劇団員コラム

シーン96『冬≒プレリュード』 りょーじ

 冬です。日ごとに息が白んでいく今日この頃。皆様はいかがお過ごしですか。

 「枕草子」の作者・清少納言は、冬の良さの一つは、早朝の寒さにあると説きました。布団が恋しくなるような寒さの中にこそ、「 キリッ 」と引き締まる想いがある。

なるほど。逆転の発想の中に、確かな「 をかし 」を感じられます。


 古人が冬に美しさを感じ、それを詠ったのと同様、現代の日本人も当然、冬には冬の美しさを詠います。中でも、私が最も好きなウタは、TMネットワークさんの「 Still Love Her 」。北条司さんの名作「 シティーハンター 」アニメ版の2nd シーズンエンディング曲として広く知られています。コード進行は、3コードの繰り返しを基調に成り立っており、その単調さが逆に、穏やかな冬の景色を連想させ、やわらかな日差しのような暖かさを演出しています。その歌詞の中に、「 12月の星座が一番素敵だと… 」という件があります。12月の私の帰路は、当然のように首を傾ける回数が増え、その度、心の中でこの調べを奏でています。

 歌詞の中で主人公は、ある女性との冬の淡い思い出を、冬独特の寂しさとともに、今なお暖かく思い出しています。そしてここにも、「 寒い時があるからこそ暖かく想える 」という逆説的な「 をかし 」が隠されています。


 冬の寒さは、やがてくる春への前奏曲。

 心の中で奏でながら、シブパな暖かさをゆるやかに、をかしさとともに、待ちたいと思う私なのでありました。