「グリグリ、ゴリゴリ」絶対やめて!
間違いだらけのセルフケア
痛みや不快感があると刺激をしたくなるものですが、
実は、その刺激が症状を悪化させている可能性があることをご存知でしょうか。
セルフケアを「全てやめたら」故障が治った実例
半年以上続く足底内側痛。
併せて、ふくらはぎ内側のこわばり感も取れない。
ランニングは中止し、鍼治療を継続。
症状は一進一退で、時には悪化することも。
何かがおかしい。
改めて入念に触診をすると、この独特の突っ張り感は、強い外部刺激が加わった時の感触。
詳しく聞くと…
足底はゴルフボールで「グリグリ」
ふくらはぎはフォームローラーで「ゴリゴリ」
併せてマッサージガンで刺激
更にタオルギャザーとバランスディスクで足底を強化
夜は湿布を貼って就寝
…熱心さが裏目に出てしまい、連日刺激のフルコースを行っていたことが判明。
これらを全て中止してもらうと、
治療効果は明らかに向上し、その後は短期間で症状が消失したのです。
※今回のテーマとは違いますが、故障中の補強運動や、消炎鎮痛剤の使用による悪化例も多いので注意が必要です。
私もこの時の反省から、来院する選手には極力注意を促していますが、いまだに間違ったセルフケアが横行していることを感じます。
生体防御反応と硬結ができる仕組み
ここで、筋肉・腱・靭帯などの異常なこわばり(硬結・線維化・肥厚)がどのように発生するかを考えてみましょう。
第一段階:トレーニングによる微細損傷
→刺激により発生(その後、正常に回復すれば筋力・筋持久力が向上する)
第二段階:回復不十分
→睡眠不足、栄養不足(または過剰)、学業や仕事負荷、生活習慣など
第三段階:防御性収縮
→体が刺激から守るためにこわばる(その結果、血管や神経を圧迫する)
第四段階:慢性化
→局所的な血流不足・酸素不足が続き、硬結・線維化・肥厚が発生
※通常のマッサージや指圧で回復効果が望めるのは第二段階〜第三段階の初期まで
「グリグリ」「ゴリゴリ」は、防御性収縮を発生させる
本来、適切にセルフケアを行えば回復は促進するものですが、それは正確に行った場合のみ。
位置や角度がずれていたり、むやみな強刺激を行うことで、
生体防御反応 → こわばり発生 → 組織の圧迫 → 局所的な血流低下・酸素不足 →(故障している場合は悪化)という流れに陥ります。
安易な器具や機械に潜む危険性
近年は簡単そうに見えて、使い方によっては有害にもなる、器具や機械で溢れていることを感じます。
・マッサージボール(テニスボール・ゴルフボール含む)※的確に圧が入れば有効
・フォームローラー ※的確に圧が入れば有効(ただし形状的に深部には届きにくい)
・マッサージガン
・その他の強刺激器具全般
→「ただ振動を与える系」のものは基本的に意味がない
共通することは、深部に届かない → 物足りない → 強刺激 → そして生体防御反応を発生させてしまうことです。
特に振動系のものは「その場限りの心地よさ」を目的に使う物と考えましょう。(競技をする上では不要)
治療院ですら間違った方法が横行している現実
ではプロに任せれば安心なのかと言えば、実際は治療院でも「力任せの強揉み」を行なっているケースは珍しくありません。
こわばりを力で解消しようとしてしまう。
施術を受ける側も、なかなか症状が取れないために「もっと強くしてほしい」という感覚や、逆に「攻撃的な痛さ」を感じている場合は要注意です。
このようなアプローチは暴飲暴食と同じです。
無理やり口には入れているものの、消化不良を起こして、身体にとってはなんの栄養にもならない。
まずは選手自身が「刺激の質」を判断できるようにして、間違った施術を極力避けること。
自分の体は自分で守るしかありません。
理屈を知り、体で覚える
それでは「適切な刺激」とはどのようなものでしょうか。
残念ながら、今日から使える簡単な方法など存在しません。
それでも、競技を極める上では、ケアもトレーニングと同じく「反復練習」に取り組む価値があります。
正しい方法を習得するには、次のサイクルを回すしかありません。
① 理屈を知る
② 施術中に、正しく圧が入った時の感覚を体で覚える
③ 毎日、自分の脚(手が届く範囲)で練習する
根深い問題
元々は、通院中の選手から「自分でできること」を聞かれた際に、十分な説明をできないことが多く、今回この記事を書くことにしました。
トレーニング理論は体系化され、シューズやウォッチをはじめとする道具は急速に進歩しています。
一方で、体のケアに関しては正しい情報が広まりにくく、誤った方法が当たり前のように行われています。
「簡単にできる○○」といった物や情報ばかりが溢れ、
あれもこれも取り入れようとして、選手が混乱している現状。
・ボールで刺激していたら痛みが増した
・ケアに時間をかけても全く効果を感じない
・部内でのペアマッサージを受けるのが苦痛
これらの声は珍しいものではありません。
チームメイトや練習仲間にも「熱心にケアをしているのに治りが悪い」という選手がいませんか?
もし心当たりがあれば、ぜひこの情報を届けてください。
なぜなら、
間違いをやめることは、正しいことを増やすよりも効果があるからです。