ミラー : 人間の武人。無口な青年。プレイヤー:コニタン
ガズ : オークの盗賊。乱暴者。プレイヤー:チャッピー
シエラ : ウィンドリングの理論魔法使い。でしゃばり。プレイヤー:リサ
サモン : 村長の息子(人間)
オデル : その父。カファヤ村の長
カロシュ : 元アデプトの森番(オーク)
ダワン : カファヤ村近くに住む、異界魔術師(人間)
イェルナ : ダワンの娘
進行役(ゲーム・マスター)、リプレイ執筆 : ナッキー
今回のシナリオは、EDとしては一風変わったサイコホラー仕立てです。そのテーマ(=ネタばらしになるオチのインパクト)を際だたせるため、シナリオの発端、展開はあえてありふれたものにしてみました。
リプレイとしては多少退屈な感じも否めません。が、物語のクライマックスと“実際にそれに直面してしまった”プレイヤーたちの驚きと戸惑いの顔を想像してもらえたのなら、それも納得していただけると思います。いかがなものでしょう?
むしろ、退屈な幕開けだった。よく聞くだろ? 怪物だかなんだかに悩まされている村人が、“たまたま通りかかった”アデプトに救いを求めるって話しを。
男と出合ったのはスロール山脈近辺のさる交易所。アデプト一行(もちろん俺たちのことだ)が滞在していることを聞きつけ、訪ねてきた。あれは王母が死んだ次ぎの年、この数十年で一番寒さが厳しかった冬だ。あんたも憶えているだろ?
サモン(男の名だ)は、村で起こった恐ろしい事件の話しを大げさな身振り手振りで語ってみせた。冬の嵐が吹き荒れた次ぎの日に村境で見つかった死体の話しと、その見るも無惨なありさまについてだ。
そしてこう言った、「これは私たちの手に負えない事件です、ぜひアデプト様に解決していただきたい・・・」云々。
どうだい。売れない吟遊詩人のレパートリーみたいに陳腐な話しじゃないか。
俺の経験からいわせてもらうなら、こんな依頼のほとんどが的外れというか、俺たちの出る幕じゃない。羊を生け贄にした邪悪な儀式の犯人が、おっかない山犬だったり、森でちらつく怪しい明かりの正体が、逢い引き楽しむ男女のカンテラだったり、おおかたがそんな顛末に終わるものさ。
それでも、俺たちは依頼を引き受けた。
驚くことはない、俺たちはアデプトだから、それが“義務”ってもんだ。
まあ、そん時、この数日の馬鹿騒ぎですっかり軽くなった財布のことや、英雄殿に憧れる田舎娘の熱い視線のことを思い浮かべなかったか、って言うと嘘になるがね。
とりあえず、発端はそんなところだ。
今も俺はこう考えてる、事の結末もこんなに単純でいられたらよかったのに、と。
スロール「審問記録」 文書339-8-U-15
ガズ:「で、俺たちに助けて欲しいと?」
GM/サモン:「ぜひ」
シエラ:「でもねぇ。それって地元の自警団とかの仕事じゃないの」
GM/サモン:「家畜泥棒を捕まえるってわけじゃないんだよ。俺は交易所に駐屯しているスロールの警備隊を頼るつもりでここまで来たんだ。けど、あんたたちの噂を聞いて考え直した」
ミラー:「この事件にはアデプトがふさわしいと?」
GM/サモン:大きく頷く。
シエラ:自信ありありね。「言っちゃなんだけど、“ただの人殺し”かもよ」
GM/サモン:「死体の話しはしただろ、ありゃ尋常じゃなかった」
ガズ:「バラバラ、ズタズタってか。それくらい俺だってやれるかもよ」と酒を呷りながら。
GM/サモン:「誓って人間や森の動物の仕業じゃない。ありゃもっと悪いモノにやられたんだ」
ガズ:「ほぉ? 悪いモノねぇ」
シエラ:「ホラーのこと?」
ガズ:「おい、軽々しく口に出すなよ」
シエラ:「あら、ガズ、怖いの?」
ガズ:「そうじゃない」けど本当はビクビク。
GM/サモン:「頼むよ! 最悪の事態なんだ。あんたたちアデプト様なんだろ」
ミラー:「村はここから近いのか?」
GM/サモン:「ああ、半日とちょっとだ」
シエラ:「ミラーは行く気なの? 報酬の話しも済んでないけど」(笑)
GM/サモン:「あんたら、金を取るのか!?」
シエラ:「アデプト様も霞を喰って生きているわけじゃないの、知らなかった?」
ガズ:「ヒュ~」悪いヤツやな~、俺も見習わなければ。にやにやする。
シエラ:「お父さんとでも、相談しておいて」
GM/サモン:「わ、わかった。じゃあ、村まで来てくれるんだな?」
ミラー:「行こう。だが、金の心配はしなくていい。二人の言葉は気にしないでくれ」
ガズ&シエラ:だぁ~っ! 一人でいいとこ取り~。
GM/サモン:サモンは君の手を握りながら、「あんらがいい人で助かったよ! 明日の朝、村まで案内する」という。
ミラー:「承知した」
GM:次の日です。天気はどんよりと曇り、山脈から吹き下ろす冷たい風に小雪が混じります。ここ数日はこんな天気ですね。
ガズ:う~寒っ、ぶつぶつ文句ばっかりいいながら歩いていく。
GM:昼すぎくらいに目的の村に到着しました。名はカファヤ村です。君たちが村に近づくと、外で仕事をしていた村人が見慣れぬ訪問者の到来に、なにごとだろうか、と顔を上げます。
サモンは彼らに向かって、「アデプト様をつれてきた!」と得意げに声をあげています。そんな感じなんで、君たちがサモンに案内され村の寄合所に腰を落ち着ける頃には、噂は村中に広まっていました。
ガズ:窓には村人の顔が鈴生りなんだろ? 子供とかに、カギを出したり消したりして見せてやる。
ミラー:うわ、なにそれ?
