ジル
サイモン(第12世代トーリアドール)のグール
振る舞い:子供、本質:後ろ向き、コンセプト:ピアニスト
ジルがサイモンと出会ったのは場末のクラブ、ちょうど1年前のことです。サイモンは一目で彼女の才能とその容姿に惚れ込み、その夜のうちに秘密を打ち明け、呪われた血の呪縛を与えました。
一度は激しい恋に落ちた二人ですが、発作的な愛情関係が往々にしてそうであるように、現在の二人の関係は冷たいすれ違いを見せています。
プレイヤー:リサ
チャーリー・クック
ソフィア(第13世代マルカヴィアン)のグール
振る舞い:夢想家、本質:変わり者、コンセプト:図書館司書
ソフィアとチャーリーの関係は呆れるほどありふれています。雨宿りに入ったバー。偶然となり合わせた男女。ぎこちない自己紹介の後、似たような音楽の好みと最近読んだ本の話題ではずんだ会話。そして次ぎに会う約束・・・。
さて、三文小説さながらの二人の恋(?)の結末は、どこまで「ありふれて」いられるのでしょう?運命ほどタイミングを心得た(そして意地の悪い)演出家は他にいないといいますが・・・。
プレイヤー:コニタン
ストーリーテラー:ナッキー
プレイ日時:1999年11月6日(土曜日)
ST:始めます。今回、舞台となる場所は特に決めていませんから。カマリラ勢力下のどっか普通の都市です。
ジル:マッド・シティー?
ST:どこやねん。
チャーリー:なにかのアトラクションみたいな名前やな。
ST:君たちが住んでいるのはウェストエンドと呼ばれている寂れた地区です。特別治安が悪い場所ではないんですが、かといって健全な場所でもありません。どっちかっていうと都市開発から無視された旧市街って感じで、数人の素性の怪しいヴァンパイアばかりが縄張りを持っています。
ジル:チャーリー&ジルは知り合いなん?
ST:顔見知り程度です。この地区の中で、隣接した小さい縄張りを持った3人のヴァンパイアいて、そのうち二人のグールが君らなんよ。
ジル:ラジャー。
ST:さて、チャーリー君、君とソフィアとは毎週金曜日に会っています。
ジル:いや~ん。(笑)
ST:今日は土曜日です。昨日の晩、いつもの待ち合わせのバーに彼女は現れませんでした。
チャーリー:彼女とは連絡を取り合ってるんでしょうか? それともなんとなく会ってるんでしょうか?
ST:なんとなく、でしょう。ソフィアの住所とか電話番号とかも君は知りません。
チャーリー:了解。
ジル:マルカヴィアンではよくあることなのでは?(笑)
ST:さて、チャーリー君はどうしときましょう?
チャーリー:いきなりですか。今朝は支度をして仕事にでます。
ST:図書館司書の仕事ですね。平凡な一日が終わりました。
チャーリー:わぁ、終わってしまいました。
ST:何もないなら、日曜になってしまいますがよろしいか?
チャーリー:夜はいつもの店に向かいましょう。
ST:彼女の姿は見えません。カウンターに腰を下ろしてまもなく、男が隣に現れます。
チャーリー:誰でしょう?
ST:これといって特徴のない男です。顔に見覚えはありませんが、危険な雰囲気の男じゃありません。
チャーリー:「なにか?」と訊いてみましょう。
ST/男:「チャーリー・クックだね」
チャーリー:「そうですが」と小声でね。
ST/男:「これを預かってるんだ」とアーミーコートの下からふくれた大きめの封筒を取り出す。「ソフィアさんに頼まれたんだ」
チャーリー:受け取ります。カバンにしまってから、「あなたは誰ですか?」と訊く。
ST:封筒はちょっと重たかったです。カバンをごそごそっとやって顔を上げると、男はもうそこにいませんでした。
チャーリー:消えたのか?
ST:さあ?
チャーリー:しょうがないから封筒の中を覗いてみましょう。
ST:破ったレポート用紙と新聞に包まれた何かがあります。
チャーリー:とりあえず、家に返りましょう。それから改めて。
ST:はい、帰りました。レポート用紙はソフィアからの手紙で、こう書いてあります。「チャーリーへ。どうしても片づけなければならない仕事があって手が放せません。ちょっとしたもめ事なんだけど、それも数日で終わると思う。だから心配しないでください。次ぎの金曜はいつもの場所であいましょう。PS、脅すわけじゃないけど身の回りに気をつけて。どうしても助けが必要になったのなら、スワンプ・ジョーに会いに行きなさい」
チャーリー:なるほど。けど、スワンプ・ジョーて誰?
