マグナス・ランクドルフ 人間、男性、無法者 プレーヤー:コニタン
妹を乱暴しようとした義父を殺してマグナスは森へ逃げたのだ。そして無法者の一団に身を投じた。やがて戦争が起こり、マグナスは森の仲間に別れを告げた。妹の安否を確かめようと、彼女の暮らすヴォルフェンブルグに戻ったのだ。彼は失われた時間を取り戻したいと考えている。
ウィリアム・アルバコア 人間、男性、船乗り プレーヤー:チャッピー
ウィリアムは混沌の船団と戦って撃沈されたマリエンブルグの軍艦『アルバコア号』の唯一の生存者だ。波打ち際で息を吹き返したウィリアムは、海に投げ出されから後のことをまったく覚えていなかったが、漆黒の闇の中で聞いた船乗りの守護神マナンの声はしっかりと胸に刻み込んでいた。「混沌に立ち向かえ!」「殺されたアルバコア号66人の仇を取るのだ!」
アルソル エルフ、男性、大道芸人 プレーヤー:リサ
アルソルの役者としての経歴は、「“星屑”ベレンソイル第三皇子忘れ形見であり、醜い跡目争いに嫌気がさして気ままな旅をしている」とか、「イシャ姫神に寵愛を受けしミーナ女祭司とのロマンチックな情事のツケとして、嫉妬に狂った彼女のフィアンセに命を狙われている」だとか、その日の天気しだいでころころ変わる。だからある日彼が、「私は捨て子で、ロゥレン森の近くで旅芸人の一座に拾われました」と語ったところで誰も信じようとしないし出自にまつわるレパートリーとしては信憑性の低いほうだと思われるのがおちなのだ。アルソルは捨て子である。彼はエルフの赤子を旅芸人一座の座長に預けたコビトという名の吟遊詩人を探している。
ゲームマスター、リプレイ執筆:ナッキー
プレイ日時:2007年1月24日
鴉が、崩れかけた尖塔にとまっていた。中央山脈から吹きつける寒風に、鴉の黒い羽毛がざわめいている。
眼下に広がるのは、陰鬱なヴォルフェンブルグの市街地だ。
美しきヴォルフェンブルグ、強きヴォルフェンブルグと俗謡に歌われたオストランドの第一都市は、“混沌の嵐”に攻め寄せられ、完膚なきまで破壊された。
焼け焦げた建物と高く積もった瓦礫の山は、苦痛に身を捩じらせ丘の上に倒れこんだ黒い巨人さながらに、その亡骸をいまゆっくりと腐敗させようとしていた。
死の静けさだけがあたりを支配していた。ヴォルフェンブルグは南北に流れるヴォルフェン河によって分断されており、鴉のとまる崩れかけた尖塔は旧市街(西地区)の波止場沿いに位置していた。
何かの気配を感じたのか、鴉は毛繕いをやめて首をめぐらせた。
尖塔から数軒先、瓦礫の中で四つの人影が動いていた。人間が三人、そしてエルフが一人……。
彼ら、死体に群がる腐肉食らいにしては、剣呑ないでたちであった。
GM:「本当だとも、男たちが荷物を運び込んでいるのを見た。ありゃきっとどこかの御屋敷から盗んできたお宝にちがいないぜ!」とヴートは言います。
マグナス:「それが、この先の倉庫だな」
GM:そうです。
アルソル:ねえねえ、このヴートって信用できる子なの?
GM:ヴート少年とマグナスとはそれなりに長い付き合いなのです。じつは、無法者の情報屋だったということにしましょう。
マグナス:だってさ(笑)。
ウィリアム:ふーん。ボクら財宝目当てで集まってるわけね? でもなんで、エルフの大道芸人が一緒におるん?
アルソル:一座の再建にお金が必要なのです。っていうか、船乗りってどうよ?(笑)
ウィリアム:話せば長いぜ(笑)。乗っていた軍艦が混沌の船団に焼かれてね。ボクが唯一生き残ったわけよ。それで復讐を誓った! 混沌を倒すためこの街にやってきたのだ!! マスター、回想シーンに入っていいですか!? 砂浜に打ち上げられたシーンから!
GM:却下だ。
アルソル:財宝と関係ないわ。
ウィリアム:そして、船を再建する資金がいるのだ!(怒)
マグナス:とりあえず、だれか偵察してきませんか? 〈忍び歩き〉の高い人いますか?(一同キャラクターシートをのぞき込む) はあ、俺が行ってきます(笑)。
GM:〈忍び歩き〉でロールしてくだい。
マグナス:---失敗。
GM:(マスター・スクリーンの裏でダイスを振りつつ) 崩れかけた建物を回り込むとですね、瓦礫の散らばった狭い広場があります。広場を取り囲んで焼けた倉庫が数件あって、いちばん奥の倉庫の前に人相の悪い男が二人、焚き火にあたっているのが見えました。
マグナス:見張りがいるのか? そいつらの特徴は?
