今回のプレイでは、ラヴクラフトの短編小説の多くが舞台としている1930年頃のアメリカを舞台にしました。
アメリカ合衆国、マサチューセッツ州。アーカムより西に20kmほど。大きな森と湿地に隣接する都市「ウェストマーシュ」(架空の都市)。
この都市から少し離れた森の奥に居を構えるメイソン・サンダースから友人達に、休暇を利用して遊びに来ないかという手紙が送られます。
メイソンは30代後半の考古学者であり、最近はこのウェストマーシュの湿地に埋もれている遺跡の調査を熱心に進めています。
観光客などほとんどいないウェストマーシュの駅に降り立ったのは、年齢も職業もバラバラな4人でした。
メイソンの学友である芸術家のボウエンに、個人的に親しかった後輩のジョージ。
ニコールという女性は最近メイソンと親しくなりました。(メイソンはまだ、彼女が財産目当ての詐欺師だということを知りません。)
超心理学者のサムはオカルトに詳しく、メイソンとは文通仲間です。(現実主義者のメイソンと意見が一致することはありませんが。)
ウェストマーシュ駅には、メイソンの執事である年老いたエルウィン・クーパーが自動車で迎えに来ていました。
メイソンの屋敷は街からかなり離れた森の奥にある、寂しい屋敷です。
4人の客を乗せた自動車は、薄暗い森の方向へとゆっくり走り出しました。
メイソンの館に到着した4人はそれぞれの部屋に案内され、少し休んだ後、夕食に招かれます。
メイソンは友人たちとの再会を喜び、面識の無い4人はお互いの自己紹介などをします。
メイソンは現在、この館の近くで発見した遺跡の発掘を進めており、もうすぐ歴史的な発見が期待できるだろうと語ります。
そして遺跡から発見されたいくつかの品物を4人に見せ始めます。
中でも奇妙な生き物をかたどった彫像は、世界のどこにも類を見ない意匠のものだと言います。
その彫像は黒い石を掘り出して作られたもので、ひとつは人間の様な姿でありながら4本の手を持ち、頭が2つに裂けている化け物。
もうひとつはカンガルーのような足をした醜い人間もどきというものでした。
オカルトに詳しいサムは、この世の生き物ではない、どこか異世界の住人のようだと指摘します。
メイソンは現実的な考古学者でオカルトを信用しない人物ですが、反論らしい反論をせず、彫像をじっと見つめて沈黙してしまいます。
どうやら何か心配事があるらしく、彫像の話になってから顔色がよくありません。
「実はここ最近、あまり眠れていないんだ。申し訳ないが、今夜は先に失礼させていただく。」
メイソンは一足先に自分の部屋に帰ってしまいました。
あくる朝、執事のエルウィンから朝食に呼ばれた4人が食堂に集まると、そこにメイソンの姿はありませんでした。
エルウィンの話によると、昨日の夜遅くに出かけた様子があり、自動車が無くなっているが行き先がわからないということです。
仕事で留守にしているだけなのかもしれませんが、真夜中に出かけるのも、朝になって帰らないのも不自然です。
朝食後、サムとヘンリーは館の近くの発掘現場へ、ジョージはメイソンが一人になるとき行っていたという丘の上の広場へ出かけることにします。
ニコールは一人だけ館に残ることにしました。(主人が不在の隙に、何か金目の物を探そうという魂胆です。)
サムとヘンリーが現場に到着した頃には、既に作業員が仕事を開始していました。
遺跡は、古い時代の街の一部が地下から出てきたもののようで、たくさんの奇妙な出土品や異様な壁画が見つかっています。
サムとヘンリーは現場にメイソンが来ていないかと尋ねますが、昨日も今日も一度も来ていないということでした。
壁画を見た2人は、昨日メイソンが見せた彫像と同じような姿の怪物が描かれていることを発見します。
古代の人間が、あのカンガルー足の人間もどきに荷物を運ばせたり、4本手の巨人に車を引かせたりする姿が描かれています。
作業員に心や体に不調を訴えている者がいないかという質問をしたところ、ここでは皆が奇妙な夢に悩まされているのだと聞かされます。
