劇団員コラム

シーン402『ちょっぴり髭を』 小菅 信吾

ちょっぴり髭を伸ばしてみた。


昔から髭の似合うダンディーな顔つきに憧れていた。

が、そもそもダンディーな要素は皆無だし、試しに一週間剃らずにいても申し訳程度にしかならず、逆にみすぼらしく見えるだけだったので、これまで伸ばしたことはなかった。


去年の夏、新型コロナウイルスが席捲し続ける中、濃厚接触者となり二週間程自宅に引き篭もった時期があった。

その間、髭を伸ばしてみた、というより剃らずにいてみた。

すると、そこそこそれなりに見えてくるような気がしてきた。

このまま伸ばしていれば何となく様になるような、そんな錯覚を起こしてしまった。


そんなこんなでいるうち、初めは違和感しかなかったのに、どことなく目新しさを感じるように変わってきた。

それは何とも不思議な、けれど悪くない変化だった。


ちょっぴり髭を伸ばしてみた。

仕事柄まだまだマスク生活が続くそのマスクの下、もう少し髭を残しておこうかな。

何かが変わる訳ではないだろうけれど。