ガズ:御前が驚くなって。[念動鍵開け]のカギだよ。
GM:とかしてると、村の男衆が集まってきた。サモンによく似た壮年の男性が代表で歓迎と感謝の挨拶をする。名はオデル、カファヤ村の村長だそうだ。
ガズ:「さっそくだが村長、俺たちをよんだわけを話してくれ」
GM/オデル:「ええ。村人が殺されました」
ガズ:「そりゃ一大事だ。違う、俺が訊ねているのは、どうして俺たちの出番だと考えたのかってことよ」
GM/オデル:「村には動物に詳しい者もおります。みな、獣の仕業ではないと口をそろえています」
シエラ:「えっと、殺されたのは何人ですか?」
GM/オデル:「二人です。一人目はドーラフという雑貨屋。次ぎにモルシュという農夫です」
シエラ:「どうやって見つかったの? 何か不審な点は?」
ガズ:「面倒だから、まとめて全部しゃべってくれよ」
GM/オデル:「わかりました」
※この手の幕開けに慣れっこのプレイヤーたちは、やや急かし気味に情報収集を行う。事件前の被害者の行動や遺体の状況から事件解決の糸口を得ようとするが、村人の証言から判るのはあたりまえの状況証拠ばかりだ。
GM::二人とも家の外で、たぶん夜のうちに殺さた。目撃者なし。夜出歩くのも理由がないわけではない。第一の殺人が約8日前、その次ぎが約2日前。被害者、犯行現場に共通点なし。
ガズ:通り魔っぽいな~。マジで動物なんじゃないの、はぐれクラクビルとか。
GM:間違いない、渡りの群れからはぐれたやつだ。(笑)
シエラ:あの、遺体は埋葬しちゃったの?
ガズ:そうだ、死体を見せろ。そしたら、凶器の推測くらいできるだろ。
GM/オデル:「遺体はすべて燃やしました。あのような死体には悪霊が宿ると言いますので」
ガズ:だ~っ。
シエラ:現場を見ても無駄だかなぁ?
ガズ:だめだろ。こりゃ待ちだな、次ぎの殺人を待つ。
シエラ:そうねぇ、警備を強化するくらいしか思いつかないよ。
GM:とか君たちが相談していると、村人たちがオデルに向かって目配せをし始める。
ミラー:なんなんだ?
GM:オデルが、「その、もう一つ聞いておいて欲しいことがあるのですが・・・」と話し難そうに切り出すぞ。
ガズ:「隠し事は無しにしようぜぇ」(笑)
GM/オデル:「いえ、直接関係があると疑っているわけではありません。が・・・、村から少し離れた場所にダワンという素性の怪しい男が住んでおりまして。聞くところによるとその男、アデプト様だとか。しかし・・・いかんせん私たちはその手の話しには疎いのですが、この世ならぬ恐ろしい力を操る魔術師とも言われております・・・」
シエラ:「ネザーマンサーね」
ガズ:なんか、あからさまなのが出てきたな~。(笑)
ミラー:「彼を疑っているのか?」
GM/オデル:「いえ。ただ、相談にも行っていないと・・・」と弁解がましい様子で。(笑)
ガズ:村はずれの異界魔術師ねぇ・・・どう思う?
ミラー:話を聞くだけでも損はないだろう。
ガズ:「その男に会いたい。連れてきてくれるか?」
GM/オデル:「私が?」って顔をするけど。
シエラ:「同じアデプトなら、こちらから出向くのが礼儀でしょう」
ガズ:わかってるって、イジメてみただけやん。(笑)
シエラ:「案内していただけますか?」
GM/オデル:「それは助かりました」って感じでOKしてくれました。
ガズ:「今からだよ。行くぞ」
GM:日の暮れかかった田舎道を、案内役の村長と二人の村人とともに進みます。で、10分ほど歩いたところ、木々が大きく繁る場所まで来ました。村長はそこで足を止め、「この先です」といいます。
ガズ:眉を吊り上げて、「案内はここまで?」という。
GM:はい。
シエラ:「できれば、村長さんにだけでも居てもらいたいのだけど。私たちの信用とかあるじゃない」
GM:オデルは「今回の一件の話しをすれば、協力はしてもらえるはずですが・・・」と慌てていうぞ。
ガズ:「捕って喰われそうな雰囲気だな。ちょっと怯えすぎじゃないか?」
シエラ:「そのダワンって人、村とは交流がないの?」
GM/オデル:「ええ。まったくと言ってもいいほどで」
ミラー:「わかった、帰ってくれていい」
GM:帰りぎわに村長が、「御宿は私の屋敷に用意してありますから」といってます。
シエラ:「ありがとう」
ガズ:頷いておく。
シエラ:進みましょう。
GM:ちょっと歩くと、背の高い木々に囲まれた、陰気な雰囲気の空き地に出ました。大きな楡の木の下に石造りの建物が見えます。村の建物とそう変わりない、小さな家です。
ガズ:普通に近づいて、人を呼んでみよう。
GM:返事はないな。あたりはもう夕闇に包まれている。
ガズ:もう一度、大きな声で。
GM:反応なし。
シエラ:窓から、中は覗ける?
