「無期転換逃れ」の雇止めを許さない

高知県立大学雇止め無効訴訟を支援する会

【署名活動にご協力下さい】

最高裁判所に厳正な判決を求めるため、署名活動を行っています。
本件裁判は、労働契約法第18条の立法趣旨に即した労働法理を確立し、有期労働契約労働者の将来を守るためにも大変重要な裁判です。
何卒署名活動にご協力下さい。

(1)高知県立大学「無期転換逃れ」雇止め訴訟の概要

高知県立大学(高知市)に有期契約職員として勤務していた男性が、無期労働契約に転換する直前に雇止めを受けた不当雇止め事件について、高知地裁は2020(令和2)年3月17日、大学の行った雇止めを労働契約法に反する違法な雇止めとして、男性の労働契約上の権利を認めました。しかし、大学は、全く反省することなく控訴に踏み切りました

原告の男性は、大学から約1年半もの長期に渡って粘り強い就業の勧誘を受けたため、平成25年に都心より高知県に移住して就業を開始。その際、大学は男性に対し、少なくとも平成31年3月31日までの6年間は契約を更新する旨を約束し、6年目以降の雇用についても、「安心していい」などと発言して男性を移住就業させました。しかし、大学は、「うちは労働契約法を採用しない。辞めてもらう必要がある」と発言し、無期転換申込権が発生する直前の平成30年3月31日、男性を雇止めました。

そのような発言等から、本件雇止めが労働契約法(以下、「労契法」と記載。)18条の無期転換ルールを潜脱するために行われた違法な雇止めであることは明らかであり、高知地裁は、
「被告は、労契法18条1項による転換を強く意識していたと推認できる」と指摘し、雇止めを無効と判断しました。また、同地裁は、男性が提訴当初より一貫して無期転換を主張していたことから、「遅くとも平成31年3月31日までの間に、原告が被告に対し同条同項に基づく無期労働契約締結の申込みの意思表示を行ったと認めるのが相当」と判示し、無期転換を認めました。

無機期転換逃れの5年雇止めは、2017(平成29)年頃より全国の大学でも問題となっていましたが、東京大学早稲田大学長崎県立大学などの大学で撤廃・撤回されてきました。また、熊本赤十字病院福岡博報堂など、訴訟に至ったいずれの事案においても、労働者の権利が認められる形で終結しています。このように全国で無期転換逃れが撤廃・撤回され、労働契約法第18条の立法趣旨に即した判例法理が確立されている中、高知県立大学のみが無期転換逃れの5年雇止めを許されるわけがありません。

男性は、有期労働契約労働者の将来を左右する労働契約法第18条の立法趣旨に即した労働法理を確立し、同じような雇止めが行われることを未然に防ぐためにも、勇気を持って立ち上がり、本件裁判を提訴され、およそ2年に渡って正義を主張し、高知地裁で勝訴判決を得ました。

(2)控訴審における大学側の主張(令和2年10月2日追記)

高知地裁判決で雇止めが「無効」と判示されたにもかかわらず、大学は全く反省する様子もなく、控訴審においては、男性の正当な主張を「作り話」と称し、「(男性の側から)長期雇用の提案を受け入れなかった」などと有り得ない虚偽主張を行い、男性に責任転嫁して違法な雇止めを正当化しようとしています。

また、当初の労働契約締結の際、男性の労働条件(賃金・昇給等)を県職員規定(定年までの労働条件が記載)に基づいて取り決めたのは大学側であり、その後「うちは労働契約法を採用しない。辞めてもらう必要がある」などと労働契約法18条を潜脱する発言をした上で、男性を違法に雇止めたのも大学側であるにもかかわらず、大学は男性を、「額に汗して働かず、高い給与だけを得ようとする労働者」と侮辱するなど、全く悪質な主張を行っています。

