲイ・テンガ・ロッジ
シンガポールの建設現場などの労働力は主にインドやバングラディシュからの外国人労働者に完全に依存しており、シンガポールの発展を陰ながら支えているのは彼らの労働力である。彼らの多くは外国人労働者向けの宿泊施設に滞在しており、毎日その宿泊施設と現場をトラックの荷台に乗って行き来する。10人以上を荷台に乗せたトラックが高速道路を走っているのを見ると違和感も感じる。NTUのキャンパスの脇、ジャラン・バハールから172番のMRTチョア・チュウ・カン駅行きのバスに乗ると5分もすると左側にテンガ空軍基地の滑走路そして正門前を通り、その横にあるスンゲイ・テンガ・ロッジという約16000人を収容できるシンガポール最大の外国人労働者向けの宿泊施設に着く。小さな町と言っていいくらいの規模の施設である。日曜日だと休日の労働者が多いのか、多くの人がバスに乗り込んで来て、チョア・チュウ・カン駅周辺のバス停で下車していく。おそらくちょっとした買い物にでもいくのであろう。(2022年5月24日)
シンガポール散策
シンガポールは赤道直下に位置するため太陽光が強く、慣れない人が日中に外を長時間散策すると熱射病になる。特に観光などで来ると欲張って日中外を歩きがちだが、太陽光と湿度で気分が悪くなるので注意が必要だ。シンガポールで屋外を散策するのであれば、朝6時半くらいから9時までと夕方4時半過ぎから日没の7時くらいまでがおすすめの時間帯になる。特に朝はかなり気温が下がるので太陽が上がってくる8時半くらいまでは快適に外を歩き回ることができる。朝の散策であれば、朝6時半くらいからイースト・コーストを東側に歩くと海岸の椰子の木越しの夜明けが素敵だ。6時も過ぎると多くの人がジョギングやサイクリングを楽しんでいる。散歩後にジョー・チャット・ロードのカフェで朝食というのもいいかもしれない。あまり知られていないが、ECP(イースト・コースト・パークウェイ)にかかるベンジャミン・シアーズ・ブリッジは歩道橋にもなっていて、ベイ・イースト側にかかる階段を上がればマリーナ・ベイ側に渡ることができる。歩道からはF1サーキットのピット越しの観覧車やマリナ・ベイ・サンズを眺めることができる。ただし、日を遮るものが何もないのとかなり高い歩道なので高所恐怖症の人には向かない。夕方も西陽がきついのでできれば東側に向けて散策するコースをとった方が良い。(2022年5月22日)
ジョー・チャット・ロード
シンガポールのジョー・チャット・ロードといえば、有名なベトナム料理店やベトナム系のナイトクラブのような店が多く立ち並び栄えていた地区ではあったが、コロナを経て大きく様変わりした。以前はジョー・チャット・ロードのカフェと言えば岡田珈琲店くらいしかなかったが、今はおしゃれなカフェや食料品などを売るショップが多く並んでいる。イースト・コースト・ロード周辺のコンドミニアムは西洋人が多く住んでいるのでそういった店の需要が多いのかもしれないが、ここ数年の変容ぶりは目を見張るものがある。コロナで住民がわざわざ中心地まで出て行かなくなったのか。あくまでも推測だが、ナイトクラブのような店の経営はコロナで立ち行かなくなり、そういった店舗がオシャレな店に入れ替わったようなのかもしれない。話は変わるが、ジョー・チャット・ロードにあるベトナム料理店は間違いないが、パヤレバ駅に近いリトル・ベトナムもいい。特にメニューの36Aはくずきりのような食感のユニークな麺が楽しめる。(2022年5月11日)
期末試験
おそらくNTUだけでなくシンガポールの大学全般に共通することも多いだろうと思うが、大学の期末試験の厳格さは日米の大学の比ではない。NTUでは教員は試験問題と模範解答を試験日の約2ヶ月前には準備し大学側に提出することになっており、提出した試験問題・模範解答ともに同僚の二重のチェックを受ける。そこで問題や解答に誤りがあれば問題点が指摘され、もちろん指摘は英語自体にも及ぶ。試験問題が過去問や教科書の問題と同じないことなど20くらいの項目をチェックしてサインをする。ちなみに一科目の期末試験の提出から評価の提出までにおそらく10以上の書類にサインをする必要がある。同僚のチェックを経て修正された試験問題と解答は大学事務へ送られ、それ以降教員は試験問題と解答を変更することはできない。もし試験当日以降に試験問題や解答を訂正することになれば、大学側に報告書を提出することになる。教員によって提出された期末試験は事務が管理し、プリントされ試験会場に持ち込まれる。アメリカの大学のように試験当日に試験問題を印刷しているようなことはあり得ない。試験会場では100人くらいの会場に4人くらいの教員で試験監督をすることになる。基本的には日本の大学入試が毎学期行われるような厳格さである。慣れないと違和感があるのだが、試験時間中にトイレに行く学生には一人試験官がトイレの外までついていくルールになっている。さすがにトイレの中にまでは入らない。もし学生が携帯を試験中に所持していることが分かれば処分の対象になる。と、これらはほんの一部で、他にもさまざまな規則と罰則が存在する。それだけ学生にとっては大学の成績が重要だということだろう。そんなNTUでも時代の流れもあり、少なくともビジネススクールでは期末試験を行う授業科目が少なくなってきている。試験で知識を問うよりも授業やプロジェクトといった学期中の評価で成績の全てが決まる方向に進んでおり。近い将来、一部の基礎科目を除けば期末試験は無くなるのではないか。(2022年5月7日)
マリナ・イースト
マリナ・イーストはガーデンズ・バイ・ザ・ベイの対岸で開発が進められている地区である。これまで、アクセスの悪さ、また特に何もないということもあって、どちらかというとタンジョン・ルー地区の一部のような感じで、せいぜい近くの住人がジョギングをする程度のところであった。個人的にはマリナ・イースト側から見るマリナ・ベイの景色が好きで、以前は人がほとんどいないということもあってお気に入りの場所であった。しかし開発が進み、さらに人が少なかったことが逆にコロナ禍でサイクリングやジョギングを楽しむ人を増やしてしまったようだ。もはやのんびり散歩をするような場所ではなくなった。(2022年5月6日)
駅直結HDB
最近ではシンガポールの公営団地HDBも多様化してきており、新しいものではコンドミニアムに近い質の物件も増えてきいて、中には値段が1億円程度のものもある。ちなみにシンガポールは一部の物件を除けばコンドミニアムや公営住宅は一般的に99年リース契約になっており、1億円払っても所有権があるわけではない。そんな多様化するHDBだが、中でもMRTの駅直結というユニークな公営団地がおそらくシンガポールで唯一、南北線のマーシリングの駅北口に存在する。MRT駅前のHDBというのはシンガポールにはいくらでもあるのだが、マーシリングのその物件は駅の改札からの距離がハンパない。自動改札を出て団地まで10歩ほど、時間なら間違いなく10秒以内だ。かなり年季の入ったHDBだが、MRT駅の改札からの距離ならシンガポールNo.1物件にちがいない。(2022年5月4日)
キャメロン・バイ・ザ・ウォーター
MRT駅スタジアム側からだと小さな吊り橋でゲイラン川を渡った左側にキャメロン・バイ・ザ・ウォーターというコンドミニアムがある。2001年の完成ということなので、シンガポールのコンドミニアム的には古い部類に入るが、3ベッドルームで4億円位の市場価格になっている。このコンドはシンガポール的には高級という部類のものでもないのだが、そのロケーションを活かしたなかなかお目にかかれない(知らないだけで、もしかしたら結構あるのかもしれないが)特徴を有している。建物の正面はゲイラン川に面しており、全面窓のリビングには広いテラスがある。それは普通なのだが、このコンドミニアムのスゴいところはリビングの背面も抜けており、小さめのテラスがついている。背面側はマリナ・イーストに面しており、その先にはシンガポール海峡が望める。このコンドに入ったことはないのだが、外から見てもリビングの背面に外光が確認でき、まるでリビングが空洞のように見えるのだ。リビングの正面と背面の両面にテラスがあり景色を楽しめるというのはなんとも贅沢だ。(2022年5月2日)
屋外マスク着用
コロナでさまざまな行動制限がはじまってもう2年以上になるが、シンガポールはそれら制限を解除する方向で進めている。屋外でのマスク着用義務は少し前になくなったが、先日日本の記事でシンガポールでは屋外でマスクを着用している人はほとんどいないと伝えていた。シンガポール在住の日本人からの報告のようだが、その日本人と自分の見るシンガポールにはかなり格差があるようだ。推測でしかないが、おそらくその報告をされた日本人は西洋人の多く住むリバーバレー周辺その他の地域の状況を伝えたのだろう。自分が見るローカルなシンガポールではいまだにほとんどの人が屋外でもマスクを着用している。シンガポールといっても広い。(2022年4月26日)
クランジ戦争墓地
MRT南北線クランジ駅からウッドランズ・ロードをゴーカート場側に進み、交差点を直進してすぐに右に入ると数分でクランジ戦争墓地に到着する。シンガポール政府が管理する第二次大戦で亡くなった人の墓地・記念碑になっており2万4千人ほどが祀られている。全体が見晴らしの良い小高い丘の上にあり、一面芝生が張られ綺麗に整備されている。簡単に言えば、第二次大戦における大日本帝国陸軍のシンガポール攻撃・占領によって犠牲になった人たちのための慰霊碑ということになる。クランジは山下奉文司令官率いる大日本帝国陸軍第25軍がマレー半島からシンガポールに上陸し、市街地への進軍の足掛かりになった要所である。ウッドランズ・ロードを南下し、パシル・パンジャンを通りアッパー・ブキティマ・ロードを直進すると1942年2月に日本軍に接収され司令部が置かれた旧フォード工場につながる。1942年2月15日イギリスはそこで日本に無条件降伏し、日本によるシンガポールの約3年半にわたる支配がはじまった。(2022年4月25日)
紅しょうが
開店してもう1年以上たつが、シンガポールのすき家を何度か利用させていただいている。最近すこし間があいてしまったが、久しぶりに訪れたところ、牛丼のショウガが寿司の甘いガリから元の紅しょうがに戻っていた。以前、日本人の責任者の方がローカルは甘いガリを好むので紅しょうからガリにかえたと言っておられたが、元に戻したということは日本人の文句が多かったからなのか。個人的には大歓迎である。インフレでどこも値段が上がっていく中、すき家は値段を変えずに頑張っている。(2022年4月21日)
シンガポールCOE
シンガポールでは自動車の登録台数が国によって管理されており、新車を購入するためには自動車を10年間所有するための権利(COE) を購入する必要がある。この権利の価格はオークションによって決まるので、景気が良ければ高くなり、リーマンショック直後のような経済状況では暴落する。排気量など車両によって必要な権利が異なるのだが、どの車両でも購入できる権利の価格が先週99,999シンガポールドル(今のレートで約900万円)になり、その高値がニュースになっていた。大まかに言えば、このCOE価格でトヨタのカローラ的な車両本体価格200万円程度の新車をシンガポールで購入すると、その他諸費用を含めた合計購入費用は1300-1400万円くらいになるという計算になる。もちろん、車両本体価格の高い車種を購入すれば、COE以外の税金等が跳ね上がるので、車両価格が1000円程度のBMWでも購入すれば、合計購入費用は3000万円くらいになってしまう。そんな日本では考えられない自動車購入費用でも、シンガポールのはずれにあるNTUのキャンパスでされベントレーやフェラーリなどはよく走っているのを見かける。ではなぜ今この時期にCOEが高値をつけているのか、シンガポール人的な解釈では2年以上家族で海外旅行に行けていないので、その費用が数百万円節約できている、株高で資産価値が上がっているからといった答えが返ってきた。もちろんシンガポール人と言ってもどちらかといえば裕福な人たちの意見である。普通の日本人的にはシンガポールで自動車を購入するハードルは金銭的な面はもちろんのこと、日本でのコストと比較してしまうことによる心理的なハードルもかなり高い。(2022年4月13日)
戦争と倫理
戦争犯罪という言葉を最近よく耳にする。ウクライナでは一般市民が殺害されているということで、ロシアの残虐行為が報じられているのだが、一体いつから戦争犯罪という言葉がつかわれるようになったのか。アメリカの湾岸戦争や、シリアの内戦、イスラエルのパレスチアとの紛争、ミャンマー軍の殺害行為など市民が犠牲となった戦争や内戦はこれまでいくつもあったが、なぜ今回のロシアの軍事行為は戦争犯罪という扱いを受けて、他の軍事行動はそのような扱いを受けないのか。なぜ今回は国連が動くのか。(2022年4月9日)
スリランカ
スリランカ人の親しい同僚がいたこともあり、またスリランカ旅行がとても楽しかったこともあってスリランカには個人的にとても親近感を覚えている。信仰のおかげか人々は和やかで笑顔がある数少ない民族だ。日本人としてはジャヤワルダナ元大統領への敬意もある。そんなスリランカだが、最近では不安定な国内情勢を伝えるニュースが多いのが残念だ。とは言っても現代のスリランカは内戦の連続で、停戦で国内が落ち着いたのはほんの10年前くらいの話であり、政治・経済ともに難しい問題に直面していた以前に戻ってしまっているようだ。コロナ前まではアユルベーダ、香辛料や雑貨、またシギリアロックなどの景勝地を求めて多くの外国人観光客が訪れた。シンガポールからの定番の旅行先であったし、日本から訪れた人も多いはずだ。自分達がスリランカを訪れたときは、シギリアの少し北にあるハバラナという街を拠点にしてローカルバスを使って有名な寺院などを散策した。爆走するボロボロのバスのクラクションに追いやられて野生の象の群れが走って逃げる様などをいまどき見れるのはスリランカくらいだろう。コロナはもちろん決定打となったが、外国人観光客に関しては、2019年4月に首都コロンボなどで起きた連続爆破テロの影響は大きかったのではないか。自分達がコロンボで宿泊したホテルの朝食をとっていたレストランもテロで爆破され、多くの人が亡くなった。タイミングが違えばと考えると恐ろしい。そういう難しい国だということをすっかり忘れてしまうくらい、訪れると本当に美しい国だ。(2022年4月5日)
コロナ対策緩和
シンガポールでは29日以降外のでマスク着用義務がなくなった。いつからマスクの着用義務が始まったかもはや定かではないが、マスクをせずに外を歩くというのはほぼ2年ぶりということになる。とはいえ、今のところまだ外でもマスクを着用している人が多いのを見ると、習慣を変えるにも少し時間がかかるのかもしれない。感染者数は相変わらず高めに推移しているが、政府は4回目のワクチン接種も高齢者以外は基本的に考えていないようだ。ようやく日本への行き来も隔離なしになったので、このままコロナ終息に向かってほしい。(2022年3月31日)
シンガポールグルメ
シンガポールにも国を代表するグルメがいくつかある。チリクラブやチキンライス、ニョニャ料理といったものは旅行者にもよく知られている。もちろんローカルで一般的によく知られるものはいくつもあるのだが、生活をしていると納得感の高いローカル料理というのは年を追うごとに変わっていく。納得感が高いというのはローカルフードレベルの価格で質が高いと”感じられる”いう意味である。個人的にはシンガポールに来て日が浅いうちはチキンライスや肉骨茶をよくいただいた。ある程度の年を経てローカルのエビ麺を好んで食べたこともある。海老の出汁が効いていてハズレがない。そんな中、シンガポール生活12年の今現在のお気に入りはロティ(コイン)プラタ(インド料理)、チキンカレーのナシレマ(マレーシア料理)、そして腸粉(中華)となる。どれもクセになる。ローカルフードなので質と値段は店によって大きな違いがある。特に、プラタと腸粉は手作りで作りたてをいただくという前提なのでお店は限定されるが、ランキングに載っているようなお店まで足を運べば納得のいくものが安くいただける。チキンカレーのナシレマはカレーやチリの辛味やピクルスの酸味や甘味などが相まってお皿全体の味の調和がとても楽しい。日本のカレーを福神漬けやらっきょと食べる感覚に近いかもしれない。もっと国際的に認知されてもいい気がする。(2022年3月29日)
守るか守らないか
日本の国会でウクライナのゼレンスキー大統領のスピーチがあったが、国を守ろうとして戦う大統領の言葉が国を守ることを放棄している国会議員や国民にどのように伝わったのだろう。ロシアは日本の経済制裁を口実に北方領土の軍備拡大に進むだろう。いざという時には北海道に侵攻してくるための軍備になる。中国のミサイルは日本に向いている。迎撃など不可能だろう。北朝鮮のミサイルは日本のEEZ内に落ちている。被害がないからよいといった感じで処理されているが、自分で守らないと決めているのだから犠牲が出ても仕方がない。これだけならず者国家に囲まれた国も珍しいのではないか。(2022年3月27日)
サステイナビリティー
シンガポールは良くも悪くも官の主導のもとに産学官が三位一体になって、様々なプロジェクトを進めていく。例えばサステイナビリティーといった分野に関しても、官が産と練った学部教育で取り組む12項目にわたるスキルのリストがあり、我々の教える授業の中でそれらの項目をどのようにカバーするか検討する。我々の学部に関して言えば、サステイナビリティー投資やリスク管理、カーボン市場と入ったトピックを関連する授業で抑えていく。とても興味深いトピックである。(2021年3月26日)
情報
昨今のメディアの報道を見ると、少なくとも西側の国々では自分達の得ている情報が正しくそれが真実だと考えているようだ。逆にロシアでは情報統制がされ、真実が伝えられていないと一般的には思われているようである。だがそれは本当に正しいのだろうか?なにをもって自分達の得ている情報が正しいと信じることができるのか。ロシアではメディアの情報統制がされているようであるが、それはロシアに限ったことではない。程度の差こそあれ、どこの国でも行っている。アメリカの大統領選挙などはまさに情報統制の結果だったのではないか。ロシアはウクライナに侵攻した以上、悪であることには間違いない。ただ善と悪のあまりに単純な構図が作られるなか、正義を語るものも甚だ疑わしい。(2022年3月23日)
NFTやってますか?
今年もオープンキャンパスはバーチャルで行われ、職員がZoomの小部屋に張り付いて訪問者の質問に答えるといった単純な形式で行われた。こちらは参加者は将来の学生だと信じて対応しているが、参加者は名前を伏せて、カメラをオフにしているので実際のところはわからない。以前に他大学からの偵察が入ってくると聞いたことがある。今回も一日質問に対応していたのだが、声を出して質問されることはほとんどなく、チャットで入った質問にこちらが声で答えるといったやりとりがほとんどだった。そんななか、「授業でNFTはカバーしてますか?」という質問が入った。本当に学生か?と一瞬頭によぎったが、そういう時代かもしれないと気持ちを切り替えて対応した。「もちろんいくつかの授業で教えていますよ。」(2022年3月10日)
水際対策
最近の日本のコロナ対策に関するアンケート調査では、水際対策を厳しくすることを望むといった回答がいまだに多いようだ。今まで自粛で我慢してきたことからくる不満が、外からウイルスを持ち込まれることに対する拒否反応のようなものになっているのかも知れない。外から眺めている日本人として、日本にいる日本人と感覚的にかなり大きなズレを感じるところだ。参考までに、シンガポール政府の水際対策はかなり緩くなっているのだが、少し前の政府の説明はさすがだなと思った。1−2週間前にはシンガポールは1日2万人くらいの新規感染者があり、人口が日本の20分の1ほどの国としては大変な感染者数である。そのときの政府は、海外から持ち込まれる感染リスクより国内の感染リスクの方が高いので、入国を制限する水際対策よりも海外からの入国者が国内でコロナに感染することで生じる医療コストを最小限にする対策に注力するといっていた。それは一通りやるべきことをやってきたから言えることではあるのだが、説明はもっともである。(2022年3月8日)
キエフ侵攻
今後ロシアがどういったタイミングで首都キエフ市内に侵攻するか、それともしないで停戦になるのかはわからないが、キエフ侵攻は世界中の多くの人々の反応を大きく変えることが予想される。理由は比較的単純だ。首都キエフには世界中の大都市と共通する景観、施設、建物、公共交通機関、店舗などがあるために、多くの人口を占める世界中の大都市の住人にとって共感できる情報が多い。例えば、破壊されたマクドナルドの店舗の映像などを見れば、自分の近所にあるマクドナルドが破壊される状況を容易に想像させ、より多くの人がその被害や恐怖を共有することになる。よって、キエフ市内への侵攻や破壊はそれまでとは比較にならない大きな反応を生み出すことになる。(2022年3月6日)
議論
ロシアが核の使用をほのめかす事態に至って、日本ではアメリカとの核共有を議論したらどうかということが議論になっているようだが、議論自体を許さないという主張もあるようだ。それは間違っている。何はさておき、活発な議論をすることから民主主義が始まる。議論して決定した結果が間違っていれば、改めればいい。ロシアのウクライナへの侵略にしても、中国のさまざまな暴挙にしても、遡ってアメリカの日本への核使用にしても、日本の第二次大戦でのさまざまな醜態についても、人間が一般人を大量に死に追いやる行為は人間の尊厳に基づく議論がないから起きたのであって、議論が悪いわけではない。核共有がいけないということであれば、議論でその正当性を示せば良い。議論を否定する国会議員がいることが一番怖い。(2022年3月5日)
日本人墓地
シンガポールには日本人墓地公園がある。最寄りの駅はMRTコバン駅だが徒歩だとかなり遠いので、セラングーン駅から103番のバスが便利だ。最寄りのバス停からは徒歩5分くらいで墓地に着くが、日中歩くと十分汗をかく距離だ。日本人墓地といっても最近の人のお墓というよりは、明治以降にシンガポールに入植して日本人社会の立ち上げに貢献した人たちのお墓がメインになっており、主要なお墓には簡単な説明がある。もちろん素晴らしい貢献をした人も多いのだろうが、説明を読んでいると、今の価値観ではちょっと反社的な商売で財を成した感じの人もいる。そんな中、墓地の一角に比較的小さい墓石が集まっているところがあり、説明を読むとからゆき(唐行き)さん達が眠るお墓のようだ。特に明治以降、日本は娼婦の輸出を行なって外貨を稼いでいた。九州でも特に長崎、天草や島原あたりから中国、東南アジアへ出稼ぎ娼婦を多く送り込んでおり、シンガポールもその一拠点であった。日本で身売りされた娘たちは船底に押し込められ、赤道直下まで連れてこられた。港に上がると値付けされて娼館に送り込まれたのだ。病気などで帰国できずに亡くなった人も多かっただろう。そんな昔ではない、ほんの百年前の話である。山崎朋子さんの『サンダカン8番娼館』にその詳細が記されている。当時日本人娼館が立ち並んでいた場所は今のブギス・ジャンクションになる。モールの中になってしまっているが、マレー・ストリートだったか、今でもその通り名の表記は残っている。先人にふれ、いろいろ考えさせられるが、有難いことに墓地はきちんと手入れがされており、きれいな花がたくさん咲いている。(2022年3月2日)
ウクライナ
ウクライナへロシア軍が侵入し、いよいよ首都キエフでの戦闘ということになってきているようであるが、結局当事者以外は他人事といった感じか。ロシアが悪いとか、そういったことはわからない。ただ、何らかしらの大義名分のために多くの一般人が犠牲になるような戦闘行為は正当化し難い。日本は戦争を放棄する国であるならば、そういう側面でもう少ししっかりとしたプレゼンスを示してもいいのではないか。例えば、外相を首都に送って現地で停戦のために奔走するとかメッセージを世界中に送るとか、他の国々と歩調を合わせるだけではない日本しかできないやり方で日本という国を再定義してほしいものだ。そういった行動がひいては日本の安全保障につながると思うのだが、どうだろうか。(2022年2月27日)
オンライン受講
早稲田でオンラインの授業を同時再生した学生の評価が「不可」になったという報道があった。厳格な受講管理をしているという点では評価できるのではないか。また、大学側の授業をきちんと受けてほしいという姿勢がはっきりしているのも悪くはない。しかし、同時に問題点もある。大量の学生が真面目に受講していないということは、おそらく受講をしなくても単位が取れる仕組みになっているはずだ。授業に価値を見出してもらえるようにする必要があるかもしれない。逆にNTUでは授業の受講自体は全く評価の対象にならない。その代わり、授業への参加が必ず評価の対象になる。つまり、授業に出席しても黙っていると全く評価されず、欠席と同じである。そういった評価方法が取れるように講義も変えてもいいかもしれない。(2022年2月24日)
1割陽性
講義のひとつでは学生の1割がコロナ陽性で欠席となっている。NTUではもはやコロナを特別扱いすることをしていないので、1割程度の欠席であれば問題はないのだが、今度も増加するようだと問題だ。若い学生は陽性になっても症状は通常の風邪とほぼ変わらないようだが、こちらは注意をしないといけない。(2022年2月15日)
みずほ銀行
なぜみずほ銀行が不祥事を繰り返すのか、なぜ根本的な問題解決ができないのか。合併からの旧態依然とした体質、リスク管理、ガバナンスなどなど表面的な説明はいくつもあれど、不祥事を繰り返す本質的な要因はそういったところにはない。みずほ銀行経営陣は株主、預金者、規制当局の無策無能を本質的に見抜いており、経営陣は自己の利得のために最適な対応をしているに過ぎない。では銀行にとって最も大きなコストとは何かといえば破綻である。株主、預金者、規制当局が破綻を現実的な選択肢として持って行動すれば、銀行の対応は変わる。みずほ銀行の不祥事の解説は銀行を批判するものがほとんどだが、本当に目を覚さなければならないのは銀行ではなく、その関係者である。銀行は預金者が一斉に預金引き出しに走ればいとも簡単に破綻することは歴史が教えてくれる。ただ、もしかしたらシステム障害で預金を引き出せなくなるかもしれず、意外に難敵かもしれないし、時すでに遅しかもしれない。(2022年2月8日)
強風に翻弄
旧正月も終わりこれから天気も雨季から乾季へ変わる時期なのだが、この時期の季節的なことだったのか、最近は夕方風が強く、まだ雨になることも多い。風は体感温度を下げるというメリットはあるものの、テニスのプレイが強風に翻弄される。完全に実力不足である。(2022年2月7日)
陽性者
シンガポールでも新規感染者数が増えており、ついに自分の授業の学生からもコロナ陽性者が出始めた。他にも体調不良を理由に授業を欠席する学生も増えているので、キャンパス内にも結構感染者がいるのではないかと思う。授業は今のところ通常通りに行っているが、これから感染者があまりに増えてくるようだとハイブリッドに戻す方向に方針転換があるかもしれない。(2022年2月6日)
腸粉
シンガポールのホーカーフードであまり良かったと思う食べ物はない。結局値段相応かなというのがいつもの感想だ。フードコートなどで写真を見て良さそうだと思って注文をすると、とんでもない誇大広告に騙され、写真と全く違うものが出てくることもある。しかし、Chef Wei HK Cheong Funという店は目の前で作ってくれる食感抜群の腸粉がいただけるのでとてもおすすめだ。しかもプリプリ食感のエビ入り腸粉が5ドルでいただける。シンガポール内で5店舗くらいあるようだが、あまり便利なところにはないので、もっと店舗が増えると嬉しい。(2022年1月30日)
ガソリン価格
日本ではガソリン価格の高騰を石油元売りに対する補助金を支給することでガソリン価格抑制を狙っているようだが、その効果の程は定かでないし、そもそも卸売価格を抑えるインセンティブをなくす。補助金の枠もわずかである。そもそも48.6円の揮発油税を減税すればいいだけの話だ。ガソリン需要は価格弾力性が低いので消費者の減税メリットは大きい。減税をせずに非効率な補助金をばら撒くのもいい加減にしたらどうだろうか。(2022年1月27日)
金融引き締め
シンガポール金融庁はインフレ対策として金融引き締めを行った。といっても金利の引き上げではなく、為替市場への介入を通じてシンガポールドルの引き上げを行った。そもそもシンガポールはコロナ前も実質的にかなり高いインフレを実感していたので、コロナ後にあまり大きなインフレを感じることはなかった。たとえば、高級レストランのおまかせメニューが数年前には200ドルだったのが300ドルになっていたり、そういった変化が普通にみられていたので、コロナ後のインフレはニュースで聞くことはあっても生活として実感がなかった。今回のシンガポールドルの引き上げもさほど大規模なものではないが、金融庁が引き締めに入るということ自体が経済がそれなりに回り出したという確信からくるものだといいが。(2022年1月26日)
天ぷらまきの、天丼てんや
最近天ぷらまきのという店の展開がシンガポールで始まり、サンテックとビボシティーに出店している。シンガポールでは天丼がローカルにとても受けているのだが、少し上質な天ぷらがいただけるということで、ランチで天丼をいただいてみた。特選天丼が25ドル、日本円で2000円くらいで、エビx3、キス、アナゴ、イカの他に野菜の天ぷらがつく。一方で、てんやでは海鮮天丼が13ドルと約半額で、エビx1、キス、アナゴの他に野菜の天ぷらとなる。全体的にまきのの特選天丼が上質ではある。特にエビは圧倒的に美味しい。エビのぷりぷり食感が楽しめる。一方で、穴子はてんやの方がボリュームがある。よって、海老の天ぷらが食べたいときはまきの、アナゴが食べたいときはてんやという選択になる。(2022年1月17日)
東大前での無差別襲撃
最近この手の事件が多い。死にたい、そして他人を巻き込む。一種の流行のようなものになってしまっている。個々の事件にはそれぞれの背景があるのだろうが、もしかすると背景には人に寄り添えない社会があるのかもしれない。最近NHKのプロフェッショナルなどを見ていても、”寄り添う”が頻繁にキーワードになっているのが気になる。そもそも寄り添える社会人が多ければ、寄り添うことがフューチャーされることはない。つまり、人を思いやる余裕がない社会をを写しているのかもしれない。ものづくりも同じで、モノの性能ばかりを気にして、消費者が本当に欲しいと思えるようなモノづくりができない会社組織になっているのではないか。(2022年1月16日)
ジョコビッチ
オーストラリア政府はジョコビッチのビザを再度取り消したと報道されている。オーストラリア政府の決定が法的にどうなのかはわからないが、今回だけではなくジョコビッチの行動に関しては残念に思うことが多い。ジョコビッチが歴史上最も有能なテニス選手の一人であることは間違いない。しかし彼はその成績に値するだけの社会的・経済的評価を受けていない。おそらくこれまでしでかしてきた彼の行動によるところが大きい。その辺がナダルやフェデラーといった人として尊敬される選手とは異なる。もしかしたらジョコビッチは彼自身の経済的な評価に興味がないのかもしれないが、評判リスクの管理ができておらず、その損失は大きい。彼の周りに彼のイメージをコントロールできる関係者がいれば莫大な価値を手にすることができると思うと残念だし、それはテニス界全体の大きな損失でもある。(2022年1月14日)
2度の正月
シンガポールは華僑社会なので、正式な正月は旧正月(春節)になる。今年はシンガポールでは2月1日から2日が旧正月の祝日になり昨年よりも10日ほど早い。かといってカレンダーの年末年始も多くの人が休暇を取るので、結果的には年に2度正月をお祝いするような感じになる。しかも今年は旧正月が早いのでなんとなく1月中は正月気分が続く。(2022年1月12日)
