劇団員コラム
シーン403『生きるための破壊と生産』 沢村 希利子
普段は主婦の私、実は料理がそれほど好きでも得意でもありません。
自分のタイミングで、自分のペースで、自分の好きなものを作る趣味の料理はともかくとして、毎日の生活としての料理は、「作業」であり「労働」であると思っています。
この労働からどう逃れるか、いかに楽をするか。
私はそればかり考えて毎日キッチンに立っています。
そんな私がたどり着いたのは、とにかく冷凍することでした。
肉や魚の下味冷凍はもちろん、調理済みのメイン料理、カット済みの野菜やきのこ類、麺類やスイーツまで。
とにかく冷凍できるものはなんでも冷凍。
疲れた時や遅くなった時にそのまま調理できたり電子レンジで温めればいいものをたくさん揃えておくことで、なんだか安心できるようになりました。
それほどまでに楽をすることばかり考えている私ですが、趣味としての料理であれば、嫌いではありません。
「やらなければいけないこと」になると苦になるんですよね。
最近はその日の献立とは関係なく、空き時間に冷凍ストック用の野菜を刻んだり、休日にメイン料理を大量生産することが、なんとなく達成感があって気分もスッキリするリフレッシュ法のひとつになりつつあります。
料理は、「スクラップ・アンド・ビルド」=「破壊と生産」の行為であり、精神衛生上にはとても良いとされています。
作業に没頭することで今目の前のことに集中する力が上がり、精神の安定が図れるのだとか。
「破壊と生産」という言葉の通り、材料を切ったりなどして一度すべて壊したのち、新たなものを生み出す、という行為が心に万能感を与えてくれるのかもしれません。
そして食べたものは、未来の自分の身体を作ります。
きっと人は、料理をすることで心身共に栄養を摂り、明日を生きるのだと思います。