2013(平成25)年の契約締結の際、大学側が男性に対し、6年間の雇用継続を約束していた事実は、すでに高知地裁においてメールや録音など幾多の証拠で明らかとなっており、高知地裁の判決においても、「
原告が、●●副学長との面談において、6年間の雇用継続を約束されたり、まずは1年間の契約を試すよう提案されたりして、契約締結の説得を受けた」(地裁判決文48頁)と明確に示されています。

にもかかわらず、今になって、男性の側から「6年間雇用継続の提案を受け入れなかった」などと虚偽の主張を行い、男性に責任転嫁して違法な雇止めを正当化させようとする大学側の態度は全く悪質なものであり、断固許されるものではありません。

また、高知県立大学理事長の任命権は高知県知事が有するにもかかわらず、本件雇止めについて、高知県は、訴訟前から「県は関係ない」と回答をしていました。しかし、控訴審では、県庁の法務課に長年従事した人物が、地裁判決後の本年3月末に県庁を退職して同年4月より高知県立大学に再就職し、本件裁判に「被告指定代理人」として加わっています。このような動きは明らかに控訴裁判対策とみられ、果たして、本当に「県は関係ない」のか疑問です。尚、2017(平成29)年に原告に雇止めを伝えた当時の大学事務局長も、現在、県庁の管理職についています。

何より、同じ「県立大学」である長崎県立大学で本件と酷似する雇止めが発生した際、長崎労働局は大学側に指摘を行い、雇止めを撤回させています。しかし、高知県では、男性が本件が訴訟に至る約1年も前から、無期転換逃れの本件雇止めを未然に防ぐため、労働局に1度、労働基準監督署に2度、大学側を指摘し雇止めを撤回させるよう求めたにもかかわらず対応はとられませんでした。このようなことからも、高知県の対応には問題があったことが窺われます。

(3)控訴審の進捗報告(令和3年1月27日追記)

令和3年1月27日現在、未だ控訴審は終結しておらず、長期化しています。理由は、以下のとおりです。

大学側は、地裁判決と同様に、控訴審においても雇止めの違法性が覆らないことが明らかとなってくると、今度は、「たとえ雇止めが違法だったとしても、原告は、所定の期間に無期転換の申込みをしていないのだから、無期転換は認められないはず」などと主張し始めました。所定の期間とは、平成30年4月1日〜平成31年3月31日、つまり男性が雇止めを受けた翌年度の期間を指します。そして、高裁も大学側のこのような主張を真に受け、「原告は、明示的な無期転換の申込みを行っていない」などとして審理が行われています。

しかし、男性が雇止めを受けたのは平成30年3月31日(通算期間5年未満)であり、そもそも無期転換権が発生していない状態で、どのように無期転換の申込みを行う術があったのか全くの疑問です。また、労契法18条は、無期転換申込みの要件として、「
現に締結している有期労働契約の契約期間が満了する日までの間」に申込みを行うことを定めています。男性は、令和2年3月17日に地裁判決が下されるまでの間、平成30年4月1日〜平成31年3月31日の期間の有期労働契約上の地位にある権利を喪失している状態にあり、かつ、当該期間中は、同権利を訴訟にて争っていた状態にあったのであるから、この点からみても、当該期間に無期転換を申込むことなどは不可能であったといえます。

このような点が問題となることの背景には、労契法18条の立法上の不備がみられます。
つまり、同時に立法化された労契法19条については、
「雇止めの効力について紛争となった場合における「申込み」をしたことの主張・立証については、労働者が雇止めに異議があることが、例えば、訴訟の提起、紛争調整機関への申立て、団体交渉などによって使用者に直接または間接に伝えられたことを概括的に主張・立証すればよいと解される」(厚生労働省「労働契約法のあらまし」)として、紛争の際の黙示的な申込みを認めているものの、労契法18条については、今回の雇止めのように違法な雇止めが無期転換権の発生に先行して行われた場合における「申込み」について、具体的な論議がなされていないという点です。