自由
コロナの報道を見ていても米国はNYやLAといったリベラルな大都市しか映像として流れてこないので、マスクを着けている人もそれなりにいるのかなと思いきや、どうも話を聞くと南部の州などではマスクなどほとんど着用していないところも多いらしい。もちろん南部でも差はあるのだろうが、アラバマでは大学の授業はマスク着用無し、マスクなんかしていいると変わり者になるらしい。依然として多くの人が亡くなっているが、もうエンデミック扱いのようだ。米国とは逆に、メディアでは中国の厳格なゼロコロナ政策が報道される。しかし中国にいる同僚に話を聞くと、彼のいる上海の大学では教員のおそらく2割くらいしかワクチン接種をしていないという。ワクチンに対する不信感などもあるのだろうが、ワクチンを受けない自由があり、それで普通の社会生活が送れることは驚きだ。メディアは中国にそういった自由があることは報道しない。(2022年1月9日)
オミクロン
シンガポールでは2回目のワクチン接種から9ヶ月以上ブースター接種をしないと接種完了のステイタスを失うようだ。つまり、ブースター接種をしていないとまともな社会生活はできないようになる。なかなか素早い条件の変更だ。(2022年1月7日)
打ち納め
シンガポールでは年末年始は雨が続くのだが、今年もここ数日は天気が悪くテニスの打ち納めができないまま年越しとなってしまった。素人ながら年末はあまりにスピンをかけすぎておかしくなっていたストロークをフラットに改善できたのが収穫であった。来年はサーブの種類は増やしたい。(2021年12月31日)
査読
秋学期も終わり、ようやく研究に時間を割けると思っていると、何件もの査読依頼がやってくる。自分の論文もお世話になるので極力依頼を断らないようにしているが、今月に入って5件受けてしまい、自分の研究以外にかなり時間を費やしてしまった。もはや年末である。NTUは1月2週目から春学期が始まるので、残り時間もあまりない。(2021年12月21日)
竜巻
アメリカ中西部に住んでいると、比較的頻繁に竜巻警報のサイレンが鳴る。今回被害のあったイリノイ州とその北に位置するウィスコンシン州に住んでいたことがあるが、どちらでも年に数回は大きな警報が鳴った。個人的にできることといえば、状況確認をすることと地下に避難するくらいのことであるが、一般的に竜巻の被害は竜巻の通る場所だけになるので、正直自分が巻き込まれると思ったことはなかったし、実際に被害に遭ったことはなかった。おそらく今回被害にあった多くの人もそんな感じだったのではないか。また警報かと思って避難しなかったためにたまたま被害に遭ってしまった。そもそもアメリカの住宅は一般的に地下があり、竜巻の際は地下に避難するが、今回被害にあったロウソク工場やアマゾンの倉庫には避難用の地下は設置されていないのか。(2021年12月14日)
金融リテラシー教育
日本でも金融リテラシー教育が活発になってきているようで、金融に関する広報活動を行なっている金融広報中央委員会が作成した大学半期15コマ用の金融リテラシー講義計画と講義資料がウェブサイトで公開されている。講義計画はFP、銀行、証券、保険をカバーする内容になっており、基本的にはFPのライフプランニングを柱として、借入を含めて資産形成とリスク管理をいかにしていくかという流れになっている。既存の分野をまとめると、おそらく最もしっくりくる流れになっているのだが、如何せん古い。おそらく30年前に作っても新しい制度以外は同じ内容になっていたはずだ。いくつか問題点を指摘すると、1つはリスクの捉え方が狭い。リスクは本来FPの最初の部分で包括的に学んでおく必要があり、変化はリスクでありチャンスであるという概念をそこでしっかり抑える必要がある。その考え方が、投資意欲やレジリエンスにつながる、金融の基礎体力のようなものになる。2つ目は制度論が多過ぎる。ローンのところではクレジットカードや消費者ローンの話などが当初から出てくるが、そういった話は後回しが良い。ローンは将来の自分のキャッシュフローを銀行に利息を支払って前借りしているだけだということをはじめに説明すべきである。その価値判断をする必要性を説明する。投資に関して、大学生向けの講義であれば簡単な現在価値、債券価格や株価の計算くらいは教えて、価値の原理を知ることは重要である。投資に関しても制度論が多過ぎる。最後に、生命保険については論外。生命保険を本当に理解して欲しいという気持ちが講義資料には全く見られない。生保大手が販売したい商品の説明といった内容になっている。損害保険も似たり寄ったりで、商品パンフレットの焼き直しだ。もう少し生きた説明をして欲しいものだ。残念ながら、全体的に金融商品説明の講義計画になっており、金融リテラシー教育をする側の金融リテラシーの理想のようなものが全く感じられない。それで本当にいいんですか?そもそも金融リテラシー教育を説いている側に金融リテラシーなるものが備わっているのか疑わしいので、テストでもしてみた方が良い。(2021年12月9日)
深夜特急
沢木耕太郎『深夜特急』でも登場するタイからシンガポールへ続く鉄道は、特にマレーシアのクアラルンプールから南では椰子のプランテーションの中をゆったりと進み、今でも昔の名残を感じさせる。そのマレー鉄道は以前はシンガポールの中心にあるタンジョンパガー駅まで列車の運行をしていたが、2011年以降はシンガポール側のマレーシアとの国境であるウッドランズ 止まりになっている(現在、国境をまたぐ列車はジョホールバルとウッドランズのシャトル運行のみ)。シンガポール内に敷設されていた線路はそのほとんどが剥がされ、現在はトレールになっている。コロナもあって、今ではハイキングやサイクリングを楽しむコースとして多くの人に利用されている。MRTのヒルビュー駅からブオナビスタ駅までは約7キロほどの距離でハイキング(約1.5時間)にちょうどいい。ヒルビューからスタートするとすぐにブキティマ自然公園の西側に沿って進むため、途中でサルやオオトカゲに多く遭遇する。サルとの距離が近いため多少緊張感がある。目を合わさなければおそらく襲われることはない、と信じて歩みを進める。ビューティーワールドの高い建物が左手に過ぎるとブキティマ自然公園から離れ、少し進むと高速道路PIEの下をくぐる。その先にある、よく写真で紹介されるブキティマ通りを跨ぐ鉄橋を渡ると、昔ブキティマ駅があった場所に若干の線路や構造物が残っている。現在整備中のようだ。そこからは何もない緑の中を進むことになるが、しばらくすると左側にいくつかのおそらく数十億円するであろう豪邸群が現れる。どんな人物が住んでいるのか想像するのが楽しい。ホーランド通りの下をくぐったあたりからは周りに建物が多くなり、正面にHDB群が見えてくればブオナビスタに到着だ。ブオナビスタ駅から先はタンジョンパガー駅構内の手前まで約8キロ、歩いて1.5時間くらいのトレールが続いているのだが、途中から高速道路AYEの脇を通ることもありあまりおすすめではない。実は四半世紀ほど前にクアラルンプールからシンガポールのタンジョンパガー駅まで国際列車に乗車したことがあり、この景色も見たことがあるはずなのだが、残念ながら車内が冷蔵庫のように寒かったということ以外なにも憶えていない。(2021年12月8日)
副反応
接種のタイミングが1ヶ月ほど遅れてしまったが、先日ブースター接種を受けてきた。これまでと同じモデルナを選択した。2回の接種では時にこれといった副反応はなかったのだが、今回は接種後約6時間後くらいから関節痛のようなものが始まり、12時間後に悪寒、発熱、そして結構ひどいめまいもあった。解熱薬を服用して熱はすぐに引いたが、体のだるさは結局一日以上続いた。今まで経験からたかをくくって接種翌日のアポも入れていたのだが、結果的にキャンセル。今までで一番ひどい副反応になったが、一日寝るとすっかりよくなった。(2021年12月7日)
日の入り
シンガポールでは10−11月にかけてとても日の入りの時間が早くなる。といっても日本のように緯度の高い国とは違い、赤道直下のシンガポールでは一年を通じてせいぜい30分くらいの違いしかない。それでも10-11月にかけては午後6時50分くらいには暗くなってしまう、一年で最も日の入りの早い時期だ。最近では7時でも多少の明るさが残っており、日が長くなってきたなあと実感する。同様に5月くらいにも若干日の入りが早くなる時期があるのだが、日の入りの時間は10-11月よりもかなり遅い。なぜその違いが生まれるのかはよくわからない。そんな些細な違いを気にするのは、テニスコートの照明が7時10分くらいにならないと完全につかないので、10-11月にかけてはどうしても15分以上ボールが見えなくなる。これから日が延びてくるのでそのギャップが減ってくるのは嬉しいのだが、同時にこれから2月の旧正月くらいまでは雨季の時期になるので、テニスをできない日も増える。(2021年12月4日)
入国禁止
一時的とはいえ、オミクロン株への対策のために日本政府が日本人の帰国を禁止したことは、海外に住む日本人としては特筆に値する。少なくとも自分の知る限りでは、自国民の入国を禁止する国など聞いたことがない。ありえないことだ。要は日本人も外国人もコロナの脅威の前には同じということで、入国を禁止するのに日本人を特別扱いする必要はないという判断だったのだろう。それだけ外国人の入国を禁止することが難しいということなのかもしれない。いずれにしても、つくづく恐ろしい国だなと思う。そうやっていとも簡単に自国民を切り捨てる判断ができるところは、拉致被害者に手を差し伸べないことに通じるところを感じる。首相が邦人の帰国需要に配慮するといっているようだが、残念ながらそういう次元の低い話ではない。国としての在り方の問題だ。(2021年12月2日)
オミクロン
ニュースは変異の大きい新しいオミクロン株で溢れているが、果たしてどうなのだろう。ニュースだとオミクロン株とドイツをはじめとするヨーロッパ各国の感染増が関連しているような印象があるが、ヨーロッパの感染拡大は10月下旬からすでに始まっており、オミクロン株とはおそらく関係ない。イギリスの感染者数は増加傾向にあるので、もしかしたら変異株の影響ということも否定できないが、死亡者数の減少からすると、たとえそうだとしても変異株で重症化しやすくなるという関係は見られない。オミクロンよりも気になるのは、感染率が人口の20%を超えるチェコやスロバキアといった国で再度の感染爆発が起きていることだ。イギリスも15%を超えているにもかかわらず感染者数は減少していない。その辺は例年のインフルエンザと違い集団免疫という終わりはいまだにが見えてこない。イギリスがマスクなどの規制を入れてしまったのでデータの解釈が難しくなってしまうが、今後を占う上でイギリスの感染状況の動向は興味深い。(2021年12月1日)
最後通告
いよいよNTUでもワクチン接種についての最後通告のような様相になってきた。まずは今月末までにワクチン接種の状況報告をしなかった職員のメールアカウントを来月1日に停止するとのことだ。それでも十分致命的だが、最後通告となるのは次のルールだ。まず来年1月1日からは医学的に接種できない人やコロナから回復した人を除いて、ワクチンの接種をしていない人のキャンパスの出入りを禁止する。ただ、1月からはキャンパスでの仕事、対面授業がデフォルトになる。それができない職員は来年2月15日以降は無給休暇扱いになり、その後大学は雇用契約を解除するとしている。直接的には言っていないのだが、簡単に言えば、自分の意思でワクチン接種をしない職員はクビということだ。わかりやすくていい。シンガポールではワクチン接種をしていない人に対してすでにかなり厳しい制限が課せられており、仕事をしている人で接種しないという選択肢はもはやないような気もするが、新たな局面に入りつつある。(2021年11月30日)
生命保険新契約
生命保険会社の4-9月期決算ではコロナ前の同期に比べて新契約保険料が17%減になっているということだ。生命保険という商品は実に興味深い商品で、経済学的な考え方としては、生存し続けたときの消費や貯蓄を諦めて、死亡した時のための保険料支払いにまわせるかという意思決定になる。例えば、少しでも健康に不安を感じれば多少消費を減らしてでも家族のために生命保険に加入した方がいいかもしれないと思うかもしれないし、逆に健康に自信がある人は死亡するということに対する主観的な確率が低いので生命保険に興味を持ちづらい。基本的に生命保険を買いたいという人は少ないのだが、日本人は世界でもトップクラスの生命保険好きと言っていいほど生命保険を購入している。なぜか?答えは“掛け捨て”を嫌い貯蓄型の商品を購入するために、保険料が異常に高いからである。掛け捨てが一番割安な保険商品であるにもかかわらずだ。コロナ禍で人々の主観的な死亡確率は若干高くなっていると思われるので、生命保険会社としては本来は今がかき入れどき。営業の方が来られたら、ぜひ掛け捨て商品を検討してみるといい。(2021年11月26日)
戦略石油備蓄
バイデン政権が戦略石油備蓄の放出を発表した。今後中国や日本、インドなどと強調して国家石油備蓄を放出していくようだが、どうも原油マーケットはバイデン政権が意図した方向には今の時点では動いていない、むしろ先物価格は上昇している。備蓄の放出による供給の一時的な上昇の効果よりもOPEC+の対抗措置を見込んでいるのか。もし今回価格があまり下がらないようだと、底を見た分だけ今後の上昇幅はさらに大きくなるのではないか。また、裏でどういった合意になっているのかは定かでないが、最大の産油国であるアメリカと日本などの純粋な消費国とは石油備蓄放出の意味が違う。アメリカはいざとなれば自国で生産すれば良いが、日本はどんな価格でも買わなければならない。OPEC+に対抗して足元を見られて大損することにならなければいいが。(2021年11月24日)
判定センサー
もしかしたらあるのかもしれないが、テニスのベースラインやサイドラインの判定してくれるセンサーみたいなものを作ってくれるとありがたい。技術的に難しいものでもないと思うので、比較的安価で作れるだろうし、あればぜひ購入したい。(2021年11月24日)
外国人参政権
武蔵野市で外国人参政権が問題になったが、いい機会なので今一度日本は誰のためにあるのかを考えるのもいい。大前提として日本は日本人のためにあるのであって、外国人のためにあるわけではない。日本は“必要に応じて”外国人にとって住みやすい仕組みを整える必要はもちろんあるが、基本的なスタンスは日本人が豊かに生活するために外国人にとっても働きやすい環境を日本人が作るのであって、それについて外国人がどうこう言う話ではない。さまざまな事情によって日本国籍をとれない人も多いかと思うが、そういった人たちに何ができるかを考え実行するのは日本人の仕事であって外国人が関与することではない。日本人がその義務を放棄していることが一番の問題だ。ちなみに自分はシンガポールでシンガポールの教育に従事し、シンガポールで税金を払っているが、日本人なのでシンガポールでは参政権はない。シンガポールはシンガポール人のためにあるので当然だ。それが嫌なら外国人はシンガポールを出ていけばいい。いくつかの国で外国人に参政権を認めている国があるのかもしれないが、その多くはその外国人が国の核心的な利益と利害関係が一致する場合だろう。日本のように核心的利益が一致しない隣国から多くの人がやってくる国で外国人参政権が良い結果を生むとは思えない。日本という国はGIVENではないし、すでに多くを失っていることを忘れている人も多いのではないか。(2021年11月23日)
SDGs
下の家庭菜園の話の続きになるが、真面目に野菜作りをする人は通常高めの畝を立てる。うちも隣の区画もそうであった。残念ながら土質がかたく水捌けが悪いこともあり、畝を立てると、大雨が降った後は通路に水が溜まってしまい数日作業もできないという問題があった。まあそれも仕方がないと思うのが普通だと思っていたが、隣の区画ははなかなかの強者であった。畑全体が少し傾斜していることもあり、うちと隣の区画は隣接する区画より50センチほど高くなっていたのだが、なんとお隣さんはその隣接する低い区画との間に溝を掘って大雨の後に溜まった水を隣の区画に全て流したのだ。今回は自分が被害者ではなかったが、掘られた溝の写真を撮って管理事務所に報告し、警告を出すように依頼した。SDGsも結局自分の利益と全体の利益が一致しないとなかなか進まない。囚人のジレンマ的な均衡から社会全体の最適な均衡に完全に移行するにはもう少し時間がかかるのか。(2021年11月21日)
領地
かなり前のことになるが、米国大統領選挙で日本でも有名になったウィスコンシン州の大学に在籍していた当時、キャンパスの家族住宅の脇にある家庭菜園用の畑を借りて夏の間は野菜作りに励んでいた。畑は10メートル四方くらいに区画分けがされ、区画の四方の角に杭が打ってあり、杭の間にはロープが緩く張られていた。大学の家族寮にはアジア系が多く、我が家の畑の横も日本の隣国から来た人たちであった。ウィスコンシンに遅い春が訪れた5月に畑の雑草をとり、簡単に耕して、畝を立て終わったころ事件が起きた。いつもと何か様子が違うので確認したところ、区画を仕切っていた杭の位置が変わり、50センチほど我が家の区画にくい込んでいたのだ。前日まで畝の脇を歩けたのに、その日には畝のすぐ横まで隣人の区画になっていたのである。すぐに管理事務所に報告して領地を挽回したが、油断も隙もあったものではない。黙っていれば奪われてしまう。(2021年11月20日)
記者会見
日本の官房長官の記者会見を見ていると、もう少し公に話をできる資質を備えている人にしたほうがいいのではないかと思う。もし文書を読み上げることが記者会見であると考えているのであれば時代錯誤も甚だしいし、メッセージが伝わらない。官房長官にそういった能力がないのであれば、資質のある報道官に会見をさせた方が良い。あまり良い例ではないが、中国の強面の報道者の記者会見を考えてみるといい。話をしている内容はともかく、彼らの表情や声のトーンといったものがどれだけの情報を発信しているかということだ。話は変わるが、NBSでは“全て”の授業において少なくとも10%はプレゼンで評価されることになっている。プレゼンの内容はその一部で、声のトーンや表情、ジェスチャーといった伝える能力が重要な評価項目になっている。シンガポールの大学ではそのように伝える技術を重視している。今の官房長官ではよくてもC評価といったところだ。(2021年11月17日)
Suzuki Coffee
シンガポールの老舗Suzuki Coffeeはコーヒー豆をシンガポール航空や有名ホテルのみならず、他の国にも提供しているらしい。MRTブンレイ駅近くの工業団地の中に焙煎などを手がける拠点があり、その工場の傍でSuzuki Cafeというお店を開いており、コーヒーをいただくことができる。かなり不便、そもそも徒歩10分圏内には人は住んでいないようなところにあるので、それほどお客さんもいないかと思いきや、少なくとも昨日、日曜日は大賑わいであった。コーヒーは確かに美味しい。穴場感は満載だ。(2021年11月15日)
コングロマリット
GEや東芝、J&Jがで相次いで会社分割の計画を明らかにしており、複合企業の「コングロマリット・ディスカウント」の解消を狙っていると言われている。最近の会社分割の流れは資金調達コストやガバナンスといった外部環境の影響が大きいが、複合企業が割引につながるか割増につながるかは基本的にはその複合企業の経営者が組織全体の資本効率性を上げられるかどうかで決まる。重要な要素は経営者と外部との情報の非対称性にある。経営者は外部(市場)関係者よりも情報を多く有しており、経営者がその内部情報を活用して投資効率を上げられるのであれば、市場は複合企業を高く評価するし、様々な要因でそれができないと市場が判断すれば、複合企業は割り引かれる。複合企業の最たる例が、ウォーレン・バッフェット率いるバークシャー・ハサウェイだろう。多くの人が彼の名前や会社名を知っているが、彼の会社が保有する企業リストを知っている人はおそらく投資に関連している人くらいだろう。市場は彼の投資家としての判断、複合企業としての効率性を評価している。一方、GEや東芝といった伝統的な企業では、少なくともGEの株価上昇からは市場関係者はそういった期待はできないと判断している。(2021年11月13日)
安全保障
首相の記者会見を聞くと拉致問題と安全保障を全く別問題として捉えている感があり、とても違和感を感じる。特に現在の首相だけということではない。安全保障とは国民の生命や財産が危機に晒されないように対策を講じることであり、実際に国民の生命が脅かされている拉致問題は安全保障上の一丁目一番地のはずだ。残念なことに、日本では国民が他国に拉致され生命が脅かされても政府が力を持ってそれを救助することはしない、おそらくできないのだという結論になる。一人の国民の命すら救い出すことができないのに、国家の安全保障がどうとか大それた事を言ったところで全く説得力がない。国民も想像力が欠如している。自分の大切な子供が拉致されても何もしてくれない政府、所詮他人ごとの国民を考えてみるといい。そこに日本人であることの誇りや豊かさが生まれるとは思えない。アメリカ政府がやっていることはメチャクチャだが、アメリカ人が他国に拉致されたことがわかれば、必要があれば米軍が力で救助に行く。(2021年11月12日)
マスコミ
こちらのテレビ局からしばしば保険やリスクに関するニュースについてのインタビューの依頼をいただくが、ことごとくタイミングが合わない。というもの、こちらは研究や授業をしている間などはメールもSNSもチェックしない。論文に集中したい時などは意図的にそういったものから距離を置いて長時間自己隔離することも多い。ただ、どうもマスコミの世界は時間がタイトなようで、例えば昨日は午後2時過ぎに局のディレクターからメールがあり、午後3時に政府からリリースされる健康保険に関するニュースについて、当日午後5時と午後6時のニュース番組でインタビューできないかといった依頼が来る。残念ながら、メールをチェックした時には午後6時をとうに過ぎており、またの機会にということで終わった。マスコミとのお付き合いも難しい。(2021年11月11日)
コロナ治療費負担
来月8日以降、ワクチン接種をしない選択をした人に対して、コロナ治療にかかる治療費を全額負担させるようにするようだ。もちろんシンガポール人は現行の保険制度を活用できるので全額負担を言うことにはならないが日本の皆保険制度などと比べるとはるかに負担は大きい。数週間もICUで治療ということになれば、経済的な打撃は大きい。これまで政府が打ち出してきた政策でも十分にワクチンを接種しないという選択肢はなかったが、これは決定的な政府からのシグナルになる。(2021年11月9日)
見解を持つ
リスク管理を教える教材の一つとしてJP Morgan のプライベートバンク部門を扱うハーバードのケースをよく利用する。当部門では前回の金融危機に際してリスク管理が比較的うまく働いたという内容だが、リスク管理のエッセンスとその難しさが凝縮されており、学生と議論するにはとてもいいケース・スタディーになっている。いくつか重要なキーワードがあるのだが、その一つに当時のJPMのPB部門のリスク管理者が同僚や部下に見解を持つことを要求している。その見解が正しいかどうかが問題ではなく、自分のポジションに伴うリスクに関して常に見解を持ちアップデートすることが重要だとしている。ポートフォリオ・マネージャーが考えうる主要なリスクに関して見解を持ち、かつ何を知らないかということに関しても見解を持たなければならない。かなり大変な作業となるが、その第一歩として学生には学期前に簡単なポートフォリオを組んで、そのリスクを定期的に説明してもらっている。これは金融資産管理に限らず様々な場面で有効なスキルになる。(2021年11月8日)
サバティカル
一般的に大学教員にはサバティカルという制度があり半年もしくは一年の有給の休みが取れる。もちろんその期間は日常業務から離れて海外で共同研究をしたり、新しい分野の勉強をしたりといったことに時間を使い研究の生産性を上げるもので、遊ぶためのものではない。シンガポールは中国語が使えるということもあって、中国本土からサバティカルでこちらの大学に来ることを希望する人も多い。自分の北京大学の知り合いも来年NTUに来ることを希望しているのだが、今のところ本当に必要な訪問以外の受け入れの申請が完全に止まっている。今後そう遠くないうちに受け入れを再開すると思われるが、いつになるのかはまだ不透明だ。(2021年11月6日)
入国制限緩和
日本政府がコロナの水際対策を緩和する検討に入ったとの報道があったが、聞こえてくるのはビジネス目的の外国人の入国に対してワクチンを接種していれば待機期間を3日に短縮するということだけで、「日本人」の入国の待機期間の短縮といった話は聞こえてない。外国人がビジネス目的なら待機が短縮されて、ワクチン接種済みの日本人が帰国しても待機期間は10日のままということか。まずは日本人という順番にはならないようだ。日本経済が多くの在外邦人によっても支えられていることをお忘れなく。(2021年11日3日)
トヨタEV
トヨタがあたらしいEVブランドを発表した。来年半ばには市場に出るということだが、遅すぎる。そして何の目新しさもない。よっぽど中国EV各社のほうが面白い差別化を図っている。シンガポールは小さな自動車市場だが、購入価格が米国本土の3倍ほどにもなるテスラモデル3がよく売れている。9月の販売台数はトヨタやホンダにはまだおよばないものの、すでに三番手のヒュンダイと同じくらいらしい。そう遠くないうちに販売台数No1になるだろう。トヨタはハイブリッドで市場を牽引したが、EV市場の先駆者になれなかった、ならなかったことの損失は計り知れない。(2021年11月2日)
ANA
ANAの今年度の業績予想が黒字から一転して1000億円の赤字となった。確かに今年度の業績予想は難しかったかもしれないが、ワクチン接種の進んだ国の航空会社を見ても国際線は回復が遅いことは予想できた。また収益率の高いビジネス客もなかなか戻ってこない。今更のように従業員の削減策を打ち出してきたが、当初からもう少し弾力的な運用をしていても良かったかもしれない。ただ、そうはいっても国際線の貨物収入が好調のANA。今週のJALの業績予想が心配だ。(2021年11月1日)
ブースター接種
シンガポールでは30歳以上で2回目の接種から6ヶ月経過していれば、来週月曜からはモデルナは接種会場に行けばブースター接種できるとのことだ。ウォークインは今のところモデルナ限定の話なので、ファイザーに比べるとモデルナを選んだ人が想定よりも少なかったのかもしれない。ただ、ブースターに関してはどのタイミングで受けるのが最適なのか。足元の感染者数が多いので、すぐに受けた方がいいのか。それとも、渡航するのはおそらく来年になってからの話なので、すぐにに受けずに12月まで待ってもいいかもしれない。(2021年10月31日)
抗原検査
毎週の恒例行事になっている抗原検査では指示通り綿棒を鼻に入れて10回くらいくるくる回すのだが、如何せんくしゃみが止まらない。くしゃみくらいで文句は言えないが、もう少し楽に検査ができるとありがたい。(2021年10月28日)
地方活性化
今回の衆議院議員の選挙戦ではあまり主要なテーマになっていないが、日本の成長には地方の活性化がおそらく最も重要な課題だ。多少はコロナがその手助けをしてくれているので、ここで地方分散を一気に加速できればより早い地方の活性化が期待できる。いくつかの案が考えられる。例えば地方の旧帝大以外の国立大に、もっと多くの予算を配分して、研究と教育の両方の質を上げ、地方の大学が海外と直接強い関係を築く窓口にする。優秀な学生を地元で育てて起業につなげる。そして、地方の豊かな環境の中で生活をすることを可能にする。もちろん企業の拠点の誘致も必要だが、それも学生と研究の質が上がれば一定の役割を担える。オーストラリアのように大学教育を産業化する必要はないが、国際的に通用する大学が地方にあることの貢献は計り知れない。Okayama Universityのロゴが胸に入ったTシャツやスウェットを着ている人をシンガポールで見かける日を期待したい。 (2021年10月25日)
Sugoi Apple
こちらのスーパーでは最近Sugoi Appleという名の日本産のリンゴが売られている。“すごいリンゴ”ということで、袋にもわざわざすごいという日本語の説明までなされている。リンゴの種類はふじと王林かときの2種類で青森産と記載されている。値段も他のリンゴと変わらないので、買ってみたが残念なことに全くすごくない、どちらかというといつも購入しているリンゴよりも甘味も酸味も身の質感もどれも劣っている。日本人的には日本の生産者がすごくないものをすごいと偽ってモノを売っているのは残念だ。青森県は青森産を名乗るリンゴの品質管理をした方がいい。ブランド価値は作るのは大変だが、壊すのは簡単だ。(2021年10月24日)
抗原検査キット
毎週抗原検査をしているので、前回政府から送られてきたテストキットも終わりに近づき、大学が配布してくれたテストキットもとりあえず2回分だけだったので残りが少し心配になってきていたが、先日改めて政府から10回分の検査キットが送られてきた。これで当面困ることはないが、一回分のテストキットがネットで10ドル位で販売されているので無料でいただけるのはありがたい。(2021年10月23日)
野村とクレディ・スイス
今年3月にアルケゴスとの取引で大規模な損失が発覚した中でも、クレディ・スイスが約6000億円で最大、野村がその半分程度で2番目の損失であった。損失規模の大小の違いはあれど、クレディ・スイスは責任者の処分に加え、7月には詳細な報告書をまとめ公表した。基本的にはリスク管理が機能しておらずリスクに見合ったマージンが取れていなかったという結論だ。内容はともかく損失の総括を行なった。一方で野村はというと、待てど暮らせどそういった報告書が公表されない。約3000億の損失について総括し公表をしないということはアルケゴスとの取引による損失に関してリスク管理上の問題はなかったということ、つまり、組織的にリスクを十分認識した上での今回の損失であったということになる。HDとして十分利益が上がっているからいいように見えるかもしれないが、もし仮にアルケゴスのようなヘッジファンドとの取引でこの規模の損失が出るようなリスク管理だとすれば、米国の担当部署がかなり高いリスク・リミットを設定している。逃げ足が遅いにもかかわらずだ。野村HDはそういった会社であることを投資家は心しておいた方が良い。(2021年10月14日)
萩の月
伊勢丹スーパーで仙台銘菓の「萩の月」が売っていたが、値段が日本円で一個約400円、日本での販売価格の倍だ。おそらく日本から空輸され、ローカルの業者も絡んでいるから高くなるのは仕方ないが、いくらなんでも倍は高すぎる。とはいっても、4個入りの箱が売り切れになっていたので、買っているのがローカルか日本人か知らないがよく手が出るなと関心する。(2021年10月11日)
ツヤイソマスカット
クイズの問題にでも出てきそうな名前であるが、これはシンガポールでよく売られている中国産のシャインマスカットのカタカナ表記。お分かりの通り、ツをシに、ヤをャに、ソをンに入れ替えれば、シャインマスカット。このツヤイソマスカットというカタカナ表記を故意に使用しているのか、もしくは海外でよくありがちな間違いなのかは不明だが、もしかしたら問題にならないように意図的に変えているのかもしれない。そもそもツヤイソかシャインか違いを認識できるのは日本人くらいだから、日本っぽを出すには似たようなカタカナで十分なのかもしれない。同じスーパーで日本産のシャインマスカットが32ドル、一方の中国産ツヤイソマスカットは7.9ドル、約3分の1ほどの値段で購入できる。では味の方はどうなのか、確かにシャインマスカットらしく実はしっかりしているが、さほど甘くはない。この時期に広く出回っているアメリカ産の方が甘味は強い。結局のところ値段相応といったところだ。(2021年10月10日)