GM:はい。質素なテーブルが見えます。
ミラー:留守かな。
GM:とかやっていると突然、背後から声がかかった。「ここで、なにやってるの!?」
シエラ:わぁ、びっくり。
ガズ:振り向くと?
GM:歳の頃15才くらいの娘が立っています。痩せた、瞳の大きい少女です。
ガズ:「こんばんは、娘さん」
シエラ:「このお家の人? 私たちアデプトです。ダワンさんに会いに来ました」
GM:彼女はじっと君たちを見つめてから、「村長の頼みで?」という。
ガズ:「まぁ、そんなところだ。あんたも、村の騒ぎの件、知っているだろ? 俺たちは雇われてそれを調べている」
GM:すると、挑発的な感じで、「つまり、人殺しの犯人を捕まえに来たってわけね」という。
シエラ:「まさか」
ガズ:「でも、疑っていないってわけでもないぜ」(笑)
GM/娘:「そう」
シエラ:「とにかく、ダワンさんに会って話しを聞きたいんだけど?」
GM/娘:「おあいにくさま、死んだわ」
シエラ:「死んだ・・・。いつ?」
GM/娘:「もう2週間も前のことよ」
シエラ:「まさか、村人と同じように殺されたの?」
GM/娘:「違う、でも似たようなものだわ」
シエラ:「それ、どうゆうこと?」
ガズ:肩をすくめるぞ。「どうだろう。長くなりそうだ、よければ中で話さないか?」
シエラ:むしろ、中に入れろ。(笑)
GM:また、じっと君を見つめてから、すっと、玄関の扉を開けて家に入っていく。
ガズ:侵入成功。後に続け。(笑)
GM:彼女は君たちの存在を気にもとめない様子で、夕飯の準備を始めだすぞ。
シエラ:「そうだ、まだ、お名前を聞いてなかったわね」
GM:「イェルナ」
シエラ:「ダワンさんとは・・・」
GM/イェルナ:「娘」
ガズ:「前後の話を詳しくしてくれるか?」
GM/イェルナ:「なにの前後?」
ガズ:「まず、村での事件」
GM/イェルナ:「知らないわ」
ミラー:今のはどういうニュアンスでしょう?
GM:みんなが知っている以上には。あるいは、関心がないって感じ。
ガズ:「親父殿が亡くなったそうだが?」
GM/イェルナ:「ええ、そうね」
ミラー:「曖昧な口振りだね」
GM/イェルナ:「どうだっていいことよ。ある朝、あの部屋で死んでいた。それだけ」
シエラ:「あの部屋って?」
GM/イェルナ:「作業部屋よ」
シエラ:「作業部屋? そこでなにをしていたの?」
GM/イェルナ:「蜥蜴の干物とか、かび臭い本でいっぱいの部屋で、いつもそこにこもりっきり。変な言葉をわめいたり、呟いたりしてたわ」
シエラ:「死因はなんなの?」
GM/イェルナ:「知らないわ。けど、たぶんこれはなにかのツケね。忌まわしい行為の代償なんだわ」
ガズ:「ずいぶんな言いぐさだな。あんたの父親なんだろ?」
GM/イェルナ:「あんな気狂いと一緒にしないで欲しいわ」
ガズ:「それでも親子は親子だ」
GM/イェルナ:ばっと振り返るぞ。で、「私はあの男を父親だなんてこれっぽっちも考えていないわ。私はあの男とは関係ないの!」と叫ぶ。
ガズ:あっそう。(笑)「で、ダワン殿は殺されたのか?」
ミラー:「彼の遺体を見たんだよね?」
GM/イェルナ:「私はあの男がどうなろうと関心がない。知りたいとも思わないわ」と、きっぱり。
ミラー:「質問に答えていないよ」
GM/イェルナ:長い沈黙があります。その後、「あの部屋で・・・何か恐ろしい物に」という。
ガズ:粘ったかいがあったな。一気に物語は佳境やで。(笑)
ミラー:「父さんが死んだのは、彼自身のせいだと思う?」
GM/イェルナ:「・・・もちろん」
ガズ:よっしゃ、あらかた判ったな。
シエラ:ネザーマンサーの死が、事件と関係あるって?
ガズ:そうじゃねえの? ダワンはホラー召喚に失敗した。で、そいつがダワンを殺して逃げた。
ミラー:「作業部屋を見せてくれ」
GM:彼女は家から出る。
ガズ:あれ?
ミラー:“離れ”ってことだろ。ついていく。
GM:家の裏手の小道を指さします。「勝手にしていいわ」という。
シエラ:行くぞぉ。
GM:もうだいぶ暗いですよ。
シエラ:明かりを用意して歩きましょう。ランタン持ってきました。
GM:すぐに建物が見えます。小さな塔って感じですか。それと・・・これは知覚で判定しましょうか。
シエラ:2。
ガズ:盗賊の観察眼!(ころころ)10。
ミラー:はは、15。
GM:塔の脇にお墓があるね。
ミラー:ほぉ?
