何年かぶりにアースドーン(日本語版)をプレイしました。
セネド : ドワーフ元素魔術師
プレイヤー : ナッキー
トット・クロウクテイル : トゥスラング盗賊
プレイヤー : きたちゃん
リナリア : エルフ射手
プレイヤー : いそさん
ガノフィル : オブシディマン武人
プレイヤー : あゆみん
ノルガ : ドワーフ男性、行商人。珍しい品物を収めていた倉庫が盗難にあう。
ダント : ヒューマン男性、ノルガの使用人。倉庫の見張りをしていたが行方不明に。
ラディン : エルフ男性、自然学者。ノルガが手に入れた「蝶」を鑑定する。元アデプト。
ブート : オーク男性、盗賊。ノルガの倉庫で盗みをはたらく。
タリア : ヒューマン女性、酒場「薄暮から夜明けまで」亭の主人。
1.その朝遅く、ノルガの倉庫で
しかめっ面のドワーフを真ん中にして、4人のアデプトが立っていた。
スロール王国はバータータウンの倉庫街、行商人ノルガの所有している倉庫の中である。
「わしが今日の朝早くここへ来た時には、もうこの有り様だった!」
倉庫の片隅では、貴重な書物や貴金属が床にぶち撒けられていた。
テーブルの上には割れたガラスケースと破片が散らばっている。
「使用人のダントに夜通し貴重品の見張りをするように言いつけておいたのだが、奴はどこへ行ったのかわからん。」
トゥスラングのトットが地面に顔を近づけ、フーンとわざとらしく頷いてみせる。
「足跡があるな、盗人は外から来たみたいだぜ。ご丁寧に名刺を置いて行ってらあ。」
トットが部屋の隅から拾い上げたのは、紫色に染められた水鳥の羽だった。
「盗人が狙っていたのはこれだろう、私がパーレインスの探検家から買った珍しい蝶だ。」
苦々しい表情で割られたガラスケースを指差すノルガ。
「あれは美しい蝶だった…妖精と呼んでもよいくらいの立派な蝶だったんだ。あれを取り返してくれれば礼ははずむぞ!」
【ここでの手がかり】
・夜のうちに「蝶」とその他いくつかの貴重品が盗まれていた。
・盗人の足跡と、紫に染められた水鳥の羽を見つけた。
・見張りをしていたはずの使用人ダントは行方不明である。
・「蝶」を以前鑑定したラディンという学者がいるが、昨日もう一度鑑定させて欲しいと手紙があった。
2.正午前、ダントの自宅で
ダントは妹と二人暮しだった。
突然来訪した奇妙な4人組を前に、当惑する女性の姿。
「兄はまだ仕事から戻っていませんが…泊りの仕事があるということでして。兄に何かありましたか?」
「いや、そういうわけではないよ。もう戻ってるんじゃないかと思って訪ねただけだ。」
心配そうな表情の女性をなだめるセネド。
「ところで、お兄さんがよく行く場所などは知らないか?もしかしたらそこに行っているかも。」
「でしたら、”薄暮から夜明けまで”というお店の常連です。仕事が終わってそこでゆっくりしているのかもしれません。」
【ここでの手がかり】
・ダントは行方不明になってから自宅には戻っていないようだ。
・ダントは「薄暮から夜明けまで」亭の常連だった。
3.昼、「薄暮から夜明けまで」亭で
「ダントなら今日の朝遅くにここへ来たよ、何でも人を探しているって…それで客のことをあれこれ聞いてったよ。」
この店の主人はタリアという名のヒューマンの女性である。彼女は常連の顔を忘れない。
「それで特徴を聞いてると、そういう客がいたのを思い出したんだ。鷲鼻のオークで、黒い髪だった。ブートって名前の男さ。」
「この羽に見覚えは?」
トットが倉庫で拾った紫の羽を差し出す。
「ブートがそういう羽飾りのついた帽子をかぶっていたよ。」
「それで、ダントはどこへ?」