オンライン授業
シンガポールでは感染者数が急増していることもあり、今月初めから大学の授業は基本オンラインになっている。ただ、学生数に比べ使用する教室の大きい授業に関してはその例外となっている。自分のひとつの授業も50人の学生で350人収容の講義棟を使用しているため対面授業を行うことが許されているが、オンラインにしてもいい。自分としてはどちらでも構わないので学生に希望を聞いてみたところ、なんと全員が対面授業希望ということであった。状況が状況だけにオンラインを希望する学生も多いのではないかと思っていたので意外な結果だった。(2021年10月8日)
火力発電
日本では福島原発の事故によって原子力発電所がほとんど稼働なくなったため、発電がかなり火力に頼った構造になっている。2020年度の資源エネルギー庁の統計では原子力発電は全体の約4%、それに比べ火力発電所の発電割合が83%になっている。日本は石炭火力の割合も高いが、天然ガスや石油による発電に大きく依存している。よって、現在進行中の天然ガス、石油、石炭の資源高は日本の発電コストを直撃する。震災から10年が経つにもかかわらず、福井より東の原子力発電所では現在一機も稼働していない。仮に震災前のように3割くらいの電源を原子力が担っていたとすれば、今のような資源高でもある程度発電コストの上昇を抑えることができただろう。(2021年10月7日)
卒業式
今年も先週から2週間かけて卒業式が行われた。といってもすでに7月に卒業した学生の卒業式を授業が秋休みになる今週に合わせてに行ったのだ。おそらくキャンパスにいる人数を増やさないように決められた日程だろう。コロナ禍の卒業式ということで、会場の収容人数が限られるため、一回の式典の参加者は半分以下、おそらく3分の1位になっている。今日出席した式には108名の卒業生とその家族が参加していた。運営側の苦労は式典の数が2-3倍に増えるということだ。今年はなんと全部で44回の式を2週間の間に行なっている。卒業式は人生の1つの区切りになるわけだが、今年も学生は大変な時期に卒業そして社会人生活をスタートすることになる。(2021年10月2日)
陰性証明
感染者数が予想通り増加している中で、大学の感染対策も再度厳しくなってきた。今後教職員がオフィスに行くにはARTキットを使って自分でテストをし、陰性結果をタイムスタンプカメラで写真に撮り、それを24時間前までに大学に送信しておかなければならない。陰性証明は1週間有効ということで、毎週オフィスに行くのであれば週に一度検査結果を送信しなくてはならない。ワクチン接種済みでもだ。そもそも、人数の多い講義や小さな教室を使用していた授業は全て今週からオンラインに移行しているので、対面で行う授業は限られているが、授業以外でオフィスに行くこともあるので、そこそこ頻繁にテストをすることになる。検査をすること自体は結構なことだが、急にオフィスで仕事ということはもはや許されない。(2021年9月29日)
オクトーバーフェスト
ドイツの総選挙が終わり、若干左寄りな政権運営になるような報道がされている。洪水や難民問題に関連付けると説明しやすいのだろうが、実際のところはどうなのだろうか。確かに洪水や難民問題も大事だがドイツでオクトーバーフェストが2年間も中止になっていることを考えるとドイツ国民の不満が不満がくすぶっていることが想像できる。ミュンヘンには仕事で訪れることが多く、オクトーバーフェストにも参加させていただいているが、その盛り上がり方は半端ない。訪れた会場では数百人、いやもしかしたらもっと多く収容できるような大型のテントがいくつも設営されており、その中でみんながぎゅうぎゅう詰めになって座り、とにかくビールを飲み続け、ときおり大声で歌を合唱する。一見真面目であまり大声を出さなそうなドイツ人があれだけハメを外す様子は彼らの違った側面を見ているようで面白い。自分は疲れて数時間で帰宅の都に着くが、おそらく地元の人は飲み続けるのだろう。多くの人が毎年楽しみにしているオクトーバーフェストに参加できない不満が多少なりとも選挙結果にも影響しているかもしれない。(2021年9月28日)
開発と環境
NTUはシンガポールの西の果てに位置し、おそらくシンガポールの中でも最も開発の手が入っていない地域の一部であるといってもいい。明治屋や多くのデリバリーの配達対象地域から外れているような地区である。シンガポールに住んでいるほとんどの人にとっては考えられないことであろう。大学の北側が軍の演習場になっており、多くの森林が維持されていることが大きい。それが原因かどうかはわからないが、NTUのキャンパスはその外よりも多少湿度が高くより熱帯雨林的な気候に近い感じがしていた。少なくとも外からキャンパスに戻ってきたときに、その違いを感じることができていた。そんな自然豊かなNTUのキャンパスも年を追うごとに開発が進み木の伐採がかなり進んだこともあってか、最近ではこれまでより湿度が下がっている(キャンパス外と変わらない)のではないかと思うことが多い。つまり、森林による保湿力のようなものが急激に失われているのではないかと考えている。これからMRTの工事も始まるので、さらに多くの木々が伐採されていき、おそらくNTUならではのむしっとした気候もそう遠くない将来に完全になくなってしまうのではないか。ただ個人的には湿度が下がってくれること自体は大歓迎だ。(2021年9月26日)
TPP
中国や台湾のTPP加入申請のニュースがあり、今後日本がどのような判断、選択をしていくのか面白いところである。確かに日本が中国と価値観を共有できるとは思えない。経済的に依存すれば都合の悪い時に脅され、言いたいこともまともに言えなくなるのがオチであることが明らかだ。国際的な枠組みのルールを破ることなどなんとも思っていない。かといって民進党政権とて台湾と日本が全ての価値観を共有するかというとそうでもない。台湾が福島県産食品の輸入解除の協議にこのタイミングで入るというのも気になる。それから、もし台湾に行くことがあれば、空港の行先表示板をよく見てみるといい。台北から沖縄の那覇行きの飛行機はかなり頻繁に飛んでいるのだが、その行き先表示は「琉球(那覇)」となっている。明らかに日本の公式の地名表示とは異なり、本来なら「那覇」で十分なはずだし、補足が必要であれば「沖縄(那覇)」であるべきだ。日本とは尖閣の認識も含め核心的利益は一致しない。日本人の台湾評はかなりよいようだが、国際的に困難な状況の中で生きてきた台湾もしたたかな国だということも十分認識しておいた方がよい。(2021年9月25日)
シャオミ
ニュースによるとリトアニア国防相が中国製の携帯を買わないよう警告出している。その記事ではシャオミの携帯について説明しているが、中共の利益に反するチベットや台湾、民主主義に関する表現を検知、検閲できるソフトが入っており、現時点では中国語で449の表現が検閲の対象となっていて、逐次更新されているらしい。リトアニアと中国の関係を差し引いても、ありえそうな話ではある。ヨーロッパではそのソフトはオフにされているということだが、リモートでいつでもオンにできる状態のようだ。ということはアジアで購入すれば検閲がされた状態になっていると考えて間違いないだろう。今では情報の入手はもっぱら携帯というのが一般的になっており、もちろん中国だけに限らないが、情報が操作されているという認識はリテラシーとして今後ますます重要になる。このニュースも鵜呑みにしてはいけないかもしれない。(2021年9月23日)
時間帯変動運賃
JR東日本がオフピークの利用にポイントを還元するといった時間帯によって変動する運賃制度を導入し始めている。コロナによる人流変化の影響が大きいのか、ピーク時の混雑を抑えるための制度なのか、いずれにしてもこういった新しい運賃制度は今後もっと増えていくだろう。というか、利用者はもう少しJRに対して厳しい目を向けた方がよい。日本人のある種の平等に対して敏感なところが影響しているのか、料金制度は全く進化していない。ヨーロッパの鉄道など、特に優等列車では時間ごとに料金が全く違う。出発時間が1時間違えば、倍半分違うことさえある。また速達性によってもかなり値段が異なってくる。利便性の高い時間の列車の料金は高く、早く目的地に到着できる列車の料金は高い。当然のことだが、日本の鉄道の料金はそういった柔軟性が欠けている。根本的にはどういった意味での平等を重視するのかという問題である。(2021年9月20日)
45歳定年制
サントリーの社長が先日会合の中で45歳定年制という考え方を示したことが話題になった。要は会社に入社すると社員は歳を追うごとに学ばなくなるため、DXなどで転換が急がれる社会の中では使い物にならない中高年社員が多いといったところだろう。しかし、そのことは裏を返すと社員が日々の仕事の中で新しいことを学ばなければついていけないような機動力のある経営ができていないということにもなるのではないか。その経営能力の欠如を社員側に押し付けているようにも見えてしまう。みずほ銀行のシステム障害や三菱電機の不正検査問題など、そもそも優秀な社員がたわいもない業務に忙殺されてはいないのか。経営者は社員を切ることではなく社員の能力を引き出すような経営を考えてほしい。(2021年9月19日)
9.11
20年前に9.11が起きた当時は米国のイリノイ大学にいたが、朝が遅かったこともあって日本からの知らせで事件を知ることになった。イリノイ大学はシカゴから車で2時間ほど南に下ったトウモロコシ畑しかないようなイリノイ州の田舎、アーバナ市とシャンペーン市にまたがっている。昼過ぎくらいだったろうか、大学内で校内アナウンスが入り、イリノイ大学が狙われる理由が見当たらないといったことを言っていた。確かに、と納得した記憶がある。そんな田舎町にあることもあり、授業は通常通り行われたような気もするが、記憶は定かではない。同じイリノイ州でもシカゴにはシアーズタワー(今では名前が変わっているようだが)というWTCよりも高いビルがあったため、かなり警戒レベルが上がっていたが、それもシカゴの中心地の話。アメリカはとてつもなく広い。(2021年9月13日)
断熱
シンガポールは赤道直下にあるため年中気温は高く毎日日中は30度を超える。一方でHDBやコンドミニアムなどの居住用建築物は鉄筋コンクリート造が普通だ。となると日中の強い太陽光で熱せられたコンクリートで夜も室内が暑いかというとそう感じることはない。風が入らないと冷房が必要かもしれないが、窓を開けて通気ができれば冷房はおそらくいらない。きちんとした断熱がなされているのだろう。逆にいうと、有名建築家が建てそうなコンクリート打ちっぱなしの建造物がシンガポールであまり見かけないのはその辺りに理由があるのかもしれない。(2021年9月11日)
新規感染者急増
シンガポールではここ数週間で新規感染者が急増している。バスターミナルなどでクラスターが発生し、さらにクラスターに関連付けできない新規感染者数が毎日増えていることから今後増加傾向が続く可能性も政府は示唆している。特に、重症者の増加には少し時間差があるため、その傾向を注視しているようだ。新規感染者数が増加すればワクチン接種が進んでいても重症者はある程度は増加するだろう。ただ社会の正常化を進めるにはできれば今ここで感染者数を増加させた方が良い。重症者数を最小限にとどめてながら集団免疫に向けて進める、イギリスが実践している方向性だ。シンガポールはそこまでのリスクは取らずに、感染を抑え込む方向で対策が進んでいる。そうこうしているうちに、制限の緩い日本の方が早く正常化するかもしれない。(2021年9月8日)
マスク
なぜアメリカ人はマスク着用に抵抗が強いのかよくわからない。アメリカ人に聞いても説得力のある答えは返ってきたことはない。そもそも報道などで聞くことのできる表面的な主張としては自由などであるが、マスク着用の感染防止効果が科学的にもわかってきた今でもマスクを着用しない人が多いことは腑に落ちない。アメリカなどはコロナでこれまでに65万人近くの人が亡くなり、おそらく知っている人の中で少なくとも1人くらいは亡くなっているに違いない。それでもリスクなどお構いなしのような人の数が多いようだ。ワクチンを接種したからというのも大きな理由の一つだろう。アメリカなどでは人が顔を隠すことに対する社会の抵抗感のようなものがあるのではないかとアメリカ人に確認しても、必ずしもそういうことでもなさそうで、むしろ地域や所得、教育、政治信条などが説明力がありそうだ。昨年の大統領選が国民を分断したようにワクチン接種に加えてマスク着用の義務化や是非も大きく意見が割れるところなのかもしれない。コロナ前からマスク着用に慣れた日本人としては理解し難い。(2021年9月5日)
ハード重視
最近中国での格差是正の名の下に教育やIT企業への規制など大きな政策の変化が報じられている。その中でもIT分野でのソフトからハード重視の変化は著しい。テンセントやアリババといった巨大企業もそのソフト分野に関してはもはや過去の産物のような扱いになっている感すらある。アメリカの対中制裁がかなり効いたのだろうが、中国にとっては半導体をはじめ内製化に切り替えるいいきっかけになったのではないか。半導体だけではない。自動車にしても、日本の技術者を大量に採用して自動車技術の向上に励んでいる。かなり大胆な政府の介入が見られるが、政府主導の富の再配分は社会実験としては興味深い。中国産のテクノロジーなしに多くのものが作れない時代になるのかもしれない。(2021年9月2日)
80%達成
シンガポールの人口の80%がファイザーもしくはモデルナの2回接種を終えたようだ。12歳未満は接種していないので、12歳以上の接種率は90%もそう遠くはない。この2種類のmRNAワクチンのみでということであれば、おそらく世界で最もワクチン接種率の高い国になった。どの国も様々な事情があり、ワクチンの供給が十分だとしても人口の80%まで高めることは簡単なことではないが、シンガポールではなぜそれができたのか?いくつかの要因が考えられるが、多くの人にとって受けないという選択肢はないということが早い段階から認識できていたというのが実際のところだろう。現状として簡単なところで言えば、ワクチンを接種していないとレストランや室内のフードコートで食事ができない。日本的な自粛ではない、厳格なルールであり、レストラン側が適切な管理を怠れば営業停止になる。外気の入るホーカーでは未接種者も食事ができるが人数が2人までに制限される。外食機会の多いシンガポールでは、これは決定的になる。また、職場においてワクチン接種をしていないことによる生じる追加コストは本人が負担させることができる。NTUでは今でも未接種者の検査費用を大学が持ってくれているが、それもいつまで続くかはわからない。つまり、普通の社会生活をする上でワクチンを接種できるのにしないという選択は現実的ではない。文化や選好、お願いではなくルールで人の行動を変える。シンガポールはそうやって社会をコロナから守ろうとしている。(2021年8月30日)
1000人あたりの病床数の国際比較
OECD加盟国の一人あたりの病床数は日本が最も多い。他国に比べて病床数が数倍ある日本でなぜ医療が逼迫して、他の国で医療崩壊しないのか。その答えは、日本の感染者の重症化率が突出して高いか、もしくは医療資源の活用が全くできていないかのどちらかだ。(2021年8月26日)
国 1000人あたり病床数 (2018)
日本 12.98
ドイツ 7.98
フランス 5.9
イタリア 3.14
米国 2.83
カナダ 2.55
英国 2.5
(Retrieved from https://data.oecd.org/healtheqt/hospital-beds.htm)
下水モニタリング
NTUのキャンパスでは下水によるコロナウイルスのモニタリングを行っており、先日ある学生寮の下水からウイルスが検出された。その寮に住む学生に対して一斉検査が行われた結果、1人の陽性者が出ている。幸いその学生はワクチンも接種済みということで、重症化はしていないようだ。これまでもNTU関係者から陽性者は数名出たとの報告がされているが、実際に目と鼻の先にある学生寮の下水からウイルスが検出されたことで、ウイルスが迫ってきている実感が湧く。(2021年8月25日)
みずほFG その4
みずほFGのシステム障害についてはこれまでも何度か触れてきたが、昨日再度システム障害を起こした。結局2−3月のシステム障害の責任を取って6月に退任したシステム担当取締役の後任も不在になっているようだ。少なくとも今日現在のみずほFGの取締役の中にシステム担当の肩書きのある者はいない。担当取締役がいなくても、取締役会全体で監督といったところかもしれないが、責任の所在無くして、CROはどのようにリスク評価しているのか?取締役会リスク委員会はどのようにシステムを監督しているのか?取締役会長とCEOは一体何をしているのか?そんな素朴な疑問は一切通用しない組織であり、環境もそれを許しているようだ。いずれにしても、みずほFGにはシステム障害の全容を理解できる担当者や責任者はおそらく存在しない。(2021年8月21日)
種苗法
さすがに日本では韓国産や中国産のシャインマスカットはあまり流通してないのかもしれないが、少なくともシンガポールでは韓国産のシャインマスカットなどはスーパーでよく売られている。日本産と比較した場合、韓国産の方が圧倒的に安い。両者の味を比較したことがないので日本産の競争力がないのかどうかは定かではないが、一般人には韓国産でも十分美味しいと評価されている。さらに、最近では韓国産よりもはるかに安い中国産もかなり出回っており、韓国勢もおちおちしていられない状況かもしれない。いずれにせよ、本家日本産のシャインマスカットやルビーロマンさらに言えばいちごなどを含めた農作物全般の権利を日本政府は適切に保護する必要がある。農家さんの長年の苦労と投資が報われない。(2021年8月18日)
時は金なり
今年も新年度最初の授業では学生に「時は金なり」を簡単な数値計算を使って話をした。22歳から毎月10万円をSP500に投資する。過去60年間では年利8%くらいだったので、今後7%のリターンが見込めると仮定する。65歳まで毎月10万円の投資を継続し、70歳になった時に一体いくらになっているか。為替変動はないと仮定すると約4.5億円である。合計5000万程度の投資が放っておいても4.5億になる。もちろんここでは期待値的な話をしている。では、若い時に少し無駄遣いをして、投資を5年後の27歳から始めるとしよう。65歳まで同じ投資をしたとして、70歳に約3.2億円。5年間の時間の差がたった600万円の投資の差を1.3億円の違いにする。時間をどう使うかは自分次第だが、時間には大きな価値がある。ただ規制改革の進まない(投資機会の少ない)日本の株ではインデックスで年利7%はまず無理だろう。(2021年8月17日)
伊勢丹カトン店
パークウェイパレードにある伊勢丹カトン店が来年3月をもって閉店になるとのことだ。83年に開店し、39年の歴史を持って閉店となる。日本のバブルとともにシンガポールに進出し、日本のデパートを現地化の一役を買ってきたわけだが、昨年のウエストゲート店に続く閉店となり、デパート経営は困難を増してきている。シンガポールでも高島屋は店舗面積も広く品揃えもいいのでそれなりに客はいるのだが、伊勢丹スコッツも店舗も小さいため残念ながら買うものがない。スーパーマーケットも日本の食料品は今となってはドンキやネットで安く買うことができる。特別なことでもない限り、そう遠くない将来に伊勢丹シンガポール撤退ということになるのではないか。一般客を相手にするのであれば、メンズ館のように特化して品揃えの充実した店舗にするかのもいい。それよりも、店舗はショーケースの機能に特化させ、得意の外商で稼げないものか。資産家は山ほどいる。(2021年8月16日)
30ドルバウチャー
シンガポールでは昨日から11月まで60歳以上のワクチン接種に30ドルの商品券を提供している。すでに60歳代では91%、それ以上では85%の接種が終了しているが、高齢者の接種をさらに進めたいようだ。接種率は国全体としても世界トップレベルになり、ファイザーとモデルナのみで人口の73%となっている。(2021年8月14日)
クレディ・スイス
クレディ・スイスのアルケゴス報告書は172ページに及ぶ長い報告書たが、とても丁寧になぜ、どのように$5.5billionの損失が出たのかが記述されている。簡単に言ってしまえば、アルケゴスに関してはリスク管理は全くされていなかった。報告書ではシステム十分に機能しており、問題は個人にあるとしている。例えるなら、飛行中のコクピットで警告音がずっとなっているにも関わらず、機長も副操縦士もその警告を無視し墜落したような状況だ。もう少し付け加えると、パイロット達は操縦資格を有していなかったといってもいい状況だ。ただリスク管理という点でいうと、警告が無視されるシステムはシステムとして機能しておらず、個人に責任を押し付けているこの報告書の結論には少し疑問が残る。報告書全体を総括するなら、今回の損失はクレディ・スイスのリスク管理の欠如の問題というよりもむしろ収益追求によるリスクテイクが組織ぐるみで行われていたという方がニュアンスとしては正しい。報告書では3つのディフェンスラインのうち、全ての責任が第1第2のディフェンスラインにあるとされ、経営陣や取締役会の責任が求められる第3のディフェンスラインに関しては不思議なほど記述がない。リスク管理が機能するか否かはトップダウンによるリスク文化が醸成されるかによるところが大きいにも関わらずだ。近いうちに野村の報告書も出るだろうが、おそらくアルケゴスに足元を見られて十分なマージンが取れていなかったというのはクレディ・スイスと同じだろう。まともなリスク管理をする気があればこんな損失は生じない。2008−2009年の金融危機や今回の事件からも分かるとおり、投資銀行業務が巨大化した銀行が利益を追求する株式会社である以上こういったことはまた起きる。(2021年8月4日)
今のところ2
昨日の日本のコロナ新規感染者数は12017人で死者が10人だったので単日死亡率で0.08%。厚労省がワクチン認可をもう少し早していればなお良かったが、現在の接種率でこの死亡率は世界的に十分誇れる数字だ。しかもロックダウンのような私権制限なしに、オリンピックまでやってそれを達成している。他にそんな国があるだろうか。日本はすごい。ネイチャー誌によるとデルタ株はウイルス量が従来型より1000倍くらい多く感染力が高いのでメジャーになったようだ。その分弱毒化しているならいいが注視は必要だ。(2021年8月3日)
今のところ
昨日も日本のコロナ新規感染者数が9583人で死者が8人だったので死亡率で0.08%。今のところ悪い状況ではない。(2021年7月29日)
意外なことに
今日発表になった日本のコロナの感染者数が8125人で死者が9人。もちろん感染者数と死者数にはラグがあるので1日の数字を比較することには問題があるが、それにしても感染者の死亡率が0.1%ちょっとになる。十分よくコントロールできているので、集団免疫に近づけるためには感染者数が増えること自体は悪いことではない。(2021年7月27日)
イギリスのコロナ政策
イギリスのコロナの状況について簡単な計算をしてみる。ジョンホプキンス大学のデータではイギリスの過去2ヶ月の死亡者がざっと1500人、感染者数が150万人。つまり、感染者の死亡率がざっと0.1%になる。この死亡率はファイザーを実験的に導入したイスラエルの約0.7%に比べてもはるかに低い。言い換えると、最少の死亡者や重傷者でワクチン接種率のあまり高くない若者の抗体を作ったことになる。こんな芸当は他の国にはできないのではないか。(2021年7月26日)
フェイズ2
KTVクラスターに関連したホステスさんがジュロン魚市場でも仕事をしていたということで、ジュロン魚市場がこれまで最大のクラスターになり、シンガポールはフェイズ2に逆戻りした。外食禁止や人数制限など厳しい制限が約1ヶ月続くことになる。街中も人出はかなり少ない。NTUでは8月から新学期が始まるが当面はオンライン授業になるようだ。ワクチン接種もかなり進んでいたため、フェイズ2には戻さないと思っていたのだが、まだその段階には至ってないようだ。ワクチンの接種率も8月上旬にはイギリスと同程度かそれ以上にはなるので、21日のナショナルデーの式典がコロナ対策の一区切りになるのではないか。イギリスのように政府としてリスクをとる方向に舵をとれるのかどうか、その判断が楽しみだ。(2021年7月25日)
EVPAD
他の東南アジアの国々でも売っているのかもしれないが、シンガポールではEVPADというテレビ放送の受信コンソールのようなものが売っている。これをネット接続すれば、世界中のテレビ放送が見放題になる。しかも費用はそのコンソールを購入する費用のみで2-3万円あれば十分だ。世界中のテレビ放送なのでアメリカのディズニーなどはもちろんのこと、日本の地上波、BSやCSも受信できる。製品自体はマレーシアから送られてくるようだが、シンガポールでは問題なく販売されている。仕組みはわからないが、少なくとも数ヶ月受信することが出来れば元がとれるのではないか。この商品は日本人には人気のようで、シムリムスクエアをウロウロしていると声をかけられる。(2021年7月21日)
KTVクラスター
シンガポールでKTVラウンジというとナイトクラブのような業態の総称だが、店によっては多くのホステスさんがいて実際は何でもありの業態だ。日本人御用達のKTVというとオーチャードプラザが有名だ。下層階の日本食レストランで食事の後、上層階にあるお気に入りのKTVラウンジに行って夜遊びをするといった感じだろうか。特に駐在員の利用が多いだろう。数日前からこのKTVで大規模なクラスターが発生した。違法労働のベトナム人ホステスさんが症状が悪化するまで病院に行かなかったことや、客として行った人が検査を受けないことがクラスターを大きくしている。政府は検査のプライバシーは守るといっている。また、これらのKTVは違法営業だったわけだが、陽性になっても客にはペラルティーは課さないようだ。そう考えるとコロナは対策の盲点を見事なまでについてくる。もちろんウイルスが広まるのは問題だが、政府としては今まで見て見ぬふりをしていた社会の盲点を見直すいい機会になりそうだ。ちなみに客としてKTVに行っていた人にアリバイを提供するサービスがネットで500ドルで販売されていた。(2021年7月16日)
オキシメーター
シンガポールではオキシメーターという小型機器を1世帯に1つ無料配布している。オキシメーターは人差し指を差し込むとコロナウイルスの重症化の目安となる血中酸素飽和度と心拍数を測り、10秒くらいで問題ないかどうか表示してくれる。入手後試しに毎日測定しているが特に異常はない。オキシメーターの無料配布はテマセク傘下の基金が主導しているが、シンガポールのコロナ対策は至れり尽くせりだ。(2021年7月9日)
都議
都議選で板橋区選挙区で当選した現職議員が選挙中に免許停止中であるにもかかわらず、運転し人身事故を起こしていていたことが報道されたが、なぜ事故が2日金曜日に起きているにもかかわらず、報道が投票後の月曜日になったのか。選挙中の候補者の報道には規制があるのか、相変わらずの自主規制ならぬ忖度か。無免許運転を繰り返した上に人身事故を起こした事実が隠されたまま投票日を迎えたら板橋区民はまともな判断ができない。当選された方は大変優秀な方なのだろうが、法律を守れない方に区民の代表にはなってもらいたくないはずだ。自分ファーストでは困る。(2021年7月6日)
ウィズコロナ
シンガポールはコロナ対応に関して今後のウィズコロナ社会を見据えた新しいフェイズにシフトした。個別感染者の詳細な公表も終了した。ワクチン接種のスピードを加速し、今月中旬までに人口の50%、来月のナショナルデーまでには3分の2を完了するため、8−9月でワクチンの効果が見込めるという自信の現れだろう。政府のタスクフォースは年内には海外旅行ができるようにしたいとしている。感染者の少ない香港、中国、オーストラリア、や欧米へ隔離なしに渡航できる日もそう遠くないかもしれない。それと同時に接種は強制ではないというものの、政府はハイリスクの職場に関しては接種が可能であるのにしない者の配置転換や接種をしないことに伴って増加するコストをその個人に負担させることを認めている。解雇は認めていないものの、政府として明確に接種しない権利に対する対価を支払うよう態度を明確にしている。(2021年7月5日)
三菱電機不適切検査
三菱電機のような一流企業には優秀であるはずの人材がたくさんいるのだろうが、本来会社の価値創造のために使われるべきその能力が架空データ作成といった会社の社会的価値を損なう方向に、しかも長年にわたって使われてきたのが非常に残念だ。今回のような不適切検査はおそらく三菱電機に限らない。大企業で働くのもいいが、会社の不正の手助けなど自分の能力を向上させられないようなつまらない職場であればすぐに転職できるようなスタンスで仕事をしたほうがいい。(2021年7月1日)
メイドさん
シンガポールではメイドさんを雇って家事や子供の世話などをしてもらうというのが一般的だ。男女のキャリア形成に大きな違いがない多くの中華圏ではメイドさんの活用は広く普及している。今シンガポールではコロナで新しいメイドさんが、特にフィリピン、インドネシア、ミャンマーなどから入国しにくい状況になっており、メイドさんの需要過多の状況になっている。月の支払いが800ドルから1000ドルなど2−3割上昇しており、場合によっては仕事の量を減らす要求もあるようだ。もちろん需給のバランスが崩れてしまっているのでそういった状況も仕方がない。こういった状況はまだ当面続くと思われ、契約更新をむかえる多くの家庭が影響を受けることになる。メイドさんの市場もマッチングアプリの活用などでもう少し流動性を上げ、メイドさんが効率的に所得を上げる仕組みを作れるといい。(2021年6月28日)
モノづくり
東大名誉教授の養老先生が以前、日本のモノづくりは戦前前後の価値観の変化からくる人間への不信があり、また明治維新後の西洋医学の吸収の速さも社会構造の変化による価値観の変化によるところが大きいと指摘していた。つまり、価値観の変化という学習を通じてひとは信じられるものに集中するというのだ。確かに、第二次大戦前後の価値観の変化という点では、ドイツがモノづくりに専念してきたことも説明できる。歴史的に弾圧を受けてきたユダヤ教徒が金融に長けているということ、華僑が不動産を軸に成功を収めきたことなども長年の学習により信じられるもので生きている知恵を獲得した結果だろう。翻って、我々はコロナからどのような価値観が影響を受け、何が信じられて何を信じられないと学習したのか。コロナでは大した価値観の変化にはならないかもしれないが、多少の変化はもたらしている。(2021年6月26日)
ナショナルデー
シンガポール政府は8月9日のナショナルデーまでに市民の3分の2のワクチン接種を終わらせると話している。あと1ヶ月半ほどしかないのでこれからワクチン接種を加速する方針だ。ワクチン・パスポートによる入国時の隔離条件の緩和を含めて検討中ということで、ワクチン接種を促している。シンガポールは政策や国民の努力の甲斐もあって、コロナの死亡者数、死亡率は世界でも人口のある程度いる国ではトップレベルに低い。それ自体はいいことだが、それが今後の出口戦略の足枷になりかねない。そこでワクチン接種を加速して隔離なしの渡航が可能な状況にできるだけ早く持っていく。シンガポールは計画通りことが進むかもしれないが、日本が隔離なしの対象国になるのか。当面無理かもしれない。(2021年6月25日)
