複鉄筋が曲げによって降伏するとき、引張・圧縮鉄筋がともに降伏している場合と引張鉄筋のみ降伏している場合に分けることができます。その前にまずは、引張鉄筋の降伏と上縁コンクリートの圧壊どちらが先に起きるのかを検討します。
このとき、εsは引張鉄筋のひずみ [単位なし]、εyは引張鉄筋の降伏ひずみ [単位なし] です。
降伏ひずみより引張鉄筋のひずみが大きければ、上縁コンクリートの圧壊を免れることができます。同様に、引張鉄筋の降伏と上縁コンクリートの圧壊どちらが先に起きるのかを検討します。
このとき、εs'は圧縮鉄筋のひずみ [単位なし]、εy'は圧縮鉄筋の降伏ひずみ [単位なし] です。
降伏ひずみより圧縮鉄筋のひずみが大きければ、圧縮鉄筋も降伏していることになります。
複鉄筋長方形断面において、曲げ破壊時に引張・圧縮鉄筋がともに降伏しているときの曲げ耐力は次式によって求めることができます。
また、圧壊による鉄筋コンクリートの急激な破壊(脆性破壊)を防ぐために、以下の規定が設けられています。
曲げ破壊時に引張鉄筋のみが降伏しているときの曲げ耐力は次式によって求めることができます。
また、部材の脆性破壊を確実に避けるために、以下の規定が設けられています。
では、例題を1問解いていきます。
例題1:幅400 [mm]、有効高さ600 [mm]、引張鉄筋が5-D25 (25.4)、圧縮鉄筋が4-D16 (15.9) の複鉄筋長方形断面に設計曲げモーメント300 [kN・m] が作用しているとき、設計曲げ耐力を求め、安全性を照査せよ。ただし、コンクリートの設計基準強度は30 [N/mm2]、鉄筋の弾性係数は200 [kN/mm2]、鉄筋はSD295B、d'は50 [mm]、コンクリートの材料係数は1.3、鉄筋の材料係数は1.0、部材係数は1.1、構造物係数は1.15とする。
まずは、中立軸の位置を求めていきます。
次に、降伏ひずみを求め、鉄筋コンクリートの状態を確認していきます。
計算の結果、引張鉄筋は降伏し、圧縮鉄筋は降伏していないことが分かりました。では、設計曲げ耐力を求めるために必要な諸量を求めていきます。
計算に必要な諸量が揃いましたので、設計曲げ耐力を求めていきます。このとき、中立軸の位置を計算しなおす必要があります。
また、規定を満足しているか確認を行います。
最後に、構造物の安全性を照査します。
従って、この構造物は安全であることが分かりました。
まとめとして、複鉄筋長方形断面の設計曲げ耐力は圧縮鉄筋の降伏の有無によって式が異なってきます。