ヴォルフ 人間、男性、学者(スカラー) プレーヤー:コニタン
生まれは下級貴族の末子。彼はアルトドルフにあるヴェルンダッハ大学の教授でした。それが数年前、恩師の遺品をめぐる忌まわしい事件に出会って以来、きっぱりと生き方を変えてしまったのです。およそ彼には場違いな、荒くれ者がたむろする酒場に集い、すすんで危険な冒険に加わるようになってしまったのです。
グラロン ドワーフ、男性、採鉱者(プロスペクター) プレーヤー:チャッピー
地下に住み、優れた職工として知られるドワーフですが、地上の山野を放浪して鉱脈を探す採鉱者は意外と多くありません。グラロンは、そんな採鉱者の一人です。 どうやらグラロンには、氏族のもとを離れて一人旅をしなければならない、個人的な事情があるようです。
ゲームマスター、リプレイ執筆:ナッキー
プレイ日時:1999年8月7日(土曜日)
ヴォルフ:「なんともいかがわしい求人広告だこと」
グラロン:「まったくだ。自分から面倒に巻き込まれに行くようなものだな」
ヴォルフ:「よし、これに決めよう」
グラロン:「冗談だろ?」
ヴォルフ:「路銀も残り少ない、めぼしい仕事も見あたらない。なにより私は退屈しているんだ」
グラロン:「退屈だと? 学者さまのセリフとは思えんな」
GM:オルデンハラー邸について、使用人に用件を告げます。玄関の広間で30分ほど待たされてから、はなやかな装飾のほどこされた広い書斎まで案内されました。部屋の真ん中にマホガニー製の机があり、向こうにはハンサムな中年男性が腰掛けています。彼は君たちを見て軽く頷いてから、「ごきげんよう。私がオスカル・オルデンハラーだ」と言います。
ヴォルフ:「張り紙を見てきた。私はヴォルフ、彼はグラロンだ」
オスカル(GM):「よろしい。君たちは売剣かね」
グラロン:「ちがう。だが腕におぼえがある」
オスカル(GM):「なるほど。では、武器の腕前と同程度かそれ以上の知恵は持っているかね」
ヴォルフ:「どちらかといえば後者が専門だ」
オスカル(GM):「すばらしい。では、手短に用件を話そう」
グラロン:「すまんがオスカル殿、俺たちはこの仕事を引き受けると決めてはいない。あんたらお偉いの依頼とやらはややこしいのが多くてな、そこんところ分かってもらえるか」
オスカル(GM):「ああ、分かるよ。これは合法な仕事だ、ほんの少しデリケートなだけでな。君たちは私の話を聞いてから判断してもらって結構。だがその場合はこのことを他言しないよう誓ってもらうことになるがかまわないかな」
グラロン:「いいだろう」
オスカル(GM):「よろしい。1週間前、この街にある宝石が持ち込まれた。退屈になるのでくわしい経緯の説明はしないが、その宝石はここに届けられるまえにシャッツェンハイマー一味という卑しい盗賊連中に奪われてしまったのだ。私はその宝石を取り戻したいと考えている。しかし、シャッツェンハイマーは残酷な人殺しの集まりだ、できればもめごとを起こすことなくことをはこびたい。そこで私は金貨を1千枚用意した、これで宝石を買い取ってきてもらいたいのだ」
グラロン:「つまり、交渉人がほしってわけだな」
ヴォルフ:「だが、どうして部外者を雇う必要がある?」
オスカル(GM):「すべて後腐れなのないように済ませたいのだ」
グラロン:「ははん。仕事が済んだらさっさと街を出ていけってことだな」(笑)
ヴォルフ:「その連中と交渉が決裂した場合は?」
オスカル(GM):「無理に危険を冒すことはないだろう。引き揚げてきなさい」
グラロン:なんというか、暗殺者でも雇った方が早いんでないの。
オスカル(GM):「一味のリーダーは"ネズミ"という小男で、彼が宝石を持っているはずだ。彼に宛てた手紙があるので渡していただきたい。これを読めば彼も少しは考えてくれるだろう」
ヴォルフ:「"ネズミ"にはどこで会えるのかな?」
オスカル(GM):「貧民街の"聖域"と呼ばれる界隈だ。そこの"銀の鯉"という酒場が彼らの根城になっている。ほかに質問は?」
ヴォルフ:「もし、私が金を持って逃げたら?」
オスカル(GM):「君たちのことは信用しているよ」と言って、凄みのある笑顔。
ヴォルフ:させないつもりだな。(笑)
オスカル(GM):「方法はどうあれ、宝石を持ち帰ることができたなら各自金貨100枚をお支払しよう」
グラロン:「報酬に問題はないな」
オスカル(GM):「さて、仕事を引き受けてもらえるかね」
ヴォルフ&グラロン:「いいだろう」
オスカル(GM):「"聖域"まで案内をつけよう、仕事は今から取りかかってもらう」
GM:"聖域"はとりわけ物騒な地区です。街路は狭く迷路のように入り組んでいます。そこではつぶれた酔漢が調子っぱずれの歌を歌っているし、厚化粧の娼婦が客をめぐって引っかきあいの喧嘩をしているし、嬌声か悲鳴かわからない声が聞こえてくるし、豚は走るし、暑いし臭いし騒々しいし、そんなところです。
グラロン:ぶきき~っ!