「さあ…ブートのところへ行くつもりみたいだったけど、私はブートの居所までは知らなかったからね。
それにしても、今日の彼は少し様子がおかしかったんだ。生気の無い表情で、目は虚ろだったし、顔色が悪かった。
それにこの花の香りを嗅いで、気分が悪いって苦しそうにするんだよ。こんなにいい香りのする花なのに。」
タリアが指差した先には、花瓶に生けられた白い花束があった。
「知り合いが珍しい花だって贈ってくれたんだ。ラディンって名前のエルフだよ。」
【ここでの手がかり】
・ダントは今朝遅くに「薄暮から夜明けまで」亭に来ていた
・ダントはブートという名前のオークの男性を探していた
・ダントは明らかに様子がおかしく、花に香りを嗅いで苦しんでいた
・花を贈ったのはエルフのラディンである(ノルガの「蝶」を鑑定した学者)
4.午後、ラディンの自宅で
ラディンの自宅。客間に案内された4人のアデプトがテーブルを囲んでいた。
「すまないね、何もなくて。客など滅多にこないものだから。」
濃い緑色のお茶を注ぎながら、エルフの学者が言う。
リナリアはこの独特の臭いのする渋いお茶が、一体どの地方のエルフに伝わるものだろうかと首をかしげていた。
「それで、あの蝶のことだが…最初にノルガから鑑定を頼まれたとき、私にはそれが何だか分からなかった。
とても美しい蝶だったが、今まで見たことも無かったし、似た種類のものも思いつかなかった。」
灰色の革表紙の古びた本を一冊、テーブルに置くラディン。
「その後もあの蝶のことを調べていたんだが、手がかりは掴めなかった。ところが、意外な書物からその記述を発見したのだ。」
ラディンが指さしたページには、美しい羽を持った蝶のような挿絵が描かれていた。
「これは”大災厄”より昔に書かれたものでな、ホラーに関する書物なのだよ。
私はあの蝶が、ここに書かれている恐ろしいホラーの一種ではないかと危惧している。
知能は高くないが、厄介なことに”名付け手”の体内に寄生し、短期間だが宿主を操ることができるのだ。」
ホラーという言葉を聞き、険しい表情になるアデプト達。重苦しい空気が流れるなか、セネドが事件について語った。
「今朝の時点で蝶はもういなかった。盗人が入ったらしいが、見張りをしていた使用人も行方不明だ。
私が思うに…もしその蝶がホラーなら、犠牲になったのは使用人ではないかと思う。
だが彼は、盗みに入った男を探しているようだ。何故だろう?」
ラディンはページをめくり、別の挿絵を指差した。そこには不思議な色合いの球形をした宝石が描かれていた。
「美しいだろう、これは”蝶”の卵だ。孵化した幼虫は宿主さえいれば、数時間で成長してしまう。
大方盗人が宝石と一緒に盗んでいったのだろう。使用人がなぜ”蝶”に乗っ取られたのかはわからん。
その美しさにたぶらかされたのかもしれん。どちらにしても親は卵を持っていった盗人を見つけて、必要なら”宿主”にするだろう。」
「そいつの弱点は書いてないのか?」
それまでじっと話を聞いていたガノフィルが、低く、よく通る声で尋ねた。ホラーと聞けば寡黙な彼も黙ってはいられない。
「ある種の花から分泌される成分を嫌う。系統的に最も近いのは、ここらで”そよ風草”と呼ばれる白い花だ。
あの花があれば、蝶を宿主から追い出すことができるかもしれない。
薬草を集めに行った時に摘んでおいたのだが、知人のタリアという女性に贈ってしまったよ。」
アデプト達は「薄暮から夜明けまで」亭でのことを思い出し、暗い表情でラディンの自宅をあとにした。
ダントはもう既に彼自身ではなくなっているだろう。せめてホラーが増えはじめるのだけは阻止しなければ。
【ここでの手がかり】
・「蝶」はおそらくホラーである
