劇団員コラム

シーン398サステナブルでダイバースな活動を』 森田 リョウジ

緊急事態宣言が9月いっぱいまで延長されることになりました。家の外にも、心の中にも、台風が巻き起こり、ダメージを受け続ける今日この頃。皆様はいかがお過ごしでしょうか。


 賛否両論ありながらの東京オリンピック・バラリンピックが終わりました。紆余曲折を経た上での開催となった今大会の、一つの印象的なフレーズとして「多様性(=diversity/ダイバーシティ)」の理解というものがありました。いろんな人たちがいて、いろんな感性があって、いろんな考え方があって。全てを理解したり受け容れたりすることはできないかもしれないけれども、少なくとも「みんなちがってみんないい」的な姿勢であることって大事だよね、という雰囲気が世の中に流れました。


 この雰囲気と相まってなのか、「SDGs」という言葉も一気に市民権を得るようになってきました。「Sustainable Development Goals=持続可能な開発目標(の17項目)」の啓発キャンペーン(?)がテレビ各局で行われていました。実は私もこのキャンペーンでこのフレーズを知った口です。持続可能な社会にするために、地球のために、人々のために、いい行動をしよう、ということなんだろうなぁ、と個人的に解釈しています。


 話は少し逸れるのですが、昨今のコロナ情勢を受け、演劇活動の持続可能性が疑われていたり、脅かされたりしていますね。いつになったら公演できるんだ、みたいな。実際、我々劇団シブパも第30回公演の桐生公演は中止を、前橋公演は延期を、それぞれ決定しました。県内や近県の劇団さんの中でも、公演することを決断されるところや、中止・延期を決断されるところなど、その対応も様々です。

 私、個人的に思うのです。「私たちアマチュア劇団の演劇活動って、公演することだけじゃないぞ。」って。公演は確かに目に見える一つのゴールなのですが、「公演することは手段であって、必ずしも目的じゃないぞ」って。公演が絶対的な目的になってしまうと、持続可能性は失われていくんじゃないか、っていう気もしています。SDGs然りで、そこには具体的な数値目標なんかも掲げられていて、それが達成されることは確かに大事な一つの目に見えるゴールなのですが、でも本当に大切なことはその先にあって、「その理想を目指そうとする一人一人の姿勢の獲得」こそが、本当のゴールなのかなって。その姿勢の獲得こそが、持続可能な社会だったり、持続可能な演劇活動だったりにつながるのかなって。いやむしろ、そもそも本当のゴールなんて実はなくて、「いつかくるその時(公演日とか本番とか)のために、考え、もがき続けること」が、持続可能な、永続的なゴールっぽいものなのかなって、思ったりもします。


 私はこんな風に考えますが、アマチュア演劇の在り方一つとってみても、いろんな人の、いろんな考え方があると思います。そこで大事なのは、「その考え方もあるよね」「それもいいね」と多様性を認めていくことなんだと思います。少数意見を排斥することなく、多くの人の言葉に耳を傾けて、合意形成を図った上でなら、どんな結論を出したとしてもいいのではないかと思います。「みんなちがってみんないい」んじゃないでしょうかね。理想ですかね? でも、そうしていかないと、なかなか持続していかないんじゃないかなぁ、って思います。苦しい想いをしている仲間がいる中での演劇活動って、ツラいな、って思います。


 私は自分に言い聞かせます。

 それぞれの立場を、考えを、感性を認めましょ。その先にあるゴールに目を向けましょ。

 サステナブルでダイバースな演劇活動を目指したいという思いにふける、今日この頃なのでした。