ヴォルフ:気をつけろ~、とくに落下物には(笑)。
グラロン:とか言ってると正面の扉が開いてバ~ン!ぶふ~っ!(笑)
GM:はい、"銀の鯉"亭につきました。
グラロン:ちなみにマスター、銀のコイって魚の鯉ですよね?
GM:当たり前じゃ、こんな場末で"銀の恋"ってなんなんだよ、スナックか?やっぱり、わけありの若いママとかおるんか?(笑)
グラロン:うわっ、惚れてしまいそう(笑)。
ヴォルフ:そんなシナリオなんか?
GM:もとい。立て付けの悪い扉が開けっ放しにしてあり、閂でつっかえてあります。
グラロン:入っていくよ。客とかはおる?
GM:ぱらぱらと、いかにも怪しい人相なのが数名。
グラロン:ヴォルフ、適当にそこらのやつに話し掛けろよ。
ヴォルフ:酒でも注文してから店主に話し掛けましょう。「ここに"ネズミ"というその道では名の通った男がいると聞いたのだが、会えないかね」
GM:主人は、いっちまえって感じで手を振るけど。
ヴォルフ:「大事な話があるんだが」
GM:奥から、「俺たちゃ機嫌良く酒を飲んでるんだ、それを煩わせちゃいけないなぁ」と声があがるぞ。
グラロン:そちらに歩いていく。
GM:こ洒落た感じの若い男が座っている。
ヴォルフ:「あなたが"ネズミ"ですか?」
若造(GM):「違うな」
グラロン:「だったらいらん口は利くな、若造」
若造(GM):「そっちこそ。ネズミの巣に迷い込んだなら気をつけた方がいいぞ、ドワーフ」
グラロン:「は! 若造、礼儀ってやつを教えてやろうか?」
GM:ガタッと音がした、他の客も立ち上がったみたいだ。
グラロン:そいつらに、「このなかで誰が"ネズミ"の居場所を教えてくれるんだ?」 と凄むけど。
GM:一触即発のムードですが、そこで突然酒場の奥の扉が開きます。男が顔を出して顎をしゃくって見せ、また引っ込みます。
グラロン:客の反応は?
GM:何もなかったみたいに席に戻っていく。
ヴォルフ:その男についていきましょう。
GM:薄暗い個室です。小さい円卓と椅子が一つだけ置かれている。椅子に腰掛けているのは、さっき絡んできた若造よりも少し年上みたいですが、髪に白いものが混じった男です。喋ります。「用件を聞こう」
ヴォルフ:「あなたが"ネズミ"ですか?」
エンゲル(GM):「残念ながら。俺は、エンゲルだ」
グラロン:「おいおい、いい加減にしろ、どうしてこうまどろっこしいんだ?」
エンゲル(GM):男は面白そうに、「じゃあアンタは、"隠れ家はこちら"と書いた表札を立てる盗賊の話を聞いたことがあるのかい?」と言う。
ヴォルフ:ははは。
グラロン:「俺をからかってるのか?」
エンゲル(GM):肩をすくめる。
ヴォルフ:「取引を希望していると"ネズミ"に伝えてくれないかな?」
エンゲル(GM):「取引とはなんだ?」
グラロン:「おおかた察しがついてるんじゃないのか? あんたらが盗んだ宝石のことだよ。本来の持ち主は奇特にもその盗まれた宝石を買い戻したいと考えている。俺には理解できんがな」
ヴォルフ:「金貨で1千枚だ。こんな大金、そう手に入るもんじゃない。いい取引だと思うが?」
GM:男は音のない口笛をふいて、椅子に座りなおした。少し考えていたけど、「いいだろう、頭領に伝えよう。金はいま持っているのか?」と言いますが。
グラロン:「答える必要はないな。"ネズミ"に会わせろ、下っ端では話にならん」
エンゲルは二人を店の外へと連れ出した。薄汚い路地の一角に秘密の扉が現れ、3人は地下道へと下りた。狭くねじれた通路とどこかの屋敷の地下室を思わせる空間を通り抜け、やがて木製の扉の前にたどり着く。そこには"ネズミの巣"と乱暴に彫りつけてあった。