ST:新聞の包みを開けると、ごとりと銃身の短いリボルバー・ピストルが出てきました。弾も1ダースほど。
チャーリー:わ~っ。銃器戦闘ととっとくんだった。(笑)
ジル:それで殴るんだろ、やっぱり。(笑)
チャーリー:白兵戦もないんよね~、どうゆうつもりなんだろう?(笑)
ジル:危なくなったらこれで自殺しろってことじゃない。
チャーリー:なんでやねん、身を守るんじゃなくて自殺かよ!?
ST:それじゃ包丁とかでもいいんじゃねえの? かみそり出てきてもイヤか。(笑)
チャーリー:はぁ、わかりました。手紙といっしょにして引き出しにでもしまっておきましょう。
ST:ジルは今、なにしていますか?
ジル:えっと、いつ?
ST:日曜の晩です。
ジル:友達と遊び歩いている。飲みにきているのかな。
ST:じゃあ、そうやってショッピングを楽しんでいると(←全然聞いてない)、誰かがふっと現れて、ガシッと腕につかまってきたぞ。
ジル:はぁ? 飲みに・・・。誰かが腕につかまってきたの? つかまえられたんじゃなくて?
ST:「ハァイ、ジルぅ」って女の子が話しかけてくる。
ジル:誰なのっていうかデジャブーを感じるのはなぜ。(笑)
ST:名前はジャネットです。
ジル:知り合いなの?
ST:はい。なぜならジャネットはこの地区のもう一人のヴァンパイア、ドニーって名の若いヴェントルーを主人にもっているグールだからです。
ジル:ふ~ん。「こんばんはジャネット、久しぶりね」と挨拶。
ST/ジャネット:「何しているの?」って明るく訊いてくるよ。
ジル:「友達と飲みにいってるのよ」
ST/ジャネット:「ふぅん」って言って、手をつないでくる。「ドニーが探してたよ」って言う。
ジル:「は? ドニーが? いますぐ? っていうかなんで?」
ST/ジャネット:難しいことはわからんって感じで見つめ返される。
ジル:「あ、ちょっとまってね」 友達に話して「急用ができたから」って謝っとこう。
ST:ジャネットが「友達といたんだ、ごめんねっ」って言うわ。
ジル:いいから連れていけ。
ST:はい。とあるクラブにやってきました。ごっつい黒人のドアマンがおるような店やね。ホールにはいるとズンズンと響く音楽に包まれます。で、VIPルームにとおされました。ホストみたいな甘いマスクのハンサムガイが、赤い液体の入ったグラスを軽くあげて微笑むぞ。
ジル:わ~ん、ここにも変態ヴェントルーがぁ。
ST/ドニー:「掛けてくれ」
ジル:「どうも。私にお話があるそうね」
ST/ドニー:「その前に飲み物はどうだい、お好みは何かな?」
ジル:(首を横にふる)
ST/ドニー:「僕が選んであげよう」ってさ。
ジル:お、お話を・・・。(笑)
ST/ドニー:「妙な質問に聞こえるかも知れないけど、最近ソフィアに会ったかい? 見かけただけでもいいんだが」
ジル:ソフィア? ないよね?
ST:ありません。ちょっと間をおいてから、「彼女を捜しているんだ」と言う。「どうしても連絡がとりたいんだ」
ジル:ふ~ん。
ST/ドニー:「君に頼みたいことがあるんだ。彼女にはチャーリーという名前の“下僕”がいたはずだ。彼に会って話をしてみてくれないか、彼に訊けば状況が詳しく分かると思うんだけど」「こんな事を頼むのは気が引けるのだけど、急を要するので・・・」とホールで踊るジャネットをちらと見て、「それに、他に頼れる人もいないんだ」と。(笑)
ジル:急を要するね・・・、「いいわよ。けど、このことをあの人は・・・」
ST/ドニー:「あぁ、話はつけてある」
ジル:「じゃあ問題ないわね。一つ質問していいかしら?」
ST:うん?
ジル:「ジャネットのどこが気に入ってるの?」
ジル:チャーリーの電話番号なんて知らないよね?
ST:知りません。
ジル:じゃあ、いきつけの店とか仕事場とかは?