GM:新しい墓ですね。小さな花が添えられています。墓石にはルーンが彫られているね。
ミラー:ダワンの墓だろう。ルーンの意味とか判りますか?
GM:はい。よくアデプトが趣味にするあれですね。ルーンの意味は、“ネザーマンサー”だ。
ガズ:誰が彫ったんだ? 自分で墓石を彫ってたのか?
シエラ:生前葬って、やったら運気が上がるそうよ。
ガズ:花は新しい?
GM:はい。
シエラ:イェルナかな?
ガズ:違うだろう。
GM:はい、はい、建物の扉にはカギが掛かっております。
ガズ:バカっぽいけど〈念動鍵開け〉やってやる。(ころころ)4。
GM:なんだそれ~、オーデナリーでアベレージぎりぎりやん。
ガズ:大丈夫、そんなにいい鍵使ってないって。
GM:開きました。(笑)
ガズ:「ざっとこんなもんよ」(笑)
シエラ:「次ぎは、あたしが裁縫キットで開けてあげるわね」(笑)
ミラー:中はどんな様子でしょう?
GM:大きなテーブルと書棚などがあります。
ミラー:長い間、人の入っていないような感じとか?
GM:それは、どうでしょう。
ガズ:さっさと物色するぞ~。
ミラー:散らかっている様子は?
GM:散らかっていると言えないこともないんですが、荒らされた、って感じではないぞ。
シエラ:書棚の本を取ってみましょう。
GM:一般的な魔法学と異界魔術の本みたいですね。
シエラ:これで、“忌まわしい行為”をするのはちょっと無理なんじゃな~い?
GM:床に地下室への扉らしきものも見えますが。
ガズ:俺に見つけさせろよ~。がばっと開ける。
GM:梯子ですね。
シエラ:安全そうなら、みんなで下りちゃおう。
GM:小部屋、続いて狭い廊下、突き当たりに扉です。
シエラ:進む。
GM:シエラはちょっと耳鳴りみたいな感覚に襲われる。たぶん、強い魔力の作用だろう。
ガズ:「臭え、臭え。魔法臭え」
シエラ:どんな魔力のたぐいなのかは判らない?
GM:ハーフ・マジックで判定しましょう。
シエラ:(ころころ)10。
GM:召喚室にみられる典型的な結界です。
ガズ:慎重に奥の扉を開けるぞぉ。
GM:思ったより広い部屋です。中央に大きな火鉢が置かれています。それから、床や壁、天井にまで魔法文字や紋章なんかを描いたり消したりした痕があります。
ミラー:他に何か?
GM:部屋の隅に、焼けこげた本が落ちていました。
シエラ:タイトルとか読めますか?
GM:無名ですね。
ガズ:うぉ~、こいつ・・・(シエラのレコードシートをのぞき込みながら)[証拠分析]もってないぞ~。
シエラ:うん。
ガズ:「うん」って。
シエラ:魔法陣の性質は判りますか?
GM:同じ判定で。
シエラ:(ころころ)15。
GM:よく書けていると思います。達筆ですね・・・と、なぞっていくと・・・ホラー召喚用でした。
シエラ:ひにゃ~。
ガズ:どうしたんだ?
シエラ:ホラー喚んでるにょ~。でも、そんなこと可能なの?
ガズ:基本的にはネザーマンサーの第8サークル呪文だぜ。
ミラー:他に見落としていそうな場所はありますか?
GM:ない、と思いますが。
ガズ:とりあえず、いったん帰るとするか。娘の家で、もう一度話しでも聞くか?
シエラ:え~、あの女、気持ち悪いから嫌。村長の家まで帰ろうよ。あと、焼けた本を持っていく。
GM:いいですか? 村長宅まで帰りますよ?
一同:OKです。
※3人は村長の屋敷で宿をとり、簡単な調査状況を報告する。この時点では仮説の域を出ていないのだが、ミラーはこの件とダワンの死(そしてホラー召喚の可能性)の関連をほのめかした。(ちなみに、ダワンの死は村人にも初耳である。)
これを聞いて、村長の顔がみるみる蒼くなる。じつのところ村人たちはこの事件の犯人を、ダワンの仕業と決めつけていたようだ。(ガズいわく、「結局、調査なんて期待してなかったな! 始めから“犯人逮捕”のために俺たちを呼んだんだろ!?」)
シエラ:いちおう捜査は続けますけどぉ。
ガズ:手詰まりといっちゃあ、手詰まり。
シエラ:あ、夜のうちに、本を調べたってことでいいですか?
GM:はい。ほとんど読めるところはありませんでしたけど、これがホラー召喚の手引きだってことはわかりました。
シエラ:む~。
ガズ:そうだそうだ、村長に墓石のことを聞いてみよう。
GM:村長は、ダワンの死は始めて知った、らしいけど?。
ガズ:ルーン刻印の話しをして、この村に他にアデプトはいないのか訊ねるけど?
GM:アデプトですか・・・?って感じで否定しようとしたけど、はっと思い出した。「そういえばカロシュがおります」というぞ。
シエラ:だれ?
