図心軸に設計軸力と設計曲げモーメントが作用する場合と偏心距離の位置に設計軸力が作用する場合は等価となります。従って、設計断面力(設計軸力、設計曲げモーメント)が作用するときの設計断面耐力(設計軸耐力、設計曲げ耐力)の算定は、偏心圧縮力を受ける断面の耐力から算定することになります。
偏心圧縮力が作用するとき、断面に生じる応力は一様にはならず、偏心量が大きくなるにつれて軸耐力が低下していきます。また、曲げ耐力は偏心量が大きくなるにつれて上昇するのですが、ある点をすぎると曲げ耐力も低下していきます。この点の偏心量を釣合偏心量といいます。また、軸耐力と曲げ耐力を図にまとめたものを相互作用図といい、下図のように描かれます。
では、複鉄筋長方形断面に偏心圧縮力が作用するときの軸耐力と曲げ耐力を求めていきます。まずは、釣合偏心状態の断面耐力です。釣合偏心状態とは上縁コンクリートが圧壊し、引張鉄筋が降伏した状態のことです。あと、許容応力度設計法と比べてe'の位置が違うことに注意して下さい。
このとき、αbは釣合偏心状態の等価応力ブロックの高さ [mm]、Nbは釣合偏心状態の軸耐力 [kN]、Mbは釣合偏心状態の曲げ耐力 [kN・m] です。
引張鉄筋の降伏が先に起きる領域(Nu < Nb)と上縁コンクリートの圧壊が先に起きる領域(Nu > Nb)の軸耐力と曲げ耐力は次式によって表わされます。
このとき、Nuは軸耐力 [kN]、Muは曲げ耐力 [kN・m] です。
さらに、曲げ耐力が0のときの軸耐力、軸耐力が0のときの曲げ耐力は次式によって表わされます。
このとき、Nouは図心軸に圧縮力を受けるときの軸耐力 [kN]、Mouは図心軸に曲げモーメントを受けるときの曲げ耐力 [kN・m] です。
これら3つの断面耐力を求めることで相互作用図を描くことができるようになります。また、設計断面耐力は断面耐力を部材係数で割ることに求まります。このとき、断面耐力の種類によって部材係数が異なることに注意が必要です。
この設計断面耐力より大きな設計断面力が作用するときは鉄筋コンクリートの安全性が損なわれている状態であるといえます。ちなみに、上縁から図心軸までの位置は次式によって表わされます。
では、例題を1問解いていきます。
例題1:幅400 [mm]、高さ600 [mm]、有効高さ540 [mm]、引張鉄筋が5-D29 (28.6) の単鉄筋長方形断面に偏心圧縮力が作用するときの相互作用図を描け。ただし、コンクリートの設計基準強度は30 [N/mm2]、コンクリートの弾性係数は28 [kN/mm2]、引張鉄筋はSD390、鉄筋の弾性係数は200 [kN/mm2]、コンクリートの材料係数は1.3、鉄筋の材料係数は1.0とする。
まずは、計算に必要な諸量を求めていきます。
次に、釣合偏心状態の断面耐力を求めていきます。
さらに、曲げ耐力が0のときの軸耐力、軸耐力が0のときの曲げ耐力を求めていきます。
最後に、軸耐力と曲げ耐力をαの式で求めていきます。まずは、引張鉄筋の降伏が先に起きる領域(Nu < Nb,a < ab)からです。
続いて、上縁コンクリートの圧壊が先に起きる領域(Nu > Nb,a > ab)です。
全ての断面耐力が求まりましたので、設計断面耐力を求めていきます。
では、相互作用図を描いていきます。
以上より、構造物に作用する設計断面力が相互作用図の実線で囲まれた範囲であれば安全です。
まとめとして、設計軸力と設計曲げモーメントが同時に作用するときの安全性の照査は、相互作用図から行うことができます。