ST:バーの場所とか図書館司書とかは風の噂で。
ジル:次の日の夜に、そのお店に行ってみましょう。
チャーリー:たぶんその夜も店にいるな。銃を懐に忍ばしておこう。
ジル:一度くらいは会ったことがあるよね。見つけたら手を振る。
チャーリー:手をあげるけど、誰かな? みたいな。
ジル:「憶えてないかな?」
チャーリー:(無反応)
ジル:自己紹介します・・・。(泣) 「ソフィアさんを探しているんだけど、一緒じゃないの? 彼女が今いるところ分かるのかしら?」
チャーリー:「いや」
ジル:「それってあなたも知らないってこと? 実は私も人に頼まれてきたんだけれど、ヴェントルーの優男に」
チャーリー:「ドニーも知らないって?」
ジル:「みたいよ」ってサイモンはどうなんだろう?
ST:君は彼とはあまり会っていないので、詳しいことは分かりません。
ジル:そうなんだ~。私ふられたのかしら。
ST:最近は冷たい関係なんよ。そうか、それやからジャニスに妬けるやな。(笑)
ジル:あの女に嫉妬するくらいならグールなんて辞めてやるわよ~。
チャーリー:かくかくしかじかと先週の金曜から会ってないことは説明するわ。
ジル:君の懐の銃のことも話すのかな。
チャーリー:それはしません。手紙のことも。
ジル:それじゃ、ソフィアは消息不明ってことになるのね。
チャーリー:何か用事があるとか言ってたみたいだ、とはぐらかしておこう。
ジル:ふ~ん。
チャーリー:「ところで、スワンプ・ジョーって知っているか」と訊いてみるわ。
ジル:誰?(笑)
ST:あっつ、説明してなかったな。この地区に隣接した大きな公園と川沿いに縄張りを持っているノスフェラトゥの名前です。ちらっと聞いたことがある程度にしときましょう。
チャーリー:実は俺も知っていた。
ジル:私も。「彼が、ソフィアの居場所を知っているの?」
チャーリー:「いや・・・。けど、町の出来事でノスフェラトゥが知らないことは無いそうだ」
ジル:「けど、ノスフェラトゥってちょっと怖いじゃない」
チャーリー:「実は僕も一人で行くのは怖いと思っていた所なんだ」
ジル:いやじゃよ。「とりあえずドニーに会ってくれない? ノスフェラトゥはその後でもいいでしょ」って急いで連れていく。
チャーリー:連れていかれた。(笑)
ST:そんじゃ、その夜、先のクラブで会います。ドニーが出てきてこんばんは。
ジル:「こんばんは」
チャーリー:「こんばんは」
ST/ドニー:「素晴らしいねジル、君には探偵の才能があるに違いない」ってさ。
ジル:(ぐったり)
チャーリー:大まかなところを説明しましょう。
ST/ドニー:「彼女、なにか君に言ってなかったかい?」
チャーリー:思い出すふりをしておきましょう。「しかし、どうして、ソフィアの行方が気になるんだ?」と逆に聞いてみましょう。
ST/ドニー:「それが・・・」と少しためらってから、「心配事が持ち上がってるんだ」と。
チャーリー:「話してくれ」
ジル:「それって私も聞いておきたんだけど」
ST/ドニー:「この数カ月、長老会議で特定の地区に関する管理問題が持ち上がっていてね。ウェストエンドを含んだ3つの地区を反抗分子の巣窟と呼んで、管理怠慢を理由にプリンスを槍玉にあげている奴等がいるらしい」
チャーリー:「プリンスの座を狙っているヤツがいるのか? いまさら?」
ST/ドニー:「否定はしないよ。不幸かな我らがプリンスは、外より身内に敵の多い男だから」
チャーリー:プリンスのクランはなんでしょう?
ST:トレメール氏族、名はマルフェス。
チャーリー:どうりで。
ジル:でも、真実はどうなの?
ST:本当です。ここが“クラン無し(ケイティフ)”や“反抗分子(アナーク)”の巣窟だなんてことは誰だって知っています。プリンスだってです。むしろマルフェスは「敵の敵は味方」って言葉の意味をよく理解していて、そんな連中を秘密の仕事に使うこともある。
ジル:なるほど。
ST/ドニー:「だが、事態は思ったより混乱しているらしい。こちらサイドの同族にも氏族の忠誠を理由に派閥ができ始めている。建前もいいところだが、縄張りを広げる良い口実にはなるからな。血の気の多い連中には、早速、隣の縄張りに切り込み隊を送り込んだバカもいる。それで俺は、早いうちに意志表示をしておこうと考えているんだ」
チャーリー:「誰に?」
ST/ドニー:「もちろんプリンスにだ」
チャーリー:「あらましは分かった。で、3人はその話をしたのか?」
ST/ドニー:「まだだ・・・。それにソフィアが見つからない。」
ジル:「サイモンは?」
ST/ドニー:「彼か・・・、彼は傷を負って眠りの最中だ」
ジル:マジ、初耳じゃよ! さっきのバカとかに殺られたの!?