しかし、そもそも今回の雇止めの場合、大学側は男性に対し、
「労契法18条に引っかからないよう辞めてもらう」と明確に発言して雇止めを行っている以上、労契法18条を潜脱する意図があったことは明らかですし、かつ、男性は、提訴当時から一貫して、今回の雇止めを「無期転換逃れだ」と主張してきたのですから、上記の労契法19条の解釈と同様に「申込み」は認められるべきです(無期転換を申込む意思がなければ、「無期転換逃れだ」と主張する必要はありません)。
そうでなければ、使用者は、無期転換権が発生する前に労働者の雇止めを行いさえすれば無期転換を逃れ得るということになり、将来的にも、本件のような悪意のある使用者を一方的に利する結果となります。

また、今回の場合、男性は、雇止めを受ける直前に大学側に対し、当初の「1年毎の6年契約」の合意によれば、自分が無期転換権を得てしかるべきであることを伝え、
「裁判の結果が出れば、平成31年4月1日以降も勤務する」旨を事前に伝えていました。つまり、この点からみても、大学側は、男性が無期転換の申込みを行うことを明確に認識していたといえ、今更男性が無期転換の申込みを行う意思があったことを知らなかったなどとは言えません。

そもそも、無期転換をさせない目的で、男性を
無期転換権発生前に違法に雇止めたのは大学側です。にもかかわらず、今になって、「原告は、無期転換権発生後に無期転換の申込みを明示的に行っていない」などと身勝手な主張を行うこと自体、到底許されることではありません。

原告側としては、男性の無期転換が認められるべきであることを断固主張する所存です。

(4)控訴審判決(令和3年4月2日)

 令和3年4月2日、高松高裁は、雇止めの無効は認めるものの無期転換は認めないとする信じられない不当判決を下しました。本判決が如何に不当なものであるかを以下に記載します。

<高裁判決は地裁判決の認定を無視したものである>
 高知地裁が、
「被告は、労契法18条1項による転換を強く意識していたと推認できる」と指摘しているとおり、本件雇止めが労契法18条の無期転換ルールを潜脱するために行われた雇止めであることは紛れもなく、また、同地裁が、「遅くとも平成31年3月31日までの間に、原告が被告に対し同条同項に基づく無期労働契約の申込みの意思表示を行ったと認めるのが相当」と判示しているとおり、男性が提訴当初より一貫して無期転換を前提とした主張をしていたことが明らかであるにもかかわらず、高松高裁は、これらの高知地裁の事実認定を一切考慮せず、無期転換を認めないとする判決を下したわけです。

<「申込みを行っていなかった」などという判断は、不可能をいうものである>
 高松高裁は、無期転換を認めない理由として、「通算雇用期間が5年を超える時期(平成30年4月1日〜平成31年3月31日)に原告が無期転換の申込みを明示的に行っていなかった」などと判断していますが、そもそも男性は、無期転換権が発生する前(平成30年3月31日)に既に雇止められており、平成30年度(5年目)の有期労働契約の申込みも大学から拒否されていました。つまり、雇止めによって無期転換権を得られなかったからこそ本件裁判を提訴し、無期転換の判断を裁判に求めたにも拘らず、「申込みを明示的に行っていない」などという判断は到底承服できるものではありません。

 しかも、労契法18条1項は無期転換申込みの要件として、「
現に締結している有期労働契約の契約期間が満了する日までの間に」申込みを行う必要があることを定めています。無期転換権が発生しておらず、係争中は5年目の有期労働契約を「現に締結している」状態になかった(それを大学から拒否されていた)男性が無期転換の申込みを行えたわけがありません。

<高裁の労契法18条の判断は、同法19条の法解釈と齟齬を来すものである>
 何より、紛争時の無期転換の申込みにまで要式行為を求め、無期転換の「主張」を申込みと解されないのであれば、労契法18条の法解釈は、
「「更新の申込み」及び「締結の申込み」は、要式行為ではなく、使用者による雇止めの意思表示に対して、労働者による何らかの反対の意思表示が使用者に伝わるものでもよい」「「更新の申込み」又は「締結の申込み」をしたことの主張・立証については、労働者が雇止めに異議があることが、例えば、訴訟の提起、紛争調整機関への申立て、団体交渉等によって使用者に直接又は間接に伝えられたことを概括的に主張立証すればよい」(労働契約法施行通達 第5の5(2)エ)と解する同法19条の法解釈と齟齬を来すことになります。労契法18条は、労働者保護を目的として、同法19条と同時に法に追加された条文であり、同法19条の法解釈と別意に解する理由はない筈です。