GM:〈常識:エンパイア〉でロールどうぞ。地元のことなんで+10%していいです。
マグナス:失敗。
GM:うーん。難民キャンプの人じゃないな。ごろつきっぽいです。棍棒を持っています。
マグナス:そっと帰ります。「ごろつきっぽい見張りが2人いるぞ。」
アルソル:それだけ?(笑) 他にも隠れてない?
マグナス:「判らん」
ウィリアム:いいじゃんか。「とっとと片付けてしまおうぜ」 3人で近づいていこう。いいよな? みんなで〈忍び歩き〉します!
GM:いいですね? では、ロールしてください。
マグナス&アルソル:成功しました。
ウィリアム:失敗しました。技能持ってないし(笑)。
GM:路地の手前で「誰だっ!」と警告の声があがります。戦闘シーンに入りましょう。各自イニシアチブを。
ウィリアム:うひょっ、カトラスを抜いて突っ込むぜ。
■第1ラウンド
アルソル[1st]:戦うのね? 半アクションで移動。いち、にい、さん---(ミニチュアを動かしつつ)。この位置からダガーを投擲します。---ハズレ。
GM:カッと、うしろの扉に突き立つわけね。
ウィリアム[2nd]:移動、移動! 接敵して終了。
GM[3rd]:ごろつきは棍棒を準備して、受け流し準備を宣言します。
マグナス[4th]:移動します。終わり。
■第2ラウンド
ウィリアム:アルソルよ、攻撃にボーナスが入るから一緒に接敵してくれたほうがありがたい。
アルソル[1st]:わかった。片手用武器を準備してからアルソルの隣まで移動します。
ウィリアム[2nd]:右の男にカトラスで2回攻撃します。---1発命中!
GM:---受け流し失敗。ダメージを。
ウィリアム:左腕に7点!
GM[3rd]:罵ります。よろめきながらも棍棒を振るって、---はずれ。もう一人は、---命中。
ウィリアム:え、ボク? ---よいしょ、盾で受け流し失敗です。
GM:ありゃ---ゴツンと---、ダメージは左腕に14点。
ウィリアム:ひどい! 【頑健力】で3点とレザーで1点止めて---残り2! いきなり重傷か!(笑)
アルソル:おほほほ。
マグナス[4th]:2回攻撃。---1回命中で、左腕に4点です。
GM:それは、あんまり効いていない。
■第3ラウンド
アルソル[1st]:ウィリアムがダメージ入れたほうの男に通常攻撃しますね。---命中。
GM:あ、前のラウンドに、受け流し準備していたことにしていいですか? ---失敗ですけどね。
アルソル:ダメージは10! ウルリックの憤怒! ---胴体にダメージ15点です!
GM:ぴったり0になりました。でも、これでは死なんのよ。
ウィリアム[2nd]:そいつに2回攻撃します。---1発命中! ダメージは左腕に10点。
GM:受け流しは1ラウンドに1回だけなのですよね。クリティカルです。---左の手首から先をすっぱり切り落とされました。悲鳴を上げつつ、よろめいて仲間にぶつかります。押された方は足をもつれさせて焚き火の上に倒れこみます。火の粉を払いながら喚いています。
マグナス[4th]:暴れている男に近づいて、蹴り上げます。剣を突きつけます。
GM:身を折ります。「げはッ」
マグナス:訊きます。「建物の中に仲間はいるか?」
GM:では、とりあえず戦闘は終了ということで。
GM:続けましょう。「い、いねえよ」と言います。「お、おれたちだけだ。」
アルソル:剣を構えて、倉庫の扉に近づきます。聞き耳します。
GM:(マスター・スクリーンの裏でダイスを振りつつ) なにも気配は感じられない。
アルソル:そっと、扉を開けます。覗いてみよう。
ウィリアム:敵がいたら困るぞ。っていうか誰かキュアってくれよ。
マグナス&アルソル:〈負傷治療〉なんて持ってないのよね(笑)。
GM:倉庫は無人のようですね。がらんとして、埃臭いです。奥にムシロをかぶせた木箱やカゴ、樽なんかが置かれています。
アルソル:「誰もいないみたいだよ」って言う。
ウィリアム:ヴートは?
GM:出てきました。死んだごろつきを見て「わぉ」とか言ってます。ちなみに彼も〈負傷治療〉なんて知りませんから(笑)
ウィリアム:帰りたーい。
アルソル:倉庫に入ります。ムシロをどけて木箱を開けてみます。箱の中身は?
GM:萎びたカブが入っていました。あとは傷みかけた果物とか。樽は酒。小さな壺は砂糖菓子。
アルソル:お菓子ゲット! あれ、お金は? 隠してあるとか?