ST:みたい。
ジル:あいや~っ。
ST/ドニー:「プリンスへの謁見は早いほど良いだろう。俺はソフィアの意見も聞いておきたい、彼女がどこかの派閥に入ったか、自分の考えで行方をくらませているのならそれで結構、選択は彼女にあるからね。だがあまり賢い判断じゃないと俺は思うな、これは無用のバカ騒ぎだ」
チャーリー:「わかった、少し待ってくれ、彼女を探してみる」
ST/ドニー:「あてがあるのかい?」
チャーリー:「少しな」と曖昧に。
ST/ドニー:「なるほど」っていうけど疑わしげだね、「ジルも協力してくれるかい?」
ジル:「いいわよ」
ST/ドニー:「では、よい知らせを待っているよ」と。
ジル:っていうか働け、ジャネット!!
チャーリー:やっぱりスワンプ・ジョーに会ってみるか。
ジル:ぐぅ、血が飲みたいな。でもサイモンを起こすわけにもいかないし。
チャーリー:そっといって吸ってきたら。(笑)
ジル:無理なのじゃよ。
ST:さて、どうしましょう。
チャーリー:次ぎの晩にスワンプ・ジョーの縄張りに向かいましょう。
ジル:うろうろするわ、見つかるまで探す。
ST:そうだね~、知覚力と観察で判定しとくか、難易度は秘密。
ジル:こんな感じ。
ST:成功してますね。
チャーリー:わぁ、溝にはまってしまった。
ST:薮の茂った小道のむこうにボロい桟橋があります、そこで釣り糸を垂れてる男がいますな。
チャーリー:近くまでいくよ。「釣れますか?」って声を掛けよう。
ST:セーターを着て帽子を被った男だ。「さっぱりだな」ってさ。
ジル:バケツの中をのぞいてみる。
チャーリー:「あんたがスワンプ・ジョー? 話があるんだが」
ST/SJ:「釣りはどうだい?」ってさ。
チャーリー:「釣りは好きじゃない」
ST/SJ:「それは残念」といって顔を上げるけど初老の男でぜんぜん普通の顔やで。
ジル:なんでぇ。
ST:ディシプリンを使いっぱなしなんですね。
ジル:なるほど、それはいいことね。
チャーリー:「ソフィアのことなんだ、彼女はどこにいるんだ?」
ST/SJ:チャーリー君、機転と観察してみてごらん。
チャーリー:意志力を使いましょう。
ST:彼とは会ったことがあるような気がするな。
チャーリー:どこで?
ST:バーで。
チャーリー:うん?
ST:封筒を持ってきた男、顔は違っていたけど。
チャーリー:あぁ。「一度お会いしました」って、「けど、どうして?」
ST/SJ:「彼女に頼まれたんだよ」
チャーリー:「彼女とは仲が良かったんですか?」
ST/SJ:「顔見知り程度だよ」
チャーリー:「しかし、彼女の助けを・・・」
ST/SJ:「頼まれたんだ、それだけだ」
チャーリー:「何か知っているんですか?」
ST/SJ:「何もかも知っている」
チャーリー:「全部話してください」
ST/SJ:「何もかも知っている、だから話せないんだよ」
ジル:「どうして? それじゃ困るの」
ST/SJ:「俺に話す権利はないと思うんだよ、機会が来れば彼女から話してくれるはずだ」
ジル:「私たち急いでいるの。あなたも、町の同族がもめてるのは知ってるでしょう? ソフィアに会わなくちゃならないのよ」
ST/SJ:「・・・俺の意見を言わしてもらおう。なにもかも忘れて町を離れろ」
ジル:はぁ? 何を薮から棒に。
ST/SJ:「お前たちはグールだ。所詮、主あっての下僕、それがどれだけ脆い立場なのか分かっているのかね?」
チャーリー:「だからこそソフィアを探さなきゃならない」
ST:スワンプ・ジョーは煙草に火をつけて深く吸うね。考えていた風だったけど、「俺から話しておいてやろう」って。
チャーリー:「案内してください、彼女の居場所を知ってるのなら」
ジル:ダメなら尾行させてください。(笑)
ST/SJ:「約束させてくれよ。明日の晩、あの店でソフィアに会えるように」
チャーリー:「分かりました、お願いします」
ジル:チャーリーに私の連絡先をメモって渡しておこう。
チャーリー:家に帰ろう。
ST:公園から出て、二人は別れました。チャーリーが自宅を目指して歩いていると。いかにもチンピラ風の兄ちゃんたちがついてきはじめた。
チャーリー:はぁ、隠密行動とっとくんだった。(笑) なるべく人通りの多い場所を選んで進もう。
ST:なるほどね・・・。チャーリーが人混みをぬって歩いていると、上等な服装の男が進み出てきて軽く会釈をよこします。
チャーリー:俺なん?
