ランキンの土圧論は簡便な方法で土圧を算定することができるのですが、擁壁の背面が垂直である必要があり、かつ擁壁と土の摩擦も無視されています。クーロンの土圧論はこれらの条件を考慮しており、ランキンの土圧論より広く用いられています。クーロンの土圧論は擁壁背面の下端を通る平面のすべり面を仮定し、くさび形の土塊に働く力の釣り合いから土圧を算定していきます。
土塊が下方に押し込まれるとき、土塊の重量と主働土圧合力と反力が釣り合っていることになります。また、土圧の合力は角度ωによって変化するため、最大値を求めるために釣り合い式を偏微分する必要があります。そのようにして求めた主働土圧合力、主働土圧係数、主働土圧合力の作用位置は次式で表わされます。
このとき、αは擁壁背面の傾斜角 [rad]、δは壁面摩擦角 [rad]、φは内部摩擦角 [rad]、iは地表面の傾斜角 [rad] です。
上式に擁壁背面の傾斜角θ=90°、壁面摩擦角δ=0°、地表面の傾斜角i=0°を代入するとランキンの土圧論と同じ式を導くことができます。また、壁面摩擦角は道路土工指針または道路橋示方書によって異なる算出式が次式のように定義されています。
受働土圧を考える場合はくさび形の土塊が上方に持ち上がろうとしていると仮定します。そのため、受働土圧合力、受働土圧係数、受働土圧合力の作用位置は次にように表わされます。
また、地表面に等分布荷重が加わっているときの主働土圧合力、主働土圧係数、主働土圧合力の作用位置は次式で求められます。
さらに、粘性土での主働土圧合力、主働土圧係数、主働土圧合力の作用位置は次のようになります。
ちなみに、主働すべり角と受働すべり角は次式で算出できます。
では、例題を1問解いてみましょう。
例題:下図のような擁壁の地表面上に等分布荷重を載荷したときの主働土圧合力および作用位置を求めよ。ただし、土の単位体積重量は18 [kN/m3] とする。また、道路土工指針に従い計算するものとする。
値は全て与えられているので、あとは代入するだけです。
まとめとして、クーロンの土圧論はランキンの土圧論を拡張したものであり、擁壁背面が垂直な場合でなくても土圧を求めることができます。