GM:部屋の大きさはだいたい6メートル四方、ランプが灯っています。壁には場違いな雰囲気の豪華な絵画や調度品が飾ってある。奥に立派な机があり、尖った面立ちの痩せた小男がだらしなく椅子に座っています。そして小男の後ろには黒い頭巾で顔を隠した大男が腕組みして立っています。
グラロン:うお~、覆面レスラーだよ。
ヴォルフ:「あなたが"ネズミ"ですね?」
ネズミ(GM):「まさしく。俺が"ネズミ"。で、ここは"ネズミの巣"だ」
グラロン:「俺たちは宝石を買いもどしに来た。あんたが盗んだやつだ、身に覚えがあるだろう?」
ネズミ(GM):「俺は自分の仕事に誇りを持っている。どんな小さな盗み一つも忘れることはない」
グラロン:「残念ながら、もとの持ち主も同じみたいだぞ。おい、子分から話は聞いてるだろ、返事を聞かせてくれ」 あっと! 忘れていた、手紙を渡そう。
ネズミ(GM):手紙を受け取りざっと目を通します。手紙を机に置いて顔を上げ、「金貨1千枚とはおそれいった」と出っ歯のぞかせてにやにや笑います。「それをいま持っているのか?」と訊きます。
ヴォルフ:「ここにある」と、鞄をみせる。
GM:彼はそれを見ると、くすくす笑いながら体を揺すり始めます。独りで、「いよいよもってあの男のことが分からなくなったな、もっと賢い奴だと思っていたのだが」とか喋っています。
グラロン:「なんのことだ?」
ネズミ(GM):「ははっ、順番が逆だってことさ! あの男は、一度目は脅迫、二度目は人殺しを雇ったんだよ、そして三度目に交渉人だ! 俺には奴のことが馬鹿としか思えんな」
グラロン:ふ~ん。「それは俺たちも知らないことだった」と言う。
ネズミ(GM):「それは、お気の毒にな」
ヴォルフ:「それでも、金貨1千枚では別の話になるのでは?」
ネズミ(GM):「たしかに、金貨は魅力的ではある、だが……」
ヴォルフ:「金額に不満があるとでも?」
ネズミ(GM):「世の中には金で買えない品もあるってことだ。それにおおかた、その金貨も安っぽい混ぜもんにちがいねぇ」
グラロン:鞄に手を突っ込んで、金貨を取り出してみる。〈冶金学〉あるけど、分かりますか?
GM:いいでしょう。完全な偽物じゃないけれど、純度は低いと思う。
グラロン:「くそっ!」
ネズミ(GM):「わかった。あの男に返事を書こうではないか。少し灸を据えてやろう……。それに、馬鹿げた道化を使いに寄こすなとも」
グラロン:あははっ ---なにっ!(笑)
ネズミ(GM):「待っていろ」と、"ネズミ"は机に向かってガリガリと手紙を書き始めた。「そうだ、これにおまえたちの首をつけて送り返せば完璧だな」と言う。
ヴォルフ:ありゃありゃ。
グラロン:「おいおい、物騒なことは考えない方がいいぞ」
ネズミ(GM):「面倒かけないでくれるか、すぐに済むから」と、顔を上げる。(笑)
グラロン:面倒かけてるのはそっちだろ!(笑)
ヴォルフ:「はじめから宝石を返すつもりはなかったな」
ネズミ(GM):「そうゆうことだ」
グラロン:ええっ! そうだったのか! ひどい!
GM:おっ、部屋には"ネズミ"と覆面の護衛、あなた達をここまで案内したエンゲルの三人がいます。"ネズミ"が目で合図すると、覆面が進み出ます。
ヴォルフ:頑張ってください、とドワーフにサインを送る。(笑)
グラロン:ぐふふ。「もめごとを選んだのはそっちだからな、忘れるな」
GM:戦闘ラウンドに入っちゃっていいですか?
グラロン:覆面男は武器とか持ってないの?
