第七號

特集「建築」 2000年10月


表紙の言葉


アテナイのパルテノンを建立する時の人間のエネルギーとその後崩壊のために使われたエネルギーを考えるとき。

いまのパルティノンはまさに大蛤の気にゆらめく蜃気樓のようなもの……。



◇作品解説


屈強な石造りのパルテノン神殿が崩壊するには、膨大な時間の経過が必要となります。山口はそうした人知を超えた時間の圧倒的なスケールに思いを馳せます。ここで彼が「いまのパルティノン」と表しているのは、表紙にも描かれている自身のビデオ・インスタレーション作品『モレルの発明』(1991)です。本號のテーマ「建築」から、神殿を模した形状の本作品を連想したと思われます。装置の中に埋め込まれたモニターには様々な映像が映し出され、記録された現実の光景が電子情報へと変換されます。現実とは異なる情報化された浮遊するイメージを、幻想的な蜃気楼に喩えたのではないでしょうか。