NEOWISE彗星コマの螺旋状構造をアストロアーツの天体写真にアップした結果、Google検索で一位になる成果となっています。(現時点では) NEOWISE envelope、NEOWISE coma、NEOWISE spiralなどのキーワードで画像検索するとヒットします。
この画像は私が参加しているfacebookの「デジタル天体写真」で「短時間露出を数百枚程度、大量に撮影してRegiStaxで処理。」というアドバイスを受けて挑戦した結果です。
これは惑星写真をやっている人達の常套手段ですがDSOとか彗星を古典的に撮ってきた私には未知の世界で苦労しました。
今、SIRILをスタックと初期的なストレッチに使っていますがこのSIRILにもRegiStaxと同じウェーブレット処理の機能が実装されています。
NEOWISE彗星をSIRILのウェーブレットで処理したら同じ結果が出るのか試してみました。
合わせてSIRILにおけるウェーブレット処理を紹介したいと思います。
なお、私のSIRILのバージョンは0.99.8です。
最新版は0.99.8.1で0.99.8のバグフィックス版です。
現在はこちらが最新版なのでダウンロードして使ってください。
さて、以下がSIRILを使ってのウェーブレット処理です。
元絵(3秒露出を400枚スタック)したものを読み込み、画像処理メニューから定常ウェーブレット変換を選択した状態です。
Executeをクリックすると空間周波数別に(模様の大きさ別に)1から6のPlanに分解されます。
各々のPlanパラメータをスライダーを動かすか数値を打ち込んで「畳み込み」(convolution)によって画像強調を行います。
浮かび上がらせる模様の大きさに応じたPlanを選ぶ必要がありますが、そこにどんな模様があるのかわからないのでPlan別に個々に試す必要があります。
以下に、全てのPlanに対して補正値5を入れて試しています。
Plan1・・・特に目立った模様は検出できず・・・細かな模様は写っていないという事。
Plan2・・・はやり特に目立った模様は検出できず。
Plan3・・・なんかあるよな、でも依然として目立った模様は検出できず。
Plan4・・・このスクリーンショットではよく見えませんが、右半分が少し暗く、半円上の暗い半弧が見えています。
Plan5・・・右半分が暗くなっただけでPlan4では見えていた暗い半弧は消えました。
Plan6・・・見ての通り論外です。
という事でPlan3、Plan4あたりに何か模様があるようなので補正値をもっと大きくしながら探った結果が下です。
試行錯誤の結果、Plan3の補正値を10、Plan4の補正値を15にした結果です。
見事に渦巻が現れました。
ウェーブレット処理の前後です。
これがSIRILによるウェーブレット処理の結果です。右回りの螺旋構造が検出でき、RegiStaxと同じ結果を得る事ができました。
この画像から
1. 彗星の自転軸が視線方向に近い方向に向いていた。
2. 彗星からの物質放出が均一ではなく一方向に噴出していた。
という事が推測できます。
彗星が一方向に物質を吹き出しながら自転しているので吹き出た物質が彗星核の周りに螺旋構造を形成した結果です。
画像にはギザギザの線がありますが、これらはダークノイズです。 通常ならダーク補正で消しますが恒星数が少ないため通常ならDSSのスタック過程で適用するダーク補正ができませんでした。やむを得ず、スタックはRegixstaxで行いました。400枚もの画像を手作業でダーク補正する根性がなかったのでこれらダークノイズは残ったままです。なお写野左上の右肩あがりの線は恒星の軌跡です。
とまあ、SIRILのウェーブレット処理でもRegiStax同様の結果を得る事ができました。惑星写真でも使えると思います。
ぱっと目にはわからない低コントラストの画像にも意外な画像情報が潜んでいる可能性があります。彗星以外の天体でも処理次第で見た事の無い画像が得られる可能性はたくさんあると思います。