じゅぷ、じゅぷ、と。耳元で柔らかくて、ザラザラとした生暖かい感触がする。肉感のあるそれ は、時折耳の縁を食んだかと思えば、穴の奥にぐち、ぐちと強引に捩じ込まれ、脳みそが掻き回 されているのではないかと錯覚する。
耳元で吐きだされる吐息が熱くて、擽ったくて身を捩ると、「ダメだろ」と。逃げられないように顔 を抑えられた。
下腹部では細長い棒のようなものが鈴口から挿入され、時折悪戯に指で抜き差しされる。その 刺激にびくびくと痙攣し、仰反る。すると、褒めるように頭を撫でられ、「気持ちいいな?」と甘く囁 かれた。
気持ちいい。気持ちいい。気持ちいい。
ふわふわとして思考が蕩ける。あまりの幸福感に、ふにゃ、と笑いかけると、目の前の金色は 楽しげに細められた。どうしてこんなことになったのか、とか、こんなことをしてて良かったんだっ け、とか。思考の隅で誰かが呼びかけた気もしたけれど。
抱きしめられる体温が温かくて、胸元から香る薔薇の香りが愛おしくて。そんなことはすぐにどう でも良くなって、思考は小さく霧散する。そして目の前で涙を流すピーターに、ただ、ただ幸せだと 伝えたくて、そっと微笑みかけた。
悪辣
見知らぬ土地の、小さな宿の一室。
ハルちゃんに作ってもらった夕食のシチューを皆で平らげ、色々とここで得た情報を皆で整理し た後、一度個室に戻って休むことになった。そのまま眠りにつこうかと思ったけれど、色々不思議 なことがあったせいか目が冴えてしまって上手く休むことができない。
「う~ん……眠れないなあ。」
見慣れぬ天井をぼんやりと眺めながら、一人呟く。木製のベットの上でゴロゴロと転がり、横を 向いて体勢を変えたり目を瞑ってみたりしたけれど、相変わらず睡魔が襲ってくることはなかっ た。仕方なくむくりとベットから起き上がる。不意に夜になると牧場に可愛らしい動物がいると牧場 主の子が言っていたことを思い出した。
……茅が牧場では山羊を育てているのかもって言ってたなあ。羊さんの数を数えると眠れるな んて話もあるし、可愛い動物を見たら少しは気分が落ち着くかも。
そんなことを考えながら、茅たちを起こさないようにこそこそと宿を出る。外は建物の前にランプ はあるものの、牧場の方は街灯も少なく視界が悪い。懸命に目を凝らして動物はどこだろう、と きょろきょろしていると、ずるり、という音とともに背後から「メエェ……」という少し高くて愛らしい鳴 き声が聞こえた。
もしかして、と期待に胸を躍らせながら振り返る。しかしそこにいたのは想像を遥かに絶する生 物だった。
「……え?」
真っ先に視界に広がったのは唾液を滴らせる口。無数に伸びる皺だらけの触手。自身の体長 の何倍もの大きさのあるそれは、目という器官があるのかすら分からない。しかし、確かに潤のこ とをじっと捉え、捕食前の獲物を品定めするように見降ろしている。そして幹に開いた複数の穴か
ら伸ばされた舌から唾液が顔に滴り落ちたその瞬間、冷静に目の前ものを分析することで逃避 し、麻痺していた思考に、心に。ひやりと悪夢のような恐怖が膨れ上がった。本能が今すぐこの化 け物から逃げろ、と警鐘を鳴らし、全身にぶわりと鳥肌が立つ。
逃げ出そうと引いた足に、化け物の触手が伸ばされ、地面に激しく倒れこむ。身体を打ち付け た痛みにも構わず、恐怖に身を支配されたオレは、必死に逃げ出そうと地面を這う。
「あ……わ、や、やだ......!離して、離してよぉ!……むぐ!?」
叫びも空しく、手足の自由を触手によって奪われ唇に太い触手を無理やり捻じ込まれた。軽くえ ずいてしまう程乱暴に差し込まれたそれは、口内を好き放題蹂躙し、舌を絡めとる。腐臭の漂う それに粘膜を侵犯される不快感。同時にこのまま捕食されてしまうのではないかという強迫観 念。離してほしくて、逃げ出したくて必死にもがくけれど、目の前の化け物には到底力が及ばず、 声を上げることすら叶わない。
