劇団員コラム

シーン242『基礎稽古のすゝめ』 りょーじ

 劇団シブパ第20回公演『食卓秘法(てえぶるまなあ)・溶ける魚』が無事(?)終演となりました。ご来場いただいた方々をはじめ、関わって下さった全ての方々に感謝申し上げます。ありがとうございました。


 公演も20回を超え、劇団も15歳を超えると、劇団員もそれに伴って年齢が増してきます。もちろん、時期々々で新入団員を迎えていますので、全員が全員おじちゃんおばちゃんというわけではありませんが、旗揚げメンバーの自分は、もうだいぶおじちゃんです。


 で。そんなおじちゃんが迎えた第20回公演の役は「笑い男」という強烈な個性の動き回る役。第16回公演・野田秀樹氏 作『表に出ろいっ!』のお父ちゃま役をやらせていただいた時も 相当動いたのですが、今回はそれを超える、りょーじ史上最大の運動量でした。3年前の『表に出ろいっ!』の時も感じたことですが、今回は痛切に感じました。

 ……老化を。

 劇団内にも、県内演劇関係者の方々にももちろん、諸先輩方がいらっしゃいますので、「何を貴様みたいな若造がほざいておるんだ」とご立腹の方もいらっしゃるかもしれません。…が。敢えて言わせていただくと。…老いました。


 筋肉量・体力・暗記力・精神力の低下、声帯の弱体化、体重の増加、ボディバランスの変化…。わかっていたことではありますが、10年前とは別物です。ビデオに映った自身の姿を見ると、自分がイメージしている所作・演技が全然できていない。これには本当に愕然としました。公演中、のどが枯れたのなんて初めてです。今回の公演ほど、加齢からくる自分の変化に 真剣に向き合おうを思ったことはありません。こりゃ、ほんとにヤバいな…と。


 で。憂いているばかりもいきませんので、変化する自分に対応をしていきたいと考えた私は、改めて、「基礎稽古」の重要性を再認識するに至りました。

 筋肉量が低下したのなら、稽古のアップで筋トレをすればいい。

 体力が低下したのなら、稽古を中心に身体を動かせばいい。

 暗記力が低下したのなら、当たり前のように本読みしたときの音源をBGMとして聞けばいい。

 精神力が低下したのなら、稽古終わりにみんなと馬鹿話をして気を晴らせばいい。

 声帯が弱くなったのなら、稽古で発声・ボイストレーニングに時間をかければいい。

 体重が増加したのなら、団員でダイエット部をつくり、みんなで競って減らせばいい。

 ボディバランスを整えたいのなら、稽古場で鏡に写る自分の姿を常に意識すればいい。

 …と。全て基礎稽古で補えるものだったと思い返しました。逆を返せば、老化を感じてしまった ということは、基礎稽古を疎かにしていたツケが回ったのだ、ということなのだな…と。


 10年後も「笑い男」のように、あるいは、野田秀樹氏のように、飛んで回って跳ねて叫べる役者で ありたい。そのために、日々の基礎稽古を大切にしたい。

 そんな演劇人として当たり前のことを思い出させてくれた、第20回公演でした。