マグナス:ごろつきを連れて倉庫に入ります。「これが財宝か?」と訊きますが。
GM:「ざ、財宝? な、なんの話だ? か、カネなんてあるもんか。く、食い物を集めていたのさ。」
マグナス:「ヴート?」
GM:ヴートは戸口で、悪ぶれた様子もなく肩をすくめました(笑)。
マグナス:食いもんだけってか---
アルソル:でも、食料は貴重品だよ。売れるかも。どうやって持って帰ろうか?
GM:表に手押し車があったはずです。
マグナス:しかたがない。運び出し頼むわ。そのあいだに、この男を離れた場所まで連れて行きます。「食料を集めたのは誰かの命令か?」と訊きましょう。
GM:「ハ、ハンス・ゲオルク・ベンナー」 +10%のボーナスで〈常識:エンパイア〉でテストしてください
マグナス:---成功。
GM:ハンス・ゲオルク・ベンナー。通称“狼”ハンス。元は猟師だったらしいけど、泥棒で、残忍な人殺し、売剣でもある。たしか、お縄になってヴォルフェンブルグの監獄に入っていたはずです。戦争直前の話ですが。
マグナス:混乱に乗じて逃げ出したとか? わかりました。こいつ殺します。
GM:いいでしょう。死体は河に投げ込むとか。
マグナス:まあ、そんな感じで。戻ってから、みんなに「こいつら“狼”ハンスの手下らしいぞ」と言っときます。ハンスはたぶん無法者じゃよ(笑)。無法者頭かも。やつらは強いのじゃよ。
ウィリアム:なんでもいいや。「持てるもの持って、さっさと帰ろうぜ」って言います。
アルソル:帰る? 手押し車を押すの手伝ってね。
ウィリアム:むしろボクを乗せてくれよ。重傷なんだよ~。
アルソル:「人を殺しておいて。それくらい我慢しろ」って言う。「殺すことなかったのに。」
ウィリアム:は? なにそれロールプレイ?(笑) 何をいまさら。
アルソル:それはそれ。そういえば訊いてなかったわよね。「マグナスはどうしてお金がいるのですか?」
マグナス:「……妹が病気なのだ」
アルソル:まあ。
ウィリアム:「ハハハッ。戦争じゃ無法者も商売あがったりってわけだな!」
マグナス:市門は通りたくないな。できれば、どこかに隠したい。あとで山分けするか。
GM:なら、適当な隠し場所があったでいいですよ。それと、ヴートは先にさっさと帰りました。「山分けする時は呼んでくれ」ってさ(笑)。さて、今朝はやけに寒いと思ったら空から小雪が舞い散りはじめました。ヴォルフェンブルグに本格的な冬の到来なのです。
ヴォルフェンブルグ南j市壁に沿って避難民の野営地が広がっている。
GM:市街から帰還して、その日の午後です。それぞれ一休みというところ。さて、マグナス。君がテントで仮眠をとっているとですね、名前を呼ばれて、「ちょっといいかしら」と声をかけられました。義姉のマリーです。君の妹の夫の姉。寒そうに上着を何枚も羽織っています。テントをのぞき込みながら、「ごめんなさい。寝ていたのね」と言うぞ。吐く息が白い。
マグナス:「夜明け前から街に入っていた」
GM:うなずきます。心配そうな声で言います。「エレナのことなのだけど。様態がよくないの」
マグナス:えっ、妹が? 「医者に診せたのか?」と訊くけど。
GM:「それが、昨晩から高い熱が出て。煎じ薬は飲ませているのだけど---」と。やはりですね、医者に診てもらうとなると、先立つものが必要なのですよ。だから相談にきた。
マグナス:わかりました。上着を羽織って外に出る。「医者を探してくる」と言います。医者って、どこにおる?
GM:シャリアの熱心な信者たちが防壁の近くで救急病院をひらいていたことを思い出します。
マグナス:じゃあ、急いでそこへ向いましょう。
GM:はい。防壁の近くに、行列のできた大きめのテントがありますね。入り口の立て札には、口ばしに鍵をくわえた白い鳩の絵が描かれているのです。
マグナス:どんどん入っていく。医者らしい人は見つかりますか?
GM:テントでは応急ベッドに怪我人やら病人やらが寝かされています。医者はすぐに見つかりました。「君は? 順番をまもりなさい」とかとがめられるけど。
ウィリアム:そこに登場! ボク、椅子に座って順番待ちしてたから(笑)。「そうだ、そうだ! ちゃんと並べよ! あっ、マグナス!」(笑)
アルソル:ウィリアムの背中をさすっていてあげよう。衛生兵! 衛生兵!
