劇団員コラム
シーン408『うつろうもの』 小菅 信吾
年を重ねると食の好みが変わって、昔嫌いだったものがいつの間にか食べられるようになる、なんて話を聞くことがある。
凡庸な身としては例に漏れない訳で。
敬遠していた七味唐辛子やニンニクを欲するようになったり。
とんこつではなく塩を求めるようにったり。
もちろん、食べ物に限ったことではなくて。
以前は苦手に感じていたアーティストの曲を夜な夜な聴いていたり。
そけほど興味が持てなかったジャンルの芝居が好きになったり。
嫌いだったり苦手だったりしたものも、時が経って、気付くとそれらに惹かれたり求めるようになっていたりと、最近そんなことを感じる場面が多くなっている気がする。
そしてそれらは嬉しい変化だけでなく、時には寂しい変化もあったりするのかもしれない。
新たなものが好きになる一方で、好きだったものへの関心が薄れるなんて場面もあったりするから。
それはきっと自分の中で何かが変わったからなのだと思うけれど、では何が…何処が変わったのだろう。
年を重ねるということに成長よりも老いを感じる年頃だから、要因としては経験を積んだことによる変化と同時に、心や身体の機能低下による変化もあるのだろう。
けれど、やはり何が変わったのか分からない。
原因が分からないのだから、これから先訪れる変化がどんなものなのかも分からない。
だから、せめて今好きなものを好きでいたいと思う。
素直でいることには変わらずにいられたらと思うのです。
今でも大好きなんですけどね、とんこつラーメン。