GM:鋲の打ってある厚い革手袋をはめています。組みつきの派生コンボがすごいよ~(嘘)。
ヴォルフ:後ろの奴はどうしてる? 退路を確認するわ。
GM:扉の前には男がもたれていますが。
ヴォルフ:小剣を抜くぞ! そっちに突進。
GM:男は立ちふさがるポーズをとりました。
ヴォルフ:横なぎに切りかかる。---失敗。
GM:うむ。ではこちらの行動、覆面がドワーフを蹴り上げます。---胴体にダメージ9点。
グラロン:痛いな。反撃します。---あたり。ダメージは右脚に6点。2回目、---左腕に7点。
GM:くらいます。覆面の男は金切り声を挙げて退きました。ヴォルフの前の男は、気が抜けるくらい消極的に逃げ回ります。で、"ネズミ"なんですが、大声で叫びます。「ああ、わかったわかった。落ちつけよ! 武器をおろして落ちつけよ!」
グラロン:んん? そちらを見る。油断なく構えたままです。
ヴォルフ:ゆっくり振り向く。
ネズミ(GM):「畜生、あんたら見た目よりやるらしい。俺が悪かったよ、さっきの言葉は撤回する」
グラロン:ドワーフを甘く見るなよ(笑)。「では、生きて返してもらえるんだな?」
ネズミ(GM):「ああ、手紙だけで首はなしだ。それでいいだろう?」
ヴォルフ:「いいだろう。交渉が決裂したのは残念だがな」
ネズミ(GM):手紙を差し出しています。「受け取れよ」
グラロン:ヴォルフが受け取ってくれ。俺はまだ警戒している。
ヴォルフ:受け取ります。
ネズミ(GM):君が手紙に触れたとき、ニヤッと笑う。
ヴォルフ:「……?」
GM:テーブルの手前の床がバカッて開いた。
ヴォルフ:あーーーーーーーっ。
グラロン:素直に落ちるやつがあるかっ。(笑)
GM:どぼーん、と水の跳ねる音が聞こえた。"ネズミ"が、「友達は行ったみたいだが、追わなくても?」って言って笑う。 ポケットから大きくて真っ赤な宝石を取り出し、手で弄んでいます。
グラロン:むむむ。「ここで一暴れして2、3人道ずれにするって手もあるぞ」って言ってみるわ。
ネズミ(GM):「この穴はそんなに深かねぇ。それに底には水がある。あの男は死んじゃいないだろう。けどな、あそこには外道が棲んでるんだ」
グラロン:くそっ、「出口はあるのか? それだけ教えろ」
ネズミ(GM):「知らんな」
ヴォルフ:た~す~け~て~く~だ~さ~い~。(笑)
グラロン:しょうがないな~。「必ずこの借りは返す」って捨てゼリフ言って飛び込むわ。
グラロン:ひゅ~ん、どっぼ~ん。ヴォルフッ! どこだっ! ヴォルフッ! ルパ~ン!(笑)
GM:やっぱり、君の下でつぶれてるんだろな。(笑)
グラロン:あたりを見回します。
GM:おそらく10メートルくらいは落下したでしょうね。あたりは真っ暗闇なので《暗視》のあるドワーフしか周囲の状況はわかりません(ルールの勘違い。《暗視》は完全な闇の中では機能しない)。ここは天然の洞窟のようでかなり広いぞ。水位はだいたい30センチほど。
グラロン:とりあえず歩いてみよう。ヴォルフは俺につかまってくれ。
GM:少し歩くと、ざぼざぼ水の跳ねる音がして、見ると人間サイズの生き物が数匹集まってきたぞ。ときどき四つん這いになったりしながら歩いている。
グラロン:ええ~っ、気持ち悪い。こんな状況で戦闘したくないなぁ。
GM:そのうち一匹が前に出て、しゃ~っと脅してみせる。ミュータントっぽいな。
グラロン:それじゃ、それに負けないくらいの大声で、うおお~って叫ぶ。
ヴォルフ:ひいぃぃ。(状況がわからず怯えている)
グラロン:「いっちまえ!」 カザリッド語で汚く罵ってやる。
GM:いいねぇ(笑)。それでやつらは逃げていった。
グラロン:やったぜ! ヴォルフ、もう大丈夫だぞ。鞄はお前が持っておいてくれ。渡す。
ヴォルフ:うわぁ、なにこれぐねぐねして気持ち悪い。
グラロン:鞄だって! 落とすなって!(笑)
GM:いいですか、進みますよ。うろうろしていると中州というか乾いた地面が見つかりました。
グラロン:とりあえず水から上がろう。けど、明かりがなきゃな~。
なんとかして火を起こす方法はないかと二人は頭を捻る。アイデアをだしあいながら試行錯誤するが、肝心のテストであっさり失敗。なんか二人ともぐったりしてしまい、休みながらイベントを待つモードに入ってしまった。
GM:時間の感覚がはっきりしませんが1時間ぐらい経ちましたよ。そこで〈聞き耳〉のテスト。
ヴォルフ&グラロン:成功しました。
GM:どこからでしょう、じゃぼじゃぼいう足音が聞こえてくる。
グラロン:むっ、やつらが帰ってきたのか?
