劇団員コラム

シーン132『公演後記(!?)』 しんご

第12回公演が終わりました。

観に来ていただいた皆様、ありがとうございました。

そしてこの公演に関わってくれたすべての皆様、ありがとうございました。


『ヒトミ』をやりたいと思ったのは、公演のちょうど一年前でした。

入院先のベッドの上でした。

この年齢にはそう多くはない病気を患い、治療の過程でごく一部ですが体に麻痺を負い、これからの日常に不安を抱えていました。

それまで「当たり前」だったことがそうではなくなり、これから育てられたかもしれない可能性のいくつかを失った気がしていました。

そんな中で、家族や友から沢山の支援や励ましをもらいました。

けれど何よりも、家族の、友の、その「存在」が生きる力を与えてくれました。

自分の中でなく、そんな人たちの中に自分の存在価値を見出させてくれました。

「帰れる場所」が在るということが私を救ってくれました。

そんな日々を過ごしていた時、充電期間に入っていたシブパの次回公演作品として、『ヒトミ』をやりたいと思ったのでした。


桜の花が咲く季節になり、無事退院することができました。

やがてシブパの充電期間が終わり、次回公演に向けて動き出そうという時、私の演出で『ヒトミ』をやらせてほしいと劇団員に伝えました。

この作品をやるには劇団員の数が足りませんでしたが、客演をお願いしてでもやりたいと話しました。

そして、今回の主要キャストを演じた柳緋玉とりょーじを介して、何とも頼もしい、いや、こんな演出にはもったいない程の三人の方が、客演として参加してくれることとなり、夏の始まりとともに第12回公演に向けて始動したのでした。


シブパHP内『劇団員紹介』の中にある「座右の銘or好きな四字熟語」の項目に、「一期一会」と回答していますが、今回の公演はまさに「一期一会」の積み重ねから生まれたものだった気がしてなりません。

病気、作品、機会・・・そして、人。

大げさな言い方かもしれませんが、すべてが奇跡的に出逢って今回の公演は成り立ったように感じています。まるで出逢いが必然であったように。

さらに幸せなことに、とても沢山の方が劇場に足を運んでくれました。

そんなすべての“出逢い”に感謝の気持ちでいっぱいです。

だからこそ、たとえそれが必然で起こったことだとしても、それを「当たり前」と思わずに感謝していきたいと思います。

この一年余の時間は、“「当たり前」だと思えること”が どれ程すごいことかを感じさせられた日々でした。

そんな「気付き」との出逢いにも感謝しています。


稽古を終えて家に帰った時、待っていてくれた家族に心からこう声を掛けていました。これからもそうしていきたいと思います。


「ただいま。 ありがとう。」