劇団員コラム
シーン369『誕生前夜』 しんご
「3月になったら群馬に帰るから、人を集めておいて。」
東京に住んでいたアイツからの電話。
そこから動き出した。
高校時代、互いに演劇に興味があるという縁で、一学年下のアイツと出会った。
演劇部がなかったその高校で、他の仲間たちと一緒に演劇同好会を立ち上げ、共に活動した。
進学校と言われる高校ながら、落ちこぼれだった私は進学もせずに地元に残り、一足先に卒業した後も交流は続いていた。
やがてアイツも卒業を迎え、東京の大学に進学することになった。
アイツが上京する前、約束を交わした。
「大学を卒業したら群馬に戻ってくるから、そうしたら一緒に劇団を立ち上げよう。」
「じゃあ、俺が25歳までに旗揚げ公演を打つぞ。」
それから四年が経つ頃にアイツから掛かってきたのが「人を集めておいて」という電話だった。
相変わらずの行動力と意欲を感じさせる電話だった。
ということで、地元で仲間を集めることになった。
当然ながら、必要条件は演劇に興味がある人だ。
もうひとつ大事にしたのが、人間的に魅力的な人かどうかということだった。
3月になっても寒さが残る、そんなある晩。
前橋市内のファミレスに、やがて素敵な仲間となる面々が集まった。
もちろんその中心にいたのは、東京から帰ってきたアイツだ。
そして、旗揚げ公演に向け力を付けるべく、まずは演劇ワークショップとして活動を開始することになった。
今から20年前、1999年3月のこと。