マグナス:「妹が重病なんだ。熱が下がらない。すぐに診てほしい」
アルソル:「病気の妹さんだね。様態が悪いんだね。本人は連れてこられなかった?」
マグナス:「重い病だと思う。無理をさせたくないんだ」
GM:その医者は困っていましたが、「しばらく外で待っていなさい」と言ってくれました。
ウィリアム:ちょーっとう! ボクの順番はどうなんの!
GM:うるせえなあ。じゃあ、太った看護婦がなんかベタベタした臭い薬を塗りたくってから包帯で巻いてくれました。1d10点回復してください。
ウィリアム:ひゃっほぅ。---6点回復!
GM:1時間ほどして、医者が妹の寝ている仮小屋まできてくれました。妹さんは高熱で意識が朦朧としている様子です。短い診察の後、医者は小さい肩掛け鞄から粉薬を出して、「これを飲ませなさい。それしか私にできることはないようだ」と言います。
マグナス:「治るのか?」
GM:小屋の外で話しましょう。「気の毒だが、約束はできない。妹さんはもともと身体が弱かったそうだが・・・・・・」と言います。
マグナス:「そうだ。治療費はいくら払えばいい?」
アルソル:萎びたカブしかありませんが!?
GM:複雑な表情で断られました。
マグナス:そう----。「でも、どういう病気なんだ?」
GM:「熱病とだけ---。忌まわしい侵略者どもが未知の病気を持ち込んだのかも知れん。あとはシャリアに祈るだけだ」と言います。
アルソル:可愛い顔してペスト大流行!?
マグナス:「他に何か俺にできることはないだろうか?」って訊くわ。「なんだってする」
GM:医者は思案気です。つぶやきます。「あるいは、『涙』なら……」
マグナス:「『涙』?」
GM:「涙とは、 『シャリアの涙』のことだ」 -20%で〈常識:エンパイア〉テスト。
マグナス:---知りません。「聞かせてくれ。」
GM:「だが、君に話してよいものだろうか」
マグナス:「頼む。このままでは妹が助からない」
GM:「アーデル広場の北側にシャリアの小さな孤児院があることを知っているかね? そこは街で一番古いシャリアの神殿でもある。その神殿の地下礼拝堂には小さな湧き水があり、水盤に一晩でわずかな量だけ清らかな水がたまる。その秘密の湧き水は『シャリアの涙』と呼ばれ、飲んだ者の傷や病気をたちどころに治すと言われているのだ」
マグナス:「それを飲ませれば、妹の病気は治るんだな?! しかし、どうして秘密なのだ?」
GM:「量が十分ではないのだ。数日かかってやっとひと口だけ。病める者すべてに与えることは不可能だ。それは争いの元だ。だから公にはされていないのだ。知らないほうがいいこともある。諺どおり、“シャリアは1度に1人だけしかお救いになれない”ということだ」
マグナス:「わかった。アーデル広場のシャリア神殿に行けばいいんだな」
GM:「やめておけ。市街は危険だが、ことさら東地区はひどいらしい。シャリアのフムフリート祭司も武装した共を連れて市街の療養所に残った医薬品を取りに行ったらしいのだが、そのまま帰ってこないらしい。君は、泥棒や人殺しだけでなく、巨大ネズミや外道の噂を耳にしたことがあるだろう?」
マグナス:「……」
ウィリアム:そこへ登場します! 「話しは聞かせてもらった! 行こうぜ、マグナス!」
アルソル:そうよ。「妹さんを助けてあげましょう」
マグナス:……じゃあ、二人に話すわ。「皆の助けが必要なのだ」
うっすらと積もった初雪がヴォルフェンブルグの景色を柔らかく包み込んでいる。それはさながら都市を包み込んだモールの経帷子のようだ。
GM:では、次の日です。
ウィリアム:完全武装で皆のところへ駆けつけます。「準備できたぜ!」
マグナス:3人そろったのなら、市街に入ります。
GM:了解しました。でも、ごめんなさい、大事なことを言い忘れていたのです。昨日のお医者さんがマグナスのところに現れて「大切なことを話し忘れた」と言います。
マグナス:「なんだ?」
GM:「『シャリアの涙』を持ち運ぶものは、最も敬虔なシャリアの信者が負う制約を守らなければならないということだ。すなわち、“汝殺すことなかれ”。癒しのために争ってはならんのだ」
マグナス:えっ。「身を守るためだとしても?」
GM:「おそらく」
マグナス:「仮に制約を破ったらどうなる?」
GM:「癒しの力は失われると言われている」
マグナス:いきなり難易度が上がったなあ。いったん置いてそれから殺してまた持ったらダメか?
アルソル:“このはしわたらずべからず”的に。
GM:そういう理屈の問題じゃない(笑)。
マグナス:最初にマップ上の敵を殲滅させておいてだな---(妄言)。っていうか『シャリアの涙』ってどうやって運べばええんよ?