それは遺跡に発掘作業が進むにつれいっそう恐ろしく、いっそう現実味を帯びているように思える、と。
サムとヘンリーは、続いて丘の上の広場に向かいます。
一足先にやってきたジョージは、見晴らしのいい丘の上に、腰掛けるのにちょうどいい高さの大岩が転がっているのを発見します。
メイソンはしばしばここで一人考え事をしていたということです。
岩の様子を調べていたジョージは、岩にチョークで描かれた地図のような絵を発見しました。
それは薄く消えかかっているものの、メイソンの屋敷、発掘現場、この丘の位置関係が分かるようなものになっています。
それに加え、丘の上から西に行った場所に1箇所、さらに西に1箇所、謎の×印が描かれていることに気付きました。
ジョージはそれを手帳に書き留め、丘から×印までのだいたいの距離を推測しました。
その後、発掘現場からやってきたサムとヘンリーが合流します。
彼らはお互いが見聞きした情報を交換し、一旦メイソンの館まで戻ることにしました。
そのとき、近くの森で何者かが動いたような物音がします。
木々に囲まれた薄暗い場所へ、何かが走り去ったような足音です。
ジョージが警戒しながらその後を追い、木々の向こう側にぼんやりとその姿をとらえました。
それはあの夕食の席で、メイソンが見せた彫像にそっくりな、カンガルー足のグロテスクな人間もどきでした。
恐怖感に一瞬怯みそうになったジョージですが、刑事らしく正気を保ちその後を追います。
木々のかげに怪物の姿は無く、あるのはただ奇妙な形の足あとだけでした。
ヘンリーが後を追いかけようとしますが、足あとを見たサムがそれを思い留まらせます。
その足あとは、このあたりに住む野生動物のものとは思えない、鉤爪の付いた細長いものでした。
その頃、館に一人残ったニコールは、メイソンの部屋を中心に金目の物を物色していました。
メイソンの書斎にめぼしいものが無かったため、彼女は別の部屋があるはずだと考えて館の中を探しはじめます。
その結果、地下室に続く施錠された扉を見つけました。<鍵開け>を試みますが失敗し、侵入できません。
一旦諦めて自分の部屋に引き上げようとしたとき、外から自動車のエンジン音が聞こえます。
メイソンが帰宅したのかと思い外に出てみると、浅黒い肌の外国人の男性が自動車から降りてくるところでした。
ゆったりとした衣服、黒いあごひげと、頭に巻いたターバンが、この場所では違和感を感じさせるものになっています。
浅黒い肌の男は執事のエルウィンと何事か話していたあと、車に乗って立ち去ってしまいました。
ニコールがエルウィンにこの男のことを尋ねたところ、チャンドラプトゥラと名乗る神秘家であると知らされます。
彼は以前から何度か主人のメイソンを訪ねてきたことのある人物だということでした。
今回の来訪の理由は不明で、メイソンが帰ってきていないという話を聞くと、そのまま立ち去ったそうです。
自宅に帰ってきたサム、ヘンリー、ジョージの3人は、ニコールから「チャンドラプトゥラ」なる人物と、地下室の存在を聞かされます。
食事の後、4人はエルウィンの許可を得て地下室の調査を開始しました。
〈図書館〉技能が高いサムを中心に、遺跡の正体とメイソン失踪の手がかりが無いか調査します。
その結果、以下のようなことが判明しました。
4人はこれらの調査結果を踏まえ、翌日までにメイソンが戻らなければ、岩にあった×印の場所まで行ってみることにしました。
その夜寝床についた4人は、いつの間にか薄暗闇に閉ざされた見慣れない場所に居ました。
辺りはぼんやりとしていて、ほんの少し先も暗闇に遮られているような空間です。
暗闇の中から、こちらを見つめている目が2つ、4つ、8つ…と感じられ、何者かがこちらに近づいてくるような気配がします。
姿を表したのは、あの丘の上で見た、カンガルー足の醜い人間もどき…「ガスト」でした。
恐怖に後退りする4人。その後ろからさらに別の姿が現れます。