世代間ギャップ
日本では高齢者のワクチン接種は順調に進んでいるようだが、高齢者と中高年の接種が済むと接種率はあまり伸びなくなるだろう。ワクチンに対する認識には世代間で温度差があり、おそらく来月中旬も過ぎると、あまり接種に積極的でない人達にいかに早く接種を受けてもらうかが大きな課題になる。これは接種の進んだ多くの国がすでに直面している問題だ。確かに職域でワクチン接種が受けられるのは便利でいいが、そこから漏れる人も多いので、特に若い世代にはネットで簡単に予約ができて近くで接種が受けられるような仕組みを早々に導入した方がいい。あまり効果はないようだが、アメリカではワクチン宝くじをやっている。少し荒療治だが、例えば11月に諸外国からの入国制限を解除するというようなことを今の時点で明言してしまってもいい。集団免疫は獲得できないにしても少なくとも人口の60%くらいまで接種完了していないと大規模なクラスターが起きてしまう。人口の60%と言っても子供は接種していないところも多いので、成人では80−90%にする必要があるだろう。そうするためには接種に抵抗のない成人に接種してもらう対策が鍵となる。接種した若い人には地域の食事券でもあげたらどうだろうか。(2021年6月23日)
保険・リスク経済学
先日、清華大学・北京大学・中国人民大学3校合同の保険・リスク経済学のセミナーで研究発表する機会をいただいたが、保険とリスクという比較的狭い研究分野であるにもかかわらず、30人以上の参加者があった。北京の3大学のみで30人ということは、中国全土であればどれだけの研究者がいるのか。研究者の規模ではおそらく他のどの国よりも多いだろう。しかもコロナ禍においても定期的にセミナーを開催して海外の研究者との交流を図っており、見習うべきことが多い。ただ、発表する側としてはできれば実際に現地に赴いて、多くの参加者と話をしたい。(2021年6月19日)
みずほFGシステム幹部
システム障害の続いたみずほFGではシステム運用の幹部を日本IBMから起用するらしい。役員として起用するのか、どの程度の幹部なのかわからないが、起用後の担当幹部の進退はみずほFGが抱える本質的な問題を理解する上でいいリトマス試験紙になる。もし単に技術的な問題なのであれば、システムに理解のある担当者をおけば問題は解決するだろう。ただ、問題の本質はみずほFGが合併から抱えている根深い組織的な問題であり、銀行システムの問題はその氷山の一角に過ぎないということであれば、技術のみで解決できる問題ではない。もしそうであれば、起用される幹部の退任に時間はかからないだろう。もしくは起用の話自体が消えるかもしれない。(2021年6月12日)
成り上がり
矢沢永吉やイチローのインタビューなどを見聞きすると彼らのように一流の仕事を成し遂げる人の特徴の一つとして、不確実な将来に対して自らの努力(仕事)を唯一の保証を捉えている節がある。自分が目標に必要な努力ができているか。もちろんそれが重要であることは誰もが認識してはいるだろうが、多くの人は現状を所与として捉え、それを前提とした努力量をセットする。簡単に言えば、新入社員は覚えることが多く一生懸命勉強するが、その努力量は業務を熟知するに従って低減していき、管理職にもなるとあまり勉強をしなくようなものだ。矢沢永吉やイチローのような“BIG”になる人にはそういった傾向はおそらくない。ある意味で極めて心配性で常にダメになるかもしれないという恐怖を感じながら、現状ではなく自分の努力の量でのみ将来を担保する。経済学的に言えばバックグラウンドリスク、つまりヘッジできないようなリスクへの認識がそういった高いレベルでの努力や練習に重要な役割を果たす。我々は現状を当たり前のことのように考えがちだが、実は将来に対して何の保証にもならない、彼らにとってはそういった認識に違いない。もちろん職の安定した会社員とアーティストや野球選手は単純に比較できないが、構造変化の大きい社会ではそういったスタンスがリスク管理として重要になる。一度バックグラウンドリスク(所得の変動リスクなど)を見落としていないかしっかり検討してみるのもよい。(2021年6月10日)
失業率
コロナ禍にもかかわらず株価は最高値を更新する水準になっている。もちろん市場に公的私的資金が大量に流入し、かつ金利が低いということもある。最近ではインフレ懸念から市場も敏感になっている。株価式市場がバブルかというと、そういった側面も見受けられるが、必ずしもそうとも言い切れない部分がある。特にアメリカでは昨年4月の失業率が14.8%にまで上昇した。つまり企業の視点からすると、アメリカではコロナを直接間接の原因として大量の労働者を解雇することでかなり利益の出しやすい体質になっていることは間違いない。しかも一時的に職を失った多くの労働者も今新しい産業構造のもとで労働力の必要な職についている。同じことが日本や他の国でできているかというとそうでもない。日本では昨年後半に失業率が3%を少し超えた程度で、直近でも2%台に戻している。もちろん、個人の視点ではコロナ禍でもほとんどの人が職を失うことなく働くことができている点ではいいだろう。しかしコロナによって人の行動様式や価値観も大きく変わる中で、この機会に大きな産業構造の改革ができなかったともいえる。多くのヨーロッパの国々も日本と大差ない。アメリカと同様に失業率が大きく上昇した主要国はカナダくらいで、最大で13.1%、直近でも8.1%と比較的高止まりしている。こういった労働力の流動性の差がコロナから回復していく経済でどのような違いとなって出てくるのか。シンガポールの失業率も4%程度までしか上がっていないが、昨年政府は国民が職を得られるようにするが、職種についてはその限りではないというメッセージを出していた。(2021年6月9日)
原油価格
原油価格の上昇とその価格を維持しながら生産調整をしているOPEC、アメリカ、ロシアの様子を見ていると、コロナ後の各国政府の支援支出やQEで流通しているお金が2方向に流れることがわかる。一つは非産油国から産油国への流れである。日本をはじめ石油資源のない国々は産油国やメジャーへ上昇した原油価格を支払うことになる。日本では景気浮揚のためにばら撒かれたお金の一部が国民の懐を素通りしてメジャーや産油国に吸い取られていく。円安の影響も大きい。中国はイランから市場より4−6ドル安い価格で原油を仕入れているそうだが、それでもかなりのコスト増になる。一方で産油国の国内でも一般庶民から石油資本へとお金が流れていく。アメリカでは技術の進歩によりシェールオイル採掘の損益分岐点は50ドルを切ったとよく言われる。とすれば、現在のように価格が70ドルに迫り、またそれを超えてくるようであれば石油産業の収益は莫大なものになる。もちろんそれもQEや政府の支援策から支出された多くのお金が、アメリカ人がガススタンドで給油するたびに吸い上げられていく。確かにコロナで急激に落ち込んだ供給を回復させるのには多少時間がかかるのかもしれない。ただ、そうやって産油国や石油資本へとお金が流れていくようになっている仕組みはある意味で見事としか言いようがない。SGDsで温室効果ガスの排出量削減のコストを各国で負担するなら、そのコストを原油採掘の利益で負担する仕組みがあってもいい。(2021年6月6日)
未承認ワクチン
シンガポールでは政府が正式に承認して大規模接種で使用されているファイザーとモデルナ以外に、WHOで承認されたワクチンについてはクリニックで接種できるようにする。アレルギーなどの既往症がありmRNAワクチンを接種できない人にとっては朗報だが、政策的にも得策である。シンガポールはシノバックを購入していたがこれまでのところデータが不十分という理由で国としての使用を承認していない。ただ中国との関係を考えると、難しい立場にあった。在シンガポール中国人から強い要求があったとも報道されている。そういった意味ではシンガポール政府はいい形で事態を処理できたと考えられる。とはいってもシンガポール政府はシノバックを承認するわけではないので、アレルギー等でファイザーとモデルナの接種を断られた人達以外の接種にかかるコストや万が一の際の医療費などは自己負担になる。政府は関与しないけどシノバックを打ちたければご自由にどうぞというスタンスだ。(2021年6月4日)
ランサムウェア
先月のコロ二アル・パイプラインや昨日のJBSの食肉工場でのランサムウェア攻撃の報道はサイバー攻撃がターゲットが供給の川上に上がってきている傾向を示しているかもしれない。これまでは川下で情報漏洩が問題になるような組織が大きな攻撃のターゲットになることが多かったが、すでに川下ではサイバー攻撃への対応が十分整ってきたせいか、最近では供給の川上にある企業への攻撃が報道されている。特に現在のコロナからの需要回復で物品の供給がタイトになっている中で、供給を止められない企業から数十億円程度の身代金を比較的容易に稼ぐことのできる手法としてランサムウェア攻撃が有効なのかもしれない。ただ、少なくとも過去の多くの情報漏洩の事例からするとターゲットになる企業のITセキュリティーはかなりお粗末なケースが多い。米露の政治的な問題としての側面もあるのかもしれないが、企業としてはコストと期待損失を十分に吟味して対策を講じることが求められる。(2021年6月2日)
屁みたいな…
日本では再三にわたる緊急事態宣言で国民の不満も大きくなっているのだろう、菅政権の支持率も落ち込んでいるようだ。高橋洋一氏も二度の失言もあり内閣官房参与を辞職された。ニュースを見ると毎日感染者数、重症者数、ワクチン接種者数と街の声くらいの報道しかしていない。確かに高橋氏の「屁みたいなもの」という表現は少し品がなかったかもしれない。しかし、緊急事態宣言には拘束力はないう点では的を得ており、知る限りでマスコミはそのことに関しては触れていない。結局問題の本質は菅政権のコロナ政策ではなく、国家の緊急事態に国民の主権をある程度制限する命令を出すことができないということで、憲法の問題になる。なぜ今それを議論しないのか、なぜ既存メディアはそれを取り上げないのか。所詮その程度のものだということだ。政治家に関していえば言うまでもない。今は1日100万回のワクチン接種を目指して大規模会場ではトヨタのカイゼンで効率化を図っているところもあるらしい。日本人はそういうことは大好きなので、おそらくオリンピック開催までの5000万回くらいは達成するだろう。ただ、残念ながらそれも問題の本質から目をそらすだけのもので、結局本質は何も変わらない。(2021年5月30日)
オリンピックのためのワクチン接種
日本ではオリンピック開催を前に大規模なワクチン接種が進んでいるが、ワクチンを打って安心というムードは少し危険な感じがする。確かにワクチンを接種した本人はワクチンで抗体が作られることで、感染したとしても重症化する可能性は低くなる。本人は一安心だ。ただ、その安心感から他人との接触がおそらく増加する。シンガポールでの最近の感染を見ていると、空港や病院でクラスターになった原因を作ったのはワクチンを接種した人たちだ。実際にワクチンを接種した人たちがウイルスを媒介し、ワクチンを接種していない人が重症化し亡くなった人もいる。ワクチン接種は接種した本人の重症化リスクを下げる一方で、重症化しないがために外に出て人にウイルスを撒き散らす可能性がある。社会が正常化し接触が増えれば、何らかの理由でワクチン接種しなかったもしくはできなかった人たちのリスクが増加する可能性も念頭においた方がよい。オリンピック開催のために、欧米で成功しつつあるワクチン接種による押さえ込みのモデルをそもそも感染者数・死亡者数の少ない日本に持ち込むのもいいが、それによって切り捨てられる人たちはいないのだろうか。(2021年5月24日)
システム担当取締役
みずほFGではシステム障害が頻発した責任を取る形で、システム担当取締役が退任するようだ。またメリカリでは個人情報が不正アクセスによって流出したという報道がされた。企業の情報システムへの依存度が加速度的に高まる一方で、企業にとってはサイバー攻撃やシステム障害といったリスクも大きくなってくる。そうなるとリスク管理を監督する取締役会の役割が大きくなってくるのだが、ではシステム担当取締役(リスク管理担当取締役と言い換えてもいい)に必要な資質とは何だろうか。もちろんシステムの専門知識のあるに越したことはないが、必ずしもシステムの専門家である必要はない。むしろ企業に“求められる当たり前”ができているのかを経営陣に適切に問い、責任を持って監督する能力が重要となる。そんなことは当然だと思われるかもしれないが、“求められる当たり前”を的確に把握することは意外に簡単ではない。特に会社の中でプロパーで役員になったような人間にとっての常識と世間の常識との間のギャップは大きい可能性が高い。みずほFGが後任の取締役にどのような人材を登用するのかわからないが、みずほの場合は単にシステムの問題と言い切れないところもありそうなので、状況の改善は簡単ではないかもしれない。(2021年5月22日)
モデルナ腕
日本でもファイザーに加えてモデルナもコロナワクチンとして承認されるようだが、モデルナはファイザーと比べると若干副反応が起きる可能性が高いようだ。統計としても出ているが、モデルナを2回接種した個人的な経験でも幾つかの副反応が見られた。まず1回目はモデルナ腕という接種箇所の腫れと痒みを伴う痛みが接種後1週間後くらいに現れた。興味のある人は"moderna arm”か"COVID arm"で検索してみると多くの画像がネット上で見つかる。もちろん個人差は大きく全く症状が現れない人も多いだろうが、モデルナ特有のよく知られた反応である。サンプル数が少ないので断言できないが、1回目の摂取で大きなモデルナ腕の反応が出た人は、2回目の摂取後の発熱、頭痛、関節の痛みといった症状が出る可能性が高いかもしれない。個人的にはこれらの症状は1日で全て治ったが、体のだるさはその後数日残った。これら以外にも女性特有の反応がある人もいるらしいので調べてみるといい。これら副反応が心配な方はファイザーを選択した方が無難かもしれない。(2021年5月21日)
リスク認知
1日20人程度しか新規感染者がいない国がほぼほぼロックダウンの状況であったり、数千人の新規感染が出ているということでオリンピック開催反対と多くの人が言っている国もある。かと思えば、地球の裏側では連日数千人の新規感染者が出ているのに、多くの人がテラスで楽しそうにコーヒーを飲んだりレストランで会食をしている国もあり、様々な状況だ。同じ数千人の新規感染者が出ていても、これまでに10万人以上が亡くなっている国にとっては大変な改善で、数十人の新規感染者でも死者が数十人の国にとっては一大事である。幾つかの説明ができるだろうが、簡単な行動経済的な説明としては、人は一般的に大きい確率を過小評価し、逆に小さい確率は過大評価する傾向がある。損失に慣れっこになった人達は強く、これからのリカバリーも早いかもしれない。(2021年5月20日)
2次情報
ざっくりした意見ではあるが、マスコミの流す情報は極端で意思決定をするための情報としてはあまり参考にならない。ニュースといえどもエンターテイメントの一つのカテゴリーだと思って見ておいた方が判断が偏らずに済むかもしれない。例えば、インドでコロナの変異株が流行して多くの人が苦しんでいるニュースが流されていたが、そういった事態が国全体をどの程度反映したものなのか?確かにガンジス川のほとりで亡くなった方の死体が焼かれる風景などはインドの原風景を思い出させるし、今のインドがかつて世界中のヒッピーを魅了していた頃のインドであるかのような錯覚を感じさせる。また、ニュースを見る限り国中の酸素がなくなってしまったかのような報道がされている。しかし、そういった情報が一体どれだけインドの実態を反映しているのかはわからない。インド企業の株価を見る限りでは、その経済的な影響は軽微なものにとどまりそうだ。インドの国土は広大だし人口も14億と中国とほぼ変わらない。2019年にはユニクロもオープンしている。つまり、多くの富裕層・中間層が存在するということだ。マスコミから流れてくる刺激的な情報のみが切り取られた情報では社会の実態を捉えるのが難しい。(2021年5月19日)
アドミッション
シンガポールの大学受験では本当に優秀な一握りの学生は奨学金制度を利用してオックスフォードやハーバードといった欧米の一流大学に留学することが多い。その次の層はNUS, NTU, SMUといったシンガポールの大学から一通り合格通知を受け取ることになり、今頃どこに行くか考えている学生も多い。シンガポールならNUS、と思われる人も多いかもしれないが、NBSのプログラムは3年で卒業ができ、4年あれば2つの学位もしくは修士を取ることができるため、NBSが優位であることも多い。3年で卒業できるメリットは日本人には理解し難いかもしれないが、男性は2年間のナショナルサービスという兵役が課されており、多くの場合大学入学前に兵役に行くため、同級生だった女性に比べると大学入学がそもそも2年遅れる。そのため、早く大学を卒業して職を得ることのできる3年のプログラムは魅力的になる。特に経済的に厳しい家庭の学生にはそのメリットは大きい。
優秀な学生にNBSに来てもらうために、NBSでは毎年この時期に懇親会を催して合格通知をすでに出した学生を招待する。目的は大学教員と直接話をする機会を設けることで大学生活をより身近に感じてもらい、最終的にはNBSを選択してもらおうということなのだが、今年もその懇親会に参加した。その懇親会はコロナ前はオーチャードにあるホテルの大ホールを借りて盛大に行なっていたのだが、今年もオンラインになった。オンラインは便利でいいのだが、学生は人の集まるところに集中し、しかも顔も声も出さずにチャットで質問をしてくる程度なので、偶然に学生と話をするような機会は全くなくなったのは残念だ。(2021年5月16日)
フェイズ2
シンガポールではここ数日20人を超える新規感染者が報告されていたが、結果明日から1ヶ月間フェイズ2に逆戻りということになった。外食が一切禁止、2人超で外出禁止、在宅勤務で基本ステイホーム、大学では屋内外のスポーツ施設が閉鎖となり、テニスがこれから1ヶ月できない。お店がやっていることを除けばほぼロックダウンだ。シンガポールの人口は日本の人口の約20分の1なので、日本全国で約400人程度の新規感染者が出たのと同等だが、それでもここまで厳しくする政府のメッセージは明確だ。おかしな表現かもしれないが、日本の緩いコロナ対策に比べるとはるかに温かみのある政策だ。自由は取り上げるが国民を危険にさらさない。今後ずっとこのような厳しい対策を取り続けることは経済的に困難だろうが、まだ3割程度しかワクチンを接種していないので、あと数ヶ月ワクチンが全世代に行き渡るまではやむを得ないかもしれない。(2021年5月15日)
コロナ感染者数
日本では緊急事態宣言や蔓延防止防止等重点措置が実施されているにもかかわらずコロナの感染者数が減少していないが、この報告されている感染者数が本当の感染者数とどの程度の相関があるものか。確かにコロナの症状が深刻なものになれば病院で診察を受けてコロナの検査を受けるだろうが、人によってはもしくは場所によってはコロナに感染したということが世間に知られることのリスクが大きいこともあり、検査を積極的に回避していることも多いのではないか。例えば、コロナに感染することで職場に多大な迷惑をかけたり、職を失ったり、世間から冷たい目で見られることもある。都市部のように人間関係が希薄ならまだマシだが、地方ではそうもいってられない。例えば、島根県では5月13日現在では今までの感染者数が401人ということになっているが、本当の感染者数はどのくらいだろうか。推測でしかないが1000人や2000人といったレベルではないような気もする。最近では他人に迷惑をかけることにさほど抵抗のない文化の中で生活する者の声が大きい。しかし、小さい都市部以外のほとんどの地域では人々は他人に迷惑をかけることが許容されない文化の中で生活していいる。そういった人たちが早くワクチンを受けられるといい。(2021年5月13日)
野村HD
アルケゴスとの取引で野村HDが報道では約3000億円(野村HDのニュースリリースでは3月期2457億円)の関連損失を計上している。損失の生じた取引内容の詳細は不明だが、リスク管理の観点からこの損失を理解するにあたっては2点確認する必要がある。1つは今回のアルケゴスとの取引で野村が取ったリスクはリスク受容範囲であったのか、つまり収益を上げるためにリスクを取るべくしてとっていたのかどうかという点だ。今期は3000億円の損失を相殺するのに十分な収益が上がったためその影響が軽微に見えるが、リスク管理の中でアルケゴスとの取引のリスク(今回のような損失が起こる可能性)が十分に認識されていたのか、もしそうであるとすればアルケゴスとのこれまでの取引でどれだけの利益を上げてきたのかも重要で、もし十分な利益を上げてきたのであれば、今回の損失を取り立てて注目すべき問題ではないのかもしれない。GSをはじめ大手が損失を出したことからすると、銀行側にも大きな利益のあった取引であったことは明白だ。ただクレディ・スイスのリスク委員会トップの取締役の退任が報じられていることからすると、野村もリスク管理が不十分だったのかもしれない。2つ目はなぜクレディ・スイスとともに逃げ遅れたのか。この部分については、実際に大きな損失を回避できた金融機関がある以上、日々のリスクポジションの管理と意思決定という点でリスク管理に問題があったと認識できる。その点で野村HDは投資家に損害を与えているので、個別案件とはいえもう少し丁寧な説明が必要だ。米系が外資系に比べて損失が少なくて済んだことから野村の問題点が見えるかもしれない。また、野村HDのリスク委員会云々といった報道はされていない。ガバナンス体制を見る限りでもリスク管理の責任が外部からは不明瞭な点も気になる。(2021年5月1日)
Peer Evaluation
ここ5年くらいで必須なった学生の評価制度の一つとしてPeer Evaluationがあげられる。簡単に言えばグループワークの評価において、グループのメンバーが他のメンバーの貢献度合いをいくつかの項目で評価するというものであり、他のメンバーからの評価が著しく低い場合にはそのメンバーに与えられる点数が割引かれるという仕組みだ。例えば、グループワーク全体の得点が10点だとして、他のメンバーから貢献が十分だと評価されたメンバーにはそれぞれ10点が与えれる一方で、貢献が不十分だと他のメンバーから評価されると、そのメンバーの得点は例えば5点などに割引かれる。つまり、グループ全体に対する貢献度合いを公正に評価することで、各メンバーに十分な貢献を求める仕組みである。学生たちが他のメンバーに著しく低い評点を与えることはあまりないが、なかには低い評点が提出されることもある。学生も基本的には他のメンバーに悪い評点をつけることは望まない、なぜなら各メンバーには他のメンバーからの平均評価が伝えられるので、場合によってはメンバー間の関係に決定的な問題が生じるからだ。なので、学生が他のメンバーに悪い評価をつけるときはすでに関係がかなりこじれてしまっていることが多い。(2021年4月27日)
K字回復
シンガポールでもコロナで多くの企業の業績が悪化し、また多くの人が職を失う経済状況である一方で、公団住宅やコンドミニアムの価格は上がり、高級品は順調に売り上げを伸ばしているようである。エルメス、グッチやシャネルといったブランドの店の前には入場制限もあって週末には店頭に行列ができている。自分の学生でもテスラへの投資でかなり稼いだと授業中に豪語する者もいた。シンガポール株式市場のインデックスSTIも昨年の10月くらいから30%ほど上昇しており、コロナ禍でも投資家は大したリスクを取らなくてもかなり資産を増やすことができている。シンガポールはQEで紙幣ををばらまいているわけではないが、コロナの結果として日本やアメリカと同様に富裕層の資産が増加し貧困層の資産が減少する再配分が起きていることには変わりない。また生活様式の変化もあり業種間の資産の再配分が急激に起きているというのも今回のコロナ経済の特徴だ。(2021年4月26日)
インド感染数増加
昨年のインドのコロナ感染者数と死亡者数の増加そしてピークからの減少は他の国々の変化と比べるととてもスムーズな変化で、今年に入って2月には一旦はほぼ収束していく方向に思えた。インドでそういう認識のもとに社会がコロナ対策を解除し、株式市場を含め経済も順調に回復していた。ところが2月以降新規感染者数・死亡者数ともに増加の一途をたどり、ここ数日では世界で最も多い新規感染者数となっている。またその増加傾向を見る限り直ちに減少に転じるといった感じでもない。ということは、変異型の発生などにより集団免疫の獲得ということは成立しないのか。アメリカでは人口比で約10%が感染していることからすると、インドでは1.3億人くらいが感染してもおかしくはない。最近ではイギリスが感染者数の抑え込みに成功しているようであるが、これがワクチンの効果であるのか単にロックダウンの効果だったのかはまだはっきりしていない。もしワクチンの摂取が進んだイギリスやイスラエル、アメリカといった国の感染者数が再び増加に転じるようであれば、長期戦は避けられないのかもしれない。シンガポールでもここ数日は数名の新規感染者が続いており、外との接触や流入があればある程度の感染は避けられないようだが、国内の接触追跡の仕組みも着実に進化させて対策を進めている。(2021年4月25日)
ワクチンその後
モデルナのワクチンを接種して特に深刻な副反応はなかったが、面白いことに接種後1週間ほどすると注射をした箇所を中心に5センチくらいの部分の皮膚が若干赤く腫れて熱感を帯び、当初は触ると若干の痛みを伴った。数日もすると痒みに変わりそれが数日続いた。そういった症状が完全に亡くなるのに接種から数えると約2週間ほどかかったことになる。腕の若干の腫れや痒みが副反応という範疇に入るのか否か定かではないが、そういった症状が確認できた。ワクチンは2回目の方が副反応が強いらしいので、次はどのような症状が出るのだろうか。(2021年4月19日)
スクート
4月16日から2週間、今度はシンガポール航空の子会社であるスクートの香港便が香港への着陸が禁止となった。シンガポール航空の香港便の2週間の着陸禁止が17日に解けるのと時期を同じくして今度は子会社のスクートということだが、意図的でないとすればずいぶんタイミングがよすぎる感じもする。たまたま香港政府の規制が厳しくなったからという解釈か、香港がもはや以前の香港ではないということを意味しているのか。(2021年4月18日)
新疆綿
ユニクロも無印良品も新疆綿を使った衣料品の販売を続ける方針らしい。ファーストリテイリングの柳井社長もウイグル問題に関してはノーコメントのようだ。こういった人権問題はその判断が難しい。が、両社とも新疆綿の使用を継続するということはウイグルに人権問題はないという判断をしているのだろう。だとすればノーコメントではなく、人権問題があるとの判断を覆す説明をすればよい。なぜ説明をしないのか。結局、中国での商売しか考えていない日本企業としか映らない。これは両社のせいだけではなく、中国にことさら気を使う日本全体の責任もある。ユニクロも無印も少なくともアジアでは日本を代表する企業としてのプレゼンスがある。問題は人権侵害があるかどうかということではない、そういった問題に会社がどのような姿勢で取り組むのかという態度を示す必要がある。それは会社のブランド価値に大きく影響するので注意深い判断が必要だ。ちなみに柳井氏のトップメッセージでは「… 環境、人権などのさまざまな社会的課題を解決し、サステナブル(持続可能)な社会に貢献すること…」とあるのだが、戦略リスクがあるのではないか。(2021年4月14日)
ポケモンGO
Journal of Risk and Insuranceに昨年掲載された論文で、アメリカ・インディアナ州のある郡で2015-2016年にかけて起きた12000件の自動車事故のデータを分析した結果、ポケモンGOを運転中に楽しんでいたことが原因と考えられる事故によるコストが少なくとも自動車保険料の2.47%増加に値するという結論を得ている。ちなみにポケモンが現れる緯度と経度の座標と事故の座標をからその因果関係を推定している。(2021年4月14日)
Mara Faccio and John J. McConnell, 2020, Death by Pokémon GO: The Economic and Human Cost of Using Apps While Driving, Journal of Risk and Insurance 87(3), 815-849
ワクチン接種
シンガポールでは先月末に45歳以上のワクチン接種の登録ができるようになったため、早々に登録を済ませ昨日ワクチンを接種してきた。筋肉注射なので1日経っても上腕は筋肉痛のように痛むが、それ以外特に問題はなくまずは一安心といったところだ。ワクチンは無料で、しかも接種後にマスク一箱(50枚入り)のプレゼント付きだった。45歳以上の接種の登録がひと段落したのか、6月には45歳未満の人の登録もできるようになるという報道もあった。
先月末に最初の登録を済ませ数日すると、保健省から接種場所と時間を選ぶことのできるリンクがSNSで送られてきて、近場で一番早く受けられるところはHong Ka North CCというところだった。確認したところその接種場所は最近開設されてモデルナを使っていることころだったが、モデルナとファイザーでは特に好みがあるわけでもないので、そこで受けることにした。モデルナとファイザーでひとつ大きな違いがあるとすれば、2回目の接種がモデルナは28日後以降でファイザーは21日後以降ということなので、早く2回目を打ちたければファイザーを選んだ方が良いかもしれない。シンガポールでは圧倒的にファイザーの使用が多く、自分が受けた場所を含めた4箇所以外はファイザーを使用しており、今後新しく開設する場所もファイザーを使用すると公表されている。ワクチン接種前にはアレルギーの有無などの確認がされ、ワクチン接種後は30分間待機し、30分後に異常がないか確認されたのちに解放された。30分の待機時間を含めても合計で1時間もかからずに終わった。(2021年4月7日)
シノバック
シンガポール政府は昨年ファイザー、モデルナ、シノバックの3つのワクチンを購入したが、今のところ使用されているのはファイザーとモデルナの2種類のみのようだ。シノバックに関しては20万回分のワクチンが2月に到着しているものの、報道によると承認に必要な書類が提出されておらず、保健省がシノバックの効果を評価できていないということで、ペンディングになっている。シンガポール政府としてみれば今のところファイザーとモデルナの2種類でまかなえており、シノバックが使えなくてもやむを得ない、万が一のために3種類のワクチンの購入したと主張できる。しかし中国共産党・政府としては、シンガポール政府が公正な評価で効果が認められなかったためシノバックを使用しないという結論を出すことはおそらく容認できない。現状のままシノバックを利用しないというのも中国としては受け入れがたいはずで、何らかのアクションをとってくるに違いない。また中国との関係を考えると、シンガポール政府にとってもその結論に伴う期待コストは大きいと思われる。シンガポール政府は図らずもそういった難しいポジションに置かれることになった。シンガポール政府は国内的には承認されたワクチンの中で接種するワクチンを選択することはできないとしている(ただ今でもファイザーとモデルナがどの接種場所で使われていることは公表されているため、接種場所を選択することでワクチンの種類を選択できる)ため、効果の低いワクチンを使用して国民から批判を受けることは避ける必要がある。とすれば、シノバックは他のワクチンと比べて効果は低いとしても承認し、国民に接種されるワクチンの種類が分かる形でシノバックを使用するというのが妥当な方針かもしれない。もちろんシノバックに90%程度の効果が認められれば何ら問題はないのだが。仮にシンガポール政府がシノバックの効果が他の2種類より低いので国民の安全のために承認しないという見解を出すのであれば、その見解は社会的影響も価値も大きい。国際社会におけるシンガポールの地位向上に大きく貢献するに違いない。(2021年4月5日)