ヴォルフ:やつらっていうのは、さっきドワーフみたいな大声で叫んでいたあれですね!?
グラロン:なんでやねん。それ、俺や。隠れよう。
GM:するとですね、ゆれる明かりも見えてきました。
グラロン:隠れながらちらっとでも見てみたい。どんなやつ?
GM:シルエット程度ですが、人間が二人です。〈隠れ〉のテストをしてください。
ヴォルフ:失敗です。
グラロン:だめだ。尻を隠さなかったのが悪かったか?
GM:とりあえず二人とも壁の窪みにでも身を押し込んだというとこですね。二人の話し声が聞こえてきます。「なんで俺が死体から金を拾いになんか---」とか。「餌付けされているとはいえ外道が俺たちを襲わないって保証はないぞ---」とか。
グラロン:ははん。できるだけ近づかせておいてから不意打ちしたい。
GM:(マスタース・クリーンの裏でテストを行う) 二人ずれには見覚えがあります。松明を持っているのはエンゲルですね。もう一方は、酒場で絡んできた若造で、穂先に鈎のついたスピアを持っています。スピアで水中を突きながら、「もう少し奥の方だな、もっと高く照らしてくれないか」と言っています。
グラロン:気づいていませんね?
GM:松明を持った男が君のほうを見た。
グラロン:だめか。スピアを持ったヤツを狙って飛び出す。
GM:若造が慌てて振り返ります。すると、エンゲルが腕をさっと振り上げ、松明で仲間の頭を殴りつけます。
グラロン:んん?
GM:殴られた男は呻きながらヒザをつきます。どうしますか?
グラロン:その男をさらに殴る。気絶しろ。
GM:ばたり!
グラロン:斧を松明の男に向けて、「どういうつもりか知らんが、説明するなら今だぞ」って言う。
エンゲル(GM):「おうおう、落ちつけよ。」 そう言って、エンゲルは手を挙げる。
エンゲルは自分の正体を明かした。彼はこの街の有力な盗賊結社の一員だったのだ。彼は、近頃台頭してきたシャッツェンハイマー一味の正体を見きわめるため"ネズミ"の部下のふりをして内偵活動を行なっていたらしい。
グラロン:つまり、スパイってやつだ。だがそれだけじゃあ俺たちを助けた理由にはならん。
エンゲル(GM):「そろそろ潮時だったのさ。"ネズミ"はなかなか尻尾を出さなかったが、ヤツの正体はあらかた分かった。あれを見ただろう? 外道を飼ってるような男だ。どうやらもっと危険な連中とも関わりがあるようだぜ」
ヴォルフ:ケイオスか!?
エンゲル(GM):「俺はあんたらの登場を好機とみている。この仕事に手っ取り早く始末をつけるためのな」
グラロン:「どういう意味だ?」
ヴォルフ:そういう意味でしょ。「取引に応じられると思う」
エンゲル(GM):「あんたらは完全な部外者だ、だからヤツを殺ってもこれは『内輪もめ』にはならない。盗人の結社どうしの間でもな、掟だとかなんだとかうるさいんだよ」
ヴォルフ:「確認しておきたいんだが、我々の仕事には関心を持ってないんだね?」
エンゲル(GM):「宝石の話か? 理由としてはいっそ好都合なくらいだ」
グラロン:「では、あんたの計画を聞こうか」
エンゲル(GM):「あんたらを"ネズミ"の寝所まで案内する。それだけだ」
ヴォルフ:「逃げるのにも手を貸してくれるね?」
エンゲル(GM):「もちろん」
グラロン:「宝石のありかは知っているのか?」
エンゲル(GM):「ヤツの部屋にあるはずだ」
グラロン:「よし、案内してもらおうか」
ハシゴを登ると下水道の通路に出る。そこから秘密の通路を通り"ネズミの巣"に入る。さらに進むと"ネズミ"の自室までたどり着く。
エンゲル(GM):「開けるぞ」
グラロン:「やってくれ」
GM:扉は音もなく開きますね。暗い部屋です。エンゲルが数歩踏み出したとたん、太い腕が扉の影からにゅっとのびて、彼を勢いよく闇に引っぱり込みました。「うわっ」と押し殺した悲鳴が挙がります。
グラロン:待ち伏せかっ!? 飛び込む。
ヴォルフ:わしもじゃ!
