劇団員コラム

シーン70『ひたまのえんげき日記6』 柳 緋玉

 今回は阿佐ヶ谷スパイダース『桜飛沫』のこと。

 役者・長塚圭史のことは「ダブリンの鐘つきカビ人間』を見てから気になってました。この力の抜けっぷりは演技?それとも素?そんな彼の創り出す世界が見てみたくなりました。そしたらうまい具合にチケットが取れて、2月12日、晴れて初観劇となりました。


 おもしろかったです!

 ・・・なんて言っちゃうとそれでおしまいなんだけど(笑)。

 じゃ、何がおもしろかったかって言うと、『人間』がちゃんと描かれていたから。


 人間っていいばっかりじゃないし、悪いばっかりじゃない。そもそもそんなふうにきっかり2分するのがおかしい。ものすごく善良な人でも誰かを殺したいって思うほど憎む心もあるし、極悪非道って言われる人も友達を大切に思う心もある。それが人間なんだよなって、当たり前のことかもしれないけどそんなことを改めて考えた。

 内容的にはかなり悲惨な第1部が、重たすぎず、それでいてしっかり押さえたものになっているのは、随所に散りばめられた長塚さんの言葉あそびと主演の橋本じゅんさんの力かな。橋本さんはね、ほんとおもしろい、いい役者だと思います。彼が演じた「徳市」は一見ふざけているようなんだけど、実はその奥に深い暗いものがあって、そういうものを持ちつつも、やっぱりふざけてる。飄々としているのは、きちんと向き合ってしまうと大切なものを壊してしまうから。そんな演技のできる人です。

 しっかりとした世界観があって、3時間ちょい集中が途切れませんでした。

 あ~、いいもの観た!

 やっぱりいいよ。芝居は。

 では、またね。