劇団員コラム

シーン223『書く』 りょーじ

 先日、私どもが公演を行わせていただいていたり、稽古をさせていただいたりしている境総合文化センターさんの主催する「永井愛ワークショップ:戯曲を書く」に参加してきました。もうかれこれ10年くらい「戯曲を書く」ということに憧れをもっており、いつかはそれを演出 あるいは その作品に出演してみたい、そのような欲求を頭の片隅で、心の奥底でもっていました。


 ワークショップでは、「死」「再会」「その他」のいずれかのテーマに基づいた、上演時間5分を目安とする作品を書くことが義務付けられました。私の作品はそれはもう稚拙でお恥ずかしいものであったのですが、その場に参加されていた諸先輩方 あるいは 新進気鋭の才気溢れる方々の作品には、驚きと感動の連続でした。稽古用の台本として申し分ない多くの作品たちがそこにはあり、参加者の皆さんの許可がいただけるなら、それらのいくつかをショートショートの公演として創り上げても相当面白い公演が 出来上がるのではないかと思われるほど上質でした。

 それらの作品に対する永井さんのコメントの一つ一つがためになり、糧になりました。

 また、それらの作品をその場で半立ちし、演じるという経験にも興奮しました。群馬を代表する演劇人の方々が、目の前で演じている。ちょっとしたオールスターキャストによるプロデュース公演に心躍りました。


 そして何より、実際に戯曲を「書く」という経験をできたことが大きな収穫でした。これまで忙しいと理由付けすることや優先順位を付けることで後回しにしてきた「書く」という行為を、ささやかではあるけれども実行できたことに、大きな意義を感じることができたのです。これからの私の芝居創りの選択肢として、「書く」ことが加わった瞬間でもあったように思われます。

 幸いにして、私には書きたいことがたくさんあります。自己満足の範疇ではあるけれども 伝えたいことがたくさんある。それを「演出する」「演じる」という表現方法の他に「書く」という行為で表現できたら…。演劇人として あるいは 表現者として、多くの喜びを得ることになるのだろうと嬉しく思います。


 私はこれから、長い執筆活動に入ります。私の文章はまだまだ稚拙で、しかも、いつ出来上がるかもわかりません。まして、劇団シブパの公演として採用してもらえるようになるには、どれほど先になるかわからない。けれども、挑戦しよう、挑戦してみたいと、静かに、そして確かに、闘志を燃やしている自分がいるのです。



 劇団シブパ 第19回公演も、偶然か あるいは 必然か、そんな「書き上げることを 夢見る作家の物語」を創り上げたいと考えています。詳細の発表にはいましばらくかかりそうですが、個人的にも共感できる部分の多い作品であり、私が演出を始めるきっかけとなった忘れることのできない思い出深い作品でもあります。 どうかこの傑作を末永く愛してもらいたい…。そんな想いで準備を進めております。


 物語の中の作家は、そして私「りょーじ」は、作品を書き上げることができるのか。二人の男の結末を、皆様、どうぞお楽しみに。