劇団員コラム

シーン19『ひたまのえんげき日記2 柳 緋玉

 みなさん、こんにちは。柳 緋玉です。ひげ大夫の回は楽しんでいただけましたか? 第2回目は“桟敷童子”のこと。


 10年くらい前、敷島公園の松林で“新宿梁山泊”という劇団の芝居を見た。テント芝居を見たのはあれが初めて。ドラマチックで幻想的な演出と情念があふれる物語。あのとき受けた衝撃と感動は今でも忘れられない。 それから梁山泊を見始めたのだけれど、座付きの脚本家が替わった頃から私が求めているものが感じられなくなって寂しい思いをしていた。その頃、TVで桟敷童子を知った。座長はかつて梁山泊で主役級を演じていた役者だった。何だかピーンと来た。勘ってヤツだ。私はTVの情報を頼りに公演を見に行った。


 期待どおりだった。いや、それ以上だった。 “私が見たかったのはこういう芝居なのよ!!!” と叫びたくなるくらい(実際叫んだかも…)いい芝居だった。そんなワケで、私が1番好きな劇団だ。…と前置きはこのくらいにして。


 今回見たのは『煙突野郎』。 煙突掃除の子ども達と“伝説の煙突野郎”と呼ばれる彼らの棟梁を執拗に追いかける男たちの物語。思いと思いがもつれ合い、ぶつかり合い、生きることはこんなにも苦しくて辛くて切なくて、それでもやっぱり人は生きていかなくちゃならなくて、けれども人は“生きてる”ってただそれだけで、ものすごく意味があることなんだなぁって、見ていて強く感じた。芝居を見てあんなに泣いたのは久しぶり。今回、小屋になっている廃映画館と様々な演出効果で、桟敷童子ワールドにどっぷりつかって帰ってきた。次回公演は秋とか。必ず行くぞ! ではまたね。