やがて化け物は口腔だけでは飽き足らず、触手を首筋、胸、内腿……身体のありとあらゆる場 所を服の上から這い回り始めた。そして遂に、パーカーの裾から触手が入り込み、直に柔肌を撫 でる。皺が寄りザラザラとした表皮が、時折胸の突起の側部をわざとらしく掠め、執拗に刺激し始 めた。明らかに意図を持って何かを為そうとするその動きに、脳が混乱する。
「ぁ……ッひ、な、なに……何するの…?ん、ん……!」
側面を重点的に擦り上げていた触手は、徐々に粒を転がすようにこねくり回したり、乳輪を巻き 取るように締め付け、先端を別の細い触手で繊細に、擽るように撫でまわすように、緩急を付け ながら弄ぶ。
こんなものに触れられたくない、今すぐ逃げ出したいはずなのに、その権利を失った身体は現 実を受け止めて壊れてしまわないようにか、適応してしまうためか。それまで恐怖に顫動するだ けだったはずの身体は、その刺激を何か痺れのようなものに変換し、熱に変換しようと意志を無 視して勝手に働き始めた。心と身体の反応がちぐはぐで、そのことが酷く恐ろしい。
服の隙間から潜り込んで刺激を繰り返すだけだった触手は外套、トレーナー、そしてズボンにま で手を伸ばし、乱暴に剥ぎ取った。自身を守るものを全て奪われ、ひやりとした空気に肌が晒さ れる。そして触手は胸への刺激はそのままに、ゆっくりと恐怖を煽るように性器を絡め取った。僅かに勃ち上がったそこからは、とろりと先走りが溢れる様が、嫌でも目に入る。
「ぁ、や、ひぐ、う、ぅ……。」
こんなことをされて反応する自分の身体が気持ち悪くて、情けなくて。いっそのこと気を失うか、 おかしくなってしまった方が楽だとすら思うのに、身体の中では刺激による熱と嫌悪感が充満し、
吐き気が込み上げてくるだけだった。不意に初めて下着を汚してしまった時のお母さんの顔がフ ラッシュバックし、瞬く間に目尻に涙が溜まっていく。
刺激にびくつく身体を嘲笑うように、巨大な樹を模した怪物は、ぐちゅり、ぐちゅりとオレのモノか ら分泌された粘液を潤滑油代わりにして上下に擦り始める。2点へ同時に加えられる刺激に、否 応なしに声が漏れる。そして、一度決壊した涙腺は留まることなく水滴を分泌し、ぼろぼろと涙を 溢れさせた。
「ぅ、あ…ひ、やだ、やだよぉ……!ごめ……ごめんなさ……おかあさ…ぅ、たすけ、だれか、だれ かぁ……!!」
沈黙。
ああ、オレ、このままこの化け物に犯されて、お母さんにも、お父さんにも。愛されないまま死ん じゃうんだ。
深い絶望感に襲われ、全てを諦めかけた時。
突如ピタリと触手の動きが止まった。
「……ん?何だ、潤じゃないか。どうしたんだ?こんな時間に。」
聞き覚えのある声。恐る恐る目を開けると、そこには見覚えのある金色が、夜の帷の中でじっとこちらを見つめていた。
「……ぴー、たー?」
「ああ、そうだぜ。他の誰に見えるんだ?」
昼と変わらず、飄々とした様子で腕を広げ、世間話でもするように微笑むピーターに、今までの 状況が夢だったのではないか、とすら感じる。顔見知りの相手が来てくれた安心感に、ふにゃりと 脱力してしまった。
「……にしても随分好き放題されてるみたいだな?」
そう言いながら、ピーターは舐め回すようにゆっくりと視線を下から上へと移動させ、「へぇ…… 。」と何処か楽しそうに笑った。その視線に、自身が服を全て剥ぎ取られた挙句、どろどろになり緩く勃ち上がったモノが晒されていることを思い出す。突如ぶわりと全身が熱くなり、羞恥心が込み上げてくる。そして未だ大樹の拘束が解かれたわけではないことに気づくと、再び触手が胸元の突起を這い、屹立をぬるぬると扱き始めた。