ST:思わず振り返ってしまうけど、君以外に人はいない。チンピラが慌てて姿を消すのが見えただけ。「あちらに」って通りの向こうを見るようにうながされる。黒いリムジンが停まっている。「ご主人がお会いになりたいそうです」って言うぞ。
ジル:ファンデーションはなにをお使いですか?
チャーリー:つ、つかっていません。
ST:おもろい。(笑)
チャーリー:「どういうことなのか、説明を」
ST:「マルフェス様がお待ちです」
チャーリー:プリンス! 「・・・わかった」
ST:リムジンに乗り込むと、向かいのシートにはマルフェスが座っています。想像していたより体格のよい、むしろ無骨な雰囲気の男です。
チャーリー:「眠いんだ、手短に頼むよ」
ST/マルフェス:「時間はとらせんよ、クック君」
チャーリー:「話とは?」
ST/マルフェス:「この地区に関わる政治問題について」
チャーリー:「?」「ドニーはあんたに忠誠を誓う気があると言っていたぞ」
ST/マルフェス:「しかし、ソフィアが現れない」
チャーリー:「今探しているところだ。だが、分からんな、彼女の消息がそんなに重要なことのか?」
ST/マルフェス:「なるほど。つまり君は、事態の半分も把握していないな。ジャスティカー(巡回上級執行官)到来の話など知る由もないのだろう?」
チャーリー:「ジャスティカーだって? どういうことだ」
ST/マルフェス:「ジャスティカーが彼女を追っているんだよ、正確にはサイモン・レンブランツとドニー・マンソン、ソフィア・ボレンツの3人だ、彼らにはディアブレリ(同族殺し)の疑惑が掛かっている」
チャーリー:ひゃ~。「それは事実なのか?」
ST/マルフェス:「私の元に届けられた報告書を読む限りでは疑いようがない。93年のシカゴでM・マッキンタイヤというヴェントルーが殺害され、ディアブレリの痕跡が確認さた。3人ともシカゴに居たことも、マッキンタイヤとつながりがあったことも確認されている。その後、姿を消したことも」
チャーリー:なるほど・・・。
ST/マルフェス:「正直なことを言おう、私が問題にしているのは同族殺しの件ではない。もちろん、罪は罪だ、それには相応しい罰が与えられるべきだろう。しかし、私が許せないのは、私の王国がよそ者によって侵されるということだ。とりわけ、そのジャスティカーがヴェントルー氏族の者であり、彼の到来をきっかけに、私の政敵が活気づくとなればな」
チャーリー:「なるほど・・・、交渉の余地があるってことだ。で、ソフィアはどうすればいい?」
ST/マルフェス:「私のもとへ現れることだ。ジャスティカーが到着する前に、私が制裁を下す」
チャーリー:「刑は?」
ST/マルフェス:「譲歩しよう。最悪なのはジャスティカーだと知れ」
チャーリー:「わかった」 帰る、帰って寝るぞ、メモなんか破いてから寝る。
ST:次の日です。
ジル:早めにバーに行こう。
ST:通りを歩いていると、この地区では見かけない連中がうろついているのに気づく。
ジル:一応、つけられたりしてないか気をつけておこう。
ST:はい。
ジル:チャーリーから連絡なんてないよね。(笑) 電話サービスとか使って、彼の家に電話してみる。
チャーリー:10コールくらいしてから受話器をとる。「寝かしてくれ」と言う。
ジル:変な連中の話をしておこう。さきにバーにいるからって言っとく。
チャーリー:わかった。少し寝過ごしてから部屋を出ます。
ジル:彼女は現れましたか?