GM:例の大男がエンゲルを締め上げています。顔を彼の喉元にうずめています。
ヴォルフ&グラロン:あっ、こわ~!
GM:男は覆面をつけていません、引きつった鰐皮に覆われた顔がむき出しです。
ヴォルフ:うわ~、なにこいつ! 攻撃します。---失敗っ!
GM:男が顔を上げます。耳まで裂けた大口と鮫みたいな乱杭歯が血塗れです。エンゲルから体を離すと、彼は身体を痙攣させてぐったりと崩れ落ちます。
グラロン:化け物めっ。でりゃ! ---くうっ、全部はずれ。
GM:ミュータントがヴォルフを殴りつけます。---胴体に8点。
ヴォルフ:し、死ぬ。反撃します---はずれ。
グラロン:斧でアターック! きたっ、右脚に9点。---同じく右脚に8点。
GM:脚が切れたがな。ずどーんと倒れた。
ヴォルフ:エンゲルスは?
GM:喉を押さえながら、ごろごろと咳込んでいる。
グラロン:「看てやれ」 俺は"ネズミ"を探す。
GM:奥にまだ扉がありますね。
グラロン:どかんと蹴り開ける。
GM:小さなベッドと書き物机がありますが、部屋には誰もいません。
グラロン:なにもおらん! 探すぞ。
ヴォルフ:そのあいだに、すばやく手当をしましょう。
GM:技能もってないでしょ? やれるだけはやったけど医者に診せたほうがいい。
グラロン:こういう部屋にはアレだ、隠し扉。ヴォルフ、探すの手伝ってくれ。
GM:捜索は【反応度】でテスト。
ヴォルフ:それは自身ありです。---90っ!
GM:今日はいろんなことがありすぎたな。(笑)
グラロン:05。
GM:うむ、壁に怪しい場所があるぞ。
グラロン:だっだっだっ、どか~ん!
GM:狭い抜け穴が現れた。急な下り道が暗闇に続いています。下水の悪臭が漂ってくる。
グラロン:飛び込む。
ヴォルフ:エンゲルを担いで後を追うぞ。あっ、明かりも持って。
GM:通路はくねくねと曲がりながら下りていきます。だんだん下水の臭いがきつくなっていきます。
グラロン:思ったより長いな。
GM:横道があって、部屋が見えます。棚と机があってたくさんの紙が散らかっています。
グラロン:「部屋があるっ。調べてくれ、俺は先に行くぞ」
ヴォルフ:どれどれ、見てみましょう。なにか、目ぼしい品はありませんか?
GM:地図ですね。この街の概観、下水道、地下室の詳細な見取図がある。《暗号術》があるのか---。【知力度】でテストしてみて。
ヴォルフ:---成功。
GM:気を惹かれる地図が1枚あります。どうやらそれは、下水道を通って"ネズミの巣"からオルデンハラー邸の地下室に行く道順が記されてるようです。
ヴォルフ:もらっておこう。
GM:グラロン、通路がやがて二股に分かれている。
グラロン:めんどうだなぁ、右っ! 右に行くぞ!
GM:少し進むと行き止まりになった。そこには、ボロを着た小さいのが倒れている。
グラロン:うわっ、死体? こっちじゃない、引き返す。
GM:そのボロがごそごそ動いた。
グラロン:あう、生きてますか? ヴォルフッ、きてくれ。
GM:そいつが、ごにゃごにゃ喋りながら体を起こします。尖った鼻面の大きなネズミの顔が現れます。けど、ひどく衰弱している様子。病気みたい。
グラロン:こ、これ、なんてったっけ? でっかいネズミ。
ヴォルフ:ひゃ~、スケイヴンだ。
グラロン:「ついてくるなよ、お前」って言いながらもどる。次ぎは左だ!
GM:そちらはまた下りになります。ずんずん進むと、扉に行き着きます。
グラロン:開ける。
ヴォルフ:ちょい、スケイヴンがおるぞ。
グラロン:かまうもんか、どか~ん!