「ひぅ……!?ぁ、や、ぴーたー、ぴーた、おねが、たすけ……んッ!?」
再開された凌辱に、ぞくりと悪寒が走る。触手は幹だけでなく先端をもグリグリと刺激し、今か今かと達するのを待ち望んでいるようだ。
一刻も早くこの状況から逃れたくて、必死にピーターに手を伸ばす。しかし、その手が掴まれる ことはない。代わりに向けられたのは残酷なほどに綺麗な笑顔だった。
「……助ける?どうして俺が?」
ひやりと、背筋に氷があてられたような心地になる。無理矢理に口に詰め込まれた触手のせい で、どうして、と声を上げることもできない。
目尻に溜まった涙が、行き場をなくして一人、頬を伝っ て地面で爆ぜた。
ピーターはそんなオレの顔を見て、より一層笑みを深める。艶やかな仕草でゆっくりとこちらに 歩を進めてくる。そして化け物の触手を汚れることも構わずにオレの口から抜き取り、手を伸ばし てきたかと思うと、オレの頬に触る。そのままじっと目線を合わせられた。その手つきは突き放すような言葉とは裏腹。割れ物を扱うように優しい。
瞳は暗闇の中でも不思議と金色の光を放ち、オレの全てを見透かすように射抜いてくる。
「……ああ、ごめんな潤。少し意地悪しすぎたか。冗談冗談。けど、助けて欲しいなら対価が必要 だ。賭け事と一緒。……分かるな?」
手袋を嵌めたスラリとした長い指が、俺の顔の輪郭をなぞり、ゆっくりと唇に親指が捩じ込まれる。そして口の中をくちゃくちゃと好きに弄んだ後、耳元へ近づけられる唇。瞬間、時が止まってし まったかのような錯覚。
「ーー潤は俺のために、何を差し出せるんだ?」
普段より幾分か低く、吐息混じりの甘い声。
「っぁ……。」
ピリ、ピリと。耳の穴から首筋、背筋へ。順に広がっていく甘い痺れ。感じたことのない、奇妙 で、しかし徐々に全身の主導権を奪ってしまうようなその毒に、小さく声が漏れた。全身の細胞が、目の前の生き物に全てを捧げてしまいたい、捧げてしまえと騒ぎ立てる。
先程まで感じていた化け物への恐怖心は徐々に上書きされ、頭の中は目の前の青年への被 支配欲でいっぱいになっていた。これまで経験したことのないその感覚に、はくはくと唇を開閉さ せていると、小さく「ほら、答えられるだろう?」と言葉を促される。
「ぁ……ぴーたー、ぴーたーの、ために?んっ、んぁ……。」
「ああ。……それとも潤は、このままこいつに遊んでもらう方がお好みか?」
化け物の触手が背をなぞり、そのままと徐に蕾を撫でる。執拗に、様子を探るように入口を弄ら れ、何をされるのか分からない恐怖が再び襲いかかった。
そして同時に、されるならピーターがいいと。それが自然なことだとオレの頭は思考し始めてい た。
「ゃ、やだ……。おれ、ピーターが、ピーターが、いい……ひぐ、ぴーたー、ぴーたぁ……!」
「……なら、対価を。はは、それともいっそのこと、心も身体も……全部俺に引き渡してみるか?」
「ん、ぁ…っ、ぜ、んぶ?」
「ああ、全部。……そうしたら、こいつからは引き剥がして、代わりに俺が沢山可愛がってやる。壊 れてしまうまでちゃんと"使って"最後まで愛してやる。俺は自分のものは大切にする主義だからな。……ほら。」
ピーターが、目の前にそっと手を差し出す。
全部。ぜんぶ。ゼンブ。頭の中で、紡がれた言葉が何度も木霊する。ピーターに全てを明け渡し たらオレを、あいしてくれる?作り直したオレじゃなくて、そのままのオレを? 両親に愛されたくて、AIのオレを作る気でいた。それは今も変わらない。2人が新しいオレを愛し てくれれば、それだけで報われる。もしかしたら、オレ自身のことだって……。
……本当に?