台鐵
先日台湾東部の花蓮で事故のあった台湾の在来線は残念ながら十分な設備投資ができていないといった印象がある。台北と高雄を結ぶ高鐵、日本でいう新幹線の最新設備とは裏腹に、在来線の設備は素人目には日本の70-80年代くらいの地方の車両や設備といった感じだ。西部幹線は東部に比べると設備の近代化が進んでいるが、それでも他の分野での最近の台湾の近代化と比較するとかなり出遅れている。個人的には昔のローカル線の感じは嫌いではないが、利用者は不便を感じているはずだ。もちろん日本の地方在来線のように乗客がいないなら財政的にやむを得ない部分もあるが、実際に乗車すると速達列車などは満席のことが多い。今回は事故の原因がまだ確定していないようだが、他にも事故が多いことからすると台鐵の職場に真面目に働くインセンティブがあるのか疑問だ。民営化は必ずしも最善策ではないかもしれないが、台鐵のポテンシャルは高いはずだ。(2021年4月4日)
すき家シンガポール
サンテックにすき家がオープンして以来、すでに4回ほど利用させていただいている。日本に帰国せずに本格的な牛丼をいただけるとあって大変助かっているのだが、ここ数週間の間に紅生姜が甘いものに変わっており、それを知らずにいつも通り牛丼にのせたためかなり甘い牛丼になってしまった。食事後に日本人の店員さんが挨拶をしてくれたため、ちょっとお聞きしたところ、日本の紅生姜は辛すぎるというクレームが多かったので、寿司のガリのような生姜に替えられたということだ。確かにシンガポール人は甘い味を好む傾向がある。甘いタレの天丼や甘辛煮みたいなものは比較的ローカルに人気がある。そう考えるとすき家の牛丼自体はローカルには少し醤油のきついかもしれない。もう少しすると牛丼自体の味も変わるのか?気がつかなかったが、もしかしてすでに変わっているのかもしれない。オープンから1ヶ月ちょっとだが細かいところまで試行錯誤されているのだろう。これからどのような変化が見られるのか楽しみだ。(2021年3月29日)
外貨建て保険
最近準備金規制で話題になっている外貨建保険は、外貨で払い込んだ保険料が海外の金利で運用され、保険金や年金、解約返戻金などを外貨で受け取る保険商品で、外貨建個人年金保険、外貨建終身保険、外貨建養老保険などがある。基本的には日本円で支払い、外貨に両替したものを運用して、最終的には日本円に両替するので両替時の為替リスクがある。もちろん大きなプラスになることもある。ただ一般的にこういった貯蓄型保険は国債で運用されるので、海外で高い運用利回りといっても、たかが知れている。為替リスクで吹き飛ぶこともある。日本でインフレが起きればメリットという説明があるかもしれないが、あまり現実的ではない。結論をいうと、保険会社から買うのは保険(掛け捨て)だけにしたほうがよい。外貨で運用する資産があるのであれば、別に債券投資をした方が流動性も高いし、手数料もおそらく少なくて済む。残念ながら保険商品は一般の方にはわかりづらいようになっているので、こういった商品を検討する際には優秀なF Pにでも相談したほうがよい。(2021年3月25日)
LINE
LINEは個人情報が中国の関連会社から閲覧可能だったことが問題になっており、データを国内へ移転する方針らしい。LINEは報道直後は利用者の同意を得ているので問題ないと踏んでいたようだが、どうもこのままではまずいと方針転換したようだ。少し時間がかかってしまったがこの方針転換、そして方向性を明確にしたことは危機対応としては概ね正しい。具体的な今後の作業日程などを示すことができればなお良い。今回のLINEの件をはじめ、法的には問題はないというものの、会社の評判を大きく毀損しかねない危機に会社がどのように対応するはその後のビジネスに大きな影響を与える。今回LINEはことの重大さを認識するのに少し時間がかかったようだが、問題は社長会見で述べているように「信頼を裏切った」という一言に集約される。一般的に会社は危機に直面した際に、技術的、法律的な説明に終始し問題の本質を見落とすことがあるが、今回も問題はそこにはない。問題の本質はLINE利用者がLINEに(勝手に)期待するサービスの質と会社が実際に提供するサービスの質との間に大きな乖離が生じていた、つまり評判リスクがあったということだ。そこにマスコミが乗っかったのだ。しかし、危機にはチャンスがある。ここからLINEがマスコミの注目を利用してこの機会をどのようにポジティブな印象に変えられるのか、経営者の手腕が問われる。危機対応の成功例はいくつもある。とはいえ、LINEはそもそも少し前まで韓国の会社の完全子会社であったし、ヤフージャパンと経営統合した今でも50%は韓国の会社が所有している。LINEは完全な日本の会社ではない。一企業の情報管理を批判する前にそういう会社のSNSを政府まで活用しているということにそもそも問題がある。(2021年3月24日)
米国エクイファクス(Equifax)情報漏洩
みずほ銀行に関連して2017年に起きた米国エクイファクスの情報漏洩に触れたが、このケースも内部統制の機能不全が主な原因であった。米国連邦政府による経営陣へのヒアリングや調査報告書、マスコミによるレポートが多く存在し、この事件についてかなり多くの情報を入手できるが、それらの情報を総合してもひとつ腑に落ちない点が残る。それは事件当時そして現在でもチーフ・リーガル・オフィサーを務めるJohn J. Kelley氏の存在である。彼は情報漏洩当時CSOの直接の上司であり、報告を受ける立場にあった。つまり、事件の責任はCSOやCEOと共に重いはずなのだが、事件後責任を追及され辞任したCSOやCEOと比べて彼に関する調査報告はほとんどなく、全く責任が問われた形跡がない。また、エクイファクスが世間の非難を浴びたのは情報漏洩自体だけでなく、会社が情報漏洩を認識してから公表して株価が暴落するまでの間にCFOらが株を売却したことが大きく報道されたこともその原因となったのだが、その株式売却を承認したのもCLOである彼であった。それだけではない。個人情報漏洩後に被害者への対応として行ったクレジットモニタリング等のサービスを提供する際にサービス提供の引き換えに被害者に会社への訴訟を起こさないことに同意させる仲裁条項を設けていたことも被害者の怒りを買った。もちろんこの点でもCLOである彼の責任が大きい。なぜこれだけの責任がありながら、事件後辞任していった主に関係した経営陣のなかで彼だけが責任を負わずに会社で生き残るっているのか。情報によれば彼の法律家として実績と人脈によるところが大きいという。ちなみにJohn J. Kelley氏がCLOに就任した2013年に当時CSOとしてITセキュリティーを率いていたTony Spinelli氏は退社している。彼はCEOが就任時に招聘した人材であった。なぜか?様々な推測が膨らんでいく。そういった意味でこの事件にはまだ十分調査が行われていない、もしくは公表されていない重要な側面が残っている。(2021年3月21日)
みずほ銀行 その3
みずほ銀行の一連のシステム障害は2017年に米国Equifaxで起きたサイバーアタックとそれに伴う大規模な個人情報漏洩の事件を思い起こさせる。実際に社会問題として表面に現れた事案としてはシステム障害とサイバーアタックという異なるものではあるものの、背景にあるシステム管理の脆弱性は類似している。当時のEquifaxはITシステムがレガシー環境を含む複雑なものとなっていたため新システムへの移行がITの主要課題になっており、セキュリティー自体は二の次になっていた。2005年にCSOとして入ってきたTony Spinelli氏の貢献もあってITセキュリティー自体はうまくいっていたと思われるが、彼がITセキュリティーをシステム管理から独立させたのち2013年に退社したことが皮肉にも誰もセキュリティーの責任を取らない環境をつくり、結果として大規模な情報漏洩を起こす原因となった。金融機関のシステムは規制や情報開示との関係もあり、レガシー環境が残る複雑なシステムになる。大銀行がいくつも合併すればその複雑さは容易に想像できる。ただ、システム管理がうまくいくかどうかはシステム自体の問題ではなく、意思疎通や責任の所在といった内部統制に問題の本質がある。(2021年3月17日)
みずほ銀行 その2
2月28日に大規模なシステム障害を起こして以降、みずほ銀行はここ2週間で数件のシステム障害を繰り返している。そのリスク管理の問題点については以前簡単な説明をしたが、問題がここまでくると顧客や投資家の姿勢も問われる。もちろんみずほの取締役にはガバナンスの責任がある。しかし原理的には取締役は投資家の代理人として経営者を監視しているのであり、投資家や顧客がみずほ銀行をディシプリンする行動を起こさないのであれば、取締役は役に立たない。労働組合幹部が人事部と馴れ合いにならないためには意識の高い労働者がバックにいるという前提が必要だということと同じだ。週末までのみずほFGの株価や報道を見る限りでは、特に投資家がみずほFGへの評価を下げているようにも思えない。すでに折込済みなのかもしれないが、もしこの銀行に希望を求めるなら投資家や顧客はもう少し厳しい評価を下し行動に移す必要がある。(2021年3月15日)
小型原子力発電所
脱炭素社会の実現に向けた社会の動きが加速しているが、エネルギー業界では太陽光や風力といった再生可能エネルギーだけではなく原子力発電に関しても新たな流れができている。これまでの原子力発電との違いは、巨大な原子炉ではなく小型モジュール原子炉(SMR)を使った規模の小さい原子力発電を目指している。原子炉なのでリスクは伴うが、1つの原子炉を小さくし原子炉を分散することで、巨大災害リスクは低減できるであろう。アメリカ、カナダ、中国、ロシアなどではSMRへの積極的な投資が進んでおり、今後10年以内にも電源のあり方として定着する可能性もある。翻って、原発先進国日本を見ると、福島の一件以来原子炉の再稼働もろくに進んでいないようである。東日本大震災で無傷だった女川原発や柏崎刈羽原発も稼働していない。もう震災から10年経つが、一体何をしているのだろうか。映画を作って事故を記憶に留めるのも結構だが、事故を価値のあるものにするためにそこから何を学び取って次にどう活かすか、その議論をしてほしい。いっそのこと各都道府県にSMRを導入を進めて自治体(現場)に電源の責任を持たせた方がいいのではないか。脱炭素化も結構だが、それには原発の安定運用が必要に違いない。(2021年3月14日)
PCR検査
今日卒業式に参列するために1時間半前に会場入りし、PCR検査を受けた。受けたPCR検査は簡易版のようなものなのか、綿棒を鼻に入れるだけで10秒もかからずに終わり、結果も10分以内には判明した。早々に陰性証明書を受け取ったものの結局1時間以上も式が始まるまで待つことになった。会場はおそらく収容人数の2割くらいしか人を入れていないため空席が目立ったが、実際に卒業式に参列すると、昨年の卒業式のできなかった卒業生とその関係者のためにこうして万全の体制を整えて式を開催するNTUはなかなかいい大学だと思えた。一つ残念なのは卒業証書授与の際に撮られる写真がマスクをつけたままだということ。記念の写真なので、できればマスクなしを写真を撮ってあげたい。(2021年3月9日)
国際女性デー
3月8日は国際女性デーとされており、女性の活躍や不平等の改善を求める記念日になっている。日本では女性の社会進出が他の先進国に比べると進んでいないようであるが、最近では女性経営者や女性取締役(取締役会内での女性比率)の影響を調査する研究論文を目にすることも多い。アメリカではここ10年、特に2015年くらいから、女性CEOを含めた女性役員数と女性取締役の大幅な増加が見られた会社が多い。まだばらつきも多いと思われるが、女性の活躍が進んだ企業では2015年以前では2割程度だった女性取締役が直近では半数になっている大企業も多い。ただ女性CEOや女性取締役が会社のリスクテイクや業績、収益操作へどのように影響したか(つまり純粋に性別の違いによる影響)を調べることは簡単ではない。多くの論文では女性CEOや女性取締役の割合が会社の投資等の意思決定に与える影響を調査しているが、他の女性役員の存在や女性の活躍を後押しした取締役会、投資家などの内因性の影響をIVなどの統計手法で完全に回避することは難しい。また、女性CEOや取締役は男性CEOや役員に比べるとキャリアが浅いことが多く、傾向スコアマッチングで作成されたサンプルも、いわゆるキャリア・コンサーンの違いを回避できるとは思えない。また、そもそも女性CEOの数が男性CEOより圧倒的に少ないということからすると、もし性別による能力格差がないとすれば、平均的には女性CEOの方が能力が高いはずだ。これら複雑に絡み合う要素を取り除いた後に見える経営者や取締役の性別の違いによる影響とはどのようなものだろうか。(2021年3月8日)
大荒れの天気
今日は一日、おそらくシンガポール中で大荒れの天気だった。大雨が強風を伴うこともあり、自然豊かなNTUのキャンパスでは木の枝が折れて道に落ちていたりした。そういった大荒れの天気では古い木や枝は折れてしまうこともあるが、若く弾力のある木枝には柳に風、大きくしなって風を受け流す。折れてなくなった枝の部分には日がよく当たるようになり、新芽が出てくるに違いない。変化の大きい大荒れの時代に折れない力が必要だ。(2021年3月8日)
堂島米市場
堂島が世界に先駆けて江戸時代に先物取引を行っていたことは一般的にはよく知られていない。デリバティブというと金融市場の発達したアメリカやヨーロッパ発といった印象があるかもしれないが、知られている限りでは世界で最も古いデリバティブ市場は堂島の米市場であった。興味のある方には神戸大学高槻教授の「大坂堂島米市場 江戸幕府vs市場経済」をおすすめする。というもの昨日、日経新聞に大阪堂島商品取引所のコメ先物の試験上場についての記事があったのだが、そのなかでコメ先物取引がの価格と流通に安定をもたらしたという記述があった。当時は確かにそういった側面があったかもしれない。しかし現在のデリバティブ市場が価格の安定に寄与しているという結論を導くことは難しい。むしろその逆だろう。江戸時代のようにコメ先物が独立した堂島の市場で取引されているならまだいいかもしれない。現在のように、世界中の資金が流れこみ、デリバティブが幾重にも形成される状況においても江戸時代のように価格安定が期待できるのか。もしかしたら読んだ記事は大阪堂島商品取引所の広告記事だったのかもしれない。(2021年3月5日)
みずほ銀行
みずほ銀行のシステムの信頼性の低さは市場では織り込み済みなのか、システム障害でもみずほFGの株価は大きな影響を受けなかったようである。これまでシステムの不具合を繰り返してきた歴史が培ってきた底固さか。
みずほFG(みずほ銀行も同様)の企業理念によると基本理念は「日本を代表する、グローバルで開かれた総合金融グループとして、…… 最高水準の金融サービスをグローバルに提供することで、…… かけがえのない存在であり続ける。」とのことだ。ビジョンは「日本、そしてアジアと世界の発展に貢献し、お客さまから最も信頼される、グローバルで開かれた総合金融グループを目指します。」と記されている。
こういった企業理念からみずほFGが大規模システム障害をトップリスクのひとつとして認識していることは当然かもしれない。お客様からの信頼を得るにはシステムの安定運用は欠かせない。システムの刷新に多大な投資を行っており、資本配分も十分に行っているのかもしれない。ではリスクガバナンスのどこに問題があるのか?いくつか可能性が考えられるが、ひとつは自行がもつリスクの本質を理解していない、もしくは本質から避けた議論をしている可能性もある。金融機関のリスク管理は資本規制対応のため良くも悪くも定量的かつ総括的で体系化されている。しかし、ともすると定量化しづらいリスクが見過ごされ、リスク管理の本来の目的が見失われがちになる。リスクを定量化する欠点の一つである。でなければ、トップリストに掲げるシステム障害を繰り返すことはあり得ない。当行はリスクアペタイトも定義しているということだが、システム管理についてはどのように定義しているのだろうか。また、システム障害を繰り返してきた歴史を考えれば、社外取締役でシステムの専門家がいても良いと思われるが、そういう社外取締役はいない。基本理念に掲げるように、みずほ銀行は日本を代表する銀行であることは間違いない。しかし残念ながら、銀行がお客様にとってかけがえのない存在というよりもお客様が銀行にとってかけがえのない存在になっているといった状況かもしれない。リスク管理は終わりのない仕事だ。これから早速リスクアイデンティフィケーションから見直してほしい。(2021年3月2日)
すき家
サンテックに開店したすき家の牛丼は日本と変わらないクオリティーで大変美味しい。値段も日本の並サイズと同等と思われるMサイズで4.9ドルと破格に安い。吉野家より2ドル程度安い。今時シンガポールでも5ドル以下ではホーカースでもまともなものはあまりない。日本の米とアメリカの肉を使ってこの値段でいつまでやっていけるのかは定かでないが、今のところ日本の店員さんもおられるので、日本の牛丼を安くいただくことができる。値段はともかく、変わらぬ質の牛丼を提供し続けていただけると大変ありがたいのだが、果たしてどうなるか。(2021年3月1日)
シンガポールテニスオープン
ATP250でしかも全豪オープンに日程とかぶっているので主要プレーヤーは参加しないがシンガポールテニスオープンが今週開催され、今日の決勝と昨日の準決勝だけは観客を入れての試合となったようだ。我々の卒業式と同様に入場前にPCR検査を行い、室内コートということも影響してか入場者数は250人ということでかなり限定したようだ。とはいえPCR検査のスムーズに行われたようで、今後のコロナ下での大規模イベントの開催地としての地位を確立するのに一歩前進といったところか。(2021年2月28日)
Yoshinoya
最近すき家がサンテックに開店したこともあって、またコロナのために1年ほど日本に帰国できていないこともあって牛丼が食べたくなり、先日こちらのYoshinoyaで牛丼をいただいてみた。値段は普通盛りだと日本円で500円くらいなので日本と同等の牛丼がいただけるのであれば、リーズナブルだと言える。がしかし、残念ながらYoshinoyaの牛丼はおそらくもう食べに行くことはない。ポイントはいくつかある。まず肉が硬い。バラ肉の煮込みが十分でない。次に汁が油っぽい。おそらく、バラ肉を煮込むときに油の処理を適切にしていない。自分のような素人でもバラ肉を調理するなら気をつけるようなことが全くできていない。そんな基本的なことすらできていないのに、店は昼時の忙しいときにワンオペで鉄板で肉を焼いたり、すき焼きを作ったり、従業員さんは忙しくしている。今まで見た感じではシンガポール人には普通の牛丼は受けない。なのでいろいろな商品を提供するのはいいが、クオリティーコントロールは残念ながらできていない。本社の人間はたまに店舗に出かけて行って食べてみたりしないのだろうか。ちなみに自分の経験では台湾の吉野家の質は悪くなかった。逆にここシンガポールで驚異のクオリティーコントロールを行っているのが鼎泰豊だ。どの店に行っても台北の本店と同じ小籠包がいただける。日本の飲食業界も海外進出で成功したいなら台湾に行って鼎泰豊からオペレーションを学んできた方が良い。(2021年2月26日)
卒業式
3月の2週目に2020年度の卒業生のための卒業式が行われる。コロナがなければ昨年7月に催されるべきものだ。大学の一番大きい講堂で1週間かけて学部ごとにおそらく10回くらいに分けて卒業式を行う。教員は学部を代表する20−30名が壇上に上がることになっており、自分も参加することになっている。我々ビジネススクールの卒業式は、2時間の式を数回行い、自分もそのうち1回だけに参加するのだが、午後2時に始まる卒業式のために12時半に会場に来るよう指示を受けている。大学からの指示によると卒業式の前に会場の横にあるPCR検査場に行ってPCR検査を受け、陰性証明を受け取る必要があるらしい。陰性証明がないと卒業式には参加できない。PCR検査も最近では早くなったとはいえ、大人数の検査となると時間が多少必要なようだ。ただ、PCR検査の陰性証明の有効期限が24時間とされているため、私は1回の式に参加するだけなのでいいが、数日にわたって卒業式に参加する事務方などは毎日検査を受けることになるようだ。卒業式の週は卒業生(と保護者も?)がキャンパスに集まるため、逆にキャンパスに来る在籍生の数を減らすために、その週だけ通常の授業がオンラインに変更になった。このような対策を取りつつこれからは大規模なイベントもやっていきますよ、という方針でコロナ対策も攻めのフェーズに入ってきたというのが今のシンガポールの状況だ。(2021年2月25日)
ナンヤンZOO
NTUはシンガポールの西側に位置し、完全に開発されている中心部や東部と違い、自然が残っている。最近ではコロナによって静かになったキャンバスに猿が日常的に出没し、頻繁に見かけるようになった。家の中に侵入して食べ物をとって行ったりして問題を起こしているらしい。また最近、他の地域でも何人か人が襲われて問題になっているイノシシもNTUのキャンパスでは以前からよく見かける。今のところいい距離が保てているのか、これまでキャンパス内で襲われたという話は出ていない。キャンパスの裏側がジャングルのまま残っているということもあり、バードパークに行かないと見れないような鳥もベランダにやってくる。キャンパスの植物もよく手入れがされており、ボタニックガーデンで見るような植物もたくさん植えられている。そういった意味でNTUのキャンパスはとても自然豊かで素晴らしいキャンパスだ。(2021年2月21日)
コンドミニアム
シンガポールのコンドミニアムのセールスが好調なようで、1月は前月比で売却戸数が32%増加したようだ。だからというわけではないが、コロナに関係なく公営住宅であるHDBやコンドミニアムの建設ラッシュは続いており、不景気を全く感じさせない。よくこんなに買う人がいると思うくらいの勢いで建設が進んでいる。先月一番売却戸数が多かったのはNormanton ParkというプロジェクトでKent Ridge Park沿いにあるのだが、MRTの駅からは遠く、公共交通機関の便という点では全くよくないが、3ベッドルームで1.3-1.5億円くらいなので、高くはないが決して安くはない。街中のコンドはまともな物件なら少なくとも2億円は必要になるので、町からもさほど遠くない新しいプロジェクトということであればまあ妥当なところといったところか。今後の近隣の開発によっては10年もすれば周辺が様変わりすることもあるので、いい物件なのかもしれない。(2021年2月16日)
株式アナリスト
保険数理の授業を教えている学生が株式投資をしているということで、授業とは関係のなく株式アナリストのようなレポートを書いており、報告してくれる。昨年からSkillz (SKLZ)やTattoed Chef (TTCF)といった銘柄を買っており、長期のコールオプションも買っているようだ。確かにSkillzか今年に入ってからもかなり上昇したし、Tattoed Chefもplant-based diet関連株という意味では今後も楽観的な見通しかもしれない。Tattoed Chefに関してはその学生がDCFで株価計算したところ$29-55がターゲットレンジだそうだ。この評価が正しいかどうかは別にして、これから社会人になる学生たちにとっては株はself-fulfillingな側面があるので、少なくとも長期的な視点では年配アナリストのレポートよりも有益な示唆を含んでいると思う。(2021年2月12日)
アワビの缶詰
シンガポールではCNYで新年を祝う食事でアワビをいただくのが慣習のようだ。商売繁盛的な縁起ものだ。富裕層は缶詰など食べないのかもしれないが、スーパーではアワビの缶詰が特にCNY前のこの時期によく売れる。日本産と書かれたアワビの缶詰も多くみられる。今年は中国産の缶詰が供給過剰とコロナによる一般消費者の所得減少による需要低下というダブルパンチで3割ほど値崩れしているとのことだ。縁起物とはいえ、アワビの缶詰は需要の価格弾力性はあまり高くないようだ。一方で、CNYの時期による需要の増加と天候不良による供給の減少もあり、野菜や魚の値段は上昇している。今年は人々の移動もそこそこに静かなお祝いになりそうだ。(2021年2月8日)
自作自演の円買い(円高)
「有事の円買い(円高)」というと社会不安が生じた時に安全資産としての円が買われるという印象があり、円高の功罪はともかく日本人としては悪い気はしない。そういった側面も確かにあるのかもしれないが、最新の研究結果では「有事の円買い」の要因として、為替相場のボラティリティーが大きくなった時に、対外資産を多く保有する日本の生命保険会社などによる為替先物によるヘッジ需要の増加が関係していることがわかった。どうも世界最大の債権国である日本の自作自演の「有事の円買い」という側面が証明されたようだ。以前からも投資家による対外資産から円の買い戻しが関係しているということは言われていたが、為替先物によるヘッジ需要の増加が、先物レートを押し上げ、先物トレーダーによる現物需要が増加することからスポット・レートも上がるという日本の投資家による為替ヘッジ・チャネルは「有事の円買い」をうまく説明できるようだ。詳細に興味があれば下の論文を参照することをお勧めする。(2021年2月6日)
Gordon Y. Liao and Tony Zhang, "The Hedging Channel of Exchange Rate Determination," the latest draft available at:
https://goliao.github.io/papers/HedgingChannelofExchangeRate_Latest.pdf
スポーツ
シンガポールのような小さい国で海外へ出ることができなくなったことは多くの人の生活習慣に影響を与えているのかもしれない。最近ではランニングやサイクリングをする人の数はかなり多くなったようだ。また自分に直接関係するところでは大学内でもテニスを楽しむ人がかなり増加しており、テニスコートの予約が入りづらくなってきている。おそらくその傾向は大学内に限らない。これまでラケットのガットの張り替えは10年近くクイーンズウェイ・ショッピングセンターにある同じテニスショップでお願いしているが、コロナ前は当日もしくは遅くとも翌日までには張り替えができたが、最近では2−3日かかるようになってきている。それだけ定期的にテニスをしている人が増えてきているということではないだろうか。話は変わるが、シンガポールのイーストコーストではサーファーが出現しているということだ。いつもバリに行っていた人が出国できないので、あまり波のないシンガポールでもサーフィンを楽しむようになったようだ。人間はたくましい。。。人々がこれまで以上に体を動かすようになっているということは、もしかするとコロナによる生活環境の変化をきっかけとして健康増進、ひいては医療費の減少など思わぬ効果をもたらすことになるのかもしれない。(2021年1月25日)
ファイザーワクチン
因果関係については調査中のようであるが、ノルウェーで23人の高齢者がファイザーのワクチンを接種後に亡くなったという報告がされている(BMJ 2021;372:n149)。ノルウェーでは2万人以上がファイザーのワクチンを接種しているようで、そのうち高齢者の割合がどの程度かは示されていないが、約1000人に1人副反応でなくなっている可能性を示している。ただ、これが確率的に高いものなのか、今のところ死亡者の少ないノルウェーの高齢者にとって受容できるリスクなのかは判断が分かれるところだろう。いずれにしてもこういった情報はそれぞれのワクチンの特性を理解し有効に活用するのに有益だ。(2021年1月16日)
パンデミックリスク
武漢ウイルスの流行とその経済的な影響の深刻さから、保険の世界ではパンデミックリスクに業界としての取り組みが議論されている。生命保険や健康保険といった分野ではそもそもパンデミックリスクは保障の事由になっていることが多く、十分な対応ができている。問題は休業補償の分野だ。今回のように政府が長期間に及ぶ休業要請をすると小規模企業の経営に対する影響は大きく、廃業に追い込まれることも少なくないが、休業補償保険では休業要請に基づく休業や営業時間短縮は一般的には補償の対象にはなっていない。この対策は保険会社としては当然のことで、もし仮に今回のような状況で休業補償に対して支払いをしていれば、保険会社の経営に重大な影響を及ぼす。ではそういった補償は提供できないのか。可能性としてはなくはない。基本的には地震保険のような政府の保証を背景とした業界全体としての保険制度を整備し、長期間のリスク分散が可能な仕組みを作る必要がある。あまり知られていないが、日本の地震保険は制度としては有効に機能しており、地震保険の付帯率も高い。パンデミックは地震と同様に不規則であるが定期的に発生しており、今回のウイルスによりリスクの認知も高いので、保険料が高すぎなければ、需要は見込める。問題はリスク集積度が高いパンデミックリスクの保険料を十分に抑えられるような制度を作れるかであるが、昨年来の一連の流れから考えると、資本市場をうまく活用すれば可能ではないかと思える。政府の緊急事態宣言を条件に月に数十万円定額で支払うことができるパンデミック休業補償保険が整備されれば、少しは小規模飲食店の助けになるかもしれない。ただ保険制度は人や政府の意思決定に重大な影響を与える可能性が高いので、うまく制度をデザインする必要がある。(2021年1月13日)
大統領選挙
アメリカ大統領選挙はようやく正式にバイデン氏が連邦議会によって新大統領に認定されたが、開票から始まった一連の騒動は下手なドラマよりも面白いショーであった。トランプ氏とバイデン氏のどちらが大統領にふさわしいのかはよくわからないし、シンガポールに住む日本人としてははっきり言ってどうでもよい。しかし、今回の選挙でアメリカは世界に対して、アメリカにもまともな民主主義は存在しないということを知らしめてしまった。そもそもまともな民主主義などどこにも存在しないのかもしれないが、少なくとも多くの人はアメリカは他の国よりその仕組みを大事にする国だと信じていた、そういった幻想を抱いていたに違いない。それがこの様である。情報は至る所で操作され、世間にはフェイクニュースがあふれ、有権者は何をもとに判断したら良いのかもよくわからない。しまいには正当な手続きによって選ばれた現職大統領のSNSアカウントが停止され、情報発信が阻止される。現職大統領の情報発信が民間プラットフォーマーの判断で止められる、そこに自由など存在しない。また、投票数が有権者数よりはるかに多くても、死者の投票が多数あっても、票の操作を示すような証拠があってもまともな調査もしない。誰も責任を取らない姿勢は日本の政治家と何ら変わらない。アメリカはいざという時、政治信条を超えて一つになれるのが素晴らしいところの一つだと思っていたが、もはやそういうこともないらしい。とにかく、残念な国だということはわかったが、今後地位の回復ができるのだろうか。内政が不安定になると外で武力を顕示するのはどこかの国の特権ではない。敵国扱いにならないよう注意が必要だ。(2021年1月7日)
ワクチン接種
