第四十號

特集「幽玄」 2017年3月


◇作品解説


『ヴィトリーヌ』は、山口の初期の代表作として知られる半立体的な絵画作品のシリーズです。1952年から58年までの6年間に、80点近くもの作品が生み出されており*、本号の作品はその37番目にあたります。『ヴィトリーヌ』の最大の特徴は、表面に凹凸のある特殊なガラスを縦横に積層させる独自の構造と作品を眺める鑑賞者の動きによって、静止したイメージに動的な変化が生じる点にあります。作品の最終的なフォルムが鑑賞者に委ねられているという点で、今日のインタラクティブアートへと連なる先駆性を認めることができます。「幽玄」という本号のテーマから、ゆらゆら微細にと変化する『ヴィトリーヌ』のイメージを想起したのだと思われます。



*北市記子「メディアアートの先駆者・山口勝弘の思考と表現」,大阪芸術大学 甲博文第20号,

2019 年,p.93