劇団員コラム
シーン283『観に行くカタチ』 しんご
芝居を観るようになって、もうずいぶん経ちます。
受け身で見るのではなく、自発的に観るようになったのは高校生の頃でしたから。
観始めた頃は、好きな劇団の公演を観に行くことがほとんどでした。
そのうちに好きな役者や作家が出てきて、そこから観に行くようになりました。
やがて好きな演出家が出てきて、その人の演出する公演を観に行くようになりました。
それでも当たりハズレはありました。
当たりの時には「やっぱりこの劇団、役者さん、演出家さんって好きだなぁ」と一人頷いていました。
そうではなく「初めに感じた印象と違うなぁ」と、やがて興味が薄れることもありました。
あるいは、それでも観続けているうちに「何だかんだで、やっぱりこの人いいなぁ」とさらに好きになることもありました。
そんな公演たちから、当然沢山の影響を受けました。
大好きな演出家の演出が、私自身の演出の嗜好に変化をもたらしたりしました。
大好きな作家の戯曲の上演許可を取って、シブパで公演も打ったりもしました。
これらは、目標や憧れの対象を観に行くという共通のカタチをしていました。
ところが、最近になって新しい観に行くカタチが出てきました。
それは好きな“劇場”で行われる公演を観に行くというものでした。
今までも「この劇場の雰囲気、空間、距離感っていいなぁ」と思う場所はありました。
が、“箱”そのものに魅了される劇場と出会ったのです。
そこで行われる公演も楽しみなのですが、それ以上にその劇場に行くことが楽しみに感じるのです。
これはとても新鮮な感覚でした。
この楽しみ方、まだまだ続きそうです。