シンガポールでは現在のところ第一弾で輸入されたファイザー製のワクチンを医療関係者が接種しており、一般住民が接種するにはまだ少し時間がかかるようだ。今後モデルナ製とシノバック製のワクチンの輸入も予定されているようだが、先日の政府のコメントではワクチン接種においてワクチンの選択はできないということである。それが具体的にどのようなことを意味しているのかはよく分からない。どのワクチンが使われるかがわかった時点で本人に接種するかどうかの選択ができるのか、もしくはワクチンの種類については本人に開示されないのか。いずれにしても、どのワクチンを接種するかという選択肢を国民に与えないという判断を政府はしているようである。政府に承認されたワクチンは同質で効果的である、本人が選択する必要はないということだろう。ただ、このような判断がよい結果をもたらすかは疑問が残る。ワクチンは少ない確率にしても一定数の人に強い副反応が現れる。これはワクチンの性質上やむを得ない。実際にここ数日のうちにイスラエルやポルトガルで数人がワクチン接種後に亡くなったと報道されている。アジア人での接種例はまだ多くないので不確実性も高い。だからこそ接種する本人がワクチンのメリットとリスクについて十分な理解をした上で接種するか否かの判断をすることが重要である。その判断ができないために接種をためらう人が多く出る可能性もあるし、情報開示を受けていれば接種しないことを選択していたはずの人が副反応で亡くなる可能性も残る。シンガポールではワクチン接種は自分のためというよりも他人のため社会のためといったニュアンスが強い。多くの人が摂取すれば社会的効果は大きい。ただ、そういった目的であればなおさら、徹底した情報開示と本人に選択肢が与えられることは接種を促すのに効果的だろう。(2021年1月5日)
リスク管理
コロナのリスク管理はどうあるべきか。コロナに限らずリスク管理の基本はリスク管理のコストと利益のバランスである。日本に限った場合、厚生労働省によれば日本の通常の季節性インフルエンザの感染者数が約1000万人、死亡者数は約1万人である。ワクチンがあるにもかかわらず、現時点でのコロナの感染者数や死亡者よりもはるかに多い。しかし、例年インフルエンザ対策と称してロックダウンや営業・移動規制を行ってはいない。せいぜい学校で学級閉鎖が起きるくらいである。インフルエンザで毎年1万人死亡することを容認する社会であるにもかかわらず、コロナのためにこれだけ多くの人の日常や経済活動を奪う経済的な一貫性はない。事情の異なる欧米の状況を真に受ける必要もない。問題はそれをどのように政治的に判断して責任を取るかということだが、どんな結果にせよ判断をすれば批判されるため判断をせず責任回避するのが無難といったところだろう。(2020年12月31日)
Case 58766
シンガポール保健省は毎日コロナの状況について情報公開をしており、感染者について多少個人的な情報も開示している。28日にローカルでひとりの感染者(Case 58766)が確認されたが、その公開された情報によると、この感染者は今月12日から16日の日程でアメリカ便に乗務していたシンガポール航空の客室乗務員であり、その乗務の中で感染したようである。23日と25日に行われたテストでは結果が判明せず、27日の三度目の検査で陽性が判明したということだ。この情報で気を引いたのは感染自体ではない。開示された情報の中で、このシンガポール航空の客室乗務員がパートタイムでグラブの運転手をしていると記されていたことだ。シンガポール航空の客室乗務員といえば、シンガポールではそれなりのステイタスもある。シンガポール航空は国内線がないためコロナの影響が大きいのはわかっていたし、パイロットを含めた多くの社員が解雇されたこともニュースで知っていたが、実際に客室乗務員がグラブで運転手をしているという事実を耳にして航空会社の状況の深刻さを改めて感じることになった。何気なく使ったグラブの運転手が仕事のなくなったシンガポール航空のCAかもしれないと思うと、少し気が重い。(2020年12月30日)
楽天 企業統治
楽天の情報漏洩について触れたので、楽天の企業統治体制についても少し説明を加える。金融庁と東京証券取引所が改定する企業統治指針では取締役のうち社外取締役を3分の1以上にするように求めていることもあり、企業統治体制改善の一環として社外取締役の役割の重要性が報じられている。では楽天の社外取締役はどうなっているのか。現在取締役7名のうち4名が社外取締役ということでその新しい基準を十分にクリアしている。がしかし、楽天のコーポレート・ガバナンスに関する記載によると、楽天は社外取締役 御立尚資氏の所属する京都大学に寄付を行なっており、また同氏が専務理事をしているチャリティー財団にも寄付を行なっている。さらに楽天は社外取締役 村井純氏が所属している慶應義塾大学に寄付を行なっており、また楽天は同氏が社外取締役をしている2社から役務提供を受けている。もちろん上場企業としての社外取締役の基準は満たしているのだろうが、自身が重責を担う組織が楽天から金銭的援助を受けているもしくは仕事を請け負っている関係が社外取締役としての職務遂行に影響を及ぼすことはないだろうか。これらの先生方の社外取締役としての能力について言及するつもりはない。日本のインターネットにおいて村井純先生より適任な人はいないかもしれない。ただ、社外取締役としての独立性が十分担保されているのかという点に関しては疑問が残る。
アメリカの研究では社外取締役が役員を務めるチャリティー財団への寄付は会社の統治を低下させるという結果が出ている。特に、会社の業績が悪くてもCEOは高い給与をもらい、離職率が低いとこのとである。いずれにしても、楽天で大規模な情報漏洩がおきたのは事実であり、その点においてはガバナンスは有効ではなかったということだけは間違いない。(2020年12月29日)
楽天 情報漏洩
先日、楽天の管理する148万件の企業・個人情報が約5年間にわたって外部からアクセス可能であったとの報道があった。限られた情報から気がついたことがいくつかある。ひとつは楽天はこの情報漏洩をホームページで公にしたのが12月25日。マスコミが報道したのは26日。故意か偶然かクリスマスも終わり年末商戦がひと段落した後だ。過去に同様のケースがアメリカであった。なぜ情報公開が25日になったのか疑問が残る。楽天は社外のセキュリティ専門家の指摘で11月24日には不正アクセスを認識し、問題のあったシステムの設定変更を11月26日には完了した。本来11月26日の時点で被害者に通知すべきである。なぜ約1ヶ月間被害者への通知を怠り、顧客や出店者を危険に晒したのか。年末商戦が終わるまで意図的に通知を遅らせたと思われても仕方がない。正常のリスク管理のプロセスからはかけ離れた対応であり、これについて説明が必要であろう。幸い最近の情報漏洩では被害者が直接的に経済的損害を受けることが少なくなってきている。例えば、クレジットカード情報が盗まれても、これまでの金融業界の取り組みなどもあり、カード保有者に損害が及ぶことは少ない。ただ、詳細は楽天のホームページを参照してほしいが、今回漏洩した可能性のある情報の中には借入状況などもあり、こういった情報はある特定に組織にとっては銀行の口座情報などよりはるかに有益な情報になる危険性をはらんでいることに注意が必要だ。企業にとって都合の良いことに、日本(人)は個人情報への関心があまり高くない。実被害がでなければよいと考えるかもしれないが、その意識は改めた方が良い。楽天は収集した個人情報などを保全する義務があるが、その義務を履行しなかったという意味において、顧客は楽天に対する信頼度を低め、きちんとモニターする必要がある。
もうひとつ。情報へのアクセスが5年前から可能であったということで、5年前にシステムの何らかの変更があったことが想定できる。少し話が飛ぶのだが、2015年に楽天の最高情報責任者CIOに平井康文氏が就任している。当たり前のことだが、CIOの変更は情報セキュリティーに対する取り組みを一変させる可能性がある。過去にもCIO変更後セキュリティーへの人員や予算が大幅に削減され、大規模な情報漏洩に至ったケースがある。楽天がそういったケースに当てはまるのかどうかは調査で明らかになっていくのかもしれないが、マスコミや監督官庁はその辺をよく調査してみるとよい。CIOの変更後に優秀なセキュリティー担当が離職していたりすれば、そういった可能性が濃厚だ。ともあれ、CIOの説明責任と職務の責任、それと全く機能していないガバナンス、楽天のリスク管理にはやるべきことが多い。(2020年12月28日)
EV化
先日トヨタの豊田章男社長が政府のEV化政策に対するコメントを出した。確かに日本の自動車産業はギリギリのところに立たされているのだろう。日本政府の政策はともかく、先進国では今後EV化は一気に進む。残念ながらこのトレンドは環境問題ではなく、単に国の覇権争いとファッションの問題だ。残念ながらガソリン車では覇権の取れない中国とアメリカがトレンドを作りルールを変えてEVで社会基盤の覇権をねらう、そこにヨーロッパが追随する。それだけの問題であり、日本国内でもファッションとしてEVが流行する。そうこうしているうちに誰もHVなど見向きもしなくなる。もちろん全てがEVになるわけではなく、混在する市場になるだろう。トヨタのような巨大企業にとって急速な方向転換はできないが、日本で新興メーカーが出てこないのが残念だ。(2020年12月27日)
追跡トークン
シンガポールでは近いうちに外出時には追跡トークンを所持するか携帯に追跡アプリをインストールすることが求められる。追跡アプリは携帯の電源消費が大きいということもあってトークンを受け取り利用する人も多く、先日自分も追跡アプリを受け取った。報道ではシンガポール居住者の70%以上が既にこれらのどちらかを利用しているということで、政府が当面目標としていた水準を満たしたようだ。そもそもあまり外出しない高齢者などもいるため、日常的に外出をする人口ではかなり高い割合で既に利用していると思われる。これでほぼ完全に接触追跡が可能となり、感染者が出た場合は迅速な対応が可能となる。来年早々にもワクチンの接種も始まると思われ、ワクチンで感染を防ぎ、万が一の際は追跡でクラスターを最小限に抑え込むことができる。着実に一歩づつ社会全体としてのコロナ対策が進んでいく。家の中でもマスクをしろとか、海外から人を入れておいて、Go Toトラベル中止とか残念な政策で国民に過度な負担を強いる社会は気の毒だ。(2020年12月25日)
すき家
とうとうすき家までもシンガポールにやってくるようだ。先日Suntec Cityを歩いていたら、以前から営業している星乃コーヒーの並びにスシロー、向かいにすき家がやってくるようで、Coming soonになっていた。スシローの店舗展開の速さも目を見張るものがあるが、すき家まで進出ということで、シンガポールの日本食もくるところまできたなという感じがする。明治屋や伊勢丹といったこれまでシンガポールの日本を代表してきたから業態の衰退は否めないが、日本のデフレでリーンになっている業態は外に出てもうまくやっていけるところも多いのかもしれない。ただクオリティーを維持するのは簡単ではない。四川飯店の陳さんがやっている(と言われているが確認はできていない)カジュアルな麻婆豆腐の店がシンガポールにあるが、そのクオリティーは正直残念なものである。(2020年12月21日)
雨季
シンガポールは12月に入ると基本的には雨季である。シンガポールは都市国家ではあるものの、地域によってかなり天候は異なるので一般化はできないかもしれないが、Jurong Westと言われるシンガポール西部に位置するこの地域では、ここ2週間くらいは午前中は晴れているものの、午後3時から6時くらいはほぼ毎日スコール的な雷雨である。面白いもので、毎日決まって午後3時頃には雲行きが怪しくなり、雨が2−3時間振り続ける。そして日が暮れる7時頃にはやむ。翌日はまた午前中は晴れて、午後には怪しくなってきて、夕方雨が降る、この単調な繰り返しである。気象のことはよくわからないが、なぜ一定の期間だけこんなにも決まった時間に雨が降るのか。
面白いもので、シンガポール人はあまり天気予報には興味がないのか(わかったところで意味がないからか)、シンガポールの周辺地域の天気図や気圧配置といったものが見当たらない。政府もそのような発表はしていないと思う。四季が無い国の特徴かもしれない。最近の天気予報は毎日、晴れのち雨、予想気温は24−33度位で固定である。この時期の気象状況はどうなっているのかが気になる。この時期は朝晩の気温はかなり下がるので、冷たい空気が午前中の強い日射で暖められて、強い上昇気流が発生し積雷雲を作り、それが夕方の雷雨になる。そんなところだろうか。雨季と乾季でどのように天気図が変わるのか、もしくは変化はないのか。できれば(予想)天気図を発表してほしい。ただ、雨季は1月まで続いて、旧正月には終わることはわかっている。(2020年12月18日)
フェイズ3
シンガポールでは今月28日からフェイズ3に入ることが発表された。フェイズ3と言っても、今まで5人までに限られていた集まりが8人まで許される、大規模なイベントでは250人まで集まれるようになるといったことはあるものの個人的にはあまり変化はなさそうだ。現時点でも、外出の際はマスクをしていなければならないこと、海外に出れないこと(それが重大なことなのだが)を除けば日常生活に制限はほとんどない。それよりもTraceTogetherという追跡トークンを所持するかアプリをインストールしないとモールなどに入れなくなるということが大きな変化かもしれない。来年には居住者は無料でワクチンも打てるようで、というかどちらかというと接種しないといけないようになるのかもしれない。ワクチンで感染拡大を防ぎつつ、完全な感染追跡をして社会全体の感染を最小限に抑え込む。いい悪いではなく、シンガポールのやり方はどこかの国と違って、はっきりしていて分かりやすい。そういうことができる社会だということだ。(2020年12月16日)
評判リスク
最近よく芸能人が週刊誌の報道によってメディアから降板させられるようなケースが見受けられるが、メディアで活躍されているような人は評判リスクをよく管理しておく必要がある。なぜなら、メディアはその人物の素晴らしい側面のみに焦点を当てることで、その人物の価値を最大限引き出す。その情報のみが社会に流れていき社会的な評価が形成されるため、本人の本当の価値と世間の評価との間に乖離が生じやすい。ほぼ間違いなくその乖離が生じる。メディアで活躍するということはその偶像化された価値で経済的利益を獲得するということであるから、もしその乖離が世間にバレてしまえば、それまでである。ではそのリスクをどのように管理していったらいいのか。まず第一歩は本人の本当の価値と社会的評価との間の乖離を正確に把握することである。がしかしこれは簡単なようで、意外に難しい。多くの人は世間の評判が自分の価値であると勘違いしてしまい足元をすくわれる。ただ、それができなければ社会的評価を失うリスクは管理する次のステップには進めない。その方法についてはまた機会があれば説明したい。(2020年12月13日)
European Financial Management Readers' Choice Best Paper Award
昨年European Financial Managementに掲載された我々の論文が、当ジャーナルの2019年に掲載された論文の中で読者の選ぶ最高論文賞を受賞した。大変光栄なことである。この論文は米国上場企業のCEOのテストステロン(男性ホルモン)の量と企業のリスクテイクの関係を調査した研究で、学会での発表当初からかなり多くの反響があった。しかしその先進性ゆえに、ファイナンスのトップ・ジャーナルからはあまり芳しい評価は得られず苦労をした。そんな中、European Financial Managementのエディターから論文投稿の招待があり、掲載に至ったものである。人のリスクテイキングには何が影響しているのか?年齢や性別、家族構成、学歴や職歴、過去の経験その他様々な要因が関係することがすでにわかっているが、この論文では人間の遺伝的に備わった要因としてテストステロンの量に着目し、男性ホルモンの量と”男性的”(攻撃的、支配的)な性格や行動の関係をCEOのリスク選好を例にとって調査した。
ただし、テストステロン量をはかるのは簡単ではない。CEOの現時点でのテストステロン量を調べるには唾液を収集する必要があるが、それは不可能だ。先行研究では少ないサンプルだがトレーダーの唾液から特定したテストステロン量と彼らの取るリスク・ポジションとの関係を調べたものはある。次に、指比と呼ばれる、人差し指の長さを薬指の長さで割った値からテストステロンのレベルを判定する(指比が低い方がテストステロン量が多い)方法もあるが、これも我々が研究対象にするCEOのデータを得るのは困難である。そこで我々の研究では顔の顔の幅と高さの比(fWHR)を利用した。fWHRは思春期のテストステロンの曝露に関連(幅広の顔がテストステロン量が多い)し、男性的な人格に関連している言われている。我々の研究ではCEOの顔写真から fWHRを測定し、テストステロン量のプロクシとして用いた。
実証分析では、CEOのfWHRとリスク選好に一定の関係を見ることができた。興味があれば投資判断をする際にCEOの顔をよく眺めてみるといいかもしれない。また、銀行のローンの与信判断、保険会社のアンダーライティング、投資ポートフォリオの最適化、人事など幅広い応用が可能だ。(2020年12月4日)
MEIDI-YA
シンガポールで日本のスーパーと言えばMEIDI-YA (明治屋)であった。シンガポールで一番物が高いスーパーと言われながらも少なくとも最近までは日本のスーパー代表であったと言ってもいいだろう。しかし、そんな状況もあっという間に変わってしまった。一つには、ドン・キホーテのシンガポール進出がある。日本のデフレ勝者のドン・キホーテは2017年にシンガポールに進出して以来すでに8店舗を構えており、日本の食品を比較的リーズナブルな価格で提供している。同じ物でもMEIDI-YAよりはるかに安い価格で提供している。ドン・キホーテの集客の影響はMEIDI-YAのみならず、伊勢丹スーパーやもしかするとローカルのスーパーにも多少なりとも影響があったと思われる。2つ目はMEIDI-YAの入居していたリャン・コートがリノベーションに入るため閉店を余儀なくされたということだ。またリャン・コートとMEIDI-YAの関係もうまくいっていたとは思えない。リャン・コートがリノベーションに入る少し前にMEIDI-YAは大規模な店舗の改装を行なっていたが、完全に無駄な出費であった。長年モールを代表する店舗であったにもかかわらず、やむおえない事情はあったのかもしれないが、なんともお粗末である。
そのMEIDI-YAは先週末にミレニア・ウォークに旗艦店を開店させた。開店ということで週末は盛況であったが、特に目新しさはなかった。消費者目線で考えたとき、なぜミレニア・ウォークという人の住んでいない地区にあえて食品スーパーを開店させたのか理解が全くできない。日本の明治屋のようにバイヤーの目利きで消費者にとって目新しいものを陳列するならまだ理解できるが、そうではない。今までリャン・コートで売っていたものと変わらない。何か戦略があってのことだろう。今後に期待したい。(2020年12月1日)
コロナの行方
シンガポールでは26日までコミュニティーでの感染者が15日間連続でゼロであったが、ひとりの感染者が出たことでその記録も途絶えた。今のところ感染経路は特定されていないようだ。15日間感染者が出なかったことで少し安心していた人も多いと思うが、どうもそう簡単には終わらないようだ。もちろん海外からシンガポールに入国する人の感染者は毎日のように報告されており、今後は海外からの感染を避けながら国境を少しずつ開けていく難しい舵取りになる。香港との間のトラベルバブルの計画も香港での感染者の増加により延期になったようだ。コロナとの共存を決めた日本への簡単な行き来など当面先のことになりそうだ。(2020年11月28日)
保険の価格
保険の保障にかかるコスト、つまり保険金支払いに使われる保険料部分は、基本的な生命保険であれば、その計算は比較的簡単にできる。ここで保険の価格ではなく”コスト”とするのは、実際に保険契約者が支払う保険料には保険金として支払われるコストだけではなく販売・管理費用、資本コスト、利益等が加算され、その部分は会社によって大きく異なるからだ。基準となる保障コストは日本アクチュアリー会で公表している「標準生命表」(http://www.actuaries.jp/lib/standard-life-table/index2018.html)という生命保険会社から集めた契約データをもとに算出された、年齢・性別ごとの死亡率から計算できる。日本アクチュアリー会の「標準生命表2018」を元にいくつかの仮定(例えば年利2%など)をおいて10年定期の1000万円の死亡保険の月々の保障コストを計算すると下のようになる。10年定期保険の購入を検討される方はこの金額を基準値として参考にしてもいい。保険会社が提示する1000万円の死亡保険保険料はほとんどの場合、下の金額よりかなり大きくなると思われる。ただこれはあくまでも保険会社の過去の契約から算出される死亡率から計算される保障コストなので、場合によっては保険料が下の額より低くなることもありうる。(2020年11月25日)
年齢 男性 女性
30 671円 476円
40 1,471円 1,033円
50 3,500円 2,194円
60 8,379円 4,072円
70 23,331円 10,895円
貯蓄型保険
保険商品は大きく分けて掛け捨て型と貯蓄型の2種類に分類される。保障(補償)の内容を問わず、掛け捨て型では保険期間中の保障を得るために契約者は保険会社に保険料を支払い、保険期間満了時に保険料の払い戻しは基本ない。対して貯蓄型は、保険期間中の保障とともに保険期間満了時に貯蓄分の払い戻しがある。伝統的に日本では生命保険では貯蓄型を含む商品が多く販売されており、今でもネット保険会社などを除けば、主要な商品は貯蓄部分を含む。逆に自動車保険や火災保険などの損害保険の多くは掛け捨て型である。日本人(アジア人と言ってもいい)、特に女性は貯蓄型を好むこともあり貯蓄型保険が今でも幅をきかせている。そもそも掛け捨てという表現は適切ではなく、掛け金は捨てるわけではなく、保険金の支払いに使われ、ほとんどの場合たまたま運良く自分ではなく他の契約者が受け取っているだけだ。それは貯蓄型でも同じことで、保障が同じであれば同じ保険料が保険金支払いのために使われている。ただ、貯蓄型は掛け捨て分の保険料よりはるかに大きい保険料を支払い、貯蓄分の返礼を受けることで損をしていない気分になるかもしれないが、あくまでも気分に過ぎない。また、生命保険では貯蓄分を更新後に上昇する掛け捨て保険料の一部に充当することで、掛け捨て保険料の上昇を抑えるためにも使われる。生命保険購入当初、貯蓄のつもりで加入したのに、高齢になった時には貯蓄部分がほとんどなくなっていたなんて事もよくある話であるが、気がついたときには時すでに遅し。保険は金融商品の中でもわかりづらい商品である。人生において少なくない保険料を支払うことになるので、できるだけわかりやすい単純な保険を商品を理解した上で加入することをお勧めする。(2020年11月22日)
ワーク・スタディープログラム
最近のシンガポールの大学改革のひとつにワーク・スタディープログラムの導入があげられる。昨日もシンガポールのメディアでナンヤン・ビジネススクールの会計専攻でこのスキームを使った新しい学位が導入されたことを紹介していた。ワーク・スタディープログラムとはその名が示す通り、インターンで働きながら大学で学ぶというもので、学生が早いうちから実務的な問題意識を持ちながら勉強することで、大学でより多くのことを吸収することを期待していいる。プログラムによって異なるが、卒業するためには30-50週程度のフルタイムのインターンを行う。例えば、夏休みの始めの5月から秋学期の終わりの12月までは会社でインターンを行い、その間も週末の授業は受講できる。NBSでは全ての学生が1年生の終わりの夏休みに10週間インターンを行こなうため、ワーク・スタディープログラムの学生はそれ以外に30週程度のインターンをすることになる。ただワーク・スタディープログラムは多くの学生を受け入れてくれる企業との提携が必須で、現在データ・アナリティクスのプログラムではSAP、ウェルス・マネジメントのプログラムではDBS、会計のプログラムではデロイトがインターンの受け入れ先となっている。受け入れ先の評価が良ければ、インターン後に内定がもらえる可能性も高いので、学生にとっても悪い話ではない。今後もプログラムの数が増えそうだ。(2020年11月20日)
米大統領選結果
アメリカ大統領選の投票からすでに2週間ほどたち、主要メディアではバイデン勝利が決まったように報道されているが、最終的な結果はまだ出ていない。不正投票の訴訟がいくつも起こされるようで、どのような決着がつくのかいまだに不透明である。面白いのはトランプが投票日前からこういった流れになることを予想していたような発言をいくつもしていることだ。最高裁や下院の共和党数など、トランプが勝つ可能性もまだゼロではないのかもしれない。株式市場を見る限り、投資家はバイデン勝利を確信しているようであるが、どこかで潮目が変わることがあるのか、まだ目が離せない。(2020年11月15日)
中国新興EVメーカー
コロナのワクチン開発に明るい見通しが出たこともあり米国株式市場は過熱気味であった。その株式市場の中でも中国新興EVメーカーの株価が急騰している。12日にはXpengの第三四半期の業績発表があり、業績自体は事前に想定されたものであったが、株式市場は好感して株価は終値で33.4%上昇した。またそれを受ける形でNIOやLi Autoの株価も急騰した。投資家の期待も大きいのだろうが、株価の乱高下からするとかなり投機的な状況になっている。XpengはTeslaと同様に自動運転とEVの組み合わせで他社との差別化を図っているが、第三四半期では8578台を販売し、第四四半期では1万台の販売を見込んでいる。また自前の工場の建設を広州経済技術開発特区に計画しており、2年後には年間10万台を生産する工場が稼働する予定だ。工場が稼働すれば生産コストを引き下げ収益率向上、また価格競争力に貢献するだろう。
競争が激しくなる中、Xpengをはじめとした新興EVメーカーが巨大中国市場の一画を担うことができるのか、それともTeslaを含めた既存メーカーに追いやられるのか。また日本のメーカーは市場の急激な変化にどう対応するのか。中国国内市場のみならずほかの国への影響という意味でもその動向はとても興味深い。株式市場で好意的に扱われているが、空売りファンドによる押し下げ圧力も強いNIOの決算報告は17日にある。(2020年11月13日)
天丼てんや
オーチャード・セントラルの東急ハンズの横に天丼てんやが出来て約1ヶ月くらいになるが、多くのお客さんが入っているようである。シンガポールでは天丼は日本食の中では比較的人気があり、ここ数年多くの店ができているが、てんやの価格設定は他店には脅威になるのではないだろうか。単純な比較はできないが、中心になろう商品の値段が他店より2−3ドル低いように思われる。コスパは十分である。唯一注文があるとすれば、アナゴはもう少し時間をかけて揚げて、魚くささを飛ばしたほうがよい。タレももう少し甘くしたほうがローカルには受けるかもしれない。スシローにてんや、飲食業も日本のデフレ勝ち組が価格競争力を武器に進出してきている。次はどこがやってくるのか楽しみである。(2020年11月10日)
都市部VS田舎
今回の米大統領選はアメリカのみならず日本でもかなら大きく報道され、世界中が固唾を飲む接戦の様相を呈した。報道では選挙人の数が州ごとにに決まるため州ごとに候補者の開票率と得票数を報道していた。バイデン候補とトランプ大統領を州内の総得票数で比較した場合、確かに多くの州でその差はかなり小さく大接戦のように見えるが、見方を変えて州内の郡ごとの得票数を比較すると、人口の多い都市部は圧倒的にバイデン候補が優位で、人口の少ない田舎部では圧倒的にトランプ大統領優位だった。開票終盤までトランプ優位で進んでいたいくつかの州で最終的にバイデン候補がひっくり返したのは、開票に時間のかかる都市部の票が後で大量に入ったことによるところが大きいだろう。バイデン優位は西部や東部に限らず、アーカンソーやアラバマといった保守的な南部州でさえ最も人口の多い郡ではバイデンが圧倒的に得票している。結果的に言えることは、BLMもコロナも都市部でより深刻な問題であり、トランプがもう少しこういった問題をきちんと人道的に対処していたら、もう少し優位に選挙を進められたような気もするが。(2020年11月6日)
t-statistics
米大統領選の開票結果を報じる米TV局の選挙速報番組を見ていたが、FOXで速報を出すチームの責任者がアリゾナ州でバイデン優位を説明するのに"t-statistics 4"だと表現し、番組が少しざわついた。女性のアンカーはきちんと理解しているようで、すぐに説明を加えていた。どのようなテストの結果なのか詳しい説明はなかったが、開票の早い段階での予測に、開票が進んでトランプ票が入っても、想定できる誤差の範囲では得票数がひっくり返ることはほぼありえないということだ。もちろん簡単な統計を習った人なら言おうとしていることは理解できるが、主要メディアの放送でt-statが話題に出てくるなど、ましてやアンカーがすぐに説明を加えられるところは流石だ。(2020年11月4日)
米大統領選
11月3日今日が大統領選の投票日であるが、今回はトランプ元大統領とバイデン候補の接戦となっており、しかも期日前投票や郵便投票の投票数も多いため予想が難しいようである。バイデン候補は公約としてクリーン・エネルギーへの巨額投資を挙げており、バイデン候補が民主党の有力候補になる頃から再生エネルギー関連の株価が急騰している。例えば、太陽光発電関連の株で構成されたInvesto Solar ETF (TAN)などは今年6月からたった5ヶ月で価格が倍になっている。バイデン候補優勢で進んできた大統領選では先にある巨額投資を織り込んだ価格になっているはずで、逆にトランプ大統領が再選するようなことがあれば、少なくとも短期的には再生エネルギー関連の株は下落が予想される。直近ではトランプ大統領優位という情報も流れてきており、もしトランプ再選に確信があれば明日までに空売りしてみてはどうだろうか。(2020年11月2日)
Robinsons
Robinsonsはシンガポールでは 162年の歴史をくむ地場のデパートであったが、先月末で残っていた店舗の清算に入った。先週金曜日に清算が発表され、店には割引商品を買い求める客の長い行列ができた。今日Heerenの店に行ってみたがもう割引の大きい商品は全て売れてしまい、残っているのは10−20%オフや割引を行なっていない商品ばかりであった。旗艦店であるHeerenの店舗は2013年に開店したものでかなりの投資をしていたはずである。コロナの影響はもちろん大きいに違いないが、ここ数年は収入の減少により赤字が続いていたようであり、コロナがなくても結果は同じであったかもしれない。8月に閉店していたJemの店舗にはIKEAが入ることになっているが、Heerenの店舗は地下地上合わせて6階くらいあり、Raffles Cityはそこまで大きくないがそのスペースをどの会社が埋めるのだろうか。(2020年11月1日)
健康増進型保険
