第二十號

特集「鳥」 2007年3月


表紙の言葉


Inmobilemanと云うタイトルは日本語にすると「不動人」である。これは、携帯電話とインターネットが世界的に普及し始めた今世紀の人間の行動様式を批判的に捉えたイタリアの美術評論家のヴィットリオファゴーネさんが企画した展覧会のタイトルである。私自身の日常生活が車椅子無しでは動きが取れなくなって来た三年前に、宇宙をテーマとした絵画制作が本格化した頃のことである。そして車椅子に乗って宇宙旅行をしている少し自嘲気味に自分の姿を描いたのが、この作品である。スペースシャトルの窓外に宇宙蛍が翔んでいるではないか。



◇作品解説


山口が言う「宇宙をテーマとした絵画作品」とは、彼が『テアトリーヌ』と名付けた一連の作品群のことを指しています。突然の病魔に襲われ、図らずも「死」というものを見つめ直すこととなった山口は、既に故人となった友人や、事故で宇宙の塵となってしまった宇宙飛行士らに想いを寄せます。彼の終の住処であった介護施設の自室には、科学雑誌「Newton」が大量に置いてありました。貪欲に最新の科学に触れながら、宇宙への空想の旅を楽しんでいたに違いありません。