GM:「カロシュは森番をやっておるオークです。昔はアデプトであったと聞いたことがあります」という。
ガズ:元アデプトねぇ。「紹介してくれるかい?」
GM:それはお安い御用って感じで了解してくれました。
ガズ:会いに行こう。
GM:それは次ぎの日の朝ということで。
GM:では、村人の案内でカロシュの小屋までむかいます。日のよくあたる空き地に、小さな小屋があります。村人の呼びかけに答えて、痩せた男があらわれます。すぐにわかるんだけど、片腕、右腕の肘から下がありませんね。
ガズ:にこやかに笑って手をあげてみせるわ。「やぁ、君がカロシュ?」
GM:君たちを見たカロシュは、すぐに合点がいった様子です。村人の紹介が終わると同時に、「ありがとう、後は俺が引き受けるから」と彼を帰らせます。
シエラ:あれあれ。
ガズ:「自己紹介の必要はなさそうだな?」
GM/カロシュ:「ああ、話しは聞いている」
ガズ:「手短にいこう。ダワンとはどういう関係?」
GM/カロシュ:「しいていうなら、友人か」
ガズ:「ダワンの墓をつくったのはアンタ?」
GM/カロシュ:「そうだ」
ミラー:「弟子だった?」
GM/カロシュ:「まさか」
シエラ:「交流はあったんですよね」
GM/カロシュ:「ああ。似たものどうしの好とでもいうかな」
ガズ:わからんって顔をするぞ。
GM/カロシュ:「俺は落ちぶれた元アデプト。ダワンは嫌われ者の魔術師だ」
ミラー:「ダワンの素性について詳しく教えてくれるか」
GM/カロシュ:「あの男の家系は、その昔、ここら一帯のケーアの守護者と呼ばれた高名な異界魔術師のものだ、と聞いている」
ガズ:「ほう?」
GM/カロシュ:「大災厄が終わって百年あまりたつ。高名なケーアの守護者も、ありがたみが薄れてしまった。よそよそしい態度も、いつのまにやら村八分に変わっちまった。今じゃ、異常者扱いだ」
シエラ:「それで共感をもったと」
ガズ:「愚痴を聞きあう茶飲み友達ってか」(笑)
GM/カロシュ:「そんなところだ。もっとも、まともな仕事をやっているぶん、俺の方が気楽ではあるだろうがね」
ガズ:「ダワンに対する村人の態度は、よほど冷たかっんだろうな?」
GM/カロシュ:「ああ」
ミラー:「妻がいたそうだが?」
GM/カロシュ:「だいぶ前に、病でこの世を去ったらしい」
ガズ:「イェルナはダワンの本当の娘なのか?」
GM/カロシュ:「そう聞いている」
シエラ:「妙な子ね」
GM/カロシュ:「親父を憎んでいるらしいな。自分の人生を憎んでいるのと同じに」
ガズ:「ダワンはどんな男だった?」
GM/カロシュ:「物静かな男だ。自分のことはあまり喋りたがらなかった。実際、村人ともほとんど交流がなかったな。もっとも、異界魔術師と親しくなりたがる人間がそういるとも思えないが・・・。ある意味ダワンは、生粋のアデプトだったんだろう。役に立とうと立つまいと、修練を続けるんだ。たとえそれが、他人に理解されなくてもな」
ミラー:「彼の死について、どう思う?」
GM/カロシュ:「驚いてはいない。人間はあのくらいの歳になると、体のどこかに悪い所ができるもんだ。あの男は心臓を患っていた。発作に襲われるところも見たことがある。いつだったか、あの娘が親父の様子がおかしいと言って俺の所にやってきた。俺が作業部屋をのぞいてみると、あの男が倒れていた。魔法だがなんだかの途中で発作が起きたんだろう。顔を火鉢につっこんで、冷たくなっていた」
シエラ:うっそ~。
ミラー:「完全な事故だったと?」
GM/カロシュ:「そうだろう?」
ガズ:手をひらひらさせる。「俺たちの見立ては違うんだなぁ。ダワンは魔法の途中じゃなくて、魔法が終わったから、死んだ」
GM/カロシュ:「儀式で呼び出した魔物に襲われたとでも?」
ガズ:「そうだ」
GM/カロシュ:肩をすくめる。「少なくとも、俺が作業部屋に入ったときには、そんなのには出会わなかったが」
ミラー:「ダワンの体に異常はなかったのか?」
GM/カロシュ:「たしかに、燃えた頭は酷いありさまだったがな」
ミラー:「あんた、村人の死体はみたよな? ダワンの遺体と似たところはなかったか?」
GM/カロシュ:「ない」
ミラー:「この件にホラーが関与していると思うか?」
GM/カロシュ:「ああ。できるなら、あんな酷いこと、ホラー以外の仕業とは考えたくないね・・・」
※カロシュとの会見は、あまり得るものもなく、終わった。一行は情報を吟味し、事実の真相推理する。ダワンはホラーに殺されたのか? それとも本当に事故だったのか? どちらにしても、ホラーは召喚されたのか?