最近は健康増進型保険が流行りだ。簡単に言えば、健康増進型保険とは定期健康診断の結果や健康増進に関連する活動を行うことによって、保険料が割引になる保険契約である。被保険者が健康に関心を持ち、健康増進のための努力をすれば、結果として保険金請求が減ることになり、保険会社の保険金支払いコストが減少するため、契約者が保険会社に支払う保険料も引き下げることができる。これができるようになったのも保険金支払いコストを健康状態を把握することによって高い精度で予測できるようになったことが大きい。
被保険者の健康状態を把握することは他にも高齢者の保障コストを引き下げるのに役立つ。年金と介護保険を考えたとき、健康状態の良い被保険者は長生きするため年金コストは高くなるが、介護保険コストは相対的に下がる。逆に健康状態の悪い被保険者は平均的に長生きしないため年金コストは下がるが、介護保険コストは上がる傾向にある。つまり、それぞれの健康状態毎で年金と介護保険の総コストはそれぞれ別々の保険を考えるより安定的になるということがわかっている。保険商品を考える際に、健康増進のインセンティブと共にそういったナチュラル・ヘッジングの機能も考えるといい。(2020年10月29日)
接触追跡トークン
シンガポールでは年末までにショッピングモールや映画館などの入場には接触追跡トークンが必須になる。なければ入場できないということだ。現在でもQRコードを携帯で読み取るなどして、入出場の管理はできているのだが、このトークンでは個々人の接触が完全に追跡されることになる。政府には接触追跡のデータが集められ、感染者が出たときに追跡するのに使われる。このトークンは接触追跡専用で、場所データは集められないということだがプライバシーを心配している市民も多いようだ。最近では、追跡を避けるためにバッテリーを抜いたりBluetoothをオフにするといった改造方法がフォーラムで共有されているらしい。ちなみに無断で改造すると最大で懲役3年罰金80万円くらいが課せられる可能性があるということだ。改造の結果、集団感染など実害が出たときは最大10年の懲役だそうだ。実害までは出ないまでも、おそらく近いうちに捕まる人たちがでてくるだろう。(2020年10月27日)
ダイソン
高級掃除機で有名なダイソンが数年前にイギリスからシンガポールに本社機能を移転する計画を発表し、昨年ダイソン社長がシンガポールで高いコンドミニアムを購入したことが話題になった。タンジョンパガー駅の上に立つ高層ビルにあるそのコンドは2017年に完成し、最高級のペントハウスは約80億円程度で当時シンガポールでコンドミニアムの最高値であった。それを昨年ダイソン社長は約70億円くらいで購入していたのだが、最近60億円くらいで売却したとのニュースがあった。彼は他にもボタニックガーデンのそばに約40億円くらいの土地付きのセカンドハウスを購入しているらしく、今回のコンドの売却は会社とは関係ないようである。このコンドより少し前に最高値がついていたオーチャード近辺のコンドも約80億円くらいであったが、これはアリババの共同経営者が購入していた。(2020年10月24日)
フェイズ3
シンガポール政府は年末までにフェイズ3に移行できる可能性を示唆した。もちろんコロナの感染が低い状況が続けばという前提である。フェイズ3に移行すれば一度に集まれる人の数が増える。外食も8人まではOK、美術館などの収容人数もかなり増える。ただナイトクラブやバー、カラオケクラブのようなリスクの高い業態はフェイズ3に移行しても当面再開しないとのことである。フェイズ3を達成するために、教育省の大臣は3つの要素を説明した。コンプライアンス、簡便なテスト、そして接触追跡をさらに推進していくことでウイルスの拡散を防ぐ方針だ。スウェーデンや日本のように集団免疫を獲得する方向性とは全く異なる政策である。(2020年10月20日)
レジ袋
NTUの研究者の直近の研究結果として、使い捨てのビニールのレジ袋の方が紙や再利用可能な布の袋に比べると環境への負担が軽いということが報告された。これはシンガポールや東京のようなゴミ処理能力の高いところであるという条件がつくようであるが、紙や布製の袋の生産過程での環境へのインパクトの大きさがその要因になっているようである。シンガポールでもレジ袋が有料化され多くの人が袋を持参して買い物をするようになった。環境保護への意識は大変重要であるが、流行ではなく科学として体系的に正しい理解を示してくれる事はありがたい。ところでこれまでレジ袋をゴミ捨てに活用していたと思うが、ゴミ捨てはどうしているのだろうか。(2020年10月18日)
トラベルバブル
ヨーロッパは感染者数の増加に伴い、ロックダウンの方向へ逆戻りしている感じだ。J&Jのワクチン臨床試験の中断といったニュースもあり先行きがなかなか明るくならない。一方でシンガポールは香港との間で観光旅行などを14日の隔離なしに行き来できるよう合意した。開始日など具体的なことはこれからつめるようであるが、早速キャセイやシンガポール航空の株価が多少上昇した。また両航空会社のシンガポールー香港間のチケットが木曜から金曜にかけて1日で30%以上は上昇したようである。せっかく育てたバブルが弾けてしまわぬよう、少しずつバブルを大きくすればいい。(2020年10月16日)
Go To キャンペーン
日本ではGo Toトラベルキャンペーンで利用回数に制限もなく旅行代金が最大で50%支援を受けられるようで、多くの人がここぞとばかりに高額の旅館やホテルを利用しているようである。もちろん利用してもらうのが目的であるため、目的は果たせているのだろう。シンガポールでも似たようなキャンペーンがあり国内での宿泊やレジャーの支出に対して大人一人当たり100ドルまでの支援を政府から得られる。しかしながら、日本とシンガポールでは支援制度の対象に大きな違いがある。日本の GoToトラベル事業では日本に住んでいれば利用者は日本人に限らない。外国人でもその制度を利用して旅行代金の援助を政府から受けられるが。一方、シンガポールでは制度を利用できるのはシンガポール人に限定される。
こういった国籍の有無による区別は当然であり、政府支援の受益者になるのは国民に限るということだ。国は国民のためにある。同様の区別は多くの国で美術館や博物館といった公共施設などの入場料の違いとしても広く見られる。なぜGo Toトラベルの受益者に外国人が含まれるのか?日本ではあまり議論になった様子もない。心の広い国民である。利用実績のデータを開示したらどうだろうか。(2020年10月14日)
ダックツアー
シンガポールは少しづつではあるが日常が戻ってきている。なんてことはないのだが、街中で乗り降り自由の市内観光バス(Hop-on hop-off tour bus)や水陸両用のダックツアーなどが観光客を乗せて走り出した。海外からの観光客かどうかはさておき、コロナ前は当たり前であったがここ半年ほど全く見なくなった光景で、そういった些細なことが戻ってきたことに経済の復調の兆しが見てとれる。(2020年10月12日)
チャイルド・デベロップメント・アカウント
シンガポールは日本よりはるかに速いスピードで高齢化が進んでいる。大規模な移民の受け入れがないと考えると、社会全体の高齢化は主に2つの要素によって決まる。いわゆる少子高齢化である。高齢者と子供の間の年齢層は戦争でもない限り変動が小さいため、平常時の社会の高齢化にとってあまり重要な要素ではない。シンガポール人の平均寿命は2019年に84.8才で世界一となった。それ自体は大変喜ばしいことであるが、高齢者が健康で豊かに生きていくための社会負担は増大していく。一方で、それを支えていく若年層、特に出生率の低下も著しく、2019年には出生率が1.14(シンガポール統計局)と世界最低水準となっている。
この状況にコロナである。政府は今年10月1日から2年間の間に生まれた子供に対して約24万円の追加ボーナスを支払うことを決めた。コロナ禍の経済環境下で親の経済的負担を少しでも軽減することを目的にしている。そもそも、シンガポールでは育児にかかる医療費や教育費に対して手厚いと思われるサポートをしている。今回新設されたボーナスを含め、一人目の子供では最大160万円、5人目以上の子であれば最大280万円程度の育児支援が受けられる。この政府支援の受け皿になっているのが、チャイルド・デベロップメント・アカウント(CDA)といい、シンガポールの大手銀行でCDA口座を開くことによって、ボーナスや貯蓄に対する政府のマッチング(1ドル貯蓄すると1ドル政府から補助が出る)を受けることができ、子供の医療や教育に支出することができる。もちろん育児の支出補助に限らず、政府は住居取得や休暇取得、教育費、出産費用支援など多角的に支援を行っている。しかし、もしかするとコロナはシンガポール人の働き方や価値観を変え、また時間のゆとりを与えたことで、結果的に出生率を押し上げる効果があるかもしれない。若いカップルがもっと子育てをしたいと思える環境に変わったか?それとも経済状況の悪化の影響が大きいか。これから出てくる出生率統計が示してくれるだろう。(2020年10月10日)
中国人ビリオネア
中国のたった415人のビリオネアの資産時価総額が$1.68 trillion になり、世界11位のロシアのGDPとほぼ同額になったとのことだ。中国3大富豪であるアリババのジャック・マー、テンセントのポニー・マー、そしてネットイースのウィリアム・デンに限らず、今年7月までの株価の上昇が大きく貢献しており、ビリオネアの資産の1-7月の増加分だけで約$500 billionに達し、香港のGDPを軽く上回った。カネ余りで好調な資本市場での資金調達が今後も加速すればその膨張はさらにすすむだろう。翻って日本を起業家はその波に全く乗れていない。技術だけではなく、投資家に夢を見せて資金を世界中から日本に集めてこれるような魅力的な起業家が日本からもっと出てきてほしい。そのためには日本のマーケットだけでは小さすぎる。(2020年10月8日)
日本学術会議
海外で研究を行っていることもあり、このような組織が存在することすら知らなかったが、報道によると大変権威のある日本の研究者を代表する機関だそうだ。菅首相の任命拒否によって改めてこの組織が注目されたわけだが、この組織は2017年に「軍事的安全保障研究に関する声明」というものを出しており、軍事的安全保障に関する科学研究を行わないという方針を表明している。しかし、日本には実際に自衛隊が存在する。憲法9条があり、交戦権を認めていない。敵国条項すら残っている。なぜ科学研究の自由まで放棄する必要があるのか。いろいろな考え方があろうが、日本は交戦せずに国を防衛するという究極的な社会実験を行っている(行わされている)とも考えられる。それを可能にするためには、交戦に至らないための軍事的安全保障の研究に対して世界中のどの国より多くの予算を配分して自由に研究を行い、活発な議論をするなかで英知を蓄える必要がある。そんな意見があってもいいはずだ。(2020年10月6日)
中秋節
シンガポールのガーデンズ・バイ・ザ・ベイで昨日まで中秋節を祝うライトアップがされており、たくさんのランタンで飾られ、公園は完全に密であったが、訪れた多くの人たちで盛り上がっていた。シンガポールのこういった催しを訪れる度にモノを作りこむことの難しさを感じる。。。日本人は比較的モノを作るのが得意なようで、日本に住んでいるとそのことは認識しにくいが、モノの完成度が全般的に高い。同時に日本人の求める水準も高いため、進化が続く。他にもスイス、ドイツも日本と同じようにモノづくりが得意だ。アメリカもディズニーやアップルのように驚くべき完成度の高さを見せる。こういった特性はいったいどこから来るものなのか。職業観のようなものから来るのだろうか。欧米の精密なモノづくりについては、宗教改革まで遡ってカルヴァンの職業召命観あたりにその関連を見ることもできるが、カトリックのイタリアも小規模生産に限って言えば芸術的なモノづくりをする。日本人の場合は自然観、自然との一体化からくるモノに対する畏敬の念のようなものが重要な役割を果たしているかもしれない。(2020年10月5日)
東証売買終日停止
東証では昨日システム障害によって終日取引停止になった。システム障害が出るのは仕方のないことだし、取引停止措置も適切であったのかもしれない。だが、問題は過去にもあった同様のシステム障害を繰り返していることだ。なぜか?理由は簡単で、組織に失敗から学ぶ仕組みがないからだ。JPXのホームページにはリスク管理・ガバナンスについての情報が開示されているが、それは名ばかりで運用できていない。有価証券報告書に記載のとおり、JPXでは様々な事業リスクに対処するために「リスク管理委員会」および「リスクポリシー委員会」を設置している。今回のシステム障害に関して、それらの委員会を構成する取締役の責任は大きい。マスコミや規制当局は責任の所在を明らかにすべきである。
また、JPXの取締役・監査役の略歴を見れば、メンバーの中に証券取引システムに精通した人がいないこともわかる。つまり、システムの企画・運用を監督できる人が取締役・監査役にいないのだ。専門家を少なくとも一人取締役のメンバーに専門家を少なくとも一人は入れることをお勧めする。国内に経験豊かな人材がいなければ、海外から招聘すればよい。証券取引所の肝はシステムとネットワークである。その重要性を十分認識し、競争力のあるシステムを安定運用してもらいたい。(2020年10月2日)
Flights to nowhere
コロナ禍で運ぶ乗客のほとんどいないシンガポール航空(4-5月は前年比で99.6%減、6月は99.3%減まで減少)がflights to nowhereを企画していた。シンガポール航空が遊覧飛行をしてサービスを体験してもらおうという試みである。以前ANAでも同様の企画が行われていた。もちろんこういった企画は収益に貢献するようなものではないが、お客さんとのつながり、社員のモチベーションの維持には良い企画だと思える。もちろん運航という点において、一定期間の無飛行による重整備を避ける目的も大きいだろう。ただ、残念なことにシンガポール航空は環境保護団体からの反対に応じる形でその計画を撤回した。ゼロエミッションを目指す活動家にとってはこのような無意味なcarbon-intensiveな活動は容認できないといったところだろう。企業も難しい舵取りが求められる。(2020年10月1日)
カカオ豆の焙煎
ジュロンウエストあるあるであるが、この一帯では時折強烈な匂いが漂ってくる。MRTブーンレイ駅近くにチョコレート工場があり、カカオ豆を焙煎する過程で発生する匂いらしい。カカオとかココアというと甘い香りを想像するかもしれないが、ここで漂ってくる匂いは例えるなら臭い靴下のにおいであり、公害に近い。以前、周辺住民からの苦情から工場が脱臭装置をつけたという話を聞いたことがあるが、効果があるとは思えないほどの匂いが漂ってくる。NTUはそれでも工場から直線距離でも2キロくらいは離れているのでいいが、ブーンレイ駅周辺の住民はかなり不快な思いをしているのではないか。ただ、慣れれば耐えられない匂いではない。(2020年9月30日)
シンガポールの紅葉
紅葉は秋の深まりを知らせる日本の秋の風物詩の一つである。もみじなどが落葉の前に一斉に葉の色を緑から、黄、そして赤に変えていく様、そして色のコントラストは圧巻である。しかしスケールの違いこそあれ、紅葉は常夏シンガポールでも見ることができる。木の一部の葉が紅葉し、コントラストが見られる。特に今の時期だからというわけではないのかもしれないが、落葉が多くなるの時期かもしれない。秋分が過ぎ、シンガポールでは夏が終わりへと向かうこの時期にに老化した葉が落ち常夏の冬に向け準備を始めているということなのか。それにしては少し早すぎる気もする。(2020年9月28日)
自殺
最近芸能人の自殺が報じられることが多い。それと関係があるかはわからないが、日本全体でも8月は自殺者は昨年比で大幅増となっているようだ。コロナ禍で年末に向けて経営がより一層厳しさを増す会社も多いと思われ、今後の動向が気になる。人生所詮暇つぶし、人生思い出作りなどと表現されるし、嫌なことは適当にやり過ごせばいいと思うのだが、時として視野が狭くなってしまうこともある。特に一生懸命な人、責任感の強い人はそうかもしれない。人のことはわからないことも多いが、なんとか救ってあげられないものだろうか。(2020年9月27日)
EV
EVが主流になる時代がやってくる、少なくともそういった期待がされている。今年に入ってからのテスラの株価高騰、中国EV新興企業の上場、中国政府の優遇措置、カリフォルニア州のガソリン・ディーゼル車販売禁止案など、様々な動きがEVへの流れを後押ししている。一方でテスラ株がS&P500に組み込まれなかったことはまだEVが事業として十分なキャッシュフローを生むには多少時間がかかることを示している。少なくとも表向きにはEVはゼロエミッションによる環境問題への取り組みの一つとして位置づけられているが、その関係は検証されているのだろうか。確かにEVは車自体はゼロエミッションであるが、発電には化石燃料が多く使われる。巨大なバッテリーの生産、リサイクルは環境へのインパクトは少ないのか。太陽光発電を使うにしても、パネルの生産や設置、更新に多大なエネルギーを使用し効率は悪い。EVは生産に必要な部品が圧倒的に少ないという点では優位だろう。ただ全体としてEVシステムが環境問題に貢献するのか、気候変動にどのような影響を与えるのか、誰にもわからないままEVが経済活動を推進するファッションとして進んでいく。もはや技術・科学論ではなく政治経済のマターだ。日本メーカーも取り残されてはいけないが、鍵になる電池の覇権争いでは中国にはもはやかなわない。(2020年9月26日)
スシロー・シンガポール
シンガポールにスシローが進出して約1年が経ち、これまで5回くらいは利用させてもらっただろうか。コロナ禍においても出店を進め、現在ではテョンバル、伊勢丹スコッツ、ウッドランズ、ベドックの4店舗体制となり、今のところ好評を得ているようである。シンガポールでは比較的目新しいものにお客さんが集まるため、日本から来た寿司レストランでそこそこ安くて質も悪くないということであれば、最初の一年くらいは客足は伸びることは想定できる。問題はここからである。これまでもいくつも日本から進出してきた(もしくはまともな日本食を提供する)飲食店を見てきたが、うまくいくところとそうでないところには決定的な違いがある。当たり前のことであるが、もしシンガポール人をメインのターゲットにするのであれば、早々にシンガポール・ローカル向けにメニューをシフトできるかどうかである。数々の日本食飲食店が撤退していったことからすると、これは意外に簡単なことではないらしい。
寿司の例でいえば、シンガポール人が生魚を食べるのはサーモンくらいである。えびやマグロ、帆立も多少は食べるかもしれない。もちろん日本に何度も訪れ他のすしネタも食べ慣れている人もなかにはいるが、ほとんどの一般市民はその程度である。彼らがスシローで食べているものと言えば、サーモン以外には、変わり種の巻ものや揚げ物といった総菜的なものが中心である。ロスをおさえるためにはスシローが日本で通常提供する本格的なすしネタはいらない。ぶり、鯛、かつお、イワシ、各種貝などなど。しかし、こういった日本的なネタの提供をやめると残念ながら大事な日本人客は離れていく。ただそこが大事な意思決定であり、いかに早く日本人客を切って、ローカルにメニューを合わせられるかがシンガポールで生き残れるかのカギだ。スシローとしては寿司屋としてのプライドもあるだろう。しかし、シンガポールは台湾やタイのように日本のものをそのまま受け入れる市場ではない。多くの人種を抱える国であり、レストランにはメニューの多様性が求められる。寿司屋でも居酒屋のような万人受けするメニューが必要だ。個人的には日本で提供される寿司ネタを食べたいが、それらを提供し続けるようだとおそらくそう遠くない将来撤退を余儀なくされるだろう。できるだけ早いうちにもう行きたくないスシローになってもらいたい。(2020年9月24日)
シンガポール国立大学教養学部?
シンガポール国立大学が大きな組織改革をするようである。来年からCollege of Humanities and Sciencesというカレッジを新しく創設し、所属する学部生は従来のFaculty of Arts and Social Sciences(文系)とFaculty of Science(日本の理学部)の両方で授業を履修できるようにするとの事である。変化の速い社会に対応できる人材を育成するためには従来の縦割りの学問ではなく学際的な学びが必要だという理解が背景にある。基本的には教養学部的な組織になるのだろうが入学者数が2500人もいるでYale-NUS Collegeのようなリベラルアーツとも異なる。実務レベルのカリキュラム作成など困難が伴うだろうが、学生にとっても大学にとってもメリットが大きいはずだ。
実はこの動きは氷山の一角にすぎず、シンガポールの大学ではいたるところで大きな改革が進んでいる。コロナによって必要なスキル、使えないスキルがより明確になったことで、大学側は対応が迫られている。(2020年9月22日)
Flightradar24
コロナが深刻化して以来毎日Flightradar24で商用フライト数をチェックしている。5月以降少しずつ回復してきていたフライト数も8月中旬以降伸び悩んでいたが、先週わずかではあるが増加傾向に転じた。夏のピーク時は過ぎてしまい今後大幅増加は見込めないものの、来週中国では中秋節の休日に入り、中国国内の人の移動は増えそうだ。昨年比で少しずつでも回復してもらいたいものだが、世界的な回復はアメリカの国内線の回復しだいか。IATAは2024年まで需要は完全には回復しないと見込んでいるが、そうなると航空業界の再編が確実にやってくる。シンガポール航空は政府支援が見込めるがそれでも6月には乗客数99.6%減、今月に入って20%の雇用削減を発表したがこれからさらなるコストカットが必要だろう。アジア内での入国制限を少しずつ緩和しているが、国内線のない(少ない)航空会社はとっては厳しい経営環境が続く。(2020年9月20日)
今が買い時
といってもすでに高値になっている株の話ではない。シンガポールのデパート高島屋(伊勢丹も?)の話。休日のオーチャード・ロードはラッキープラザでビザの番号下一桁による入場制限(1日ごとに偶数(奇数)の人のみが入場可能)をかけているためメイドさんの数こそ少ないが、人の数はコロナ前の水準に戻った感じだ。それでも実体経済の動くは悪いらしく、高島屋ではブランドものの服が定番アイテムを含めてstorewideで4-6割引きになっている。こんなことはめったにないし、長いこと続かないと思うので、今が買い時か?いやこれからもっと値が下がると見るか。デパートをのぞいてみては。(2020年9月18日)
恐怖指数
誰が名付けたか知らないが、VIX指数(オプション価格から算出されるボラティリティの指数)が恐怖指数(fear gauge)と呼ばれることが多くなった。最近よく記事で見かける。価格変動の否定的な側面のみを反映したあまりよくない、もしかしたら意図的な、ネーミングである。ボラティリティが上がれがオプション価格はコールもプットも上がる。大きなボラティリティは投資家にとっては干天の慈雨であり、稼ぎやすい(もちろん損もしやすい)市場を意味する。恐怖指数を機会指数(opportunity gauge)にでも改名した方がよいし、そもそもVIX指数が特別有益な情報を示しているわけでもない。(2020年9月15日)
ソブリンファンド・テマセク
テマセクは言わずも知れたシンガポールの政府系投資会社で日本への投資も多いが、その運用資産残高が3月末で中国の資産(29%)がシンガポールの資産(24%)を初めて上回ったというニュースが流れた。中国のハイテク企業の時価が上がった今では中国のウエイトはさらに上がっているかもしれない。シンガポール政府のファンドが自国よりも他国への投資に使われている(稼いでいる)のは流石であるが、逆にシンガポール国内の投資機会をさらに増やす必要があるともいえる。(2020年9月12日)
大学ランキング、世界遺産、ミシュラン
ランキングや格付けは尺度を決めた側が勝ち組、踊らされた方が負け組である。大学ランキングを気にする時点でその大学は二流である。もののよさを判断するのになぜUNESCOやタイヤメーカーのお墨付きが必要なのか。そういった外部評価に過度にまぎらわされることなく正しいと思うことを信じればよい。興味があるのなら、尺度を決める側にならなければならない。大阪大学安田洋祐先生を見習ったらどうか。
https://sites.google.com/site/economistsjapan/list2
気が付いたら日本のラーメンの味もフランス人好みに変わっていないだろうか?(2020年9月10日)
B-Journal
以前に分野の異なる同僚とどのように研究業績をマネジメントしているかという話をしたことがあるが、彼は自分と全く異なったアプローチをとっていた。A-Journalでの論文掲載は必ずしも引用数に貢献しないとして、A-Journalに固執することなくB-Journal以下にどんどん提出することで引用数で業績を引っ張っていくというアプローチだった。確かに論文は引用されてなんぼだが、少なくてもNBSのテニュア審査ではA-Journal重視なので結構リスキーな方法だったと思うが、彼はもちろんテニュアを取った。(2020年9月6日)
A-Journal
今では一般的のインパクト・ファクターという言葉が知られるようになってきたが、研究論文が掲載されるジャーナルにはインパクト・ファクターに基づいた歴然としたランキングがある。その尺度を鵜吞みにすれば、インパクト・ファクターの高いジャーナルはインパクトの高い、影響力のあるジャーナルということである。ナンヤン・ビジネススクールでは分野ごとにトップ3ジャーナルほどをA-Journalといい、そこでの論文掲載数がテニュア審査においては決定的な意味を持つ。逆に言うとA-Journal以外でのジャーナルでの論文掲載はほとんど意味を持たない。もちろんあるに越したことはないが、その程度の貢献しかしない。分野ごとのトップジャーナルの定義については国や大学毎によっても異なるが、オーストラリアのように国レベルでジャーナルを明確にランク付けしている国もある。評価の公平性のためだろう。(2020年9月4日)
ジグソーパズル
私の指導教官が研究はジグソーパズルのピースをはめていくような作業だと表現したことがあるが、良い例えだと思う。例えば、すでに周りのピースが置かれているところにはめるピースを見つけることはさほど難しくない。そのような研究は新規性も少ないがその貢献は明確であり、論文提出やジャーナル掲載まであまり時間はかからない。もちろんよいジャーナルには載らない可能性が高い。逆に、置かれているピースに一辺しか接していないピースを見つけるのは困難だ。探すのに時間がかかるであろう。このようなピースを研究に例えるなら、論文は新規性の高い分だけ、学問的な貢献が理解されるのに時間がかかる可能性もある。特に社会科学では、自然科学と違いこんな発見をしました、では論文にはならない。その学問的価値を論文の中で説く必要がある。新規性が高いほどそれが難しくなり、テーマの選び方によってはジャーナル掲載まで何年もかかるか、結局掲載されずに終わることもある。
よって、論文掲載数を重視するような大学では、特にテニュア・トラックの研究者にとってはある一定期間内に成果の出るような(能力に見合った)研究テーマを選び、確実にアウトプットを出していくといった処理能力も問われる。逆に言うと、本来重要だと思える研究テーマでも、時間がかかるのであれば敬遠されることになる。これはテニュアを取った後でも変わらない。大学が研究業績を重視するあまり、学問的に重要なブレイクスルーになるような時間のかかる研究はしにくい環境になっているかもしれない。
話がそれるが、現在カリフォルニア大学サンタバーバラ校におられる中村修二氏は日亜化学工業在籍時に高輝度青色発光ダイオードを発明・開発されたことが評価されノーベル物理学賞を受賞したが、発明の対価の支払いに関して在籍した日亜化学工業との訴訟が話題になった。中村先生の研究への取り組み、発明に至るまでの人並みならぬ努力は評価に値するが、中村氏の発明に対する対価の主張は的を得ていない。中村氏は日亜化学に莫大な利益をもたらした、だから対価を受け取る権利があるとの主張であるが、ここで重要なのは結果ではなく、その研究に対する投資リスクを取ったのは会社だということだ。リスクを取って中村氏に研究を続けさせた会社に対して、従業員としての中村氏はまったくリスク取っていない。テニュア取得の心配もなく、営業が稼いできた利益が投資にまわされ長年研究を継続できたから成しえた偉業である。そういう点で、中村氏と日亜工業の訴訟において会社側の貢献を大きく評価した二審の判断は正当だ。
この判決結果から中村氏のおかれていた研究環境は良くも悪くも極めて異例だったことがわかる。大学の研究室ではこのような研究環境を見つけることは不可能に近い。生き残るためにはテニュア取得も必要だし、いくつもプロジェクトを抱え、学内業務のあり自由に使える時間も限られる。中村氏はエンジニアは夢のあるアメリカで勝負した方がよいと言っているようだが、彼が勝負できたのは日本、日亜化学だったからではないのか。日本ではインパクトファクターなどに左右されず、中村氏が偉業を成しえたような自由な研究環境を多く作ってもらいたいものだ。(2020年9月2日)
トヨタのカイゼン
トヨタのカイゼンと言えばビジネススクールのテキストになるような日本のお家芸であるが、カイゼンが目的化していないか。カイゼンは素晴らしいしコストを削減する。ただそれと同じくらいもしくはそれ以上に今の日本に必要なのは商品に価値をつけて高く売ることだ。シンガポールに出てきて成功している日本企業を消費者目線で見ても、デフレの勝ち組ばっかりだ。ドンキ、ユニクロ、ダイソー、最近ではスシローといったところか。確かにドンキの勢いはすごい。スシローもコロナ禍で店舗を増やしている。一方で、伊勢丹は店舗を閉鎖し、MEIDI-YAも移転によるかなりのサイズダウンである。いいものを作って安く売るのもよいがカイゼンを価値をつけることに活用できないか。安売りのためのカイゼンだけでは自分の首を絞めることになりかねない。(2020年8月30日)
ナンヤン工科大学
Nanyang Technological University (NTU) は正式な英語名。シンガポールの公用語の一つでもある中国語の正式名は南洋理工大学。では日本語はどうなるのか?以前、日経新聞でナンヤン工科大学と紹介されていたこともあるし、ウィキペディアや日本の大学ランキングの記事などでは中国語と同じ南洋理工大学と紹介されていたこともある。しかしNUSのことを新加坡国立大学とは言わない。まだ日本語では統一されていないようなので、これからはナンヤン工科大学にしませんか?(2020年8月25日)
アジア最大の木造建築物
私の在籍するナンヤン・ビジネススクールでは約150億円ほどかけてアジア最大の木造建築の新校舎を建築中である。NTUはシンガポールの西に位置し、一般的にイメージされるシンガポールとはかけ離れた自然豊かな場所にある。キャンパスは緑が多く、木造校舎は環境になじむだろう。コロナで当初より完成が遅れる予定だが2021年には完成予定。どんなオフィスになるのか楽しみだ。(2020年8月18日)
http://www.hey.ntu.edu.sg/issue39/first-look-at-ntu-newest-wooden-wonder.html
Time is money