背の丈6mはあろうかという、4本腕の巨人。頭が二つに裂け、そこから長い舌が飛び出している異形の巨人…「ガグ」です。
ガグはガストの1匹を捉えると、あっという間に大きな口へと放り込んでしまいました。
狂乱し、逃げ惑うガストを追いかけるガグ。4人は悲鳴をあげながら暗闇の中をめくらめっぽうに逃げ出します。
どこをどう走ったのか見当もつかないまま、走り疲れて立ち止まってしまった4人の目の前に、巨大な壁のようなものが立ちはだかります。
壁だと思ったもの、それはとてつもなく巨大な、のたうつミミズ状の生物でした。
ミミズ状の怪物は、粘液を垂らしながら4人の方へ迫ってきます。
悲鳴をあげるまでの間もなく、その巨体に押しつぶされ…
次の日の朝、サム、ニコール、ヘンリーの3人の目覚めは最悪でした。
悪夢のあまりの生々しさと恐怖感から、しばらくの間はベッドから起き上がることすらかないません。(正気度チェック失敗)
ジョージだけが、刑事らしいタフな精神を発揮して悪夢に打ち勝つことができました。
数時間後、ようやく4人は失踪したメイソンの行方を追って、×印がつけられた場所まで出かけます。
まず、星の見える丘から西に行った最初の×印に向かいました。
そこには岩山に穿たれた自然の洞窟があり、その近辺に自動車のタイヤ痕が見つかりました。
タイヤ痕は一度立ち寄った後、さらに西の方へ向かった痕跡が残っています。
4人は恐る恐る洞窟に足を踏み入れたものの、洞窟の暗闇の奥から視線を感じ、急いで引き返します。
タイヤ痕がさらに西へ向かっていることを知った4人は、もう一方の×印の場所まで急ぐことにしました。
2つ目の×印にあたる場所では、木々が立ち並ぶ森の中に湖があり、その周辺にタイヤのあとが残っていました。
タイヤ痕を辿って行くと、湖の側にメイソンの自動車が乗り捨てられているのを発見しました。
急いで自動車に駆け寄る4人ですが、自動車の前面は何かに押しつぶされたように凹んでおり、ドアはもぎ取られていました。
メイソンの姿はどこにもなく、自動車の周辺にはところどころ血の跡が残されています。
運転席には、いくつかの本とノート、さらには錯乱したような筆跡でメモが残されていました。
『ガグ、ガスト、ドリームランドの怪物…あの男の言うことは本当だった。ウェストマーシュのキャンドルホテルに滞在…』
突然、湖の向こう側で木が裂けるような音と、何か巨大なものの足音が聞こえてきます。
音の正体が何であるか察した4人は、すみやかにその場を離れることにしました。
走り去る4人が最後に振り返って目にしたものは、遠くの木々の間にぼんやりと姿を表した4本腕の巨人でした。
残念ながらメイソンは既にこの世にはおらず、その犯人が「ガグ」もしくは「ガスト」であることが分かりました。
メイソンが遺したメモに書かれている「あの男」とは、昨日屋敷に現れた肌の浅黒い外国人風の男、「チャンドラプトゥラ」氏のことでしょう。
4人は、彼が何者であるにせよ、今回の事件について何か知っていると考え、すぐに連絡をとることにします。
数時間後、メイソンの屋敷にチャンドラプトゥラ氏がやってきました。
彼はインド出身の神秘家であり、以前から遺跡の発掘についてメイソンに次のような警告を伝えていたということでした。
遺跡の一部には「ドリームランドに通じる門」があり、その力はまだ生きている、慎重に発掘を進めないと、ドリームランドの住人をこちら側に呼び寄せてしまう、と。
4人はこれまでの経緯をチャンドラプトゥラ氏に伝え、亡くなったメイソンのために友人としてできることはないかと訊きました。
チャンドラプトゥラ氏は、「ドリームランドに通じる門」に行き、そこで適切な時間に正しい呪文を唱えることで、「門」の力を永久に消し去ることができると言います。
複数の人間が同時に呪文を唱えることで、より早く確実に「門」を閉じることができるだろう、とも。
チャンドラプトゥラ氏は「門」の場所と呪文の書かれたメモを残し、館から立ち去ってしまいました。