彼らはもう一度作業場に向かい、危険を承知のうえで〈アストラル感知〉まで使って現場の再調査をおこなった。その結果、魔法陣周辺に魔法発動後特有のアストラルのほころびが見つかる。これにより、ホラー召喚がおこなわれた可能性が大きくなった。
シエラ:でもさぁ、ホラーって喚んでどうするの? 3つの願いを叶えてもらうとか?(笑)
ガズ:だから、それ自体が修業っていうか、研究の一環なんだろ。
ミラー:それか、他に目的があってのことか。
ガズ:ホラーは逃げたんかな~?
シエラ:召喚って、捕まえることが前提でしょう?
ガズ:じゃあ、術者が途中で死んだとしたら?
GM::予期せぬ事態は、予想できないからそう呼ぶのであって、ね。(笑)
ミラー:第一発見者が犠牲者じゃないって所がひっかからないか?
ガズ:そうだなぁ・・・。
シエラ:あの娘を、〈アストラル感知〉してみましょう。
ガズ:そうするか。
※言うが早いか、3人はイェルナの小屋へ向かい、“こっそり”と、〈アストラル感知〉による観察を試みる。判定はGMが秘密で行った。
GM:水汲み帰りのイェルナが通りかかります。(ころころ)べつに異常は見られませんねぇ。
シエラ:え~、ウソでしょ?(笑)
GM:さあ?(笑)
シエラ:他にわかったことはある?
GM:彼女は普通の人間だ、アデプトですらない。
ガズ:ありゃ~?
※疑惑は大きく残るが、これで思いつくすべての調査が終わった。一行は肩を落としながら村長の屋敷へと帰り、休息をとる。夕食を待ちながら夜の巡回などを話し合っているころ、村長の息子が息を切らせ、部屋の中に飛び込んできた。そして、こう告げる。
GM/サモン:「ホラーが出た!!」
ガズ:「ホラーだって!? どこに?」
GM/サモン:「放牧地のそば。羊飼いが化け物を見たって言ってる!」
ガズ:武器を持って走り出すぞ。「案内しろ!」
シエラ:飛んで追いかける。ぶぶぶぶぶ。(←羽音らしい)
ミラー:いきましょう。
GM:村のはずれに武器を持った男たちが集まっています。目撃者の青年がいうには、大きな化け物が豚を襲って、森に消えたらしいです。
ガズ:そいつの姿を詳しく聞かせてくれ。
GM:熊に似ていたそうです。
ガズ:熊に似ているって、ほんとうに熊じゃねーよな。(笑)
シエラ:足跡とかは残っていませんか?
GM:残っています。
シエラ:どんな感じ?
GM:う~ん、熊っぽい。村人も、「熊なのでは・・・」と呟いている。
ガズ:くっそ~、騙しやがったな!(笑)
ミラー:あたりをよく見てみますが?
GM:するとですね、そいつが歩いた場所に、黒いドロドロが滴っています。
シエラ:ひゃ~、なにこれ~。[クリーチャー伝承]でわかる?
GM:ちょっと無理かな。
ミラー:ホラーかも。
ガズ:そうなん?
シエラ:とりあえず、後を追ってみよう。
ミラー:そうだな。
ガズ:「おっさんたち、帰ってくれていいぞ。ここは俺たちに任せとけ」
GM:集落の境界をわける石垣をこえて森に入りました。下生えが多くて見通しが悪いです。
ミラー:進んでいきます。
シエラ:高く飛んで、偵察するよ。
ガズ:足跡なんか調べるてみたい。
GM:知覚テストをしましょう。
ミラー:(ころころ)8。
シエラ:(ころころ)13。
ガズ:(ころころ)14。
GM:踏みつぶされた草木が簡単に見つかりますね。
ガズ:追う、追う。
GM:少し経って、シエラが何か黒い影を見たぞ。
シエラ:よく見てみる。
GM:ブタを喰らっている、大きな熊みたいな生き物だ。黒いタールみたいなネバネバが体にまとわりついていて、それがざわついている。
シエラ:発見、発見!(笑)
GM:そいつが顔をあげ君に気づいた。ゴォと鳴いて動き出す。
シエラ:みんなのところへ帰る。タタリ神がでたよ~。ぶぶぶぶぶ。
ガズ:こっちくんな。(笑)
GM:バリバリいう音が近づいてくるぞ。
シエラ:ぎゃわわ、お静まりください~。
GM:黙れ、イニシアティブじゃ。
ミラー:[虎のバネ]と[宙の舞]を発動します。疲労2点で・・・ひひひ・・・(ころころ)15。
ガズ:なんだ、さいごの自虐的な笑いは?(ころころ)1。
シエラ:6。
GM:7です。ミラーからどうぞ。
ミラー:カルマ使って、17。
GM:命中。
ミラー:ダメージ13点。
GM:ずばっと切り裂いたね。
ミラー:続いて[盾攻撃]、12。
GM:命中。
ミラー:おら~っ!15点。
GM:どし~ん、と効いてますね。では、こちらの攻撃ですね。
ガズ:爪/爪/牙/ベアハッグやで。(笑)
GM:(ころころ)ミラーに爪で2回攻撃。防御値は7? じゃあ11点と6点。
ミラー:1点もらって、あとはヨロイ。
ガズ:堅いな~。
ミラー:[宙の舞]で反撃しますね。(ころころ)16は命中だね、ダメージは6点。
シエラ:やっとあたし~。「念刃」だ~(ころころ)10?