不意に、疑念が脳をよぎる。AIのオレが愛されたら、もうオレ自身は用済みになってしまうんじゃないか。そうしたら……そうしたら、残ったオレ自身は、誰が愛してくれるんだろう。
一度綻びが生まれればそこから次々と崩壊するのはこの世の摂理で、胸を渦巻く不安は轟轟と膨れ上がっていく。大丈夫、そんなことない。捨てられる。愛されたい。愛されない。嫌だ。捨て ないで。愛して、愛して、愛して…っ。
胸に抱え込んでいた感情がドロリとひび割れた容器から溢れ、遂に決壊する。気づけばオレは 拘束された腕を必死に伸ばし、目の前の手を取っていた。
ーーーーーーーーーーーーーー
「……そう、舌を使って……よしよし、上手になってきたな。」
客がいなくなり、しんと静まり返った賭場の中。奥の椅子に腰掛け、俺の下腹部に顔を埋め、奉 仕する潤の頭を優しく撫でる。すると面白いほどに潤は明るく顔を高揚させ、嬉しそうにちゅ、ちゅ と音を立てて俺のモノに吸いついた。
従順なその姿に、本能的な支配欲が満たされる。今までも魅惑をかけて自身の傀儡にした人 間は両手で数えきれないほどいたが、深層意識にある「支え」を軽く外してやるだけで、自ら身を 差し出してきたのは潤が初めてだった。
言い換えれば、俺が精神への干渉として魅惑を使ったのは「支え」を外したあの瞬間だけ。きっかけを作ったに過ぎない。
既に3回程中を好き放題に犯し、前も後ろも可愛がってやったが、一度も抵抗する素振りはな かった。純朴そうな顔をしながら自身の意志で健気に奉仕する姿に、潤がどこまで許容し、俺か ら与えられるものを受け入れられるのか。好奇心が擽られた。
一度潤の頭を上げさせ、目の前に羽根がつき、先が丸くなった細長い棒状のモノを取り出す。
「潤、これが何だか分かるか?」
「……んぁ、ダー、ツ……?」
「んん、まあ半分は正解だな。確かにダーツとしても使えるが、もう一つ用途がある。」
そう言いながら、フライト部分を取り外し、潤をポーカー台の上へと座らせる。そして俺のモノを 舐めて興奮してしまったのか、すっかりぐずぐずになってしまっているそこに口づけ、先端を軽く舌で押し込むように刺激してやると、びくびくと肢体が跳ねた。
白い首を晒し、刺激に悶える潤の様子を楽しんだ後、こぷこぷと止め処なく涙を流すそこに、 ダーツの先端をあてがう。
「あ……ぅ…っピー、ター?」
何をするか理解できていないのか、潤は不思議そうに小首をかしげ、その様子を眺めている。 そんな潤に内心ほくそ笑みながら、先端をずぷりと。尿道へ挿入した。本来モノが入り込む場所ではないそこに異物が捩じ込まれ、ヒュッ……と息をのむ声が聞こえる。
「あ"……!?」
「あー、動くなよ?潤に痛い思いをさせたくないからな。」
そう言いながら慰めるように耳を食み、舌を耳の奥に捩じ込む。すると強張っていた身体は徐々に弛緩し、表情が花が綻ぶように蕩けていった。
「……はは、何だ随分幸せそうだな。」
ずぷずぷと小刻みに出し入れしながら、先走りの滑りを利用し、奥へ奥へと棒を進める。すると、 刺激にぴくぴくと身体を震わせながら、俺が潤の後頭部に回していた左手を取り、自らの頬に擦り付けた。