ST:きた。気づくと、いつのまにか、隅のテーブルに腰掛けていた。
ジル:そこまでいって話し掛けよう。「ソフィアさんですよね?」
ST:そばに寄るとわかるんだけど、彼女の容貌が妙な感じ。肌がかさかさで張っている、血管が浮いている。なんていうか、気味が悪いってかんじ。
ジル:「あなた大丈夫? 具合が悪そうよ」
ST/ソフィア:「ジルね・・・、チャーリーはまだかしら?」
ジル:「そろそろ現れると思う。ソフィア、いままでどこにいたの? みんな探していたのよ」
ST:ちょっとだけ笑った、壮絶な感じ。
ジル:「ドニーの話は知っている? この地区が他の同族に狙われてるってこと知ってる? サイモンが傷ついて、ドニーはあなたも一緒にプリンスに忠誠を誓ってもらいたいって・・・」
チャーリー:そろそろ到着してもいいですか?
ST:どうぞ。
チャーリー:黙って席に着きます。
ST/ソフィア:ソフィアがはーっと息を吐く。「ジル・・・気の毒だけど」
ジル:なに? 嫌な前置きせんといてよ。
ST/ソフィア:「サイモンは死んだわ」
ジル:わにゃにゃにゃにゃにゃにゃ。(←?)
ST/ソフィア:「逃げようとしたのよ、一人で」
ジル:「うそ・・・。それって、あなたがやったってこと?」
ST/ソフィア:「ちがうわ。けど、犯人の大方の察しはつくんじゃない?」
ジル:「けどどうして・・・」
ST/ソフィア:「ドニーは二人を保釈金に使った」
ジル:「サイモンはドニーに売られたってこと!? ドニーは保身にはしったってこと!?」
ST/ソフィア:「たぶん、始めっからそのつもりだったのよ。交換条件ね」
ジル:それで、行方不明のソファイアを私たちに捜させていたのね、ドニー許すまじ。(怒)
チャーリー:「同氏族のジャスティカーに二人を差し出しておいて、自分は無罪にってことか?」
ST/ソフィア:「プリンスに、かも知れない」
チャーリー:「プリンスはジャスティカーの到来を嫌がっている。プリンスはこちらから出向けば刑は軽くしようって話していたぞ」
ST/ソフィア:「それって結局、ジャスティカーがこの町に来る理由を先に無くしてしまえってことね。刑を軽くするとかどうとかは口約束」
チャーリー:読めないな。
ジル:どっちにしても、両方に追われているのには変わりない。
チャーリー:「ディアブレリの話は本当なのか?」
ST/ソフィア:「事実よ、M・マッキンタイアは私たち3人が殺った」
チャーリー:「・・・・・・」
ジル:「ねえ、ソフィア。あなた今までどこにいたの?」
ST/ソフィア:「助けになる仲間をさがしていたの」
チャーリー:「スワンプ・ジョーか?」
ST/ソフィア:「ええ。彼には世話になったわ」
チャーリー:「これからどうするつもりだい?」
ST/ソフィア:「町をでる」
ジル:「賢明ね。安全な方法が見つかったの?」
ST/ソフィア:「ええ。金曜日の夜、495号線沿いの廃モーテルで“仲間”と待ち合わせているの。チャーリー、あなたにもきて欲しい、一緒に町を出ましょう、これが最後のチャンスよ」
チャーリー:「わかった」
ジル:けど、主人を亡くした私はどうなるんだろう? 新しい主人を見つけるにしてもマルカヴィアンじゃねぇ。(笑)
チャーリー:ドニーに接近するって手もあるが。
ジル:嫌じゃよ、あんなヤツ。
ST:じゃあソフィアが言いますね。「座席に余裕はあるわ、そんな心配は町を出てからすればいいの」
ジル:ありがと。
ST/ソフィア:「でも、最後にやってもらわなくちゃならないことがあるわ」
チャーリー:とは?
ST/ソフィア:「ドニーを殺して欲しい」
ジル:願ったり叶ったりじゃよ(笑)
チャーリー:「僕がやるのか?」
ST:彼女は黙って君を見つめるけど。
チャーリー:そうなんだ~。(笑)
ジル:私たち昼間も自由なんだよ、むしろ協力させてくださいみたいにゃ。
チャーリー:そうか~、強いぞ、ワシら。(←間違い)
ソフィアはドニーのヘヴン(隠れ家)を記した秘密のメモを持っていた。どうやって手に入れたのかは分からないが、ノスフェラトゥと関係があるのかも知れない。二人はソフィアと別れ、“殺し”の準備に取り掛かる。
ジル:昼間にしようか?
