下図のような場合の連続方程式は速度ポテンシャルを用いて次式によって表されます。速度ポテンシャルは渦なし流れを解析するときに用いられる物理量であり、空間と時間の関数で表されます。水粒子の水平および鉛直方向の速度をuとwとすれば、次のように定義されます。
一番上の式はラプラス方程式と呼ばれ、2階線形偏微分方程式を解くことにより、未知関数である速度ポテンシャルが計算できます。微小振幅波の理論は1854年にエアリーによって提唱されたものであり、線形理論に基づいています。また、計算を簡単にするために以下の仮定が設けられています。
①水は非圧縮非粘性の完全流体とする。
②表面張力と自転によるコリオリの力は無視する。
③水面での圧力は一様・一定である。
④水底は水平な固定床とし、不透過性である。そのため、水深は一定である。
⑤波高は波長に比べて非常に小さい。
⑥波は波形を変えずに伝搬する。
⑦波は政治正体から何らかの原因で発生したと考える。従って、流体運動は非回転で速度ポテンシャルをもつ。
⑧波の現象は2次元で表す。
エアリーはこの仮定のもとで、流体力学によるベルヌーイの式と水面の境界条件を使って以下の式を導きました。このとき、水面波形が非常に小さいと仮定すると、速度ポテンシャルの2階偏微分は0と置くことができます。また、一周期の平均をとれば積分定数F(t)は0、水面(z=η)での圧力はゲージ圧より0となります。
また、表面波形と速度ポテンシャルは次式のように正弦波で表される場合を考えます。ここで、cos関数は余弦ですが、sin関数とcos関数は90°ずれているだけなので、一般的にcos関数も正弦波と呼んでいます。
このとき、Z(z)は鉛直方向のみの関数、kは波数 [1/m]、ωは角速度 [m/s] です。
では、速度ポテンシャルの式の関数zを求めていきます。まずは、速度ポテンシャルの式をラプラス方程式に代入していきます。
式変形の結果、2階線形偏微分方程式であることが分かりました。この式の一般解を求めていきます。
このZの式を速度ポテンシャルの式に代入し、境界条件から積分定数Aを求めていきます。水底のときの水粒子は水平方向にしか移動できず、鉛直方向の速度は0になります。
得られた結果を速度ポテンシャルの式に代入します。また、式変形の途中で双曲線関数を利用します。
次に、速度ポテンシャルの式を使って表面波形の式を変形していきます。表面波形の式はエアリーが求めた式を使用します。
エアリーの式を変形した表面波形と正弦波で表される表面波形の式から積分定数Bが求まります。また、得られた積分定数Bを速度ポテンシャルの式に代入します。その結果、速度ポテンシャルの式が求まります。
一方、水面(z=η)の鉛直方向の速度は表面波形の式を使って近似することができ、波数と角速度の関係式が得られます。
この関係式に角速度と波数の式を代入すれば、波長と波速の式が求まります。
波長の式は両辺にLが含まれており、繰り返し計算から求める必要があります。また、岩垣は最大で3%の誤差を許容するならば、次の近似式を提案しています。
深海波は相対水深が1/2より大きいので、tanh 2πh/Lの式は1.0と近似することができます。そのため、深海波の波長と波速は次式によって表されます。
一方、長波は相対水深が1/20より小さいので、tanh 2πh/Lの式は2πh/Lと近似することができます。そのため、長波の波長と波速は次式によって表されます。
では、例題を1問解いていきます。
例題1:波の周期が10 [s] のとき、水深150 [m] 地点の波長と波速を求めよ。
では、波長を150 [m] と仮定し、繰り返し計算により求めていきます。
まとめとして、微小振幅波は1854年にエアリーによって提唱されたものであり、速度ポテンシャルと表面波形の式から角速度と波速の関係式が得られます。この関係式から微小振幅波の波長と波速を求めることができます。