秋学期は保険数理専攻の学生に基本的な時間とお金の価値の関係を教えている。授業の科目名はMathematics of Financeであるが、Financial Mathematicsといった方が一般的だ。イギリスIFoAのアクチュアリーを目指す2年生が受講する授業でさほど難しい内容ではないが、文系のファイナンス専攻の学生が履修できるような内容でもない。授業を履修しているのは主にビジネススクールの保険数理専攻の学生で、一部数学部の学生が自分でIFoAの試験を受験するために受講しにきている。内容的に数学専攻の学生が有利かと思われるが、そういう傾向は全くない。保険数理の科目は数学的な厳密さ焦点を当てるものではなく、最終的には実務で利用する応用数理であり、習得するには時間をかけて真面目に問題に取り組める能力がものをいう。そういったトレーニングを積んでいるのは保険数理専攻の学生のようだ。ちなみにナンヤン・ビジネススクールで保険数理を専攻する学生たちはNTUでも成績上位の学生のみであり、例年大学レベルで表彰される成績優秀者を出している。保険数理の専攻は学生のレベルが高く、またIFoAの認証を受けていることもあり、成績評価がほかの科目と比べて厳しいため高いGPAを得るのは難しい。それでも保険数理を修了することを誇りに思っているようだ。
授業では複雑なキャッシュフローの現在価値と将来価値の計算を様々なコンテクストで学ぶ。年金、モーゲージ、プロジェクト評価、債券価値などなど。後半の授業では確率論的な計算も入ってくる。ただ、授業の内容に関して最も大事なアドバイスとして毎年最初の授業で学生に伝えるのは、就職したらまずオンライン証券会社に口座を開設して毎月少しづつでいいから投資を始めた方がいいということ。あとで大きな違いが出るはずだからと。(2020年8月15日)
No more online seminar
NTUでは今学期からソーシャル・ディスタンスを取れる授業は基本通常の授業に戻った。春学期はオンライン授業がメインだったが、オンライン授業の方が意外に学生が積極的に参加することがわかった。チャットでの質問を許可すれば、アシスタントなしには対応しきれない数の質問が飛んでくる。いままでは大人しくしてたのは何だったんだというくらいの積極さだ。そのためチャットでの質問は許可しない同僚もいる。シンガポールの学生は人前で失敗することには抵抗が強いらしく、通常の授業では発言は非常に少ない。距離を取りながらだとグループワークなども難しく、当面対面授業とオンラインとハイブリッドでの運用となる。(2020年8月12日)
Hive
NTUのキャンパスにはとてもユニークな建物が多い。私のオフィスの前にある効率など完全に度外視した半端ない建築物がHive(ハチの巣)と名づけられた校舎だ。学生が集って学ぶ活気のある場所になってほしいという願いがあるか。下の写真を見てのとおり、外側が丸みを帯びたコンクリートで囲まれており、外光を取り入れる窓はほとんどない。シンガポールは地震リスクは低い(といってもインドネシアで大きな地震があった時に少しゆれを感じたことはある)ため、日本では耐震基準など厳しい建築基準では建てられなさそうな建築物が多い。建築家にとってもシンガポールはチャレンジのできる場所かもしれない。
特にNTUの建築物は日本人が密接に関係している。大学の主要な校舎は開校時に丹下健三氏が設計したものであり、2017年に完成した環境に配慮した新体育館Waveは伊藤豊雄氏のデザインである。 (2020年8月10日)
NTU職員研修
NTUではすべての教職員や研究員が必修の研修制度が多くなった。オンライン学習のシステムが整ったこともそれを後押ししている。サイバーセキュリティ―の研修ではどのように情報を管理(保有、共有)すべきか、また必要な管理を怠った場合のペナルティーなどを学ぶ。リスクマネジメントの研修では、職場でのリスク管理、重い荷物を持つ場合のDos and Don'tsといったことから多岐にわたるトピックがカバーされる。それぞれのトピックで数講座が用意されており、どれも一講座2時間程度の動画だが、必ず最後にテストがあり、80%くらいの点数を出せないと修了とならない。真面目に受講していないと落ちてしまう。おそらくすべての記録が残されているだろうから、あまりへたなこともできない。しかも新しい講座が次々追加される。必修科目以外にも多くのトピックが提供されている。「パフォーマンスを上げるための朝の習慣」や「ビジネス・ケースの書き方」、「チームでの働き方」などなど、面白そうなHow toものもたくさんある。
またコロナでオンライン授業が一般的になってからは、ZoomやBB Collaborateの活用法に関する研修が次々と催され、一時は週に2回くらいオンライン授業に関する研修を受けていた。とはいえ、大学の授業は分野によってかなり授業の運営方法が異なるし、またアシスタントがいるか否かで使える技術も違ってくるので、他の先生が使っている手法をそのまま自分の授業で使えるわけではない。ただ、新しい手法は次々出てくるので、こういった研修で情報共有してもらえるのはありがたい。(2020年7月22日)
リサーチアワード、10年勤続賞
ナンヤン・ビジネススクール・リサーチアワードを受賞した。昨年度の研究実績に基づいてビジネススクールの中で優秀者に授与されるもので、受賞できたのは光栄なことである。また、今年で勤続10年になり、勤続10年賞ももらうことになった。例年であればマンダリンホテルで開催される豪華なパーティーの中で大々的に表彰されるのだが、このコロナ禍である。パーティーはもちろんのこと、表彰自体がなくなった。人事から賞状を渡すからと言われオフィスに行ったのだが、事務員さんから賞状を渡され、そこに受取のサインをしていってね、と言われて終わった。
10年勤続なんて別に特別なことでもないと思っていたが、よくよく考えてみると私の所属するファイナンス科では、2008年から2013年までの間に着任した者が10名以上はいたと思うが、その中で現在在籍するのは私のみになってしまった。そういう職場では10年勤続も希少価値はある。
話はそれるが、以前長年NTUに勤める同僚がシンガポールに職を得てくる外国人は大抵最初の3年間はシンガポールはいいところだと言うが、次の3年間でいろいろと文句を言い始め、次の3年間のうちに去っていくと言っていた。ある意味納得であり、シンガポールはターンオーバーのとても速いところである。(2020年7月15日)
サルとの共存
コロナでキャンパス内の人気がなくなり静かになったせいだろう、キャンパス内でサルの目撃情報が増えているらしい。我が家の窓の外にも何度かお越しになられたので写真を取らせてもらった。シンガポールに多く生息する尾長ザル(long-tail macaque )が木の実を食べに来たようだ。これまでもキャンパス内の歩道でサルやヘビを何度か見かけたが、家の窓から長時間間近に見られたのは初めてだ。ちなみに数年前に大学のオフィスの階下で3メートルの大蛇が目撃されたという注意喚起のメールが送られてきたが、その後ヘビを捕獲したという連絡はいまだにない。まだきっと近くにいることだろう。最近のサルの出現はキャンパスでも問題となり、各種啓蒙活動が行われている。基本的には食べ物をなくなれば来ないので、見えるところに食べ物を置かない、ゴミ箱を開けられないように紐で縛る、木の実を定期的に収穫する、餌をやらない、家に入ってこられないようにするといった指導があった。(2020年7月1日)
オリンピック
オリンピックの度に経済効果の名のもとに大切なものが毀損される。1964年の東京オリンピック前に都心部の渋滞解消のために建設された首都高速道路は日本橋の上に高速道路を通した。日本橋は江戸時代から日本を代表する橋であるが、その橋の上に高速道路が50年以上またがっていたのである。東京に住んでいると日本橋を特に意識することもないし、高速が上をまたがっている光景が当然であるので、あまり気にはならない。ただ、日本に時折帰国するくらいになると、おそらく外人目線で物を見るようになるのか、とても気になる。これまで多くの国を訪れてきたが、そんなことをする(できる)国を知らない。その日本橋に架かる高速は老朽化もあってか、近いうちにトンネルを作って高速を地下に埋めるらしい。
今回のオリンピックでは、羽田空港の国際便発着増加をにらんで、国土交通省は羽田発着の新飛行ルートを設定し、今年3月から運用を開始した。特に南風時に午後使用されている着陸ルートがなかなかすごい。板橋区あたりを1200mで通過し、着陸する滑走路(A滑走路、C滑走路)によって若干違いはあるが、そこからまっすぐ羽田空港に向かって南下し高度を下げながら新宿(約900m)、渋谷・表参道(約750m)、目黒・白金(約600m)、大崎・品川(約450m)、大森(約300m)の上空を飛んでいく。
国土交通省は住民の同意が得られるよう騒音と落下物に関しては配慮しているようだが、そもそも大都市の上空数百メートルを毎時数十機の飛行機が通過するということをどのように理解しているのだろうか。羽田の国際線需要が高いからこのような飛行ルートを設定するのだが、その需要に見合った魅力を東京は提供できるのだろうか。頭の上をバンバン飛行機が行くような都市に人々や企業は魅力を感じ続けてくれるのだろうか。またテロリスクを含めてどのようなリスク評価をしているのか。リスク評価をした責任が誰にあるのか明確にしておいてもらいたい。東京のような大都市の上空を通って着陸する空港は他に見当たらない。昔の香港啓徳空港くらいか。前のオリンピックから50年たった今でも、経済優先の名のもとに評価されにくい、しかし大きな価値が毀損される。東京の上空に飛行機を飛ばすくらいなら、静岡空港を拡張して真下を通る新幹線の新駅を設置すればかなり分散できるはずだ。静岡空港から新幹線で東京も名古屋も一時間でアクセスできる。そんなことは簡単にできるはずだが、なぜしないのだろうか。(2020年6月20日)
島根県人口シミュレーション2020
日本の地方では人口減少が深刻な社会問題となっている。島根県が今後の人口動態のシミュレーションをまとめた「島根県人口シミュレーション2020」を公表しているが、そのなかで2020年現在約67万人ある人口が、合計特殊出生率が2.07まで2035年までに上昇し、社会移動による人口減が2030年にゼロになるという「島根創生計画」の目標が達成できれば、2130年では43.3万人の人口が維持されるとしている。それでも36%の減少だ。では特段の対策を講じない場合での予想人口はというと2130年で11.6万人となる。110年で人口が83%減少する推計だ。しかしながら、この予想も最悪のシナリオに基づいたものではなく、合計特殊出生率が1.63で今後一定、社会移動の減少率も一定で継続した場合を仮定している。もし出生率が予想よりも低くなり、かつ島根県からの転出が続けば、以前からまことしやかにささやかれる島根県消滅も現実味を帯びてくる。あと100年くらいで県内人口がゼロになるというのだ。
ただ東京をはじめとした大都市は明らかに人口過密であり、今後は豊かな生活を求めて地方に若者が戻ってくることも予想できる。島根県は新幹線も通らず、山陽側の主要都市である岡山や広島へのアクセスも、尾道松江線などの開通によりかなり改善はしたものの、相変わらず時間がかかる。しかしアクセスの悪さが結果的に都会化を防ぎ、山陰らしさを維持できているともいえる。そうした田舎の個性に魅せられる人も多いはずだ。図らずもコロナによって多くの仕事が住む場所を選ばなくなった今、今後転入による人口増があってもおかしくはない。(2020年6月13日)
会計とビジネス
日本ではあまり聞かないが、NTUを含め多くの大学で学部生がビジネススクールに所属する。日本の商学部みたいなものだと思ってもらえればよい。それ自体は普通のことなのだが、シンガポールの大学NTUやNUSのビジネススクールは他国の大学と1つ大きな違いがある。それは学部のプログラムや学位が会計(Accountancy)とビジネス(Business)に分かれるのである。例えばNTUの場合、学生は受験の時点で会計専攻かビジネス専攻か選ばないといけない。取得する学位もBA in AccountancyとBA in Businessに分かれる。多くの大学では、会計はビジネスの中の1つの専攻として、ファイナンスやマーケティング、マネジメントといった専攻と同列に扱われる。ただ、NTUやNUSでは会計だけは別枠(別格)扱いとなり、会計かそれ以外(ビジネス)になる。NTUでは会計の学生数がビジネスの学生数とほぼ同じになり、会計プログラムの規模が大きい。会計専攻で入学すれば会計以外に専攻を変えることはできない。一方で、ビジネス専攻で入学すれば、2年目にファイナンスやマーケティングといったいくつもの専攻(会計以外)から1つを選ぶことになる。
オープンキャンパスや奨学金のインタビューで何度も入学前の学生と話をしたことがあるが、会計を勉強したいという学生が多い。もちろん会計はビジネスにおいて最も重要な知識ではあるが、かなりの金勘定偏重である。おそらく学生は両親や先生に会計を薦められるのだろう。これには異国の地において商業で富を築いてきた華僑文化が背景として関係しているのかもしれない。それでもここ数年は、会計の人気も少しずつ落ちてきたという。今の人気はData Analyticsだ。(2020年5月10日)
Jurong Fishery Port
シンガポール最大の魚市場であるジュロン魚市場はNTUの位置する西ジュロン地区の南に位置し、ジュロン・バードパークのそばにある。日本の魚市場のように深夜から活発な取引が行われ、明け方までには店じまいになる。そもそもこの魚市場は一般の立ち入りはできないが、少し前に大学が見学を企画したので参加することにし、夜中の3時に魚市場までタクシーを走らせた。参加を決めたのにはシンガポールの魚市場を見てみたいという単純な理由の他に、なにか買ってもいいと思える魚がないかを確認したかったのである。残念ながらシンガポールに来て以来、おいしいと思えるローカルの魚に出会ったことがなかった。ただそれは自分の知識不足なだけで、魚市場に行けばなにかいい魚に出会えるのではないかという期待があった。
魚市場の入り口で他の参加者たちと合流し、市場関係者から説明を受けながら内部を見学して回った。理解が間違っているかもしれないが、多くの魚はインドネシアで水揚げされたものがこの市場に運ばれてくるとのことだ。またエビなどは空輸だと言っていたと思う。私たちが主に見学したところは日本でいうところの仲卸業者が区画ごとに並んでいるところで、かなり取引も終わりかけているような感じであった。そんなこともあってか、あくまでも日本人的な感覚ではあるが、旨いローカルの魚はないだろうというのが個人的な結論だ。理由は簡単で、魚の保存状態が極めて悪い。シンガポールの高温多湿な気候の中で数時間もの間、氷も使われてはいるものの、コンクリートの地面に魚が種類ごとに山積みされているだけである。業者は残った魚を蹴飛ばして扱っていた。鮮度があまりよくないのは市場内のにおいでも感じ取れる。ただその中でおそらく2種類だけ、目のよどみの少ない比較的鮮度のよさそうな魚を見つけることができた。さわらとアジである。たださわらとアジの鮮度がよさそうなのはフェアプライスの魚売り場でわかっていたので、新しい発見ではなかった。
東南アジアでは魚を生で食べる文化はないので、鮮度管理という概念があまり浸透しなかったのだろう。ただ周辺の海洋資源を考えると、漁師や市場が一体となって鮮度対策を講じれば、数段おいしい価値の高い魚を市場に提供できるのではないかと思う。シンガポールを含めて東南アジアでは高級食材の需要は十分ある。そういった意味での東南アジアの魚市場のポテンシャルは大きい。鮮度管理という点では優れた知見を持った日本の漁業関係者にとっては流通インフラ整備を含めて大きなビジネスチャンスがまだたくさんあるように思えるがいかがだろうか。(2020年4月3日)
シンガポールは2度夏がくる
地球は太陽の周りを公転しているが、地軸が23度ほど傾いているため公転の位置によって太陽との距離が変わる。北半球では夏至の時に太陽との距離が一番近くなり、太陽が一年のうちもっとも高い位置を通る。逆に冬至の時期には太陽との距離が一番遠くなり、太陽の位置がもっとも低くなる。夏では日中影が短くなるのに対して、冬では日中でも影が長いままであることからもそのことがわかる。
シンガポールに住むとおそらく一度は影がなくなるのがうれしくて足元の写真を撮ったりするだろう。シンガポールは北緯1度のほぼ赤道直下であり、春分と秋分の時期に太陽が真上に来るため、その時期の午後1時頃に影がほとんどなくなる。南国にいることを実感できる瞬間である。人間ほどの身長でも影がなくなるが、5メートル以上あろう街灯の影もほとんど見られないほど太陽が真上(ほぼ90度)に来る。
シンガポールは常夏の国であり、気温の変動は少ない。11-2月にかけては雨量が増えるため若干涼しくなるが、年間の最高気温が30-32度、最低気温が25-26度の変動であり、日本的な感覚からすればずっと夏が続く。しかし、地球の公転の位置によって太陽の位置が遠くなるのは、程度の差こそあれ日本と変わらない。シンガポールでは日本の冬至の時期には太陽は南側に、夏至には太陽が北側にそれ、太陽の高度も65度程度まで落ちてしまう。ただ日本と違い、春分と秋分の時期に太陽が真上を2度通り、冬至と夏至では太陽が南側と北側に2度それるという意味では、シンガポールには夏と冬が2度やってくる。(2020年3月22日)
壊す国
日本は壊す国である。伊勢神宮ではこれまで1300年にわたって式年遷宮で20年に一度宮地を改め、社殿 が造り替えられてきた。これまで62回目の遷宮が行われてきたらしい。そのことによって、いつでも新しく、またいつまでも変わらない姿を望むことができるとの事であるが、こういった古来からのしきたりは日本人の価値観に大きな影響を及ぼしているのではないか。だからこそ日本人は作っては壊し、古いものに価値を見いだせない感覚を持っているのではないか、あくまでも仮説であるし、内生性があることも否定しない。
車のブランドを例として考えるとわかりやすいかもしれない。日本の自動車メーカーは技術は育てていくが、車種のブランドを年月をかけて育んでいく気はない。人気ブランドであろうがなかろうが次々と姿を消していく。対照的に、欧州の自動車メーカーはブランドを育てる。例えば、BMWであれば、3シリーズ、5シリーズなど単純すぎるほどの車種展開で、BMWの3シリーズはこういうものであるというブランドを位置づける。時間が物語を作り、信頼を生み、語り継がれた物語が価値を生む。会社名も同じである。例えば日本の主要銀行で昔から続いている名前はない。合併を繰り返してきたからであるが、金融機関は信用商売であり名前イコール信用である。国内は別としても、海外において、頻繁に名前の変わる金融機関はすくなくともリテール事業では認識されづらい。AXA、Prudential、Citi、Allianzに匹敵する日本社名がでてこない。
ちなみに出雲大社の遷宮は伊勢神宮よりサイクルの長い60年に一度の大遷宮である。(2020年3月10日)
ナンヤン・ゲートウェイ
山手線にできた新駅のような名称であるが、2028年にはMRTのナンヤン・ゲートウェイ駅が我が家の前にできるようである。朗報だ。シンガポールのMRTは街の中心地は地下を郊外は地上を走る鉄道であり、シンガポール内に縦横に路線が伸びている。ところがNTUはシンガポール島内でも西の端に位置し、居住圏の西の果てであることもあり、MRTの駅は徒歩圏内にはない。MRTからは取り残された地域である。キャンパスから最も近い駅である東西線のパイオニア駅もしくはブンレイ駅までバスで10分以上はかかる。だがこのMRTの計画によると、NTUキャンパス内に駅が2つ設置され、ブンレイ駅やジュロン・イースト駅までアクセスできるようになる。残念なのはこの路線はMRTの主要路線より規格の小さいものであり、また中心まで直接伸びる路線ではないので、街に出るには結局乗り換えが必要だ。(2020年3月2日)
ドアを閉じる文化
ナンヤン・ビジネススクールの大多数の教員は北米でPh.Dを取得しており、北米での経験を経てシンガポールに来ている。アメリカからNTUに来て感じる文化の違いの一つに、NTUでは基本みな仕事中にオフィスのドアを閉める。もしかするとこれはアジアに共通することなのかもしれないが、アメリカの大学ではオフィスにいる場合は基本オフィスのドアを開けたままにする。これが普通だと思ってシンガポールに来ると、オフィスの閉鎖的な環境にすこし戸惑う。アメリカから着任する多くの者が着任当初はアメリカで経験してきたようにオフィスのドアを開放したままにする。2-3か月もすると、ドアがかろうじて開いている程度になり、気が付くと他のものと同様に完全に閉じてしまう。自分もそうであった。着任当初はドアを開放することで同僚とのコミュニケーションが活発になると期待するのだが、数か月もするとそういった環境ではないということが理解でき、最終的には自分だけドアを開けていることに意味を感じなくなる。数年前に一度ビジネススクール全体でドアを開けようという試みがあったが、結局失敗に終わっている。ドアを開放するのは学生がオフィスに来た時だけだ。
なぜこのようなオフィス環境の違いがあるだろう。確かに仕事に専念するのであれば、雑音は最小限に抑えたいのでドアは閉じておいた方がいい。しかし、オフィスをコミュニケーションの場と考えるのであれば、ドアを閉じるのはナンセンスだ。おそらくアメリカとアジアではオフィスの意味、オフィスでする仕事に大きな違いがあるのだろう。(2020年2月15日)
寄りの写真
寄りの写真とは被写体をフレームいっぱいに撮る手法であり、よく使われる。たとえば人や動物の表情をとらえたりするのに有効だし、料理も寄り気味で撮った方がおいしそうに映る。一方で、気をつけたいのは、寄りで撮られた写真には寄ることで不要な情報を意図的にフレームから外している場合が多いということだ。わかりやすい例は、札幌の時計台。札幌の時計台は大体下から見上げる感じで建物を寄りで取られることが多く、この写真だけ見て現地に行くと周りが高い建物に囲まれていることに少し驚く。札幌は大都市であり、街の中心にあれば高い建物に囲まれるのも当然であるが、現地に行ってがっかりしたという声をよく耳にする。イメージとのギャップが大きすぎるのだろう。こんな例でだして申し訳ないが、例えば慶應義塾大学のイメージと言えば、三田キャンパスにある図書館旧館の赤煉瓦の建物だろう。ほとんどの場合、慶応大学と言えばこのゴシック様式の建物がズームになってフレーム全体に写っている写真がでてくるので、多くの人がこういった建物が多く並んだ美しいキャンパスを思い浮かべるだろう。では、その写真のイメージのまま三田キャンパスを訪れるとどうなるかというと、歴史的な赤レンガの建物はほんの一部でしかないことがわかり、少しイメージと異なる。同様に、早稲田大学と言えば大隈重信像側から奥にある大隈記念講堂を寄りで写った写真が頻繁に使われる。これもこの一点しかないというアングルで寄りで撮ることで周りにある建物をフレームから削ぎ落としている。シンガポールで言えば、カトンにあるプラナカン建築の写真。これも5軒くらいのカラフルな家を寄りで映して、周りのあまり写真映えしない建物を落としている。最近では、不動産物件、飲食店、宿泊先などを選ぶときに写真が重要な決め手になったりするため、こういった印象操作が注意深くなされている。特に寄りの写真しか見当たらないような場合には注意が必要だ。(2020年2月2日)
オンライン授業
コロナの感染を防ぐため、今学期はすべてオンラインで授業を行うことにした。NTUではこれから50人以上の授業はすべてオンラインに移行し、50人未満の授業では講師の判断でオンラインか通常の授業を選ぶことになった。私の授業はすべて50人未満であるが、50人以上はオンラインという判断を大学がしている以上、人数が少ないという理由で通常の授業をするという判断はなかった。NTUではこれまでもリスク管理の一環として、毎学期必ず1週はオンラインで授業をしなくてならなかったので、オンライン授業には全く問題はない。ただ、クイズや中間テストといった評価をオンラインで公正に行うのは非常に難しい。(2020年1月25日)
NTU
NYUはニューヨーク大学、ではNTUは?Nanyang Technological UniversityとNational Taiwan University(国立台湾大学)の2つがNTUとしてよく知られている。台湾大学にはこれまで何回も訪れているとこともあり親近感を感じる。もちろんそれ以外にも台湾大学は日本人にとっては特別な存在だ。台北にある台湾大学のメインキャンパスには旧帝大の名残を残した美しい赤レンガ造りの建物が今でも数多く残っている。老朽化がすすんでおり、いつまで見られるか。また建物を使用している方々の苦労もうかがえる。台北の中心地にある台湾大学医学部付属病院の建物はさらに重厚感がある。台湾を訪れる機会があればキャンパスを散歩してみるのもいい。日本ですでに失われたかつての日本に接することができる。(2020年1月21日)
テニュア審査
テニュアを取得できるかどうか、その意味は大学以外ではあまり知られていないし、日本ではそもそもテニュアってなに?といった程度の認識であろう。テニュアとは終身雇用のことであり、日本の大学でも近年ではテニュア・トラック(テニュアの審査に入る権利を有する職位)の教員採用を行うところもあるが、その運用が一般的というほど普及していないようだ。アメリカ的な大学の雇用システムの中でキャリアをスタートする若手研究者にとって、テニュアを取れるかどうかは最大の関心事であり、そのために全精力を傾けるといってもいい。つまり、大学との雇用契約は一定の試用期間後に終身雇用になるかが決まるのである。
テニュアの審査では研究者を研究論文の量と質、教育の評点、外部からの推薦状、学会での貢献、学内業務等で総合的に評価し、業績が十分な研究者の契約を終身雇用に切り替える。審査が通るかどうかはそれまでの研究業績からだいたい予想できるものの、特別優秀な研究者を除いては不確実性が残る。特に本人と関係のない学会関係者数名(NTUでは関係者(指導教官や共著者)から3通、関係ない者(客観的に接点がない者)から3通)から審査委員会に送られる推薦状は本人のコントロールの及ばないところになる。ここでは研究業績以外にも学会での積極的な活動やネットワークが重要な役割を果たす。面白いもので、否定的な推薦状の方が被推薦人の人間性について有益な情報が含んでいることが多く、審査委員は推薦状にある否定的なワードに目を光らせる。
研究者にとってテニュアの取得は終身雇用になることによる経済的な価値はもちろんのこと、研究者としてのキャリアの信任という意味での社会的な価値が大きい。海外の若手研究者のレジュメを見るとテニュア取得と明記していることが多いのはそのためだろう。
研究業績(論文の質と数)が十分でなければそもそも学部やスクール内で申請に必要のサポートを得られず、テニュアを申請することなく次の職探しになる。NTUではテニュア・トラックの採用であればテニュアの申請は2回までできる規定になっているが、2回目の申請をしたという話は聞いたことがない。おそらく有意義な申請に必要な学内のサポートは得られないのであろう。また私の在籍するナンヤン・ビジネススクールに限れば、おそらく半数以上の若手研究者はテニュアを取ることなく大学を去ることになり、隣のオフィスの人間が気付かないうちに退職していなくなっていることもあった。(2020年1月15日)
JR Pass
ジャパンレイルパス(JR Pass)は観光目的で訪れる外国人向けの乗車券で、この乗車券を購入すればJR各社の鉄道のみならずJRバス、JRフェリー、東京モノレール等を含めて一定期間無制限(のぞみに乗車できないなどの制限はある)に利用できる。たとえば、7日間有効の普通車用パスであれば、おとな29,650円である。東京―新大阪の新幹線普通往復料金がおよそ28,000円であることからもJR Passの割引率が非常に高いことがわかる。日本人にとってもとても魅力的な乗車券であるが、残念ながら訪日外国人向けであり日本人は購入できない。おそらくヨーロッパにあるユーロレイルパスの日本版といったところで、訪日観光客がこのパスを使って日本中を旅することによる全国への経済効果を見込んでいるのだろう。その効果か、新幹線ひかりやこだまに乗ると外国人観光客がとても多い。日産の元社長カルロス・ゴーン氏が東京から大阪に移動する際、カモフラージュのためにのぞみではなくあえて外国人の多いひかり利用したといわれるくらいである。しかしJRの利用促進という目的においては日本人がJR Passを購入できるようにしてもいいのではないだろうか。日本の鉄道、特に新幹線は割引も少なく、個人旅行で利用するにはかなり割高感がある。(2020年1月11日)
席は譲るが道は譲らない
海外に住んでいると日本との違いを感じられることが多く面白い。例えばシンガポールで電車に乗るととても感心するが、乗客はお年寄りや子供連れによく席を譲る。何のためらいもなく自然にそれができる。比べて日本ではどうだろう。優先席を除けば基本譲らない。みな眠ったふりをしてやり過ごす。高齢者が多いというのも原因かもしれない。そうかと思うと、シンガポール人は道は譲らない。向かって歩いていくとぶつかるギリギリまで道を譲らない。日本人は逆に道を譲るのは得意であり、向かってくる人とぶつかりそうになることはまずない。二人で並んで歩いていても、人が向かってくれば一人がすっと下って、向かってくる人に十分なスペースを作る。そういったことは感心するほど自然にできる。人はみな生きている環境の中で行動を最適化しているだけだから、所変われば行動も変わる。(2020年1月4日)
損保ジャパン
もう半年ほど前のことだったろうか。損害保険ジャパンが2020年度末までに、従業員4000人程度を介護などを手掛けるグループ企業に配置転換するというニュースがあった。4000人は全従業員の15%にあたるといい、多くの人がまったく新しい業務に異動になる。自分は安田火災出身ということもあり他人事とは思えずこのニュースには注目したが、世間の注目はさほど集まらなかったような気がする。経営者に対する評価という点では、二つ全く異なる評価ができる。ひとつは見事な方法だというポジティブな評価。前段として少し説明が必要だが、保険会社というものはざっくりと二種類に分けられる。ひとつは様々なリスクを取って利益を出すことを本業にする保険会社。もう一つは、定型の保険商品を数多く売ることで利益を出す販売メインの保険会社。日本の保険会社は基本的に後者である。このタイプはローカルの市場に依存するため、保険市場の拡大期は利益を出しやすいのだが、市場の縮小期では競争が激しくなり利益は出しづらい。日本のような少子高齢化で人口が減少傾向に入る市場では、従来からの定型保険商品の大量販売というビジネスモデルからの利益はこれまでほど見込めない。そのため今後の戦略として保険の本業を補完する業態に進出する。損保ジャパンは比較的早い段階から介護事業に進出していたのである。本業がITの進歩もあり人手が余るため、それを介護事業で活用する。とても素晴らしい方法である。この妙手には損保ジャパンがたたかれない2つのポイントがある。一つは異動先が介護事業であるということ。介護事業に配置転換とはなど何事だと騒ぎ立てれば、騒いだ方が世間からたたかれる。二つ目はあくまでも配置転換であり、少なくとも表面上は退職を募っているわけではない。異動が嫌なら辞めてくださいということだ。
一方で、この戦略は損保ジャパンが保険の本業でこの人材を生かすことができなかったという、経営的にネガティブな側面もある。保険市場は縮小する日本に限らない。拡大を続けるアジア、これからの発展が期待できるアフリカなど拡大する市場はまだいくらでもある。こういった市場で損保ジャパンがプレゼンスを得るために人材を生かせなかった、またそういった人材育成をできなかったということだろう。現実的なオプションでないことは想像に難くないが、損保ジャパンに限らず今の日本の会社にはそういった一見無茶なチャレンジをする元気がほしい。(2019年12月25日)