GM:命中。
シエラ:ダメージ、7。
GM:ちょこっと痛い。
ガズ:ん、俺のばんね。影からバッと飛び出して[不意打ち]。「致命的打撃の護符」も発動。
GM:決める気やね~。
ガズ:(ころころ)・・・10。(泣)
シエラ:おほほほ。
GM:辛うじて命中。
ガズ:助かった~。ダメージは何ステップだ~? あ、レコードに無いぞ。
GM:20面、12面、10面。
ガズ:自信ないよ~(ころころ)・・・きゃ~。(←振ったダイスが、他のダイスの山と混ざる)
ミラー:なにやってんだ。(笑)
ガズ:俺の10面ってミドリだっけ? それともキイロ?
ミラー:キイロだな。
ガズ:あ~、大きい方でよかった。(笑)17ダメージ。
シエラ:楽しそうね。(冷)
GM:そいつの首筋にズドンッと突き刺さるぞ!
※ダイス運は絶好調である。第二ラウンドも先手をとり、たてつづけに大きなダメージを与えた。“魔物熊”は断末魔の鳴き声をあげ、倒れた。
ガズ:楽勝!
ミラー:これが、なんだかわかる?
GM:あくまで推測なんですが、ホラーによる汚染と考えていいんじゃないでしょうか。
ミラー:憑依みたいなものか。
GM:断言はできませんけどね。
シエラ:こいつが、真犯人なのかな?
ガズ:完全な乗っ取りなのか、本体から感染しただけなのか、が重要だな。
GM:それも、はっきりしませんけど。
ガズ:うむぅ・・・。
シエラ:とりあえず、帰ろっか。
GM:村まで帰り着くと、すぐに人々に囲まれますね。「どうだった?」「やっつけたのか?」って質問ぜめです。
ガズ:説明する。
GM:どっと歓声が上がる。
シエラ:「いえ、あれが真犯人と決まったわけでは・・・」
GM:そんな声も、賞賛の声や労いの言葉に虚しくかき消されるわけ。
ガズ:まだ安心するな、と言いたいけど。
GM:そんな懸念は考えてもみないようすですね。なにしろ“ホラーが退治された”わけですから。やがて村長宅で、村人も集まって宴会が始まります。酒が振る舞われ、興奮した人々に話し掛けられたり、戦いの模様を話すようせがまれたり、娘を紹介されたり、するぞ。(笑)
ガズ:これでいいのかぁ? 仕事をやり残したような気がするぞぉ。
シエラ:わたしは、飲む。お酌してほしい?
ガズ:あう~、本当にこれで終わったのか?
GM:では次ぎの日です。釈然しない気持ちのままですが、夜はすぎていき、なんだかんだで酒も入り、酔い、寝てしまいました。朝早く、ドッドッドとそれぞれの寝室の扉が乱暴に叩かれる。
シエラ:「は~ぃ?」
ガズ:出ていく。
ミラー:ん。
GM:血相を変えた村長がいる。「あんたら、ホラーを退治したって、いったじゃないか!」って詰めよられます。
シエラ:「は? どういうことですか?」
GM:村長は、ミラーの襟首を掴み揺さぶるぞ。「ホラーは退治したと、ホラーは退治したと・・・。じゃあなぜ、息子があんな姿に・・・・」って言いおえた後、放心したみたいに崩れひざまづく。
ミラー:外に出てみよう。
GM:人が集まっています。若旦那が殺されたらしいことがすぐにわかります。
ガズ:サモンか。
シエラ:すぐに向かいましょう。
GM:空気は刺すみたいに冷たく、空は黒く曇っています。風に雪が舞っています。
ミラー:で、現場は?
GM:男たちが数人で取り囲んでいます。その中には、カロシュの姿もある。
ガズ:「どいてくれ」って割り込むぞ。
GM:血溜まりの中に哀れなサモンが倒れています。人相もわからないくらい、めちゃめちゃに傷つけられた死体です。
ミラー:傷を検分したい。
ガズ:俺もだ。
GM:二人ともしゃがみ込んで死体をあらためたあと、顔を見合わせます。こんなの、ありふれた“殺し”です。めった刺しにされてはいますけど、目や耳が損失していますけど、“特別”なものではありません。
シエラ:〈アストラル感知視覚〉をします。
GM:異常ありません、彼が死んでいる以外には。
ガズ:「これは、ホラーの仕業じゃないな」
GM:カロシュと目が合うぞ。彼がこれに気づいていないはずがない、と確信する。
ミラー:はん?
GM:村人がざわつくぞ、「人殺しなのか?」「じゃあだれがやったんだ!?」って混乱してしゃべり始める。中には、「あの娘に違いない」って声もあがるぞ。この新事実を聞いて、村に向かって走り出した者もいる。
ミラー:「あんた、知っていたな」
GM/カロシュ:「あいつらより、先にいってやってくれ」
ミラー:「イェルナのこと知っていたな」
ガズ:「くそっ。そいつは、放っておけ」って、娘の小屋を目指して走り出す。
シエラ:飛んで追いかける。
ミラー:・・・行きます。
GM:小屋です。
ガズ:どん、どん、どん!
GM:返事はありません。
ミラー:入っていく。
GM:踏み込みます。部屋はシンとしています。テーブルの上に、玉子を入れた篭があります。その玉子の上に目玉が二つのせられています。赤い帯の残った、目玉です。
シエラ:「あ・・・・・・・」
ミラー:誰もいませんか?
