空木帝国軍

静々と降り立つ月光は、陰に潜み地を喰らう。

 現代において宇宙人の話題も廃れてきた。UFOと呼ばれる飛行物体も、あらゆる科学や技術によってその存在を否定されつつある。
 一種のアミューズメントと化したこの分野に、恐怖を抱くやつなんて。そんなのはもはや笑われ者だ。


 ……はて、本当に宇宙人など存在しないのだろうか?

 もしタコやミイラのような奇妙な形態ではなく、人間に近い見た目なら。

 人間と同じような感情を持っているのなら。

 計画的に、密かな侵略を目論んでいたのなら。

 ただ我々が気づいていないだけではないのだろうか。


 あれ、あそこに歩いている人、腰になんかついてなかった?

 月の地下にある帝国。人口は500万人ほど。
 国民は赤茶色の目、白い尾という特徴を持っている。
 人間と等しい見た目をしているが、能力値に大きな振れ幅がある。足の速さ、耳の良さ、警戒心の強さなどは超人的なまでに発達している反面、耐久力や持久力に乏しく一人での行動が苦手な傾向にある。
 宇宙空間には耐性を持っており、酸素を確保すれば生存が可能。

 彼らからして人間は観察対象であり、野生の鳥くらいの存在感である。

 近年では人間に対し嫌悪感を持つものが多く、帝国内では地球侵略計画を積極的に進めている。
 原因は人間の月面着陸。彼らはこの出来事へ『人間の月の私有化』を感じ始めた。続けて送り出される人類からの探査機。これを地球からの宣戦布告と受け止めたのだ。
 丁度同時期に月面上の人口増加問題も浮上していた。ならばこちらも地球への侵略を開始すればよい。
 そうして軍隊が再編制され、特に地球へ特化した部隊が多く作成された。

 空木帝国を皮切りに、その考えは月全体へ広まった。空木帝国以外に存在する国々も同様に、地球へ使節団や派遣隊を送り出す始末。
 どの国も協力的ではあるが、たとえ地球を手に入れたとしても、圧倒的な権力を持つ空木帝国が統治することに薄々気づいている。

 歩兵を中心とした、日本に駐在している1000人ほどの派遣隊。秋水支隊、秋水派遣隊とも。戦闘に特化しており、最終目的は地球の領土獲得。第一侵攻部隊の他にも、各国に合わせた部隊が編制されている。

 被服は私服、軍服どちらでも問題ない。軍服で行動していても、大抵日本国民からは警察や警備員だと思われている。
 日頃から各々で武装をしており、奇襲をすることができる。武器の種類は問われておらず、地球人に気づかれないことに細心の注意を払う。その隠蔽の技術は、地球人では手の届かない域に達している。

 日本の治安故に戦闘が少ないため、日本で職務についていたり、学校に潜入していたりする者もいる。

 月から命令が下されたとき、彼らの本領が発揮される。 

 第一侵攻部隊には戦闘に必要な兵器、道具が支給されている。これらは帝国の技術を凝縮させたものであり、また技術の発展に大きく貢献している。

 音を集める菱型の装置。制帽に装着して使用する。
 集められた音は、耳元に付けた骨伝導装置より出力される。

 音の収集範囲は半径2Kmにわたる。また、小型端末にて入力する音声の種類や範囲、位置を指定することが可能。

 過去に日本で発見された刀を基に制作された軍刀。
 切れ味は鋭く、使うものによっては鋼をも切り裂く。

 近距離戦闘での武力としては最高峰である。しかし目立つことから、実際に装備する隊員は数少ない。

 情報科に属する、帝国で情報収集と作戦計画を担当している部隊。地球へ赴くこともある。

 現地調査による地形把握から、インターネットの使用まで収集方法は多岐にわたる。自らSNSを介して投稿することで地球人の性質を調査することもある。

 よく他の部隊からは「ゲームとSNSで遊んでいるだけ」と揶揄されるが、インターネット文化の把握により得られる情報は数知れない。

 情報をインプットするだけでなく、アウトプットすることによる内側からの攻撃も管轄内。
 国内の混乱や内戦を起こすことも、彼らには容易く行える。

 臥待らが所属する日本国偵察隊の他に、米国偵察隊、英国偵察隊などが存在する。 

 見た目はまるでウサギの兵隊たち。しゃべることはできないが、筆談やジェスチャーによる明確な意思疎通が可能。もちろん地球のウサギとは関係ない。

 事務所内の雑務をこなす他、資料採取や戦闘など危険な業務をこなす個体もいる。情報科では調査員として派遣されている。

 賢さは個体によるが、人間と同等の知恵を持っていることが確認されている。