次の日の真夜中、チャンドラプトゥラの指定した時間に4人は「門」のある場所に向かいます。
「門」は、メイソンが×印で示していた最初の場所、洞窟の奥にありました。
「門」と言われているものの、その姿は地面の岩場に刻まれた大きな円形の模様です。
4人は模様を取り囲むように立ち、教えられた呪文を暗唱し始めました。
長い呪文ですが、4人ともつかえることなく呪文を唱え続けます。(アイディアロール成功)
ようやく呪文が終わりに近づいていたその時、地面が揺れ始め、「門」の模様が光り始めます。
次の瞬間、「門」の中心から巨大なイモ虫状の生き物が半身を突出させ、粘液をまき散らしながらのたうち回っていました。
それは4人が夢の中で見た、ドリームランドの深淵に棲む存在、「ブォール」の姿です。
全員が恐怖のあまり気を失いそうになりながら、それでも呪文の詠唱を止めることはありませんでした。(正気度チェック成功)
やがて呪文は完成し、「門」の模様は光を弱めていきます。
「門」から飛び出さんとしていた巨大なイモ虫は、「門」の向こう側に吸い込まれていきました。
辺りは静けさを取り戻し、洞窟の中はただ暗闇が覆っているだけでした。
明け方、4人は館に戻りました。
執事のエルウィンには、メイソンの自動車を発見したこと、おそらく彼はもう生きてはいないことだけを伝え、その後の調査は警察に任せるよう進言します。
4人ともその日のうちに荷物をまとめ、館を後にしました。
こちら側にやってきた「ガグ」や「ガスト」たちがどこへ行ったのかはわかりません。
「チャンドラプトゥラ」と名乗る男が本当は何者だったのかもわからず、その後の行方も不明でした。
しかしメイソンがどのような死に方をしたにせよ、友人たちの活躍のおかげで安らかに眠れることでしょう。
遺跡とドリームランドをつなぐ「門」は閉ざされ、悪夢の怪物たちがこちら側にやってくることはもうないのです。
〈チャンドラプトゥラ〉
ラヴクラフト『銀の鍵の門を越えて』の登場人物より。
〈ガグ〉〈ガスト〉〈ドリームランド〉
ラヴクラフト『未知なるカダスを夢に求めて』より。
ガグ、ガストのデータにつては、クトゥルフ神話TRPGルールブックP172、173を参考にしました。
〈ブォール〉
ゲーム中では「ドール」として登場させたのですが、クトゥルフ神話TRPGルールブックP184を参照したところ、以下の記述がありました。
「ドリームランドにはブォールという名のよく似たクリーチャーがいる」
ルールブックに記載されている「ドール」は異星の生物の方で、ドリームランドの種族とは区別しているようです。
シナリオ中に登場させたのはドリームランドの方でしたので、ここでは「ブォール」としました。
〈ドリームランドに通じる門〉〈ドリームランドの生き物を使役していた古代人〉
これらは、今回のシナリオ用に用意したオリジナル設定です。
「ダンジョンクエスト クラシック」は今回初プレイでした。
4人のプレイヤーが1人ずつキャラクターを選択し、ドラゴンの財宝が眠るダンジョンを探索していくゲームです。
ダンジョンの道筋は、タイルをランダムに選択して作っていくのですが、運が悪いと開始早々とんでもない災難に遭うことも。
いきなり最強級のモンスターに襲われたり、危険なカタコンベ(ダンジョンのさらに下層)に落とされたりすることもしばしば。
シークレットドアやいろいろなしかけで、元の道に戻れなくなる危険もあります。
発生するイベントも完全ランダムなので、運が悪いとあっという間にゲームから脱落ということも。
実際、今回のプレイでも早々に1プレイヤーが脱落してしまいました。
まじめに勝ちを目指すというよりは、仲間と気楽に楽しむゲームだと思います。
ルールもそのことを意識してか、テンポよく進められる簡略化されたものとなっています。
今回は時間切れのため途中で終わってしまいましたが、次回は是非ドラゴンの宝を持ち帰りたいと思います。