6.3 ランキン土圧(粘性土)

ランキンの土圧理論はもともと粘着力を考慮しない砂質土に対するものですが、理論を拡張して粘性土の土圧も求めることができます。下図は粘性土が塑性状態にあるときの応力状態をモールの応力円で表しています。また、角度は次式によって求めることができます。

この式を変形していくことで主働土圧の式が導出できます。

従って、主働土圧の式は次のようになります。また、主働土圧合力も求まります。

上式の第一項と第二項をそれぞれ図示すると、下図のようになります。その結果、土の粘着力は引張応力であることが分かります。応力が0になるときの高さは主働応力を0に置くことで求めることができます。

また、主働土圧合力が0になるときの高さは次式によって求めることができます。

このHcはzcの2倍の深さにあり、土圧合力が0になる深さに相当します。すなわち、土が自立できる限界高さを表しています。しかし、実際の設計では土の粘着力(引張応力)を無視する場合がほとんどであり、土圧合力は次式によって算定するほうが多いです。また、このときの作用位置は次のようになります。

粘着力がある場合の受働土圧および受働土圧合力は次のようになります。

では、例題を1問解いてみましょう。

例題:高さ8.0 [m] の擁壁が粘着土を支えているとき、引張応力が発生する限界深さおよび主働土圧合力を求めよ。ただし、粘着力は30 [kN/m2]、土の単位体積重量18.5 [kN/m3]、内部摩擦角は0°とする。

与えられた値を式に代入すれば求めることができます。

また、粘着力(引張応力)を無視したときの主働土圧合力は次のようになります。

まとめとして、粘着力を考慮すると土圧および土圧合力は微妙に変化します。また、粘着力(引張応力)を無視したときの主働土圧合力は値が大きくなり、より安全に擁壁などを設計することになります。