GM:儀式に則った場合は、司祭が聖杯なんかで恭しく運ぶらしいけど、そこはこだわらなくて結構。液体の入る容器なら何でもいいです。適当な器なら神殿に残っている可能性がありますよ。
マグナス:杯で持ち運ぶなど、ありえんな(笑)。
アルソル:ガラスの小瓶くらいならすぐ手に入るんじゃない? それを布で包んで割れないようにすればいい。
GM:それ、入手できたでいいです。
マグナス:それでいく? じゃあ、あらためて出発しよう。 (ヴォルフェンブルグの地図を確認しつつ) とりあえず神殿を目指して。西地区から入って橋を渡って東区へ。あとは最短距離を道なりに進もうか。
GM:では、ゲートをくぐって市街に入ります。
★ ★ ★
GM:さて、市街に入ってすぐのところで、屑拾いの集団に出会います。見張り役の兵士が気づいて、ハルバードを掲げて挨拶を送ってきます。その後は無人地帯です、痩せた野良犬と、瓦礫の中にさっと逃げていくでっかいネズミを見ます。
ウィリアム:巨大ネズミは嫌だなあ。
マグナス:スケイヴンはラットキャッチャーの幻覚なのじゃよ?
GM:そんな感じで、ヴォルフェン河に架かる橋の手前までたどり着きました。
マグナス:異常がないようなら、さっと渡ってしまいます。
GM:よろしい。東地区に入ります。西区はどちらかというと貧しい人々が住んでいたのですが、こちら側は建物も立派な商業と行政の地区です。でも、ほとんどの建物が丸焼けで街路は瓦礫の山なのですがね。さて、〈察知〉でロールしてください。
マグナス&ウィリアム:---失敗。
アルソル:成功です。
GM:女の声が聞こえました。
アルソル:悲鳴なの? 助けに行ったほうがよさそう? 方向は?
GM:悲鳴じゃないですね。でも、興奮しているような感じ。声の主は近づいてくるようです。
アルソル:「女性の声がする。近づいてくる。」と皆に教えます。出て行こうか?
ウィリアム:やめろよ。どこかに身を潜めよう。
GM:じゃあ、隠れたでいいですね。皆にも声がはっきりと聞こえるようになりました。口汚く罵っています。「はなせばかやろう!」「このろくでなし!」とかそういう感じ。足音も聞こえてきました。
マグナス:様子をうかがいます。
GM:右手の路地から、人影が出てきました。武装したごろつきっぽいのが2人。縄で拘束した女を引き連れています。さっきからまくし立てているのはその女で、格好から酒場の下女とかそんな類の人かと思われます。縄の先は棍棒を持った男が握っています。女が怒鳴ります。「こんなあたいでも伯爵さまの臣民なんだからね! あんたら人でなしは伯爵の騎士さまにとっ捕まって縛り首になるがいいさ!」 すると、男がさっと振り向き、手にした棍棒で彼女の横面をばしっと打ちます。女は、ガクッと倒れ込みます。
ウィリアム:ごろつきパラダイスだな。どうするか。
マグナス:二人か。やりすごしてもいいのでは?
アルソル:だめだろ。「やめろっ」と言いながら出て行きます。
マグナス&ウィリアム:あらら(笑)
GM:一瞬、声の出所が判らなかったみたいです。3人ともきょろきょろあたりを見渡してから瓦礫の上にいる君を見つけました。棍棒を持った男が、目を眇めつつ「どこの野郎だ!? いっちまえ! 面倒になるだけだぞッ」 もう一方の男は油断なくスピアを構えました。女は、「たすけて! 騎士さま!!」と叫びます。
アルソル:「女性を苛めるヤツは許さないぞ!」
マグナス&ウィリアム:うわ~(笑)
GM:ごろつきの一人が、あることに気がついて思わず口にします(笑)。「エルフだ!」
マグナス&ウィリアム:わはは。
GM:女が顔をぱっと赤くさせながら言います。「エルフの騎士さまだ!」(笑)
ウィリアム:うそーっ、どうみても旅芸人の格好だろ?(笑)
アルソル:「彼女を自由にして、お前たちはどこへでも行ってしまえ」と言います。
GM:棍棒を持ったごろつきは一歩踏み出します。「へっ 何様のつもりだ! 痛い目みるぞ!」
ウィリアム:じゃあ、そこに、ぐぁーっと出て行きます。カトラスを肩に担ぎつつ。「痛い目みるのはそっちのほうじゃないかなァ」(笑)
GM:うわ、びっくりした(笑)。たじろぎます。
マグナス:俺も武器を構えて続きます。「面倒はごめんだぞ」
GM:うーん、いいんじゃないか(笑)。2人は顔を見合わせますが、スピアの男がさっと逃げ出しました。つづいて、棍棒の男はちょっとロープを引っ張ったりしてましたけど、忌々しげに放り出してから逃げていきます。
