劇団員コラム

シーン377令和元年 公演No.2『今度は愛妻家』公演後記【その2】』 森田 リョウジ

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 「あの頃」のではなく、「今の」ベストを尽くした『今度は愛妻家』を創ることを決意した私は、シブパと同期劇団「stage WOW」(ホントは少しだけ先輩らしい)の中心人物だった「小林 豊さん」に客演をお願いすることにしました。20年前の当時から、小林さんの役者としての存在感は抜群で、私はずっと憧れていました。「りょーじには悪いけど、この役は小林さんでやりたいなぁ」というのは、前主宰・赤石マサエの口癖でした。「『今度は愛妻家』を上演すること」と同様に、「『小林 豊さん』と共演すること」は、劇団シブパの20年近く続く切望でもあったのです。

 こうして「三人で創ること」から「小林さんと創ること」という想いのシフトが上手になされることになり、芝居創りはスムーズに発進することができました。


 果たして想いは達成され、先の12月『今度は愛妻家』は公演を迎えるに至りました。17年前の作品らしく、時事ネタはだいぶ懐かしいものがありましたが、作品それ自体には時代の流れに左右されない、普遍的な善さや美しさを感じることができました。テーマとなっている「愛」について、多くのことを考えることのできる作品になったのではないかと思います。夫婦愛を中心に、親子愛、家族愛、師弟愛、男女の愛、同性の愛…。そして、お客様にご覧いただいた愛の他にも、私としては「劇団への愛」「作品への愛」がたくさん詰まった想い出深い作品となりました。


 演出についても、いくつかのこだわり(というか私情)をもって取り組みました。

 使用曲は、愛妻家として有名な山下達郎 氏の「クリスマス・イブ」、そしてその愛妻である竹内まりや 氏の「すてきなホリデイ」を選択しました。手前味噌ですが、お芝居の内容ともよくマッチした歌詞だと、喜ばしく感じています。「すてきなホリデイ」の歌詞に次のような箇所があります。

 「クリスマスは誰にもやって来る/ もしひとりぼっちでも 淋しがらずに」

 「クリスマスが今年もやってくる/ 悲しかった出来事を 消し去るように」

登場人物の北見の想いを象徴していると同時に、私の心情もよく表していました。三人で夢見たことは果たされず、一人ぼっちの夢になり、とても淋しかったのは事実なのですが、それでもクリスマスはやってきました。悲しかった出来事を消し去るように。

 背景の幕は白を選び、ラストのクリスマス・ツリーの照明は青のLEDライトを選択しました。小菅氏は「このラスト(「♪すてきなホリデイ」)でいくなら、ツリーの明かりは金色とか華やかな方がいいんじゃない?」と助言してくれましたが、私は白と青が映えるこの灯りでいくことを推しました。この作品を敬愛する二人に捧げたかったのです。

 青が大好きでセンチメンタルな演出家と、どこまでもマイペースで魅力的な白の似合う女優に。


 いろんな想いをひっくるめて。『今度は愛妻家』、本当にありがとうございました。