講演概要:
今城 洋亮(上海科技大学)
題目:Quasi-homogeneousな孤立特異点を持つカラビ・ヤウ多様体の変形について
アブストラクト:Xをコンパクトなカラビ・ヤウ多様体とし、Xの特異点は全て孤立特異点で、かつquasi-homogeneous(すなわちC*作用を持つ)とする。この場合に、Xのregular locusのあるケーラー計量を使って、Xの変形の障害がないことを示す方法を説明したい。
尾高 悠志(京都大学)
題目:佐々木-アインシュタイン空間ないしカラビヤウ錐、とそのコンパクトモジュライ
アブストラクト:複素ユークリッド空間\C^nに自然な平坦計量を入れて、原点から1の距離の点集合(リンク)を取ると実2n-1次元球面となり、これまた空間形すなわち定(断面)曲率である.
この一般化として表題のカラビヤウ錐(リッチ平坦ケーラーな計量錐の意味、複素n次元としよう)とそのリンクである佐々木アインシュタイン空間(実2n-1次元となる)の概念があり、これらは対応している.当初は(概)接触幾何学との関わりの中で佐々木重夫により導入されて(1960年出版)日本でよく研究され、長い時を経て超弦理論の文脈(AdS-CFT対応)で再度注目された.さらに時を隔てて近年のケーラー幾何の発展、とりわけDonaldson-Sun理論やK安定性理論の発展の中でこれらの理解は進展し、より代数的ないし系統的な取り扱いも可能になりつつある.例えば計量接錐の構成をノビコフ環の上の退化族と捉えることが可能であり、これらの計量の存在は一般化されたK安定性と同値である.本講演の主定理はこれらカラビヤウ錐ないし佐々木アインシュタイン空間のモジュライ空間がコンパクト性を持ち(ほぼ代数的な)複素解析空間の構造を持つ(arXiv:2405.07939)ということであり、これはファノ多様体のKモジュライ理論の拡張でもあるが、代数的側面の詳細より幾何的な面を重視して展開したい.
川﨑 盛通(北海道大学)
題目:変換群の普遍被覆の相対的単純性と坪井距離
アブストラクト:微分同相群や閉シンプレクティック多様体のハミルトン微分同相群などのいくつかの変換群は単純群となることが知られている。 しかし、これらの変換群の普遍被覆は基本群を正規部分群として含むために一般に単純群とはならない。 講演者らはこれらの普遍被覆が「相対的単純群」となることを証明し、その応用でこれらの群の坪井距離についても考察した。 本研究は木村満晃(大阪歯科大)・児玉大樹(武蔵野大、理研)・松田能文(青山学院大)・松下尚弘(信州大)・折田龍馬(新潟大)氏との共同研究である。
小林 和志(福岡教育大学)
題目:複素トーラス上における一般化された複素構造に対するあるB-場変形について
アブストラクト:複素多様体は一般化された複素多様体の典型例であり, 特に, そのような一般化された複素多様体に対して定義されるB-場変形は, あるgerbeによる与えられた複素多様体の変形として解釈することができると考えられている.
一方, 複素化されたシンプレクティックトーラス内のLagrange部分多様体とその上のユニタリ局所系から成るある組に対し, ミラー双対な複素トーラス上定義された可積分接続付きのある種の正則直線束を対応させることができ, それらの正則直線束は自然にdg-圏を成す. 特に, これは, トーラス上のホモロジー的ミラー対称性における, それぞれの圏の間の対象のレベルでの対応関係の一部と見なすことができる.
本講演では, 複素トーラスを一般化された複素多様体と見なすことによって定義される特定のB-場変形をある平坦なgerbeによる与えられた複素トーラスの変形として解釈し, これに付随する形で上述のdg-圏の変形を具体的に構成することができること, 及び, それと対応するミラー双対な描像について説明する.
佐野 太郎(神戸大学)
題目:Delta invariants of Fano weighted hypersurfaces
アブストラクト:K-stability (or existence of Kähler-Einstein metrics) of explicit Fano varieties has been studied for a long time.
Delta invariants (stability thresholds) detect the K-stability of Fano varieties.
Moreover, Abban--Zhuang developed a powerful method to compute the delta invariants by adjunctions.
In this talk, I will explain our recent results on the K-stability of some Fano weighted hypersurfaces including the one via the Abban--Zhuang method.
橋本 義規(大阪公立大学)
題目:Calabiのextremal計量の存在とnon-Archimedeanポテンシャル
アブストラクト:Extremal計量はKähler多様体上定義される標準的な計量としてCalabiにより導入されたものであり,Kähler-Einstein計量や定スカラー曲率Kähler計量の一般化とみなすことができる.Extremal計量がいつ存在するかは重要かつ自然な問題であり,代数幾何学的安定性条件と同値となることが予想されている.定スカラー曲率Kähler計量に関しては,安定性条件の「完備化」とみなせる条件から計量の存在が導かれることがChi Liにより示された.本講演では,この結果のextremal計量への一般化について論じる.安定性条件の「完備化」には,non-Archimedeanポテンシャルを用いた非常に技術的な構成が用いられるが,本講演では詳細には立ち入らず,Kähler計量全体の空間における測地線との関係について直感的かつ入門的な説明を試みる.
二木 昌宏(千葉大学)
題目:同変コホモロジーとフレアーコホモロジー
アブストラクト:空間の同変コホモロジーはホモトピー商を用いて定義されるが、多様体の場合の代数的モデルとしてカルタン模型というものがある。本講演では、コンパクトリー群作用で保たれるラグランジュ部分多様体の同変フレアーコホモロジーを、カルタン模型を用いて定義する方法を紹介する。余裕があれば同変ホモロジー的ミラー対称性への応用について説明する。本講演の内容は三田史彦氏(学習院大学)との共同研究に基づく。
真瀬 真樹子(東京都立大学/大阪公立大学)
題目:On a study of symplectic automorphism groups on algebraic K3 surfaces
アブストラクト:We consider an algebraic K3 surface X admitting a finite automorphism group G that symplectically acts on X. It is known that the quotient space X/G contains at most simple singularities, and is birational to a K3 surface Y.
Denote by L the lattice generated by all the classes of the irreducible components of the exceptional divisor in Y obtained by resolving the singularities in X/G. Despite the fact that the lattice L, which is a disjoint union of lattices of type ADE, is a sublattice of the K3 lattice, the embedding is not necessarily primitive.
We post a problem to determine whether or not there exists a unique primitive sublattice of the K3 lattice that contains the lattice L.
If the group G is abelian, then, V.V.Nikulin gives an affirmative answer to the problem as well as presenting the explicit primitive sublattice for each group. In case the group G is simple, U.Whitcher investigates the problem and gives the answers.
In our study, we analyse the problem in all the remaining cases. In the talk, we discuss how to attack the problem, and show how much we have sorted it out.
This is based on an on-going joint work with Kenji Hashimoto.
主催者:今城 洋亮(上海科技大学)、橋本 義規(大阪公立大学)、二木 昌宏(千葉大学)
本ワークショップは,大阪公立大学数学研究所(文部科学省共同利用・共同研究拠点「数学・理論物理の協働・共創による新たな国際的研究・教育拠点」JPMXP0723833165)の共同利用・共同研究の一環として開催されます。また、科学研究費基盤研究(C) 23K03120(研究代表者:橋本 義規)の補助を受けています。
このページについてのお問い合わせは、二木 futaki AT faculty.gs.chiba-u.jp まで。
Last updated: 9 January 2025 🐍