浮力について語る前に圧力を知る必要があります。圧力とは、面に作用する力のことであり、単位は [N/m2] もしくは [Pa] で表わされます。圧力の一例としては、大気圧があります。地表面での大気圧は101.3 [kPa] と定義されおり、人間は約2 [m2] の皮膚面積を持っているので、常に体中に200 [kN] (リンゴ20万個分)の力が作用している計算となります。しかし、人間も体内から同じだけの圧力をかけているので、普段生活していても大気圧を感じることはありません。圧力を式にすると次のようになります。
このとき、pは圧力 [N/m2]、Aは面積 [m2] です。
また、大気圧以外の圧力としては水圧が挙げられます。水圧は水深と比例関係があり、水に深く潜れば圧力も大きくなります。水圧は次式で表わされます。
このとき、ρは密度 [kg/m3]、hは水深 [m] です。
気体と液体を総称して流体と呼ぶのですが、流体中に存在する物体は軽くなります。これは、流体が物体を押し上げる力が発生するためです。この力を浮力といい、浮力は次式によって定義されています。
このとき、Vは体積 [m3] です。
上式は浮力は物体が押しのけている流体の重さと同じ大きさであることを表しており、このことをアルキメデスの原理といいます。
ここからは余談です。アルキメデスの原理の発見経緯を載せておきますので暇なときに見て下さい。
アルキメデスの原理は、大昔の紀元前200年代に発見されました。当時、古代ギリシャの王様であったヒエロン2世は、金属を加工する職人(金細工師)に金を渡し純金で出来た王冠を作らせました。しかし、金細工師が混ぜものを使用したという噂が広がり、王様はとても困り果てました。というのも、当時の技術ではその王冠を壊さずに純金で作られているかどうかの判断ができなかったからです。そこで、王様は天才科学者であったアルキメデスに王冠が純金であるかを調べるように命じます。困り果てたアルキメデスですが、ある日、お風呂に入っている時に浮力の存在に気づき、裸のまま「ヘウレーカ(わかった)」と叫びながら走り去ったそうです。
次の日、アルキメデスは天秤と王冠と金塊を用意します。天秤に王冠と金塊をのせ、重量が同じになるように金塊の量を調整します。そしてそのまま水に沈めます。もし王冠に純金が使われているのであれば、金塊と王冠の体積は同じになり、同じだけの浮力が作用するはずです(実際は、金を伸ばしたり温めたりすることで体積は変化するのですが、微量であるため考慮しないとしておきましょう)。重量と浮力が同じであれば、天秤は水平を保ったままのはずです。しかし、王冠には銀が使われていたためにその分だけ体積(浮力)が大きくなってしまい、天秤のバランスは崩れてしまいました。その後、アルキメデスは王様に褒め称えられ、金細工師は死刑となりました。めでたし、めでたし。