GM:大きな部屋です。中央に広い円卓があって、その上にはどっさりと装飾品とか金貨とかが積まれている。部屋の西側にはいくつもの大きな穴が開いていて、まるでネズミの穴みたい。北側には狭い鉄の扉があります。で、円卓を囲んでスケイヴンが4匹と"ネズミ"がいる。
ヴォルフ:ほら、だめじゃーん。
GM:全員がこちらを向いて、武器に手を延ばす。"ネズミ"が言います。「死に損ないがむざむざと殺されにきたのか」
ヴォルフ:「話の続きをしにきましたよ」って、剣を抜く。
グラロン:「言っただろ、借りは返すってな」 じゃき~ん。
GM:スケイヴンが殺到します。
戦闘は見事に一方的だった、グラロンの斧が、ヴォルフの剣が閃き、1ラウンドに1匹のペースでスケイヴンが倒れていく。
GM:手傷を負った最後のスケイヴンが退くと、"ネズミ"が両手に細く尖った小剣を構えて前に出ます。彼は怒りで顔をどす黒く染めながら、スケイヴンに「おまえたちの兄弟を呼んでこいっ」と叫びます。スケイヴンはすばやく壁に開いた穴に飛び込んだ。
グラロン:「かかってこいっ!」
GM:突く! ---右腕に6点。
グラロン:【強靭力】で全部止めた。
GM:なんじゃそら! 堅すぎるぞお前!
ヴォルフ:---学者の攻撃ははずれました。
グラロン:斧で殴る~。---胴体に6点、右脚に7点。
GM:痛て~ "ネズミ"の顔が引きつるわ。次ぎのラウンド、---ドワーフにダメージ6---いいっす。
ヴォルフ:---またはずれ。
グラロン:がんばれよ学者。---左腕に6点。
GM:死ぬ。叫びながら、めちゃくちゃに反撃---はずれ。
ヴォルフ:俺か。---あっ、ちょうど命中! 頭にダメージが2点で---【筋】と---《剛力》で---7点。
GM:なんだよ! 2で7って。ああ、頭から血を吹き出しながら丸太みたいにぶっ倒れた。
ヴォルフ:やりましたよ~。
グラロン:「喜んでる場合じゃないぞ、ネズミが・・・いや、本物のネズミが仲間を呼びにいったぞ。ネズミの兄弟って考えたくない人数だぞ」
ヴォルフ:「さっさと宝石を持って逃げましょう!」
グラロン:例の宝石はどこだ? "ネズミ"のポケットをひっかきまわす。 でっかい赤い宝石だ。
GM:ん、見つかりました。
グラロン:そうだ、どうせだから机上の品も持てるだけ持っていこう! 奥の鉄扉を開ける。
GM:下水道に出ます。
ヴォルフ:エンゲルはどうする? 置いていくか? 邪魔になるぞ。
GM:エンゲルは気絶しています。
グラロン:ちぇっ、今度は俺がおぶるよ。急げ!
GM:で、どっちに向かいますか?
ヴォルフ:地図を確かめます。オルデンハラー邸に向かいたい。
GM:了解。通路に沿って逃げますな。後方で、きーきーぎゃあぎゃあわめく声、かちゃかちゃ金属のぶつかる音が響いてきます。もちろんスケイヴンね。
グラロン:近いっ。走って、走って!
ヴォルフ:走るぞ~。どどどどど。
GM:へとへとになってきた頃。あれ、鉄格子で行き止まりになってしまったな。
グラロン:うお~、鉄格子くらい曲てやる~。
GM:ムリ、ムリ。
ヴォルフ:地図では間違いありませんよね。壁を探る。
GM:【反応度】でテスト。+20%していいよ。
ヴォルフ:---成功。
GM:その壁は、レンガ模様になってるけど隠し扉だ。
ヴォルフ:開けますよ。
GM:狭い石の階段が登っている。けど、鉄の上げ戸で終わっているな。
ヴォルフ:上がりましょう、上げ戸を押し上げてみようと試みますが?
GM:がっちり閉ざされている。下水道でぎゃぁぎゃぁわめき声がする。
グラロン:「代われっ、俺がやってみる」
GM:【筋力】でテスト。
グラロン:ふんっ、---06、成功! 「さあ、登れっ!」
GM:はい、外に出ました。
グラロン:すばやく戸を閉めます。
GM:殺到したスケイヴンの頭めがけて戸を落とします。短い悲鳴の後、戸を叩く音が続きます。
グラロン:おもしになるような物はある?
GM:重たい樽とかあるんで、いいんじゃないですか。戸に乗せました。ばっちりですよ。
グラロン:「ふぅ、なんとか切り抜けたみたいだな」
ヴォルフ:ここはどこ?
