劇団員コラム

シーン378……なーに言ってんだか。』 しんご

結成20年となる2019年。その年の最後に上演したのは『今度は愛妻家』でした。

作品の紹介や上演までの経緯は割愛します。

何故って「シーン376」で主宰が語ってくれていますから。


この戯曲の作者は、中谷まゆみさん。

弱くて不器用でけれど魅力的な登場人物たちが織りなす、そんな人間味溢れる素敵な作品を書かれている大好きな作家さん。

実は2004年にも『ビューティフル・サンデイ』という氏の作品を上演させていただいたことがありました。 もう15年も前になるのですね…。

そんな中谷作品ですから、『今度は愛妻家』もぜひ演出として創り上げたいと、ずっとずっと想い続けていた作品でした。


あまりに想いが強かったのでしょう、それは妄想好きの癖を駆り立て、より強く具体的なイメージを作り上げていました。

気付くと、配役の変更に対し新たな演出プランが描けないほどになっていました。

もちろん優劣云々の類でもなく、もはや嗜好云々ですらありませんでした。

言うならば、片想いを続け過ぎて、目の前に現れた別の素敵な存在に気付けない、そんな感じでしょうか…?


ちょうどその頃です。

上演許可を取ることが出来たにも関わらず妄想癖で凝り固まった配役が困難になったまさにその頃、大きな生活環境の変化が生じ、劇団活動に傾ける気力・体力が損なわれる状況が続きました。


悩みました。

今の自分が演出するのでは、作品にも劇団にも観に来ていただく方にも失礼なくらいに役不足ではないかと感じました。

そして、演出を辞退しました。

すると主宰は“「今の」ベストを尽くすこと”を選択してくれました。

信頼する仲間たちに惜しむことなく託すことにしました。


果たして想いは達成され、先の12月『今度は愛妻家』は公演を迎えるに至りました。


公演中も、公演を終えた後も、嬉しさを感じていました。

評価は様々にあって然るべきですが、何よりも、大好きな作品を、おそらく演劇の楽しさを伝えるに足る仕上がりで、劇団シブパとして上演出来たことが嬉しくて仕方がありませんでした。

「あの頃」も及ばないような素敵な座組みで、「今の」ベストを尽くた公演としてくれた演出、主宰に心から感謝しました。

そして「アイツ」の跡を見事に継いでくれている「コイツ」と一緒に芝居創りが出来ることを心から嬉しく感じました。


愚見など及ばないあのラストシーンの灯りは、やがてどんな幕開けへ続くのでしょう。

どんな幕開けへと続けていくのでしょう。


これからもよろしく。