劇団員コラム

シーン264ちんもく…』 しんご

公演前というのは、何かと慌ただしくなる。

稽古も増えるし、それに伴うコミュニケーションの機会も増える。

制作面ほか事務連絡を取り合う回数も増える。

そんな時の連絡ツールは、もっぱら携帯電話だ。

ちなみに、今回上演した『四月になれば彼女は』は1993年に発表された作品なので、作中に携帯電話は登場しない。あの頃はどうやって密に連絡を取っていたのだろうと思ってしまうほど、それは今日の生活では欠かせないものとなっている。


公演の準備を進める中、電話やらメールやら携帯電話の使用機会が増える。

公演が近づけば、その頻度は著しく増加する。

毎日毎日、何度も何度も、着信が入る。


ところが、である。

公演が終わると、公演前の着信頻度が嘘のように激減する。

というより、普段は必要最低限の使い方しかしていないため、公演のための連絡ツールとしての役目を一旦終えた携帯電話は沈黙する。

開店休業状態である。


公演を無事に終えた後、得てして私は喪失感にやられる。

公演の完成度はさておき、公演までの期間の密度が高ければ高いほどそれは強まるのだが、しばらく喪失感を抱えながら日常生活へのリハビリに入る。

そしてリハビリを終えそうになると、やはり得てして感じるのである。

「携帯電話、鳴らないなぁ…。」と。


今回は四人もの客演さんを招いての大所帯だったから、当然連絡の機会も多く、それだけ携帯電話の使用頻度も高かった。

だから尚更に感じるのだろうか、この沈黙を…。