・ダントは今朝の時点で「蝶」に乗っ取られていたと思われる
・盗人ブートは蝶の卵を盗んだがために、追われているのではないか
5.夕方、ブートの隠れ家で
射手のディシプリンであるリナリアは、「導きの矢」の力を使ってブートの居所を絞り込んだ。
盗賊のトットは同業者の集まる酒場に出向き、ブートの知り合いであるというトゥスラングの男に案内を頼むことに成功した。
道案内に謝礼を支払って帰すと、4人はゆっくりと小屋の扉を押し開けた。
引き倒されたチェスト、床に散らばった金貨や宝石、そして血痕…
薄汚れたベッドに腰掛けているのは、黒い髪をしたオークの男だった。
目を見開き、こちらを見たまま微動だにしない。
「どなたかな?何用でここに来た?」
部屋の奥には、ヒューマンの若い男が立ってこちらを見ている。その顔色は青白く、目に光は無い。
「ダントね?ノルガのもとで働いていた…”蝶”はどうしたのかしら。」
白い花を手にしたリナリアが近づいた瞬間、ブートの口からカチカチという音が響き、そこから巨大な昆虫の頭がせり上がってきた。
ダントの背中が不自然なほど盛り上がったかと思うと、背中から鮮血とともに美しい蝶の羽が広がる。
「残念だが、手遅れだったというわけか。」
感覚を確かめるように手斧の柄を握り直すガノフィル。
今や完全に姿を表したホラーはスズメバチのような顎を鳴らし、尖った爪で次の獲物を捕らえようとしているのだった。
6.日は沈み、戦いは終わる
ガノフィルが振り下ろした斧の一閃に頭を砕かれ、巨大な昆虫が床に体液をぶち撒ける。
戦いはほんの数分で決着が付いた。
トットの剣が不意を打ち、リナリアが「魔法の照準」に向けて何本もの矢を打ち出す。
セネドはガノフィルの斧に魔法の火を灯し、その斧を使ってガノフィルの技が”蝶”を打ち砕いたのだ。
ホラーの脅威は去ったが、犠牲になった者が生き返ることはない。
事件の真相は、ノルガにとっても、ダントの妹にとっても残酷なことだろう。
4人は重い足を引きずって帰路についた。
7.数日後、再びノルガの倉庫で
「何と礼を言ったらいいかわからん。図らずもバータータウンを危機に晒すところだったのだから。
あなた方の活躍がなければ、今頃どうなっていたことか。」
ノルガは4人に向けて何度も頭を下げる。
「ダントのことはわしに責任がある。償いはさせてもらうよ。
それから、”蝶”と一緒にパーレインスで探検家が見つけてきたものだが…」
ノルガが倉庫から何かを持ちだした。布に包まれたそれは、古い長剣のようだった。
「これは勇気あるアデプトこそ持つにふさわしいと思う、受け取ってくれ。」
神秘的な彫刻がされてあるその剣を、ガノフィルは魅せられたように見つめている。
その様子を横目で見ながら、トットが笑いながら言った。
「おいおい、”蝶”に魅せられた男は体を乗っ取られたぞ。あんたはその”剣”に食われないようにな!」
感想(ゲームマスターより)
今回はプレイヤー4人のうち2人がこのゲームを初めてプレイするということでしたので、独特の世界観と歴史について詳しく説明しました。
キャラクター作成に時間がかかったので、捜索+戦闘1回というシンプルなシナリオでゲームの雰囲気を掴んでもらおうという狙いがありました。
ゲーム進行自体はスムーズに進んだのですが、アースドーン「らしさ」がもう少しあってもよかったとおもいます。
戦闘は想定していたよりもあっさりとPC側が勝ってしまい、ホラー側の強さの調整がうまくいっていなかったかも知れません。
(ホラーはジェフスラを少しだけ弱くしたものでした)
次回はアースドーンの世界設定を生かしたイベントを用意して遊びたいと思っています。
ゲームマスターおよびプレイレポート執筆: コニタン