GM:風が外で鳴っている・・・。部屋の隅から女のすすり泣きが聞こえました。
シエラ:どこ?
GM:ベットの下だろう。
ガズ:怖い~。
シエラ:の、のぞき込む。
GM:イェルナが体を丸めて泣いています。ここからでも血塗れの洋服が見えます。
シエラ:あ~。
ミラー:「出てこい」というけど。
GM:イェルナがのろのろと這い出してくるぞ。手にはありふれたジャガイモの皮むきにでも使うような小さなナイフが握られている。
シエラ:「あなたの仕業なのね、全部・・・」
GM/イェルナ:「ちがう。呪いなの、呪いのせいなの」と呟く。
シエラ:「呪いって、何の?」
GM/イェルナ:「“あれ”よ。“あれ”に呪われたのよ」
シエラ:ホラー? けど、アストラル感知では・・・。
GM/イェルナ:「父さんと同じなの、“あれ”に目を付けられたの」
ガズ:「ホラーに操られたってか? ・・・勘違いだな、あんたにマークはない」
GM/イェルナ:首を激しく振るぞ。「“あれ”は賢いの、誰よりもずっと狡賢いんだわ」
ガズ:「だから、だれにも見えないってか」
GM/イェルナ:「わたしに命令するの、憎いだろう、憎いだろう、殺せ、殺せって」
シエラ:う、イッちゃってる。
GM/イェルナ:「押さえようとした、一生懸命たえようとしたわ。けど、“あれ”の声は強い。何度もやってみようと試みたの、あいつの付ける“徴”を取ろうとなんどもやってみた・・・」 そういいながら服を脱ぐ、「でも駄目だった、取っても取っても“徴”は後から後から現れて・・・」 彼女の肉体には、無数の体を傷つけた痕、“ホラー・マークを取りのぞこう”とした痕があります。
ミラー/シエラ/ガズ:(絶句)
GM/イェルナ:「言いなりになるしか、なかったの!」と叫び、しゃがみ込みます。
ガズ:「お、俺は、村人を留めてこう」 外に出ます。
シエラ:「イェルナ、聞きなさい。これはホラーの仕業じゃないわ・・・。ぜんぶ、あなたのしたことよ、あなたがあなたの憎しみをホラーの仕業にすり替えてるだけだわ」
GM/イェルナ:顔を伏せたまま呟く。「ちがう。あなたは知らないの、“あれ”の恐さを知らないだけなのよぉ・・・」
ガズ:おい、早めにどうにかしてくれ。
シエラ:私は、村人に引き渡すことを奨める。
ガズ:だめだ。ミラー、始末をつけろ。
ミラー:俺なん?
ガズ:村人に捕まったらリンチやで! それだったらここで殺してやれ。
GM:村人の怒号が大きくなる。どうする?
ミラー:「できない・・・」
俺が小屋をのぞいたとき、あの若造は、まだ決断しかねていた。剣を抜きはしたものの腕はだらりと下ろしたままで、血の気の失せた顔は、今にも砕け散りそうな陶器の面みたいに“ひび割れて”見えた。
怒り狂った村人の声がそこまで近づいてきていた。もう時間がなかった。俺は部屋に踏み込み、あいつの手から剣をひったくった。それで、ヒュンッ!
イェルナは一瞬で逝ったはずだ。痛みすら感じなかった自信がある。
間一髪、村人が到着したときには、“一件落着”ってわけだ。まぁ、部屋のありさまを一瞥した途端、ゲロを押さえて飛び出していくようなヤツばかりだっんだけどな。あの馬鹿はつっ立ったきりで、ことの凄惨さを際だたせるのに一役買っていた。イェルナの返り血を避けなかったんだ。全身血塗れよ。
俺たちは、その日のうちに村を去った。なんにせよ、事件は片づいたわけだし、さすがに今度は、お祭り騒ぎって雰囲気じゃなかったし。
落ち込んでいた気分も、数日後にはずいぶんましになっていた。もちろんそれには、ちょっとばかし多めの酒が必要だったがな。
それでも、この一件が話題になることは、一度もなかったんだ。
ことの真相は俺にもわからん。彼女は本当にホラーに操られていたのか、それともイェルナが“単にそう思いこんでいた”だけのか、だれに答えられる?
殺された村人は、イェルナに特別な恨みを買うようなヤツだったのかも知れないし、いきあたりばったりの被害者かも知れない。ことによると、ダワンを殺したのもあの娘なのかも、な。
まさしく・・・“神のみぞ知る”ってやつだ。
さて、これで全部だ。あとはあんたの調べたとうり。俺たちと武人の若造とは半年後に別れた。小生意気なウィンドリングとは、あいつが死ぬまでの3年間一緒だった。パーレイスの廃都で鉄の巨人にねじり殺されたんだ。
喋りすぎた。喉がカラカラだ。飲み物を、できれば強い酒をくれ。
満足したかい。これがあんたの聞きたかった話しだろ? 包み隠さず、ぜんぶしゃべったぜ。
さて、次ぎは俺が質問するばんだ。
こんど捕まったジャスパサ村皆殺しの犯人、ほんとうにヤツなのか?
俺の知っていた、あの若い武人なのか?
それで、ヤツには“ホラーの徴”はあったのか?