チャーリー:明け方直後がいいんじゃない?
ジル:そうね。
ST:具体的な方法は?
ジル:忍び込んで殺る、それだけ。私もピストルが欲しいな。
ST:銃はそう簡単に手には入るもんじゃないね。
ジル:護身用に、ちっちゃいの持ってたことにしてもいいでしょ。
ST:許可しましょう。杭とかは持ってかないの?
チャーリー:ピストル撃ち込んで、あとはお日様に当てるんでいいんじゃない?
ST:包丁とかバットとか椅子の脚を削って尖らせたものとかはどう?(←猟奇)
ジル:やりすぎだよ。それに、技能がないしね。一応、カナヅチだけ持っていこう。(←だけって・・・)
チャーリー:準備ができたら車で向かおう。
ST:ではドニーのヘヴンです。ドニーのヘヴンは、建て売り住宅の中古って感じの家でした。思ったよりずっと地味な家。
ジル:隠密行動で入っていく。
ST:一、二階には人気はなく、当然、地下室への扉が見つかります。
ジル:下りていきましょう。
ST:木製の扉があります。開けると、地下室を日曜大工で改造した程度の寝床があって、セミダブルのベットに男と女が身を寄せ合って眠っています。なんの変哲もない、仲睦まじい若夫婦って感じですが。
ジル:そっと近づく。
チャーリー:女は・・・どうする?
ジル:先に撃っておこうか。
チャーリー:ガタガタ。(笑)
ジル:じゃあ、クッションをさっとジャニスの顔にかぶせて、撃つ。
ST:あ・・・。(呆気) ボンッて音がして、ジャニスの体がびくってなりました。
チャーリー:あ・・・。(呆気)
ジル:すぐに、ドニーも狙った方がいい。
チャーリー:う、撃ちます。
ST:一発目の引き金と同時にドニーが跳ね起きます。けど、ドッドッドッと、立て続けに銃弾を受けてそのまま仰向けに倒れ込みます。
チャーリー:弾が無くなるまで撃つ。
ST:すぐに弾は尽きて、カチッカチッてシリンダーが空回りします。ドニーは血の海で身をよじらせます。
ジル:ハンマーで頭を殴る。
ST:動かなくなりました。
チャーリー:さっさとずらかろう。ドニーの体は、シーツでくるんで外まで引っぱり出す。トランクに乗せて運んで、適当な場所で太陽にさらします。
ST:ひどい臭いの煙りがあがり、ドニーは燃えて無くなりました。
ジル:「いい気味だわ」
ST:二人とも“人間性”が減るな。
チャーリー:当然だろう。
ST:これからどうしますか? まだやることある?
ジル:とりあえず、荷物をまとめたり。
ST:いいでしょう。それは、順番に済ませたってことで。
チャーリー:夜を待とう。
ジル:モーテルに行きます。
ST:はい。車に荷物を積み込んで、出発します。到着。
チャーリー:待ち合わせの場所に? じゃあ、中で待つわ。
ジル:車は裏手の目立たない場所に停めておきましょう。
ST:はい。建物は無人です。汚れたガラス窓とあちこち剥がれた壁紙が殺伐とした雰囲気を感じさせますね。
ジル:適当に、椅子に腰掛けましょう。軽く乾杯でもする?(笑)
チャーリー:うちあげかよ。
ジル:カンパ~イ!(笑)
チャーリー:でへ、俺ってもしかしてヴァンパイアハンター?(笑)
ジル:でも、もっと銃の練習しなくちゃね~。(笑)
ST:なんか、鬼気迫るものがあるな。って言うか、人殺ししてきたんだぜ。
チャーリー:所詮、グールだし。(←自嘲気味)
ST:時間が過ぎていきます。夜中を過ぎて、2時、3時・・・。
ジル:あれぇ、そろそろ来ないと夜が明けちゃうよ。
ST:4時。
チャーリー:来ないぞ。
ST:5時。
ジル:外の様子を見てみよう。
ST:駐車場の方ですね。薄い闇の中に男が立っているのが見えます。とても背の高い男で、こちらを見ています。
チャーリー:見覚えは?
ST:ない。
ジル:まずいって、ジャスティカーじゃないの? 裏口も見てみるけど?
ST:誰も。
ジル:「チャーリー、裏から出よう」
ST:二人とも出ました?