アルソル:やった!(笑)
ウィリアム:女のところまで行くぞ。「で、どういう状況なわけよ。説明してくれよ“お嬢さん”」
GM:彼女も難民キャンプの住人のようですね。「屑拾いの最中に襲われて、無理やりつれて来られた」と言います。
アルソル:ロープを解いてあげましょう。「あいつら何者なの?」
GM:彼女はウルリーケと名乗ります。「“狼”ハンスの手下らしいわ。」
ウィリアム:ぎゃはは。見えないところでフラグがたまってる(笑)。
GM:彼女が訪ねます。「ところで、あんたらここで何してるの?」
ウィリアム:「俺らもいちおう難民キャンプの者だよ。わけありの任務中だ」
マグナス:「もういいな? おまえは自力で帰れ、俺たちは先を急ぐんだ。」
GM:ウルリーケが「だめよ! だめ! お願いがあるの」と言います。「あいつら、ハンスのところへ他の女も連れて行ってるって話してた。あんたら、その娘たちも助けてあげて!」
ウィリアム:ええっ、それはちょっと(笑)。「そもそも、“狼”ハンスの居場所は判るのか?」
GM:「“皇帝と狐”亭。そう話していた。あたいその場所を知ってる」
マグナス:完全な寄り道だな。それに、“狼”ハンスの戦力が判らない。俺は行きたくない。
GM:「なんてこと! ねえ、エルフの騎士さま、なんとか言っておくれよ!」と食い下がります。
アルソル:「マグナス! “狼”ハンスのような悪人は退治しなきゃだめだ!」
マグナス:「悪いが、こっちにも都合がある」
アルソル:「君の妹さんだって、いつ同じような目に遭うかもしれないんだよ!」
マグナス:はぁ、それを言われるとツライのじゃよ(笑)。
ウィリアム:でも、順序ってもんがあるだろう。この任務が終わってからでいいんじゃないの? あっ---(アルソルに睨まれる)---わかったよ、わかった(笑)。ボクも半分はブレトニア人の血を引いてるんだ。騎士の魂くらいどっかにあるだろう。行こう、助けに行こう!(笑)
マグナス:わかりました。俺も、説得されました(笑)。
アルソル:「よかったね、ウルリーケ。“皇帝と狐”亭までの道順を教えてもらえる?」
GM:「うん。あたいが案内する」
★ ★ ★
GM:“皇帝と狐”亭は塀に囲まれた小さな邸宅です。周囲の建物は火災で全壊しています。
ウィリアム:塀のそばまで移動します。マグナスに肩車してもらって塀の中を覗き込む。
GM:荒れた中庭が見えますね。
ウィリアム:見張りはおらんのん? 建物を観察します。人の気配とかは?
GM:(マスター・スクリーンの裏でダイスを振りつつ) うーん、とくに判りません。窓には板が打ち付けられています。
マグナス:ここは酒場なん?
GM:はい。もうちょっとサロンな感じですが。
アルソル:裏口とかないの?
GM:裏口はあるみたいです。
ウィリアム:じゃあ、裏手から侵入しましょう。できるだけ隠密に。
GM:(マスター・スクリーンの裏でダイスを振りつつ) えーと、建物の裏口です。
アルソル:何か聞こえませんか?
GM:(マスター・スクリーンの裏でダイスを振りつつ) べつに。
アルソル:そっと扉を開けます。
GM:厨房のようです。えっと、途中を省略します。厨房の先は戸口です。そこを覗くと廊下が見えました。進むと、扉があって、おそらくそこは広間のようです。中から、男の喘ぎ声とすすり泣きが聞こえます。
ウィリアム:うわ! 何やってんだろ!?(笑)
GM:ぼとぼそと会話が聞こえます。「見張りを2人も殺され--- オレの落ち度じゃない---」
マグナス:なるほど。武器を抜きます。
アルソル&ウィリアム:同じく。
マグナス:扉を蹴り開けるぞ。
GM:広間です。テーブルとイスが乱雑に置かれています。部屋の壁際に、これまたごろつきが3名。部屋中央の床に血だらけの男が一人倒れていて、背の高い男が傍に立ちそいつから斧を引き抜いているところでした。斧を持った男が“狼”ハンスです。ワイルドな感じ、上半身は素肌にレザー・ジャーキン、身体に拷問の跡と、顔に罪人の焼印があります。
マグナス:話すことはない。
GM:では、イニシアチブ。
■第1ラウンド
マグナス:雑魚はほっといて、ハンスに集中しよう。
アルソル[1st]:(ミニチュアを動かしつつ)接敵。殴るぞ。---右腕に命中だ。
GM[4th]:〈打撃回避〉! ---失敗!
