劇団員コラム

シーン279正義の味方』 宮野 圭輔

僕は正義の味方が大好きです。小さい頃はウルトラマンになりたかったし、今でもヒーローを見ると、ワクワクします。

さて、『正義と悪』というのは立場が変わると入れ替わるからお話の中にしか無いものだ、という人がいます。今回は、そんなお話の中の『正義』について考えてみようも思います。


『正義と悪』とは何か、人によって定義はそれぞれだと思いますが、僕は、罪もない一般市民を犠牲にする者は明確な『悪』であり、それを退治する存在が『正義』なのだと思います。だから、街で暴れる怪獣や一般人を狙う怪人などは悪で、それと戦うウルトラマンや仮面ライダーは正義になるわけです。

でも、その定義でいくと、母星が滅びて地球に移住しようとした二十億三千万人のバルタン星人を宇宙船ごと爆発させた初代ウルトラマンや、クライシス帝国の皇帝を倒したことで結果的にクライシス帝国五十億の民を星ごと爆発させた仮面ライダーブラックRXなどは、殺した中に相手の一般人が含まれていると思うので、『悪』ということになってしまいます。

この二者は相手が侵略してきているので正当防衛と言えるのですが、地球人にミサイルで母星を滅ぼされ復讐のために地球に来たギエロン星獣を返り討ちにしたウルトラセブンなどは、どうなのだろうなぁと思います。(※このお話は、あえてそういう作りになっています)

お話の中の『正義』も、しっかり考えると、結構定義が難しいですね。


かつて、特撮の神様、円谷英二監督は、「ウルトラマン」製作の際、「この作品は子どもたちに夢を与えるものでなくてはならない。だから、汚いものや残酷なものを見せてはいけない。」ということで、流血シーンを避けるように指示をしたそうです。そうしてできた「ウルトラマン」を観て、やなせたかしさんは、「戦っていて血が流れないなんて、嘘だ。本当の正義の味方は、自ら傷つく存在でなければいけない。そして、戦う前に、飢えた子どもに食べ物を与えることができるのが、本当の正義の味方だ。」と考え、「アンパンマン」を作ったそうです。

作り手側の子どもたちへの想いも、『正義の味方』像も、一つではないのですね。