劇団員コラム

シーン351「安定感」「らしさ」と、その先へ』 森田 リョウジ

 劇団シブパ 第25回公演が終演して早一か月半が経ちました。「主宰より」「シブパの客席から」のページではお礼申し上げましたが、改めて。ご来場いただいた皆さま、ご来場いただけなかったけれども気にかけていただいた皆さま、関係していただいた皆さま、本当にありがとうございました。


 シブパでは、ご観覧いただいた皆様にアンケートをお願いしています。第25回公演でもご記入いただいたアンケートをありがたく拝見致しました。また、アンケートとは別にメールで個人宛に感想を書いてくださる方もいらっしゃいました。で、その中に気になる記述が幾つかありました。

 「さすがの安定感ですね。」「今回もシブパらしい出来でしたね。」

ありがとうございます。でも……ん?


 「安定感」「らしさ」


 ふと、思うのです。「安定」は「現状維持」であり、「停滞」であり、ともすれば「マンネリ」である、と捉えられてしまうこともあるものなのではないか、と。「素足の日記」の役者・スタッフにはそれぞれの挑戦があり、新たな課題が見つかったり、新たなスキルを身につけたり…という成長は多分にありました(シーン347・349参照)。有難いことにそこを評価して下さる声も少なくない数あります。がんばってくれた役者陣に感謝もしています。作品の出来にも満足しています。でも、森田リョウジ”個人”を対象に今回の公演の取り組みを振り返ってみると、いささかの疑問が残ります。新たな課題を見つけ、新たなスキルを身につけるという挑戦をきちんとしていたかと問われると、残念ながら、答えは「No」なのかもしれないのです。


 挑戦しなければ、成長は見込めない。そう思います。

 であれば、第25回公演の私は既存の能力を使って想定内の「安定感」「らしさ」を表現したに過ぎず、成長はしなかったのかもしれないなと。「挑戦すること」「成長すること」が必ずしもよいこととは言えないこともわかります。けれども、おそらく今の私は「安定した”らしい”作品」では、満足できないところにいるのだろうと思います。公演をして心が満たされるためには、例えば「けれどスクリーンいっぱいの星」のように限界まで舞台上で汗をかいて叫んでみたり、例えば「オマージュ」や「ねこさんの器」のように他の芸術・表現活動とコラボしてみたり…、というような「挑戦」を続けるしかないのだろうな、と。


 劇団シブパは、平成30年7月に境総合文化センターにて、第26回公演『姐さん女房の裏切り』を上演します。ここでは、これまでシブパの作品を一番多く演出している小菅信吾の下、前主宰の赤石マサエと私 森田リョウジが出演し、二人芝居に挑戦します。役者として自分がどれほど成長しているのか、成長できるのか、赤石マサエの演技にどれほど抗い、どのような化学反応を起こせるのか。私本人が楽しみで仕方がありません。そこには挑戦が溢れています。

 7月の舞台上には、「現状維持」でも「停滞」でも「マンネリ」でもない、「安定」という言葉では片づけられない表現をお楽しみいただけることでしょう。「安定感」「らしさ」から脱却しようともがく、あるいは、その先を目指そうともがく、新たな「挑戦」の形に、乞うご期待! なのです。