アルソル:ダメージ6点。
ウィリアム[2nd]:んじゃ、ボクも。ダッ、ダッ、ダッと駆け寄ってザクッと---。よしっ! 命中!
GM:かっこつけないでもっといい鎧を着るべきだった!(笑)
ウィリアム:胴体に12点!
マグナス[3rd]:俺? 移動、攻撃---右腕に10点。
GM[4th]:ちょ・・・・・・。クリティカル・ヒット+4です。効果のd100を振らしてあげよう。
マグナス:---10。
GM:……。“死亡する。いかに盛大に出血し、どのような死に様を見せたのかは、プレーヤーかGMが望むなら、説明してくれてもよい”。じゃあ、説明してくれ。
マグナス:血を噴出しながらぐるぐるまわってから窓を突き破ってから空へ飛---。
GM:却下だ。
アルソル:他のヤツは?
GM:うーん、我先にと逃げ出したでいいでしょ。
アルソル:捕らえられている娘さんたちを探します。
GM:はい、3人救出しました。感謝されます。
アルソル:あんたの名前を忘れたらバチがあたるわい。
ウィリアム:狼さんは、財宝とか隠してなかったかな?
GM:金品となると、銀貨で3d10枚ほど。
ウィリアム:おお、---21枚ありました。
マグナス:「“狼”は死んだ。」 女たちをウルリーケに引き渡します。自分らで帰れますよね? やることやったから、元の道へ戻るぞ。
GM:いいでしょう。「あんたら、帰らないの? 一体どこへ向う気なの?」とウルリーケが言うけど。
マグナス:「俺たちは癒しの薬をとりにシャリアの神殿を目指してる。俺の妹が病気で死にそうなんだ」
GM:驚きますね。「まあ! それじゃあほんとうに、あんたたちは乙女を救う旅に出た騎士さまってわけだね! それにしても、あっは、なんとも奇妙な3人組みだこと!」 嬉しそうに笑います。
マグナス:「だからといって、それが命の恩人に言うことか?」
GM:では、彼女たちと別れました。彼女たちは「ウルリックさまの加護がございますように!」と、幸運を祈ってくれました。
アーデル広場は不気味な静寂に包まれていた。低く垂れ込めた曇り空から雪が降り始めた。
GM:アーデル広場の手前にいます。広場はほぼ円形で、建物が取り囲んでいます。中央に涸れた小さな噴水があります。広場を横切って進んだところにシャリアの孤児院が見える。鉄柵で囲まれた狭い敷地内の正面には神殿兼診療所、右に孤児院の宿舎があります。正面の門は開いていますが、敷地内の神殿の扉は閉じています。宿舎は焼け焦げて半壊しています。
マグナス:油断なく近づいていこう。
GM:〈察知〉テストをロールしてください。
マグナス&アルソル:失敗しました。
ウィリアム:成功です。
GM:周囲の建物で嫌な気配を感じます。小石の落ちる音。金物のこすれる音。
ウィリアム:「潜んでやがるぜ」って言うわ。武器を抜きます。どこから、飛び出してくるか?
アルソル:ゆっくりと物陰を盾にしながら移動----。
GM:噴水の手前まで進んだとき、ブンッと風に唸る音がしました。噴水の石像に何かが命中して破片が飛び散ります。
ウィリアム:狙撃か!? 神殿まで走れッ!
マグナス:どこから撃ってきた!?
アルソル:姿勢を低くしながら走ります。マグナスも走って!
GM:神殿の扉まできました。
ウィリアム:開ける!
GM:開きません。
マグナス:鍵か?
GM:さあ? 閂かも。(マスター・スクリーンの裏でダイスを振りつつ) 風を切る音が何回か。扉にクロスボウのボルトが突き立ちます。
アルソル:体当たりで---。
GM:がたっと、音がして、扉が開かれます。「入りなさい!」と声がする。
一同:飛び込みます。
★ ★ ★
GM:真っ暗闇です。扉に閂を下ろす音がします。「武器を下ろしなさい」という声がして、ぽっと蝋燭に火が灯ります。
ウィリアム:「ぜーっ、ぜーっ、あんた誰だ?」
GM:困憊しきった様子の中年男性です。怪我を負っているのがわかる。ひどく汚れたシャリアのローブを着ています。「フムフリートだ」と名乗ります。「あなた方は?」
マグナス:武器を収めます。「あなたがフムフリート師か。俺たちは難民キャンプの者だ。『シャリアの涙』をとりにやってきた」
アルソル:「あなた一人だけなのですか? 護衛は外の奴らにやられたのですか?」
GM:「ああ、みな殺された……。シャリア本神殿で襲撃を受けたのだ。追っ手から逃れてなんとかここまでたどり着いのだが……。生き残ったのは私だけだ」
ウィリアム:「奴らの正体は一体?」って訊くわ。
GM:「悪夢の産物だよ。二足歩行のネズミ人間」
マグナス:スケイヴン……。
GM:「私も、自分の正気を疑いたいくらいだよ」
マグナス:「『シャリアの涙』はどこにある?」
GM:「ついてきなさい」と、神殿の地下へと案内されます。小さな礼拝堂です。祭壇の奥に白いシャリアの石像があります。シャリアの顔は少しうつむいており、両手を胸の高さに掌を上にして差し出しています。砕けた水盤の破片が床に散らかっています。
マグナス:割れている? 『シャリアの涙』は!?