「ん、んぅ、ら、らって……オレ、こんな愛してもらえたの、初めてで…ぁ…えへ、えへへ…幸せ、だ なぁ……。」
そうして笑う潤の顔は、初めてプレゼントを貰って喜ぶ子供のように、純粋に心の底から満たさ れていて。
その顔を、愛らしいと感じた。欲しいと感じてしまった。瞬間、脳に走る、目が眩むほどの衝撃。 胸を渦巻く、ヘドロのようにどす黒くて、強い欲求。
ーーああ、駄目だ。こいつを今すぐ「自分のモノ」にしたい。傷つけて、殺して、最期の瞬間ま で、確実に。俺だけのことを考える存在として、永遠にしてしまいたい。
噴き出すように心を席巻した欲望のあまりの強さに、思わず乾いた笑みが溢れた。以前図書館 の書物で読んだことがある。俺たちパンの子は、人間を愛でるだけ愛でて、最後には破滅させる 生き物なのだと。だからこれは仕方ない。本能には、抗えない。今までも、散々殺してきたのだか ら。
「……潤。」
そのまま、魔力を込めた瞳でじっと潤の目を見据えた。
「……ピーター…?……っ?ぁ…?」
潤の目が見開かれ、吐息が漏れる。本人も何が起こってしまったのか分からないようで、目を 白黒させ俺の腕にしがみついてきた。魅惑で桁違いに感度が上がってしまったであろう身体に、 容赦なく吸い付き、血が滲むほど強く。強く噛み付いた。
「あ"ッ…いっ……っ?……!」
ブツリ、と音を立ててきめ細やかで白い肌が小さく裂ける。自ら傷つけたそこを、今度は労わる ように舐める。魅惑が麻酔となって痛みを遮断した感覚器官は、その刺激を快楽として受け取ってしまうのか、耳元で熱い吐息が漏れ、必死に縋りつきながら身悶えているのが分かった。
……甘い。甘い、甘い、甘い。
舐めとった彼の血液は、花蜜のように甘かった。ミツバチにでもなってしまったかのように、我を 忘れ、無我夢中で吸い上げる。
「ぁ…あ……あ、ん、ん…っ」
ちゅ、と音を立てて傷口から唇を離した頃にはエメラルドグリーンの瞳は既に焦点が定まっておらず、打ち上げられた魚のようにぴくぴくと小さく打ち震えていた。唇の端からはだらりと唾液を溢 し、小さく開いた隙間から赤い舌が露わになっている。蒸気した頬は、果実が熟れたように赤く染 まり、確かな色香を孕んでいた。
「ああ……はは、可愛いな。愛してるぜ、潤。」
そう伝えれば、潤はとろんと虚な瞳のまま頬を緩ませ、嬉しそうに笑った。そんな潤を甘やかす ように耳を食み、舌を押し込むようにして嬲る。反射的に身を捩って逃げようとする潤の頭を押さ え、耳元で低く「ダメだろ、逃げたら。」と咎めると、小さく喘ぎながらも抵抗はしなかった。
同時に滑りで軽く押し出され、鈴口から覗くダーツの先端を再びじゅぷり、と少し強引に押し込 むと、潤は先程と比べ物にならないほどビクビクと激しく痙攣し、瞳から涙を溢した。
「ひ、ぁああ"あ"…!……ッん、ん…っ」
「ははは、あー……気持ちいいな?潤。さ……潤ならもっと気持ち良くなれるだろ?」
潤をポーカー台に横たえ、はくはくと口を開閉する唇に自身のものを重ねる。舌を捻じ込み歯列 をなぞれば、迎え入れるように唇は開かれた。