GM:オルデンハラー邸の地下室かと思われますが。
ヴォルフ:とりあえず出ましょう。
GM:狭い廊下がありますよ。進んで行くと、ほんのりと甘い香のかおりがしてきます。扉に行き着く。
グラロン:いかにも貴族のお屋敷って感じだな。おじゃましてま~す。そっと開けてみる。
GM:むわっと甘い香の匂いが溢れます。床にはふかふかの赤い絨毯が敷かれており、クッションが散らばっています。あと、壁には男女の性行為の光景を描いた壁画が描かれています。
グラロン:「なんだこれは? 売春宿じゃあるまいし、趣味が悪いにも程があるぞ」
ヴォルフ:「むっ……まさか?」
GM:ちなみに、君たちが入ってきた扉は壁に溶け込んでしまったよ。
ヴォルフ:「まずいですよ。はやく外に出ましょう」
GM:続く部屋はいくつものカーテンで仕切られていて、どっちに進んだものかよくわからない。一度、全裸の少年が廃人みたいにぐったりなったのとかに出くわしたぞ。
ヴォルフ:やばいって。
グラロン:げ、下水道に戻ろうか?(笑)
ヴォルフ:もう、進むしかないでしょう。
GM:うろうろしていると、ある部屋に出ました。大きな長いテーブルがあって、原色のローブを着た人たちが着席しています。どれも大きく胸元の開いた、破廉恥な衣装ですね。みんなで、『なんか』食べてたみたい。
グラロン:あ、部屋を間違えました……(笑)。
GM:上座の人物が立ち上がります。女のような化粧をしていたので一瞬分かりませんでしたけど、オスカル・オルデンハラーその人ですね。ローブの胸元からちらっと、片方だけの女性の乳房が見えた。
グラロン:あ、う。
オスカル(GM):「おやおや、裏口から帰ってきたのかね」と言う。
ヴォルフ:「そうです」
オスカル(GM):「ということは、"ネズミ"は死んだのかね」
ヴォルフ:「そうです」
オスカル(GM):「嫌らしいドブネズミは死んだと」
ヴォルフ:「間違いなく」
オスカル(GM):「けっこう--- で、驚いているのかね」
ヴォルフ:「ええ」
グラロン:なぁ、なんなんこれ!?
GM:混沌神の信奉者たちだよ。彼らは歪んだ悦楽の神スラーネッシュの信者で、ちなみに"ネズミ"は、角のあるネズミの使徒なんだよ。あれ、判らなかった?
グラロン:よかった~。なんか、『そうゆう趣味の人たち』かと思ってたよ~。
ヴォルフ:ほら、怖かったろな~(笑)
オスカル(GM):オスカルは蝋人形みたいに微笑みながら、「約束の宝石を見せてもらえるかな」と言う。
グラロン:袋をごそごそやって、「ほら、これだろ」って見せる。
オスカル(GM):受け取りますよ? いいですか? 「ところで君たちは、ことの真相に興味はないのかね」と言うけど。
グラロン:「最初に言っただろ、俺たちはあんたらお偉いのごたごたには関心がないって」
オスカル(GM):「実に結構なことだ」 満足げに頷いて、「ご苦労だったね、お帰りはあちらだ」と言う。
ヴォルフ:「あ、申し上げにくいのだが、報酬の件はどうなるので?」
オスカル(GM):「その袋の中身では満足できないのかね。まんざらではない額になると思うが」
ヴォルフ:ああっ、隠しとくんだった。
グラロン:「せこいこと言うなって、ヴォルフ。報酬はこれで十分だ、あの『代金』と合わせれば相当なモンだろう?」ってオスカルを見る。
GM:オスカルは微笑んで頷く。
グラロン:「気前がよくて嬉しいよ、オスカル・オルデンハラー。それよりも世話になったな、別れの挨拶をさせてくれ」
GM:握手? 手を差し出します。
グラロン:バ~ンと腹を殴りつける。
GM:マジ?! 「グハッ」て体を二つに折るわ。がたっと椅子の連中が立ち上がるぞ。
ヴォルフ:もう、走って逃げてるし!(笑)
グラロン:「あばよっ!」 扉を蹴り破って逃げる。
ヴォルフ:さっそく街を出るぞ、こんなやばいところからはさっさとおさらばだ。
グラロン:エンゲルはどうしようか?
ヴォルフ:適当に病院でも探して玄関に寝かしておこう。もし、意識が戻ったんなら、恩を売っておきたいとこだが。
グラロン:彼の懐にいくつかの金と装飾品を入れておくわ。けど、俺たちかなり儲かったのでは?
ヴォルフ:おう。まちがいないな。とりあえず街を出よう。
GM:君たちがゲートをくぐって街外に出るときには、朝日が昇り始めていました。一晩だけの物語でしたけど、ここらでおしまいです。