GM:両手の上に間に合わせの木皿が置かれています。透明な水がわずかですがたまっています。
マグナス:皿の水を、そっと小瓶に移します。
ウィリアム:そうだ! それを、フムフリート師に運んでもらえばいい!
GM:無理です。シャリアの祭司は言います。「これ以上、歩くこともままならないのだ」
ウィリアム:「おいおい、シャリアの司祭が傷ついているって?」
GM:「傷が、私を衰弱させている。」 スケイヴンの毒か病気かも知れませんよ。
マグナス:「『涙』を、自分で使わなかったのか……?」
GM:「私は癒し手だよ。“『シャリアの涙』を求める者が必ず現れる”、そうシャリアが私に告げた」
マグナス:わかった。「俺たちは帰る。生きて帰る。必ず助けをよんでこよう」
GM:司祭は微笑んでゆっくりベンチに腰掛けました。「行きなさい。神々の御加護があらんことを」
★ ★ ★
GM:(戦術マップに障害物とミニチュアを配置) ここが神殿の扉、そしてアーデル広場。勝利条件は、『シャリアの涙』を持ったキャラクターがマップの端から出ることです。
ウィリアム:(マップ確認中) 走行移動しても2ラウンドでは足りんのか。それに、スケイヴンもおるしなあ。
マグナス:誰が『涙』を持つかだ。
アルソル:私が持つ。
ウィリアム:本気? 回避に自身は?
アルソル:ないよ。でも、《駿足》がある。
ウィリアム:うーん。一気に駆け抜けたほうがましか。俺たちが先に出て敵を引き付けようか?
アルソル:そうね、お願い。
マグナス:扉を開けます。
GM:強い風が吹き込んできた。顔に刺すように冷たい雪が当たる。
■第1ラウンド
ウィリアム [1st]:移動します。障害物がウザイなあ。
GM:じゃあ、クロスボウが発射されます---。
ウィリアム:盾を掲げてますから。
GM[2nd]:---バシバシッと---すべて外れました。えーと、物陰からスケイヴンがわらわらわいて出ます。(ミニチュアを配置) 終了。
ウィリアム:10匹はおるぞ!
マグナス[3rd]:移動します。この位置だと、今でてきたヤツに突進攻撃できるな。
アルソル:ううん、手前のヤツはほっといて、ウィリアムの横まで走ってほしい。
マグナス:わかった。
アルソル[4th]:(マス目を数えて移動距離を確認) ここまで、マグナスの後ろまで移動。
■第2ラウンド
ウィリアム[1st]:攻撃します。---外れ! うーん、5ftステップがあれば(笑)。
GM:ちなみに、スケイヴンは二刀流ですから。ウィリアムに2匹、マグナスに1匹が攻撃します。---マグナスに1発命中。
マグナス[3rd]:---受け流しました。こちらも攻撃します。---1発命中。
GM:---ガチンとパンチダガーで受け流し成功。他の6匹はこうこう移動。バルコニーのスケイヴンはクロスボウを装填します。
アルソル[4th]:うーん、接敵されちゃった----この状態で走ると途中で殴られるのよ……しかも、端までとどかんしなあ……あっ、幸運点使えばええんやん!
マグナス、ウィリアム&GM:それ! 忘れてた!(爆笑)
アルソル:よし、いける。幸運点を使って半アクションでスケイヴンをすり抜けて移動します。
GM:フリーで2回殴られるけど?
アルソル:かまいません。
GM:---2発とも命中だ。
アルソル:ダガーで受け流します。1回目---失敗。
GM:---ダメージ、胴体に13点。
ウィリアム:まじか!
アルソル:痛ーッ、3点残った。2回目---幸運点を使って受け流します。---成功した!
GM:助かったか!(笑)
アルソル:そして全アクションで走行!---いち、にい、さん、スケイヴンを避けて---ろく、なな、はち、---じゅう、じゅういち、じゅうに、じゅうさん、じゅうよん、じゅうごっ! タッチダウン!
ウィリアム:やったぜ!
GM:降りしきる雪の中をアルソルが風のように駆け去った。
マグナス:よし。
ウィリアム:さあて、お楽しみはこれからだ。「かかってこい、ネズ公! 一匹残らず地獄へ道連れだ!!」