「Becoming」はアメリカのインディーズRPGです。
2013年、クラウドファンディングサイトの「Kickstarter」においてプロジェクトが立ち上げられました。
このRPGは「ヒロイズムと犠牲のゲーム」とされています。
その名の通り、「物語の英雄が何かを成し遂げる」ことと、「立ちはだかる困難によってもたらされる犠牲」に焦点を当てたストーリーゲームとなっています。
プレイヤーは「英雄」側と「脅威の代理人」側(通常は複数人)に分かれてプレイします。
「脅威の代理人」とは、英雄に立ちはだかる困難(”苦痛”や”恐怖”など)を「語る」役目のことです。
1ゲームは何シーンかに分かれており、1シーン毎にシーンを担当する「脅威の代理人」が「どのような困難が英雄に降りかかったか」を語ります。
その後、英雄側と脅威の代理人側でサイコロを振り合い、最も高い目が出ている個数でその勝敗を決定します。
このとき、各プレイヤーは以下のルールを使ってサイコロの数を増やすことができます。
【英雄側】 … 「シーンにふさわしい”特質”を発揮するたび、サイコロが1個追加される」
英雄は、彼/彼女を英雄たらしめている”特質”を持っています。
例えば、「正義の心」のような”美徳”、「剣の達人」のような”長所”、「親友」のような”味方”などです。
これらの特質を上手く活かしてそのシーンを語ることができれば、使った特質1つにつきサイコロを1個得られます。
【脅威の代理人側】 … 「英雄の”特質”のうち、負の要素が付与されているものを利用するたび、サイコロが1個追加される」
英雄の”特質”は素晴らしいものですが、各シーンで英雄が敗北するたび負の要素が付与されていきます。
負の要素はもともとの特質に関係するもので、例えば「正義の心」であれば「独善的」などのネガティブなキーワードで表現されます。
英雄の特質に潜んでいる「負の部分」を上手く利用することで困難を語ることばできれば、使った特質1つにつきサイコロを1個得られます。
また、そのシーンに登場していない「脅威の代理人」は、英雄に対して「誘惑」を試みることができます。
これは、英雄側にサイコロの追加をする代わりに、「”特質”に負の要素を追加、または”特質”を失うこと」を要求できます。
こうして困難に屈しそうな英雄に対し、「何かを犠牲にしながら進む」という選択肢を提供するというわけです。
各プレイヤーには勝利点があり、各シーンに勝利したり、「誘惑」に成功することで得ることができます。
こうして最終シーンまで終わった後、最も多くの勝利点を得たプレイヤーが「物語の結末」を語る権利を得るのです。
「英雄と困難の対立」という形式をとっていますが、実際は英雄側が不利な状況に追い込まれやすくなっています。
最後のシーンまで英雄側が勝ち続けることはほとんど無く、大抵の場合は悲劇的な展開になっていくことでしょう。
しかしそれこそが「ヒロイズムと犠牲のゲーム」というテーマが成立している所以でもあります。
「勝ち負け」にフォーカスしたゲームではなく、「彼/彼女はいかにして英雄になったか。(あるいは、なれなかったか)」という部分を楽しむゲームなのです。
このゲームでは、シナリオに合わせて「英雄」と「脅威の代理人」も様々な人物や概念で遊ぶことができます。
オーソドックスな英雄譚だけではなく、「結婚を控えたカップル」と「依存と反感」の対立など、一風変わったテーマで遊ぶこともできます。
ゲームのルール自体はそれほど複雑ではないので、好きなテーマを自作して遊ぶこともできる柔軟な作品です。