劇団員コラム

シーン21『映画の話』 赤石 マサエ

 履歴書や自己紹介の趣味欄に「映画鑑賞」と書く人、実に多いですね。 一体どれくらいの数の映画を観ているのでしょうか。私は大学生になるまで、ほとんど映画を観なかったので、人に映画の話をされても大方わかりません。それなのに!今回は映画の話をします。


 学生の頃、私のホームグラウンドは世田谷の三軒茶屋という街でした。 今でこそキャロットタワーという劇場を2つも擁したビルがあり、スタバがあり、ちょっとオシャレっぽくなりましたが、私が大学に入学した頃は、まだ「商店街が生きている街」というイメージの強い所でした。そんな三茶の片隅に、古い映画館が2つ並んでありました。どちらも2番館というやつで、ロードショーの終わったフィルムが、2本で800円くらいで観られました。2週間ごとに作品が入れ替わり、必ず2本ずつ上映するので、特集を組んでいること多かったです。リュック・ベッソン特集とか、ディカプリオ特集とか。寮暮らしの頃は、休日が本当に暇だったので、天気の良い日は早々と屋上に布団を干すと、途中でパンとコーヒーを買い、映画館へ行ったものです。


 フィルムはすっかりすり切れてノイズだらけ、いすは座ればギシギシ言うような映画館ですから、当然ガラガラ。大体いつも10人くらいしかお客がいません。私の他には1人だけという日もありました。みんな“お金のない学生”か“仕事してんのかよ!という中年”か “暇を持て余した老人”のどこかにあてはまりました。時々カップルがど真ん中で観てたりすると、「ここでもデートって成立するのかぁ」と思ってしまいました。


 今は映画もデジタル化され、大型のきれいなシネマ・コンプレックスが増えました。が、もう一度、さえないバイトの兄ちゃんがお菓子やらパンフやらを売っているショボイ売店のある、あんな映画館へ行きたいなあ、と懐かしさいっぱいに思う私です。これは…映画の話ではなく、映画館の話でしたね。