劇団員コラム

シーン13『自転車にのって』 おーつけーこ

 この春は、中学生や高校生と一緒にマウンテンバイクに乗る機会が、たくさんありました。


 基本を伝える講習のあとで、ツーリングに出かけます。まだまだ不慣れな私は、講習でやるべきことを紙にメモし、首から下げた小さなクリアケースに入れて講習にのぞみました。私は、それを、チラチラみながら、「えーと、次は、止まる練習を…」などとやっていました。


 普段、通いなれた職場へ行く生活の中では、緊張することも少なくなりましたが、久しぶりに、緊張と不安を、いっぱいに感じました。


 一週間、ホテルに泊まりこみ、群馬へ帰る日の朝、朝食まで時間があったので、中学生達と一緒に走ったコースを、一人で走りました。木々の中の坂道をのぼり、冬場はスキー場になるゲレンデの上の方、見晴らしのよい所まで行きます。そこで、MTBを横たえて、ゆっくり山を眺めたり、地元の人から教わった植物の名前を思い出したり…。さらに進んで、池があるところまで。池は、周囲のしらかばを逆さに映していました。「あれ、この池、こんなに澄んでいたんだ」と改めて驚きました。きっと、緊張して、それさえ気がつかなかったのだと思います。小川の横の歩道を歩き、林の中から抜けると、芝生には、ポコポコと、たくさんのたんぽぽが咲いていました。途中、犬の散歩をしている人に会っただけで、他に人はなく、朝のきれいな景色を、一人占めしてきました。

「まずは自分がMTBを楽しむことだよ」という先輩の言葉を、ふと思い出しました。朝食までの、わずかな時間でしたが、気持ちのよい時間でした。ということで、もっと楽しむために、次に走りに行くこと、考えなくっちゃね。