チャーリー:銃を・・・。
ST:突然、モーテルの屋根から人影が飛び降りてきた。
ジル:さっと、飛びずさる。
ST:そいつは素早い動きで、チャーリーを殴りつける。
チャーリー:呆然となって避けられません。
ST:右頬と首に鋭い痛みが走ります。大きくよろけて、銃から手を離してしまう。
チャーリー:「痛ぅ」
ジル:“俊速”使って、車まで走り出します。
ST:ジルは首根っこを掴まれた。すさまじい怪力で後ろに投げあげられる。砂埃あげて背中から着地。
ジル:放られた。痛いちゅ~ねん。(笑)
チャーリー:俺も車まで逃げようとするけど?
ST:はい。よろめきながらも車に向かおうとしますね。我先にって感じだな。(笑)
ジル:起きあがろうとする。
ST:顔を上げると、車のドアに手を掛けようとしているチャーリーと彼の背後に迫った人影が見えます。
ジル:チャーリーの銃を拾って撃つ!
ST:当たるかな?
チャーリー:後ろからだから、いい感じであたるんとちゃう?(笑)
ST:パンッと銃声。人影は前のめりに、ばったりと倒れ込む。
チャーリー:殺った!? 振り返って見てみるけど?
ST:小柄な女が倒れています。ショックを受けますよ、我が目を疑うってやつ、そこに倒れているのは、ソフィアですから。
チャーリー:「なぜ・・・」
ST:がばっと起きあがった! すさまじい形相で君に掴み掛かる。
チャーリー:ひ~っ。(笑) もう、手で身を庇うくらいしか。
ジル:もう一回撃つ!
ST:パンッ! ソフィアの頭が弾けた。血がぱっとチャーリーに飛んできた。
ジル:死んだ・・・?
ST:さあ?
ジル:チャーリーの近くまで行きます。「どうして彼女が・・・?」
チャーリー:ソフィアを抱き上げて、助手席に乗せるぞ。
ST:お互い血塗れやね。
ジル:「な、なにやってるの!?」
チャーリー:車は動きますよね?
ST:キーはジルじゃないかな?
チャーリー:「キーをくれ、ジル」
ジル:「どうしようっていうの? 頭のおかしい彼女を連れていく気なの?」
ST:気づくと、背の高い男が側に現れていました。面白そうな表情で君たちを見ている。そいつが、「意外な展開だな」っていう。
ジル:「意外?」
ST/男:「うん。俺が思った展開とは違った」
チャーリー:「あんた、誰だ」
ST/男:「俺か? 俺は彼女の試験官だよ」
ジル:「ジャスティカー?」
ST/男:薄く笑いながら首を横に振る。「違うな。彼女に頼まれてやってきた」
ジル:「逃亡の手助けをするって約束の!?」
ST/男:「そう。彼女が選んだことだよ、俺たちのセクトに入りたいってね。プリンスだとか、エルダーだとか、クランだとかの権力争いに愛想が尽きたんだとよ」
ジル:セクト?
ST:ヴァンパイアの大きな集まり。
チャーリー:あ~っ、サバトっ!!(笑)
ジル:まじっ!?(笑)
ST/男:「残念ながら、彼女の入会試験は不合格みたいだ」
チャーリー:「俺たちを襲うことが試験なのか?」
ST/男:「そうとも、古いしがらみは捨ててもらわないとな。だが、思わぬ収穫があったよ、俺たちの仲間に相応しいのはガッツのあるヤツ、生き残ったヤツだ」
チャーリー:あはは。
ジル:えへへ、それもいいかも。
ST/男:「一緒に来るか?」
ジル:これで私もアンチトリビュー?(笑)
チャーリー:夜はまだ明けていませんね。車のエンジンをかける。
ST/男:「はは。このまま無事に逃げられるとでも? あいつらの待ち伏せはその先で行われているんだぞ」
チャーリー:えっ、待ち伏せ?(笑)
ST/男:「俺たちが最も誇りにするのは自由意志だ、クソ・カマリラには存在しない、お前が選べばいい、生きて地獄へ行くか、死んで天国へいくか」
チャーリー:無言で車をスタートさせる。知るかっ!
ST:おおっ、砂埃巻き上げて車が走り出すぞ。「馬鹿な男だ」と男が嬉しそうに呟くよ。その後、ジルの方を向く。
ジル:「いっちゃったわね・・・。でも、彼とはあまり馬が合わなかったのよ」って男に。
ST:チャーリーの車が走り去ったのとは逆の方から、エンジン音を響かせて大型トラックがやってくるのが見えた。男は君にむかって手を差しのべた。
ジル:手を取るよ。「ねえ、新しい仲間を紹介してくれる?」