劇団員コラム
シーン399『ことのはじまり』 しんご
秋の夜長には読書や音楽鑑賞もいいけれど、思い耽るのも乙なもの。
耽るのなら思い出話や昔話なんてのがいい。
あれは高校1年の秋。友人に誘われ、訪れたのは群馬会館。
そこでは高校芸術祭演劇部門の大会が開催されていた。
友人が所属する伊勢崎にあった女子高校の演劇部の公演『学習図鑑』を観劇した。
それはとても魅力的なものだった。
「自分の知らない世界を知っているような、そして自分よりもはるかに大人びて
見えた友人に、劣等感とそれ以上の憧れを感じていました。」
友人に対し、思わずそんなことを感じていた。
(シーン141:「懐かしい人からの手紙」参照)
そして、さらに魅了された公演があった。
前橋にある女子高校の演劇部の公演『MORAL』だった。
表現力や完成度は圧倒的なまでに素晴らしく、且つ衝撃的な公演だった。
その衝撃は、心が躍るというよりカルチャーショックに近いものだった。
何より、それを同じ高校生たちが創り上げていることに驚愕した。
(その後、『MORAL』は全国大会優秀賞に輝いたとのこと。)
普段は周りから影響を受けやすい性格でなかったが、この時は違った。
劣等感や憧れ、そして舞台という表現活動、それが持つ力に魅了された私は、
果たして“演劇”というものをかじってみたくなったのだ。
ところが、である。
私が通う高校に演劇部は無かったのだ。
そして、やがて訪れる一学年下級生との出会いを待つことになるのだった。
今から30年前、1991年秋のこと。