鉛直な壁面の構造物に微小振幅波(波高が小さい波)が作用すると、その前面に重複波が形成され、水位変化に応じて重複波圧が作用します。重複波の波形、速度ポテンシャルはそれぞれ次のように表されます。
また、ベルヌーイの定理から圧力方程式を求めていきます。
このとき、ρ0は海水の密度 [kg/m3] です。
この圧力方程式に速度ポテンシャルを代入し、圧力の式を求めていきます。
重複波の波高が大きくなると微小振幅波として扱えないため、上式は適用範囲外となります。そこで、サンフルーは有限振幅波を用いた波圧の算定方法を提案しました。このサンフルーの式は複雑な計算を要するため、波圧分布を直線近似したサンフルーの簡略式が一般的に使用されています。
また、天端高さが低く越流が生じるときの天端における波圧は次式によって求めることができます。
防波堤を捨石などの透過性のある基礎上に設置すると、上向きの圧力が底面に作用します。この圧力を揚圧力といい、サンフルーの簡略式では次式によって表されます。
このとき、puは揚圧力 [N/m2] です。
越流が生じる場合の揚圧力は浮力に含まれていると考えるため、揚圧力を求める必要はありません。
最後に、部分砕波圧について述べておきます。h > 2H ときは重複波圧としてサンフルーの簡略式を適用することができますが、実際の波は不規則波であり、風の影響も受けます。その結果、h > 2H でも砕波を生じることがあり、この場合の波圧を部分砕波圧といいます。部分砕波圧は6.3 砕波圧の廣井公式により求めることができます。
では、例題を1問解いていきます
例題1:水深10 [m] の地点に設置された天端幅5 [m] の直立防波堤に波高2.5 [m]、周期6 [s] の波が作用した。このとき、天端高さが十分高い場合と11 [m] のときの波圧合力、転倒モーメント、揚圧力を求めよ。ただし、波は峰作用時とし、海水の単位体積重量は10.1 [kN/m3] とする。
まずは、重力波圧か砕波圧かを確認します。
計算の結果、重力波圧であることが分かったので、サンフルーの簡略式から天端高さが十分高い場合の圧力を求めていきます。
次に、波圧合力を求めていきます。
さらに、転倒モーメントを求めていきます。
同様に、天端高さが11 [m] のときの波圧合力、転倒モーメント、揚圧力を求めていくのですが、まずは波が越流するかどうかの確認を行います。
計算の結果、波は越流することが分かったので、天端での圧力p3を求め、波圧合力を求めていきます。
最後に、転倒モーメントを求めていきます。
まとめとして、微小振幅波のときの重複波圧は圧力方程式、有限振幅波のときの重複波圧はサンフルーの簡略式から求めることができます。