 つまり、高松高裁の判断を是とするならば、無期転換逃れの雇止めを受けた労働者が無期転換を求めて裁判を提起し、たとえ雇止めが違法と認められたとしても無期転換は認められないことになります。このような不条理な事態は、非正規労働者の保護を目的に制定された労契法18条の立法趣旨に真っ向から反するものであるばかりか、無期転換を逃れるために身勝手な雇止めを行った使用者を一方的に利することになります。そのようなことはあってはならないことです。

<1年間の有期労働契約上の地位しか認めないならば、なぜ3年分の給与補償の和解提示を行なったのか?>
 令和3年2月1日の結審の際、高松高裁は原告に対し、「3年分の給与補償の代わりに和解日をもって退職する形をとるのはどうか?」などという和解の提示を行いました。平成30年度の1年間の有期労働契約上の地位しか認めないと判断しているならば、なぜ3年分の給与補償の和解提示を行なったのでしょうか?判決との明らかな矛盾です。

 また、被告側が、上記和解案を承諾しない代わりに、「2年分の給与なら支払う」、「更に100万円をプラスする」などといった野卑な金銭交渉を行ってきた際、原告が、そもそも本件裁判は、金銭の多寡ではなく労働の権利を求めたものである旨を主張し、被告からの和解提示を拒否すると、高松高裁は、「無期転換を認めないので、被告の和解提示を飲まないと貰える金額が下がる。それでもいいのか?」などといった発言を行いました。なぜ、違法な雇止めを行なった側である被告の和解提示に偏り、それに従うか否かを原告に問い詰める必要があるのでしょうか?

 尚、被告が、「2年分の給与なら支払う」、「更に100万円をプラスする」などと和解提示をしてきたことからすれば、被告が高松高裁から原告と同内容の判断を聞かされていたのか相当疑問です(仮に、被告が原告同様、高松高裁から「1年間の有期労働契約上の地位しか認めない」旨の判決を下す予定であることを和解提案時に聞かされていたのであれば、わざわざ「2年分の給与なら支払う」、「更に100万円をプラスする」などという和解提案を被告側から行うはずがありません)。

 このようなことから、高松高裁が司法判断に迷いがあり、本件裁判をとにかく和解で解決させ、判決を下すことを避けようとしていたことが窺われます。

<違法な雇止めを受けた原告側が、なぜ訴訟費用の4分の3を負担する必要があるのか?>
 高松高裁は、訴訟費用の4分の3を原告負担とする判決を下しました。曲がりなりにも、「雇止めは違法」と判断しているにもかかわらず、なぜ違法な雇止めを受けた原告側が、なぜ訴訟費用の4分の3を負担する必要があるのでしょうか?(高知地裁判決は、訴訟費用の10分の9を被告負担としていました。)

 控訴審当初、高松高裁裁判長は、原告に威圧的な態度を取ったり、口頭弁論にて「この点を主張するように」などと被告に主張のポイントを促すかのような弁論主義違反とも思われる発言を行い、かつ、被告代理人との関係が疑われたため、原告は裁判長忌避申立てを行なっていました。忌避申立ては認められませんでしたが、上記判決内容と照らし合わせると、著しく被告に与した判決としか思われません。

以上のとおり、高松高裁の判決は到底正当とは思われないため、最高裁上告受理申立てを行う所存です。今こそ労契法18条の正しい法解釈を司法に求めなくてはなりません。本件裁判は非正規労働者の将来を左右する重要な裁判です。ご支援の程宜しくお願いいたします。

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[連絡先] 高知市曙町2-5-1高知大学教職員組合気付 TEL 088-844-1489