暴力的なほどの快楽に脅かされているにもかかわらず、俺を受け入れようとするその健気さに、ずくりと下半身が疼く。舌を絡めとり、柔い肉の感触を愉しんでいると、縋り付くものを求めた のか潤の左手が虚空に伸ばされるのが視界の端に映った。その手をそっと取り、指を絡ませてやる。すると赤子のように手をぎゅっと握り返してきた。
その動きに、温もりに。何故か胸がちくりと痛む。
唇を離し、潤の様子を観察する。すると、潤はとろんとした顔のまま、不思議そうに俺のことを凝視してきた。そして、繋いでいない方の手を俺の頬に伸ばし、心配そうに眉を下げる。
「んっ、ぅ…ぴーたー、大丈夫?どこか、痛い?」
「え?」
「ピーター、泣いてる……。」
指摘されて初めて気づいた。泣く、泣く、泣く?何故。これだけ潤の身体を好き放題しておいて。 満足こそあれ、悲しむ理由なんて何もないだろう。目の前の生き物を犯したのもお前。傷つけたのもお前じゃないか。何が不満だ。自身の欲求は満たせているだろう?本能に従ったのだろう? だったら何故。目から溢れ出したこれは、止まらないのだろう。
ぐるぐると思考が巡り、考えが浮かんでは、弾ける。止めようにも決壊してしまった涙腺は、馬鹿 みたいに次々と雫を分泌して、留まることを知らなかった。
不意に、潤が俺を引き寄せ、ぎゅっと抱きしめてきた。
「ぴーたー、だいじょうぶ、だいじょうぶ。オレ、オレ今幸せだよ。……ピーターは、辛い?」
その瞬間、気づいてしまう。
潤が自分を拒まず身を委ねてくれるのが嬉しかった。一心にこちらに向けられる愛情が嬉し かった。その体温が、温もりが。恋しい。愛おしい。壊したい。壊したくない。化け物の本能と、人間を模倣した偽物の心がぶつかり合って、苦しい。
本当は傷つけたくない。手元に置いておきたい。けれどそれはできない。俺はどの道、俺の目 的のために目の前の人間を主に明け渡さなければいけないのだから。
ああ、けれど。せめて今晩だけでも。この温もりを。潤が向けてくれる愛情を享受できたなら。
身勝手なのは分かっていた。
けれど、オアシスのない砂漠を歩き続けた身体はカラカラに乾き、差し出された水を飲まずには いられない。手を伸ばせば、直ぐに乾きは潤うのだから。
俺は一度身を離すと、潤の脚を持ち上げ、聳り立った自身のものを蕾にあてがう。すると、潤は ぴくりと震え期待を込めた眼差しを向けてきた。
「潤。」
「……?」
「愛してる。」
そして、心底幸せそうに、花開くように無邪気な笑顔を浮かべた潤の額にキスを落とす。そし て、壊れないように丁寧に。一気に中を貫いた。
ーーーーーーーーーーーーーー
「ん……ぅ?」
窓から差し込む朝日の眩しさで、目が覚める。あれ、オレいつの間に眠っちゃったんだっけ。確 か、牧場にいる可愛い動物を見に行って……それで。そこまで考えると、ズキリと頭が痛む。うう ん……ダメだ、何も思い出せない。
不意にベットの横にある机に視線をやる。そこには、ハートのAのカードが、一輪の花と共に添 えられていた。
つー…っと、頬に温かいものが流れ落ちる。
「ぁ、あれ……何で…。」
胸にポカリと穴が空いてしまったような喪失感。寂寥感。それらが意味するものは、その時のオ レには分からなかった。
ーーL'as de cœur signifie l'amour sans fin.