劇団員コラム

シーン161『懐かしむこと』 東 勝

 僕は懐かしむことが好きです。「あーだったなぁ」「こーだったなぁ」と。だからといって、それが今の自分に何かを与えてくれるとは思わないのですが。そういえば、やたら過去の話をする人いますよね。「昔はこうだったんだぞ」と・・・。「そんな事いったって、時代は刻々と変わっているんですよ!」と言いたい。でもそんなことを真っ先に言われるのがこの僕なのかもしれませんが。でも幸いに? 僕は、過去ばかり見ているいわゆる後ろ向きな人生ではなく、むしろこれから「あんなことしたい」「こんなことしたい」という前向きタイプなので、過去を懐かしむことを悪いこととは思っていないのです。


 で、最近というかここ10年間ぐらい前から思うことがあります。通勤途中や稽古の行き帰りなど、前まであった建物が壊されていたり、新しいお店が建っていたりすることありますよね。すると思うわけです。「あれっ? ここに前どんな建物があったっけ?」・・・思い出せない・・・。それが自宅の近所や昔よく通っていた学校の近くだと、なおさら。「ここら辺のお店よく通ってたはずなのに・・・なんだったっけ?」「こころへんで遊んでたはずなのに・・・こんなんだったっけ?」と、なんだかスッキリしない。すごくモヤモヤする。人に聞くまでのことでもない。どうしようもない。でさらに考えるのです。おそらく今当たり前のように見ている風景も徐々に変わっていく。すると未来の自分はまた同じ感じでモヤモヤするのだろうと。おっ! だったら、今の風景を写真でおさめておけばいい! そうすれば、風景が変わろうと「ああ、そうそう、昔はこうだったんだよ・・・」と、 それはそれは気持ちよく懐かしむことができると思う!


 ん? 写真をおさめると言ったって、どこを撮ればいいんだ? 町の中全部か? そんなの難しいだろっ。と結局何もしない自分なのでした。