創刊號

特集「能」 1997年7月


表紙について


 西山先生の見事な題字が送られて参りました。さてどのような絵のイメージを配すべきか。考えは迷うことなく決まりました。

 はじめて発表する「ローマのドローイング」(一九六一)シリーズの一枚を選びました。ペンシオーネ「オレステ」の一室で描いたものです。浮遊する発芽、旅先の夢のかけら。



◇作品解説


1961年10月、山口は人生初の海外渡航となる欧米への長旅に出発します。イギリス、フランスを経てイタリアに入り、ジェノバやミラノ、ローマを訪問していますが、記念すべき「紫明」創刊號の表紙には、旅の途中ローマの小さな宿で描いたドローイングが選ばれました。この旅は山口にとって、その後の新たな方向性を決定づける極めて重要なターニングポイントとなるもので、そうした自身のストーリーを「紫明」の門出に重ね合わせたのだと思われます。