「湿布を捨てよう」
手軽な消炎鎮痛剤に潜む落とし穴
■ とりあえず湿布
痛い。疲れた。
とりあえず湿布でも貼ろう。
こんなことを、何も疑わずに行っていないでしょうか。
痛みを抑える。炎症を抑える。
一見、正しいように思えます。
整形外科も含め、これが現代の「常識」になっています。
しかし、その当たり前が本質的な回復を止め、後々のトラブルを引き起こしていることをご存知でしょうか。
■ まだ「炎症=悪」だと思っていませんか
足底筋膜炎、アキレス腱炎、脛骨過労性骨膜炎(シンスプリント)、鵞足炎、腸脛靭帯炎…
故障の名称は「炎」とつくものが多く、まるで炎症が悪いもののように扱われています。
しかし、炎症は修復のために必要な反応であり、体があえて起こしていることを忘れてはいけません。
■ 炎症を止めることは、治りを止めること
湿布や内服の消炎鎮痛剤で炎症を抑え込めば、痛みや不快感は軽減します。
しかし「炎症=修復に必要な反応」である以上、同時に体の再生能力を奪っています。
痛みを抑えて、治りも止める。
さらに困るのは、その後も故障の兆候に鈍い状態が続くことです。
炎症を抑え込んだ痕跡が、刺鍼時に見つかることも珍しくありません。
※筋肉や骨に当たっていると思えない「ネバネバ、ペタペタ、ボソボソ」という感触があります。
■ 内服は良くないけど、別に湿布ぐらいいいよね?
これは大きな勘違いです。
口から入るか、皮膚から吸収されるかの違いであって、消炎鎮痛剤を体内に取り入れていることは同じです。
さらに、近年の湿布は鎮痛効果が進化しています。
以前は「湿布なんて効かないよね」という声がほとんどでしたが、
近年は「湿布を貼ったら痛みが引いた」という声をよく聞きます。
つまり、たかが湿布と思って使っていても、
「治らないまま無理が効く」状態になっている可能性があるのです。
■「今は休めないんです」
では、いつになったら休めるのでしょうか?
多くの選手は、年間を通して強化期と試合期を繰り返し、まとまったオフを取ることができません。
「鎮痛剤は今だけ」と思って使っていても、
①治らないまま走れる
②さらに負荷が蓄積する
③重症化する
④炎症反応が起こりにくくなる(=治りにくくなる)
⑤さらに強い鎮痛手段に頼る(例えば注射など)
このようなスパイラルに陥る可能性が高いです。
一時的にはごまかせても、ごまかし続けて、競技人生を一生逃げ切ることは難しい。
結局は、最初から痛みに蓋をせず、適切な治療を行う以外にないのです。
■ 鎮痛剤の本来の使い方
本来、鎮痛剤はどのような場面で使うものなのでしょうか。
私は、日常生活を送るのも困難なほどの痛みや、眠れないほど辛いときだけに限定すべきだと考えています。
例えば、鎮痛剤や麻酔なしで外科手術を受けることは不可能でしょう。
これは必要な処置を行うための鎮痛です。
連日睡眠が取れなければ、回復の遅れは大きいです。
鎮痛剤と睡眠不足の影響を天秤にかけたときに、睡眠不足のマイナス面が上回る可能性があります。
ここで言えることは、本来
無理して走るために使うものではない
ということです。
■「鍼を刺されても感覚がない」人が増えている
鎮痛剤の影響は本当に「一時的」なのでしょうか。
私の感覚では違います。
鎮痛剤を常用した経験のある選手ほど、
「鍼を刺しても感覚がない」部位が存在します。
特に、少なくとも一度は痛めた部位、または複数回故障を繰り返している部位に見られます。
感覚が鈍く、鍼を刺しても必要な炎症反応が起こらない。
その結果、回復そのものが遅れ、治りにくい状態が数年後も続いてしまうケースがあるのです。
■ 鍼灸治療との矛盾
鍼灸治療は、意図的に炎症反応を引き起こし、修復と再生を促すものです。
それに対し、鎮痛剤は完全に真逆であることを知っておいてください。
「一時的なら大丈夫だと思っていました」
「まさか治りを悪くしていたなんて…」
さらには、
「鍼灸院で湿布を勧められました」という声も聞きます。
さすがに、鍼灸師が湿布を勧めることは理解できないのですが、
現実にこのような選手が多いことから、注意喚起として記事を書いています。
■「特殊鍼」を使用する機会が増えている
これまで、消炎鎮痛剤の影響を知らずに使ってきた人はどうすれば良いのでしょうか。
もちろん、体内から完全に取り除くことはできませんが、まだ再生能力を回復させられる可能性は残っています。
①今からでも鎮痛剤の使用をやめる
②特殊形状の鍼を使用し、炎症反応を引き起こす。
※多くの場合、患部と周囲に鬱血した血液が沈着しているため、マイナスドライバー型の鍼で削ぎ落とす。
③抑え込んでいた痛みが一時的に再燃するが、必要な過程であることを理解して治療に臨む。
■ 量産できるものは普及する
湿布だけではありません。
セルフケアの道具や電気治療器なども同じです。
量産できる。
売りやすい。
簡単そうだから買う。
全てが悪いとは言いませんが、
物で溢れているからこそ、個々の判断能力が求められています。
何を使うにしても、
「この処置は本当に適切だろうか?」
と一度考える癖をつけましょう。
「常識」や「売り文句」だけに惑わされてはいけません。
■ 最後に
鎮痛剤をやめるか、使うか、最終的には個々の自由です。
それでも私は、
今すぐ「湿布を捨てる」ことをお勧めします。